※会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません
※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

TEL.0120-686-041 お問い合わせ

ローパフォーマーとは?解雇できる?問題社員への適切な対応

    問題社員

    #ローパフォーマー

    #解雇

担当弁護士の写真

監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

ローパフォーマーとは、会社の求めるレベルの仕事ができない能力不足の社員のことです。
ローパフォーマーはどの会社にも存在し、人手不足や生産性向上が叫ばれる現在において、経営者の悩みの種になっているのではないでしょうか。

ローパフォーマーを放置すると、企業の業績や職場の士気に悪影響を与えかねません。
企業の持続的な成長のためには、ローパフォーマー対策が必要不可欠です。

この記事では、ローパフォーマーへの適切な対応方法や、解雇する場合の注意点について解説します。

ローパフォーマーとは?主な特徴

ローパフォーマーとは、企業が求める業務レベルに達していない能力不足の社員のことを指します。
仕事で成果が出せず働く意欲も乏しいため、人件費などコスト面において会社の負担となります。

また、ローパフォーマーのミスや仕事の遅れをカバーすることで他の社員も疲弊し、職場の士気を下げることもあります。
ローパフォーマーの特徴として、以下が挙げられます。

  • 同じミスを繰り返す
    反省しない、上司からの注意やアドバイスをメモしない、ミスの原因の確認や対策を取らない
  • 業務に主体性がない
    自ら進んで仕事に取り組まず指示されたことしかしない、スキルアップの意欲がない
  • 勤務態度が悪い
    遅刻や欠勤を繰り返す、私語が多い、仕事とは無関係のことをする
  • コミュニケーション能力が低い
    周囲の意見に耳を傾けない、共同作業が上手くできない
  • 指示を正しく理解しない
    指示を理解したようでも、実際は理解していない
  • 能力不足を自覚していない
    自覚がないため問題点すらわからず改善できない

ローパフォーマーはなぜ生まれるのか?

ローパフォーマーは、採用や配置、上司のマネジメント、本人の特性など、いくつかの原因が相重なることで発生します。
ローパフォーマーが生まれる原因として、以下が考えられます。

  • 採用や配置のミスマッチ
    採用時の評価を誤って能力不足や職場の価値観に合わない人物を採用したり、適性に合わない部署に配属したりすると、十分に能力を発揮できず意欲も低下し、ローパフォーマーになる可能性があります。
  • 上司のマネジメントが不適切
    指示が曖昧で適切にサポートしない、厳しく叱責するなど、上司の指導が不適切であると、業務について理解できず、能力がある場合でも上手く発揮できなくなります。
  • 本人に意欲がない
    積極的に知識やスキルを得ようとしない、まじめに仕事に取り組む姿勢がない、最低限度の仕事しかしないなど、本人の特性でローパフォーマーとなることもあります。

ローパフォーマーを放置することのリスク

ローパフォーマーがいる場合は、できる限り早くその原因を究明し、問題を解消する必要があります。

ローパフォーマーを野放しにすると、周囲の社員への負担増や優秀な社員の退職、生産性の低下など、会社に多くのリスクをもたらすからです。
以下でローパフォーマーを放置するリスクについて見ていきましょう。

周囲の従業員への負担が増える

仕事への意欲が乏しいローパフォーマーのしたミスや業務の遅れを、上司や同僚が肩代わりしなければなりません。常にフォローが求められる状況であるため、周囲の社員の業務負担が増えてしまいます。

また、「給料は変わらないのに、なぜフォローしなければならないのか」と負担が増えたことへの不満がつのり、モチベーションの低下やストレスによるメンタル不調を招く可能性があります。
さらに、「さぼっていても許される」という風潮が広がり、新たなローパフォーマーをもたらすリスクもあります。

優秀な従業員(ハイパフォーマー)の離職

業務において優れたパフォーマンスを出す人材のことを、ハイパフォーマーといいます。
ハイパフォーマーは、特にローパフォーマーのフォローをさせられることが多く、「本業に集中できない」「やりたい仕事ができない」と不満を抱く可能性があります。

また、このような社員はどこでも実力を発揮できる自信があるため、ローパフォーマーの存在で環境が悪化した職場に早々と見切りをつける可能性が高いです。
優秀な人材であるハイパフォーマーの離職は、会社として大きな労働力の損失です。ハイパフォーマーが退職すると、会社の業績悪化は免れません。

生産性の低下

生産性の低いローパフォーマーについても、雇用関係がある以上、給料を支払う必要があります。
給料に見合わない働きのローパフォーマーがいることで、人件費のコストパフォーマンスが下がり、生産性の低下につながります。

また、ローパフォーマー社員本人の生産性が低いだけではありません。
ローパフォーマーをフォローする社員も時間や労力を割く必要があり、自分の業務に集中できない状況となります。さらに、負担が増えてモチベーションも低下するでしょう。

その結果、会社全体の生産性が低下し、業績が伸び悩む可能性があります。

ハラスメントの発生

ローパフォーマーを放置することで、ハラスメント発生のリスクが高まる危険性があります。
ローパフォーマーへの周囲の不満がつのり、「どうせ出来ないし、フォローするのも面倒」として、本人に意図的に仕事を与えなくなる可能性があります。

また、周囲の社員がストレス過多となり、ローパフォーマーに対して叱責したり、冷たい態度を取ったりしてしまうこともあるでしょう。
このような対応をとると、「職場内でハラスメントを受けている」「会社がハラスメントを防止してくれなかった」として、ローパフォーマーから安全配慮義務違反を理由に訴えられるおそれがあります。

ローパフォーマーへの適切な対応

ローパフォーマーに対しては直ちに解雇するのではなく、まずは問題の原因を分析し、改善を図ることが大切です。
以下では、よく知られている業務改善プログラム(PIP)を参考に、ローパフォーマーへの対応のポイントを解説していきます。

本人に問題点を理解させる

まずは面談やアンケート、社内調査などを実施し、ローパフォーマーの低パフォーマンスの原因を明らかにしましょう。その上で、本人に現状の問題点や改善の必要性を伝えて、理解してもらうことが重要です。

周囲は本人の成績不振やミスの多さに苦労しているものの、本人が問題に気付いていないというケースは多いです。このような場合は、まず本人に改善が必要であることを明確に示すことが、問題解決のスタートとなります。

いきなり解雇すると、改善のチャンスを与えていないとして、不当解雇となる可能性が高いためご注意ください。

達成すべき目標を明確に定める

ローパフォーマーは、自分が何をすべきかわからず、成果を出せていない可能性もあります。
本人と面談し、会社としてどの程度の業務レベルを求めていて、何を改善するべきなのか、達成すべき目標を明確に定めることが必要です。

例えば、報連相ができない社員については、「取引先と打ち合わせをした際は当日中にメールで上司に報告する」など適切でわかりやすい目標を定めます。また、目標の達成に向けて周囲が親身にサポートすることも重要です。

目標の設定方法としては、SMART法則の利用がおすすめです。
Specific(具体的)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能な)・Relevant(上位目標と関連性のある)・Time-bound(明確な期限)の5項目を満たした目標設定が成功に結びつくとされています。

研修等でスキルアップの機会を設ける

本人の知識や能力不足が原因でローパフォーマーになっている場合には、研修等でスキルアップの機会を設けることで改善が期待できます。
例えば、社内研修や外部に委託した研修、上司によるOJTやEラーニングなどの実施が挙げられます。

研修を受けさせる場合は、あらかじめに本人と話し合い、本人の能力や課題に合ったスキルアップの機会を提供してあげることが大切です。また、研修においては本人の悪い面ではなく良い面も確認し伸ばすことを意識させましょう。
自分の強みを再確認することで、ローパフォーマーの自信や勤労意欲の向上につながります。

面談等で定期的なコミュニケーションをとる

本人と定期的に面談しコミュニケーションをとることも大切です。
設定した目標の進捗状況や、問題や悩みがないかを確認し、社員の気持ちに寄り添ったサポートを行いましょう。問題点が改善されない場合は、どう改善すべきか指導することも必要です。

問題行動が改善されたらその時々に褒めて、正しい行動が習慣づけられるよう促すのが望ましいでしょう。

ローパフォーマーの中には、会社が自分に対して期待していないと思い込み、モチベーションが低下していることもあります。会社や上司が気にかけていることをアピールするためにも、コミュニケーションの機会を増やすことが重要です。

採用活動を見直す

採用活動の見直しも必要です。採用のミスマッチはローパフォーマーが生まれる原因となります。
職場の価値観や働き方と合わなかったり、担当する業務への適性やスキルが不足していたりすると、ローパフォーマーになる可能性が高まります。

まずは現場の声を聴き取ったうえで、採用の要件や基準を見直しましょう。
採用活動の段階で求める人物像や能力の基準を見直し、ローパフォーマーになり得る労働者の採用を減らすことが大切です。
また、採用の要件や基準の見直しだけでなく、どこで判断を間違えたのか、採用のプロセスを振り返って検討することも必要です。

ローパフォーマーの問題社員を解雇できる?

ローパフォーマーだからといって、簡単に解雇できるわけではありません。
日本では職務怠慢や業務命令違反などを起こす問題社員であっても、解雇することは法律で厳しく制限されています。
いわゆる解雇権濫用法理といわれるもので、解雇するためには、客観的合理的な理由と社会通念上の相当性が認められる必要があります(労契法16条)。

具体的には、解雇にふさわしいほど重大なローパフォーマーで、再三指導や教育、配置転換、懲戒など必要な措置を講じても、いっこうに改善されない状況が求められます。
単に仕事ができないという理由だけで解雇すると、不当解雇と判断される可能性があります。これが法律と世間一般の感覚との間のギャップが起こりやすい部分であるためご注意ください。

能力不足を理由に解雇する方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

さらに詳しく能力不足や適格性の欠如を理由にモンスター社員を辞めさせることはできる?

ローパフォーマーを解雇する場合の注意点

再三指導しても改善の余地がなく、やむを得ずローパフォーマーの解雇を検討する場合は、以下の点に注意することが必要です。

  • 指導しても改善されなかったことを証拠で残しておく
  • 部署異動や職種の変更を検討する
  • 解雇の前に退職勧奨を行う

指導しても改善されなかったことを証拠で残しておく

ローパフォーマーを解雇する場合は、十分な指導やサポートを行った上で、それでも改善されなかった事実を証拠で残しておくことが必要です。

例えば、指導書や業務改善プラン、本人が記載した業務日報、指導担当者が作成した指導記録票、面談の議事録、能力・成果・態度の評価を数値化したデータなどが挙げられます。
記録には日時や指導内容、社員の反応や改善状況を記入すると良いでしょう。

指導しても改善されなかったことを証拠で残しておくべき理由は、社員から不当解雇として裁判や労働審判を起こされた場合に、解雇が正当であることを証明する証拠として役立つ可能性があるからです。

部署異動や職種の変更を検討する

業務と本人の能力や性格がマッチしていないことが原因で、ローパフォーマーになっている可能性もあります。そのため、可能であれば解雇する前に配置転換を検討することも大切です。

ローパフォーマーのスキルや経験を洗い出し、他に能力を発揮できそうな職場がないか検討します。
適性に合う部署への異動や職種変更など、自身の強みを発揮できる環境を与えることで、パフォーマンスが向上することが期待されます。

配置転換ができるのに実施していない場合は、解雇回避努力を尽くしていないとして不当解雇と判断される可能性が高いです。その余地があるなら必ず検討しましょう。

解雇の前に退職勧奨を行う

指導を尽くしても、ローパフォーマーに改善が見られない場合は、解雇する前に退職勧奨を行うことをおすすめします。
退職勧奨とは、会社が社員に退職をすすめる行為です。退職するかどうかは社員側で自由に判断することができます。

裁判などで不当解雇と判断されると、高額の金銭の支払いを命じられ、支払額が1000万円を超えるケースも少なくありません。解雇はあくまで最終手段と考えて、まずは退職勧奨により本人の意思で辞めてもらうことを目指すべきでしょう。

ただし、退職勧奨は無制限に認められるわけでありません。長時間かつ多数回にわたる退職勧奨や、退職を強要するような言動は、違法な退職強要となる可能性があるためご注意ください。

退職強要となる行為について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

さらに詳しく退職強要とは?退職勧奨が違法となるケースや適法に進めるための注意点

ローパフォーマーの解雇に関する判例

事件の概要

(平成31年(ワ)第30002号 大阪地方裁判所 令和2年9月10日判決)

訪問介護サービス会社Yが、訪問介護を担当する40代の女性職員Xを、能力不足を理由に解雇したところ、不当解雇として裁判を起こされた事案です。
Xは介護の現場で度々ミスを繰り返し、利用者からも何回かクレームを受けており、さらに排泄処理や更衣の手際が悪かったため、4回にわたり看護師に介護現場に同行してもらい指導を受けていたという事情がありました。

裁判所の判断

裁判所は以下を理由に、本件の解雇を無効と判断しました。

  • Xは訪問介護の実務経験が1年半しかなく、生活援助がメインで介護経験が乏しかったためか複数回のミスを行っているが、証拠によっても注意指導を受けても同じミスを繰り返したなどの事情は見当たらず、いまだ指導しても改善が見られないとまではいえない。
  • Xは訪問介護士の有資格者であるが、Xの能力不足は試用期間中に判明していたのに本採用された事実を踏まえると、Xが即戦力として高い介護技術を持つことを前提に採用されたとは認められない。

ポイント・解説

裁判所は、女性職員がミスを繰り返し、利用者からクレームも受けていたことを認めたうえで、注意指導を受けても同じミスを繰り返したなどの事情が見当たらないとして、解雇は無効と結論付けています。
さらに、女性職員を「特定の専門能力を買われて即戦力として中途採用された社員」とは認めず、会社として十分な指導をする必要があったと判断しています。

ローパフォーマーに対して一定の指導を行ったとしても、さらに指導すれば改善の見込みがあると裁判所に判断されれば、不当解雇と判断されるため注意が必要です。
また、未経験者ほどの指導が必要とされない経験者と認められるケースは多くありません。どの程度の改善指導が求められるかはケースごとに異なります。判断できない場合は弁護士にご相談ください。

ローパフォーマーへの対応については弁護士にご相談ください

ローパフォーマーへの対応は法律のルールに従い正しく行う必要があります。
適切に対応しないと、パワハラや退職強要、不当解雇などのトラブルにつながりかねません。
また、ローパフォーマーの発生は会社側にも責任がある可能性があり、労務管理の見直しが求められることもあります。

ローパフォーマーに対しては自己流で対応せず、労働法務に強い弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、採用前から実際の解雇の場面まで、ローパフォーマーへの最適な対応方法をご提案することが可能です。

ローパフォーマーへの対応や指導についてお悩みの場合は、弁護士にご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

プロフィールを見る

企業の様々な労務問題 弁護士へお任せください

企業側労務に関するご相談 初回1時間 来所・ zoom相談無料

会社・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受付けておりません

※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。


受付時間平日 09:00~19:00 / 土日祝 09:00~18:00
  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
初回1時間 来所・zoom相談無料
TEL.0120-686-041

※会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません。
※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。