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問題社員を解雇するときの進め方・手順は?正当な解雇理由などを解説

    解雇

    #懲戒解雇

    #整理解雇

    #普通解雇

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

解雇は難しいという話を聞いたことはないでしょうか。

解雇とは会社から一方的に雇用契約を解約することをいいます。

会社が持つ人事権の一つですが、濫用は許されません。
解雇するには正当な理由が必要です。

社員に明らかな非がないのに解雇したり、手続きを間違えたりした場合は、解雇が無効となる可能性があります。
解雇をめぐるトラブルが生じると、会社にとって大きな負担や損失が生じるため、解雇は慎重に行う必要があります。

この記事では、解雇の具体的な進め方について解説していきます。

解雇の種類と要件

一口で解雇といっても、解雇には以下の3つの種類があります。
理由や状況によって選択するべき解雇は変わってきます。

  • 普通解雇
  • 懲戒解雇
  • 整理解雇

解雇を有効に行うには、解雇の種類に応じた解雇要件を満たすことが必要です。

それぞれの解雇の要件について、以下で解説していきます。

普通解雇

普通解雇とは、従業員の勤務態度や能力不良等により、会社がこれ以上労働契約を継続できないと判断した場合に行う解雇です。
普通解雇が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 客観的にみて解雇することに合理的な理由があり、社会通念上においても相当であること

例えば、能力不足を理由とする普通解雇については、単に他の社員よりも成績が悪いというだけでは、正当な解雇理由があると判断されません。
会社側が繰り返し指導しても改善の見込みがない状況でなければ、解雇が認められないことが一般的です。

懲戒解雇

懲戒解雇は、従業員の問題行動に対して行う最も重い懲戒処分です。懲戒解雇を行うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 就業規則の懲戒事由に該当すること
  • 懲戒処分の種類として、懲戒解雇を定めていること

原則として、懲戒処分は比較的軽い処分から段階的に行っていくことが求められています。もし、最初から懲戒解雇を選択する場合は、問題行為に対する処分内容の妥当性が厳しく判断されることになります。解雇無効と判断されるリスクが高いため、事前に弁護士へ相談したほうがよいでしょう。

整理解雇

整理解雇は経営状態の悪化など、会社側の経営上の問題を理由に行われる解雇です。従業員側の問題による解雇ではないため、原則として、以下の4要件をすべて満たさなければ、解雇無効と判断されます。

  • 人員整理の必要性
  • 解雇回避努力義務の履行
  • 人選基準および人選の合理性
  • 手続きの妥当性

従業員の解雇の進め方・手順

解雇を選択することになった場合、適切に手続きを行うことがトラブル防止につながります。

解雇の進め方は以下の手順が一般的です。

  • 解雇の要件を満たしているか検討する
  • 解雇理由を書面にする
  • 解雇予告または解雇予告手当の支払を行う
  • 解雇通知書を送付する

これらの手続きにプラスして、懲戒解雇では本人への弁明の機会の付与や、就業規則等に規定がある場合は懲戒委員会の開催が求められます。

また、整理解雇では、整理解雇以外の経営改善手段を講じることや、社員や労働組合との協議などの手続きも必要となるためご注意ください。

①解雇の要件を満たしているか検討する

まずは解雇の種類に応じた要件を満たしているか確認しましょう。

要件を満たすことに加えて、解雇権の濫用にあたらないことも必要です。
解雇に客観的合理的な理由がない、社員の行為に対して解雇という処分が不相当などの問題があれば、不当解雇として訴えられるリスクがあります。
解雇事由の内容や重大性、これまでの改善指導歴、本人の情状、他の社員の処分とのバランス、行為と処分のバランスといった点を確認し、慎重に検討する必要があります。

また、対象社員が労働基準法上の解雇制限期間にあたらないかどうかの確認も必要です。

業務上のケガによる休業期間や産前産後休業期間など、解雇制限期間中であれば、要件を満たしていたとしても解雇できないためご注意ください。

②解雇理由を書面にする

解雇理由を整理して書面にまとめておきましょう。
あらかじめ書面にまとめておくことで、解雇予告の際に、従業員へ納得のいく説明ができ、解雇通知書にも具体的な解雇理由を記載することができます。

また、従業員から解雇理由証明書を求められた場合にもスムーズに対応ができます。
もし、後から解雇に関するトラブルが発生した場合には、会社が解雇の判断に至った根拠の証明にもなります。

③解雇予告または解雇予告手当の支払いを行う

社員を解雇する場合、会社は30日前までに予告する必要があり、予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(労基法20条)。
この予告日数の不足分に対して支払う平均賃金を解雇予告手当といいます。例えば、解雇予告なしの場合は30日分の予告手当を、解雇予告が20日前の場合は10日分の予告手当を支払う必要があります。

もし予告期間もなく解雇予告手当の支払いもせずに解雇が行われた場合は、通知後30日を経過するか、または解雇予告手当を支払った時点で解雇の効力が発生するとされています。

なお、解雇予告してから解雇することを「予告解雇」、解雇予告手当を支払って、解雇を伝えた当日に解雇することを「即日解雇」といいます。

解雇予告の詳細は、以下のページよりご確認ください。

さらに詳しく解雇予告とは?企業が従業員を解雇する際の手続き

予告解雇と即日解雇どちらを選ぶべきか?

予告解雇をすると、社員が解雇日までの30日間会社に出勤することになります。

本人が社内でネガティブな発言をすると、他の社員の勤労意欲が低下するおそれがあります。
また、社員が会社の重要情報を持ち出し、外部に漏えいさせる事態となりかねません。

さらに、本人が有給消化を希望した場合は応じる必要があり、社会保険料の支払いも求められるため、解雇予告手当の支払いよりも金銭的負担が増える可能性があります。

他方、解雇予告手当を支払った上で即日解雇をすると引き継ぎが難しい面があるものの、誠実な引き継ぎが期待できないような社員であれば、デメリットにはなりません。

以上を考慮すると、特別の事情がない限りは、即日解雇を選ぶべきといえます。

④解雇通知書を送付する

解雇の通知方法は、法律上の決まりがないため、口頭での通知も有効です。
しかし、解雇日や解雇理由等について、労使で認識に差異があれば、トラブルに発展する可能性は高まります。
解雇の通知は書面で行い、会社の解雇の意思と理由を客観的に明確にしておきましょう。

もし、解雇日に従業員が出勤しないなどがあれば、書留郵便や内容証明郵便など、本人の受領の確認を記録できる形式で郵送しましょう。

従業員の解雇が認められやすい正当な理由

解雇は会社による一方的な雇用契約の破棄であるため、よほどの事情がない限り認められません。

解雇が認められる可能性の高い正当な理由として、以下が挙げられます。

  • 能力不足
  • 協調性の欠如
  • 職務怠慢や勤務態度不良
  • 病気や怪我による就業不能
  • 無断欠勤
  • 犯罪行為
  • 会社の経営不振

契約社員やパートなどについては、正社員よりも仕事上の責任が軽いから解雇も簡単と思われがちですが、それは誤解です。
むしろ契約期間内の契約社員等は原則として解雇することはできない点で、正社員の解雇よりもさらにハードルが高くなります。
契約社員等であっても解雇する際は、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。

能力不足

従業員の能力不足については、普通解雇を選択することが一般的です。普通解雇では、従業員が雇用契約に基づく義務を果たすことができないために、会社がやむを得ず解雇するという流れになります。

ただし、多少の能力不足を原因に、即解雇という対応は、裁判では無効となる可能性が高いと考えられます。
会社には従業員を指導する義務があります。

つまり、会社は十分に指導を行ったけれども、従業員に改善の見込みがみられなかったといったプロセスが重要な判断要素となります。
会社として尽くすべき手を尽くした上で、改善がなかったということが証明できれば正当な解雇理由として認められるでしょう。

指導にあたっての指導票や指導内容の記録、状況に応じて懲戒処分を行い、改善の機会を設けているなど、十分な指導をした経緯を記録に残しておくようにしましょう。

協調性の欠如

協調性の欠如については、就業規則で普通解雇事由として定められているケースも多いでしょう。
しかし、規則に定めがあれば有効というわけではありません。
協調性の欠如についても会社が尽くすべき義務を行っていたかどうかが重要となります。

協調性の欠如によって、周囲の人間とトラブルになることも少なくありません。
社内で行われた問題言動については、都度、記録に残しておきましょう。

また、具体的な言動について、注意・指導を行い、場合よっては配置転換も検討しておくべきです。
会社が改善を促しても効果がなく、周囲の従業員や、業務全体に支障を及ぼしているようであれば、正当な解雇理由となり得るでしょう。

職務怠慢や勤務態度不良

職務怠慢や勤務態度不良も普通解雇事由とされている就業規則は多くあります。
勤務態度不良等が普通解雇の正当な理由となるには、従業員の具体的な態度等についての記録や、会社が行った指導記録などが重要となります。

従業員に改善や反省の機会を与えるためにも、繰り返し注意指導を行うことが必要です。

職務遂行の進捗や、注意指導の内容を記録するために、業務日報を導入するなども有効でしょう。

従業員の態様や職務怠慢の程度によっては、懲戒処分を行うことも検討しましょう。
普通解雇を決断する前に、会社が十分な指導を行っていたことが客観的事実として証明できれば、不当解雇と判断されるリスクを軽減することができるでしょう。

病気や怪我による就業不能

病気等による就業不能は普通解雇を選択することになります。
ただし、業務上の病気やケガの場合、治療期間とその後の30日間については、注意が必要です。
この期間は、法律上、解雇制限期間と定められているため、原則、解雇は不可能となります。

しかし、業務上ではない、私傷病による就業不能であれば、ただちに普通解雇が可能となるわけではありません。
私傷病による欠勤等の場合には、まずは休職させて復職の機会を与えることが必要とされています。

就業規則に規定されている休職制度に基づいて対応しましょう。
休職期間が満了しても私傷病から回復せず、復職できないといった場合には、普通解雇もやむを得ないとして、裁判でも認められる傾向があります。

病気等を理由とした解雇については、病気等の理由が業務上であるのか、そうでないのかを踏まえた対応が必要です。

無断欠勤

無断欠勤は社会人としてあるまじき行為ですので、懲戒解雇したいと思うのも当然です。

しかし、懲戒解雇するには、まず無断欠勤が懲戒解雇事由として規定されている必要があります。

また、懲戒処分は軽い処分から行うことが通例ですので、不当に繰り返しているなどの事情がなければ、懲戒解雇することは難しいでしょう。

普通解雇であっても、数日の無断欠勤では解雇が認められるのは難しいです。

2週間以上無断欠勤した場合に解雇が認められる裁判例が多いため、2週間以上の無断欠勤であれば正当な解雇理由になると考えてよいでしょう。

ただし、ハラスメントや精神疾患等を原因とする欠勤であれば解雇できません。
ハラスメントの調査や精神科医による診断といった別の対応が求められます
欠勤日数だけでなく、どのような理由で欠勤しているか調査することが重要です。

犯罪行為

犯罪行為が原因である場合には、懲戒解雇を検討することになります。
懲戒解雇事由としては「会社の名誉・信用を毀損したとき」などと規定されていることが多いでしょう。
しかし、逮捕されれば、懲戒解雇が有効となるわけではありません。

逮捕の事実があっても、えん罪の可能性や、不起訴となる可能性もあります。
単に逮捕だけを理由とした懲戒解雇は無効となるリスクが高いと考えられます。
実務上は、直ちに解雇するのではなく、休職扱いとした上で、有罪が確定すれば懲戒処分を決定するという対応を行うことで、解雇無効のリスク回避となるでしょう。

犯罪行為を理由とした解雇では、犯罪の性質や会社の事業への影響の程度、会社の経営方針等の事情も踏まえて、解雇の妥当性が判断されます。
犯罪行為の内容等によって、懲戒解雇もしくは、懲戒解雇よりも軽い処分を検討する必要もあるでしょう。

会社の経営不振

会社の経営不振を理由に行う人員削減は整理解雇にあたります。

社員の責任ではなく会社都合の解雇ですので、解雇要件は厳しく判断されます。

ただし、裁判では事案によって要件の重要度は総合的に判断される傾向があります。

例えば、人員整理を行う必要性は、倒産目前などひっ迫した状況まで求められるわけではなく、会社の経営計画として合理的な必要性があればよいと考えられています。
実際に会社全体として黒字でも、赤字部門の経営改善のため人員削減の必要性を認めた裁判例も存在します。

整理解雇を行うには計画的な準備が必要となりますので、検討段階から弁護士へ相談するべきでしょう。

従業員の解雇を進める上での注意点

解雇は社員にとって大きな不利益です。
そのため、解雇はトラブルに発展することが多く、納得できない社員から不当解雇として、労働審判や裁判を起こされる可能性もあります。

もし会社の解雇が不当解雇・無効と判断されると、解雇の時点にさかのぼって社員が在籍していることになるため、この期間の未払い給与(バックペイ)の支払いが必要となります。

また、解雇による精神的苦痛として慰謝料を請求される場合もあります。
金銭的負担だけでなく、裁判等でトラブルが世間に知れ渡れば、会社の社会的信用が失墜するおそれもあります。

解雇に伴うリスクは大きいです。
あくまで解雇は最終手段ととらえて、まずは社員に退職するよう依頼する退職勧奨を行うことをおすすめします。

また、不当解雇を避けるためには、弁明の機会を与えて本人の言い分を聴くことも大切です。

解雇後に必要となる労務上の手続き

解雇後に必要となる手続きとして、以下が挙げられます。

  • 離職票の発行

    解雇日から11日以内にハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出し、離職票が発行されたら、解雇した社員に送付します。

  • 社会保険の手続き

    解雇日から6日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出し、資格喪失証明書を本人に送付します。

  • 源泉徴収票の送付

    解雇日から1ヶ月以内に本人と税務署に源泉徴収票を送付します。

  • 住民税の特別徴収を止める手続き


    解雇月の翌月10日までに「給与所得者異動届出書」を本人の住所地の役所に提出します。
  • 解雇理由証明書の発行(請求された場合)

  • 解雇予告手当の支払い、最後の給与、退職金の支払い

従業員解雇の進め方については、弁護士にご相談ください

解雇には3種類ありますが、いずれも解雇権濫用を防ぐため、それぞれの要件を満たさなければ有効とは認められません。
解雇はトラブルにつながりやすく、会社の対応が不適切であれば、裁判で無効となるおそれがあります。

解雇の方法や状況に少しでも不安があれば、弁護士への相談をご検討ください。

弁護士に任せれば、解雇の有効性や適切な手続きを確認できるだけでなく、トラブル発生後の対応についてもアドバイスが受けられます。

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解雇トラブルの経験豊富な弁護士が多く所属しているため、貴社のお悩みに応じて柔軟なサポートが可能です。
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この記事の監修

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弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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