監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員
解雇予告除外認定とは、地震や火災で経営が不可能となった場合や、横領など解雇原因が社員側にある場合に、労働基準監督署の認定を受けることで、解雇予告せず即時解雇できる制度です。
会社としては解雇予告手当を支払わずに即時解雇できるため、経費削減できるというメリットがあります。
ただし、除外認定は必ず受けられるわけではなく、懲戒解雇であっても認定されない場合があります。また、認定を受けるには十分な証拠の提出が必要です。
この記事では、
- 解雇予告除外認定の基準
- 解雇予告除外認定の申請の流れ
- 解雇予告除外認定の必要書類 など
について解説します。
目次
解雇予告除外認定とは
解雇予告除外認定とは、解雇予告なしに即時解雇できる制度のことです。
例えば、社員が社内で窃盗を働いたような場合にまで、解雇予告手当が必要とされれば、会社にとって酷です。
そこで、解雇の理由が社員の悪質な行為によるものである場合や、災害などやむを得ない理由で事業が継続できなくなった場合に、労働基準監督署の認定を受けることで、解雇予告せずに即時解雇することが可能となっています。
労基署の基準で認定され、会社が定めた解雇基準とは異なります。申請しても必ず認定されるわけではありません。
解雇予告
解雇する場合、30日前までに解雇を予告する必要があります。
解雇予告手当
予告なしに即時解雇する場合は、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)の支払いが求められます。
解雇予告除外認定の基準
解雇予告手当を支払わずに社員を即時解雇したい場合は、あらかじめ労働基準監督署に申請し、解雇予告除外認定を受ける必要があります。
除外認定が受けられるのは、以下の2つのケースに限られています(労基法20条)。これらを除外事由といいます。
- 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
- 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合
以下で各事由について詳しく見ていきましょう。
天災事変などやむを得ない事由がある
「天災事変その他やむを得ない事由」とは、天災事変など突発的な出来事で、経営者として必要な対応をしてもどうにもならない状況を指します。
震災や火災による建物の倒壊・焼失などが挙げられます。
ただし、経営者の違法行為や、経営判断の誤りによる業績悪化など会社側の責任で事業の継続が不可能となった場合は、「やむを得ない事由」には当たりません。
この点について、厚生労働省の通達では、以下のとおり例示しています。
やむを得ない事由に該当するケース
・事業場が火事で焼失した(事業主の故意または重大な過失によるものは除く)
・震災により工場や事業場が倒壊した
やむを得ない事由に該当しないケース
・経営者が経済法令違反で強制収容され、または機械や資材等を没収された
・税金の滞納処分を受けて事業廃止となった
・経営上の見通しを誤って資材や資金が不足した
・取引先が休業状態となり発注がなくなったため、事業が金融難に陥った
労働者の責に帰すべき事由がある
「労働者の責に帰すべき事由」とは、解雇予告の保護を与える必要がないほど、社員が重大で悪質な行為を行った場合を指します。
厚労省は以下の例を挙げています。
- 社内で窃盗、横領、傷害等の犯罪に及んだ場合(極めて軽微な場合を除く)
- 極めて軽微な窃盗、横領、傷害等でも、会社が防止措置を講じているにもかかわらず、社員が反復して行った場合
- 社外で窃盗、横領、傷害等の犯罪に及び、著しく会社の名誉や信用を失墜させるもの、取引関係に悪影響を与えるもの、労使の信頼関係を喪失させるもの
- 賭博、風紀の乱れ等により会社の規律を乱し、他の社員に悪影響を与える場合
- 入社時の経歴詐称
- 転職した場合
- 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
- 出勤不良が継続し、数回にわたり注意されても改めない場合
社員の地位や勤続年数等をもとに判断されるため、上記以外でも認定される場合があります。
解雇予告除外認定と懲戒解雇の関係
解雇予告除外認定で特に多いのは、懲戒解雇するのに合わせて申請するケースです。
ただし、除外認定が受けられても、必ずしも懲戒解雇が有効と判断されるとは限りません。
除外認定は、労基署が解雇予告除外事由に当てはまる事情があるかどうか審査するものであり、解雇の正当性については判断しません。
過去の裁判例でも、除外認定されたものの懲戒解雇は無効との判決が出た事例や、それとは逆に、除外認定されなかったが懲戒解雇は有効と判断された事例があります。
懲戒解雇を行うにあたっては、除外認定の結果に関係なく、裁判に進んだ場合に正当な解雇と認められるかどうかという観点で検討することが重要です。
除外認定されたが懲戒解雇が無効とみなされた裁判例
事件の概要
(平成30年(ワ)第22号 大分地方裁判所 令和元年12月19日判決 一般社団法人竹田市医師会事件)
法人Yの運営する病院の院長であった医師Xが、業務上横領や医師法違反、秘密漏示、パワーハラスメントを理由に懲戒解雇されたことに納得がいかず、不当解雇として裁判を起こした事案です。
裁判所の判断
裁判所は以下を理由に、医師の行為はすべて懲戒事由に当たらないとして、懲戒解雇を無効と判断しました。
- 業務上横領
Xは病院業務に支障が出ない範囲で、他院に器具の貸し出しを行っており返却もされているから、権限内の行為である。 - 秘密漏示
災害派遣医療チームLINEに個人情報をアップしたことは不適切であったが、病院への損害の発生や業務運営の妨害を証明する証拠がない。 - 医師法違反
診療録の不記載や処方箋の事前署名等、医師法で求められている事項について、犯罪事実が明らかになった場合とはいえない。 - パワハラ
Xの看護師への叱責は、懲戒事由の「病院内で暴行・監禁・賭博など職場の秩序を乱した者等」に当たるとまではいえない。
ポイント・解説
病院の院長である医師に対する業務上横領、パワハラ等を理由とする懲戒解雇について、労働基準監督署は解雇予告除外認定を認めました。
しかし、裁判所は、Xに懲戒事由が認められない以上、懲戒解雇を無効と判断しています。解雇予告除外認定を受けたからといって、解雇の有効性が保証されるわけではない点に注意する必要があります。
懲戒事由の存在は、懲戒解雇を行った会社側に証明責任があり、裁判所を説得できる客観的な証拠がないと裁判で負けてしまいます。
会社の受けるリスクを避けるためにも、懲戒解雇を行う前に、十分に社内調査を行い、証拠をできる限り多く収集しておくことが重要です。
解雇予告除外認定の申請の流れ
解雇予告除外認定の申請の流れは、以下のとおりです。
- 労働基準監督署長へ解雇予告除外認定申請書を提出
- 労働基準監督署による調査
- 認定結果の通知
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①解雇予告除外認定申請書を提出
除外認定の申請は、労働基準監督署に対して「解雇予告除外認定申請書」を提出して行います。
申請書には、事業の種類や名称、社員名や雇入年月日といった基本情報を記載するほか、会社の考える除外事由を記入します。
また、事案の説明書や証拠書類、自認書や顛末書などの資料の添付も求められます。
申請書の提出先は、会社の事業所を管轄する労働基準監督署です。管轄の労基署によって添付書類が異なるため、あらかじめ問い合わせておくのが良いでしょう。
申請は郵送だけでなくオンラインでも可能です。申請書のダウンロードや記入例については、厚生労働省のウェブページをご参考ください。
②労働基準監督署による調査
解雇予告除外認定申請書が提出されると、労働基準監督署は除外認定するか否かの調査を開始します。提出書類の確認のほか、会社担当者と社員双方に対して聞き取り調査が行われます。
基本的に対面で行われますが、実際には電話確認だけで終わることもあります。事実確認や本人の言い分の聴取などが主な事情聴取の内容です。
社員本人への事実確認も行われるため、申請前に労基署の調査に応じるよう伝えておく必要があります。
社員が解雇事由となる行為を全面否定している場合や、会社と意見が食い違う場合は、除外認定されない可能性が高いです。
そのため、あらかじめ社員に解雇事由となる行為を認めた自認書を提出させるなど、先手を打っておく必要があります。
➂認定結果の通知
調査が終わると、労働基準監督署は除外認定をするかどうか判断を下します。除外認定が認められた場合は、会社に認定書が発行され、不認定の場合は不認定書が発行されます。
申請から結果が出るまでの期間は、調査の進行状況にもよりますが、およそ1週間から2週間程度となります。
認定結果を受けた後、実際の解雇手続きに入ります。
除外認定が下りた場合は即日解雇を行いますが、認定が受けられなかった場合は、労基法のルールどおり30日前に解雇予告するか、または解雇予告手当を支払って解雇することになります。
なお、解雇する場合はトラブル予防のため、即日解雇の場合は解雇通知書、予告解雇の場合は解雇予告通知書を発行することが必要です。
解雇予告除外認定の申請書や必要書類
解雇予告除外認定の申請は、厚生労働省が定める様式を使って行います。
この申請書には、解雇対象となる社員の情報がわかる書面や、解雇予告除外事由に当たることを証明する書面などの添付も求められます。
申請書の様式・記入例
解雇予告除外認定申請書のフォーマットは2種類あり、以下のように使い分けます。
- 天災事変その他やむを得ない事由の場合:「様式第2号」
- 労働者の責めに帰すべき事由がある場合:「様式第3号」
【様式第2号】天災事変などやむを得ない事由がある場合

【様式第3号】労働者の責に帰すべき事由がある場合

解雇予告除外認定の申請書には、事業の種類や名称、労働者の氏名といった一般的な情報を記入するほか、会社が考える除外事由を記載します。
例えば、様式3号であれば、「労働者の責に帰すべき事由」の欄に除外事由を書き入れます。この欄の記載は要旨の説明程度にとどめ、別紙として経緯書等を添付するのが一般的です。
必要書類
解雇予告除外認定の申請にあたっては、労働基準監督署に対し申請書だけでなく、解雇対象となる社員の労働者名簿や、除外事由に当たることを証明する資料などの提出が求められます。
基本的な提出書類は以下のとおりです。書類は各2部ずつ提出します。
| 天災事変などやむを得ない事由の場合 (各2部ずつ) |
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|---|---|
| 労働者の責に帰すべき事由がある場合 (各2部ずつ) |
|
解雇事由や管轄の労基署によって提出書類が異なるため、申請前に労基署にご確認ください。また、申請後に追加資料を求められることもあります。
解雇予告除外認定の事後申請は可能?
解雇予告除外認定は、原則として社員に解雇を通知する前までに受けておく必要があります。
ただし、「即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を受けた場合、その効力は会社が即時解雇の意思表示をした日に発生する」という行政通達があるため、事後申請も可能とされています。
また、事後申請が認められると、解雇予告手当の返還請求が可能となる場合もあります。
ただし、事後申請した除外認定が必ず認められるわけではありません。解雇予告手当の支払いをせずに即時解雇した場合は罰則を受ける可能性もあります。
除外認定を知らずに間違えて即時解雇したような場合は別ですが、基本的には除外認定を受けるのを待ってから解雇するべきといえます。
解雇予告除外認定なしでも解雇予告手当が不要なケース
解雇予告手当は、解雇予告日から解雇日までの期間が30日に満たない場合に支払う手当です。
そのため、30日以上前に解雇予告すれば、解雇予告手当の支払いは不要です。
また、以下の社員としての身分が安定していない者については、もともと解雇予告のルールが適用されません。解雇予告や予告手当の支払いなしに解雇することが可能です(労基法21条)。
- 日々雇い入れられる者(1ヶ月を超えて引き続き使用されている場合を除く)
- 2ヶ月以内の期間を定めて使用される者(契約期間を超えて引き続き使用されている場合を除く)
- 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者(契約期間を超えて引き続き使用されている場合を除く)
- 試用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されている場合を除く)
解雇予告除外認定の申請における注意点
解雇予告除外認定を申請するにあたっては、以下の点に注意する必要があります。
- 解雇の正当性を保証するものではない
除外認定が認められても、解雇の正当性が保証されるわけではありません。解雇無効として訴えられる可能性は残るため、解雇の有効性を慎重に検討する必要があります。 - 社員自筆の自認書などが必要
労働者の責に帰すべき事由で除外認定を受けるには、社員自筆の自認書や顛末書などの提出が必要です。即時解雇後の入手は難しいため、事情確認や解雇を言い渡す面談時に本人から署名や押印を得ておきましょう。 - 弁護士に相談する
解雇は一方的な雇用の打ち切りであるため、裁判トラブルに発展するリスクが高いです。解雇に踏み切る前に弁護士への相談をご検討ください。
解雇予告除外認定のご不明点は弁護士にご相談ください
解雇予告除外認定を受けるメリットは、即時解雇する場合に、解雇予告手当の支払いが不要となる点にあります。ただし、証拠の収集や労基署による事情聴取への対応など労力がかかり、認定のハードルも高いです。
また、認定が受けられたとしても、不当解雇を主張する社員との裁判に発展するリスクもあります。
解雇予告除外認定を検討している場合は、会社側の負担やリスクを抑えるためにも、弁護士への相談をご検討ください。
弁護士法人ALGには企業側の解雇問題に精通する弁護士が多く在籍しています。
解雇予告除外認定の申請をサポートするだけでなく、解雇の有効性や進め方などについても幅広くアドバイスを提供しております。ぜひご相談ください。
この記事の監修
弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員
- 保有資格
- 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
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