※会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません
※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

TEL.0120-686-041 お問い合わせ

労働委員会からの救済命令を無視すると罰則がある?不服がある場合の対応

    労働組合

    #救済命令

担当弁護士の写真

監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

「団体交渉を正当な理由なく拒否した」「労働組合の脱退を働きかけた」など会社が不当労働行為を行うと、労働者や労働組合が労働委員会に救済申立てを行う可能性があります。
不当労働行為と認定されると、会社に対し問題を解消するよう救済命令が出されます。

労働委員会の救済命令を無視すると罰則を受ける可能性があるため、適切な対応が求められます。
そこで、この記事では、救済命令を無視した場合の罰則や救済命令の種類、納得がいかない場合の対応方法について解説していきます。

労働委員会からの救済命令を無視したらどうなる?

救済命令とは、労働委員会が不誠実な団交など不当労働行為の事実を認めた場合に、会社に問題を解消するよう発する命令です。

救済命令は交付日から効力を生じ、会社は命令書の交付を受けた日から速やかに救済命令を履行する義務を負います(労組法27条の12ほか)。
つまり、救済命令が確定しない段階でも、会社は救済命令に従わなければなりません。

ただし、救済命令は行政処分であるため、裁判所の判決とは違って私法上の効力はありません。
例えば、不当解雇として職場復帰させるよう救済命令が出されても、解雇が無効と認定されたわけではありません。会社が解雇を撤回し職場復帰させるよう促しているにすぎません。

もっとも、救済命令が確定した後に命令を無視すると、次のとおり罰則の対象となります。

救済命令を無視した場合の罰則

救済命令が確定した後に救済命令を無視すると、以下のとおり罰則が科される可能性があるため注意が必要です。

  • 会社が労働委員会への再審査請求や裁判所への取消訴訟を提起せず、救済命令が確定したにもかかわらず命令に従わない場合は、50万円以下の過料に処せられます(労組法32条)。
  • 取消訴訟が提起されて、裁判所の確定判決で救済命令が支持されたにもかかわらず違反した場合は、1年以下の禁錮または100万円以下の罰金が科され、またはこれらが併科されます(労組法28条)。

救済命令を無視した場合に受けるペナルティは大きいため、救済命令が確定した場合は、会社として直ちに従うべきです。

不当労働行為の救済命令の種類

まず労働委員会は、労働者や労働組合からの救済申立てに基づいて審査を行います。
会社の行為が不当労働行為と判断されると、会社側に問題を解消する内容の救済命令が出されます。
不当労働行為の救済命令の種類として、以下が挙げられます。

  • 不利益取扱に対する救済命令
  • 団交拒否に対する救済命令
  • 支配介入に対する救済命令
  • 条件付救済命令

不利益取扱に対する救済命令

不利益取扱いとは、労働組合員であることや組合活動を行ったことを理由に、労働者に対して不利益な取り扱いをすることです。

不利益な取扱いの例として、解雇や降格、賃金差別、遠隔地への転勤などが挙げられます。
会社側が不利益取扱いを行ったと認定された場合は、労働委員会から是正するよう救済命令が出されます。

不利益取扱いに対する救済命令の例として、以下が挙げられます。

  • 解雇を撤回し職場復帰させる命令
  • 配置転換や出向、降格を撤回し、原職に戻す命令
  • 昇給差別の場合、会社に再査定を命じ差額を支払う命令、又は労働委員会自ら決定した賃金額を支払う命令
  • 組合員と非組合員との考課点の平均との差額を支払う命令
  • 解雇期間中の賃金相当額(バックペイ)を支払う命令

団交拒否に対する救済命令

会社が正当な理由なく団体交渉を拒否したり、交渉のテーブルに着くものの団体交渉に誠実に応じなかったりすることは、団体交渉拒否として不当労働行為に該当します。

組合側が暴力や威嚇行為をした場合や、団体交渉が平行線を辿り進展の見込みがない場合、労働審判や裁判で決着済みの場合、任意的団交事項である場合など、正当な理由がない限り、団体交渉は拒否できません。

団体交渉拒否の不当労働行為と判断された場合は、会社が主張する理由で団体交渉を拒むことはできないとの命令や、労働組合が要求する事項について誠実に交渉せよという命令が下されます。

支配介入に対する救済命令

支配介入とは、労働組合の活動を妨害したり、干渉したりすることをいいます。

不利益な扱いを示唆して組合を会社の言いなりにする、組合員であるか否かのアンケート調査、組合からの脱退の働きかけ、組合の中心人物の解雇・配転などの行為が代表例です。

これらの行為は労働組合の自主性や団結力を損なうおそれがあるため禁止されています。
支配介入と判断された場合は、会社に対し具体的な行為を禁止する命令が発令されます。

さらに、不当労働行為をしたことを認めたり、今後同様の行為を行わないとの意を述べた陳謝文を職場内に掲示したり、又は労働組合に対して書面を発行したりするよう命じられることもあります。
このような文書提示の命令を、ポストノーティス命令といいます。

条件付救済命令

会社側に不当労働行為が認められる場合でも、労働者や労働組合にも度を超えた行為があった場合は、その行為の停止や労働者側の謝罪を条件に救済命令が発令されることがあります。
これを条件付救済命令といいます。

条件付救済命令については、労働組合の権利を保障するという不当労働行為の趣旨に背くという意見もあります。
しかし、会社の責任だけでなく、労働者の責任も追及することで会社と労働者の公平を図る解決策として認めるのが通常です(東京高等裁判所 昭和53年4月27日判決参照)。

救済命令に不服がある場合の対応方法

労働委員会から救済命令が出された場合に、会社として納得できるのであれば、命令に従って改善措置を講じる必要があります。

一方、救済命令に対して不服がある場合は、会社側は命令の取り消しを求めて、中央労働委員会に再審査を請求したり、地方裁判所に取消訴訟を提起したりすることができます。

再審査請求は審査し直すという性格が強いのに対し、取消訴訟では労働委員会の命令が権利を濫用した違法なものであるかどうかが判断事項となるのが特徴です。

①再審査請求

都道府県労働委員会の救済命令に対して納得がいかない場合、会社はその命令取り消しを求めて、中央労働委員会に対し再審査を求めることができます。

ただし、再審査申立ては、都道府県労働委員会から命令書が届いた日の翌日から15日以内に行う必要があります。

②救済命令等の取消訴訟

都道府県労働委員会または中央労働委員会の救済命令に対して不服があるときは、地方裁判所に対して取消訴訟を提起することができます。

会社が取消訴訟を起こすときは、不服のある命令が交付された日から30日以内に提起する必要があります。
一方、労働組合側は命令が出されたことを知った日から6ヶ月以内とされています。
ただし、取消訴訟を提起しても、救済命令の効力は停止されません。

取消訴訟を提起するときは、再審査請求を同時に申し立てられないため、会社は再審査請求と取消訴訟どちらかを選択する必要があります。

団体交渉や救済命令の対応についてご不明等あれば弁護士にご相談下さい。

労働組合からの救済申立てに適切に対応しなかったり、救済命令を無視したりすると、罰則が科されて会社の社会的信用が失墜するおそれがあります。そのため真摯な対応が必要です。

もっとも、救済申立てや救済命令への対応は、裁判や労働審判とは異なる面があり専門知識が求められます。会社側の準備にかかる負担は大きいため、救済申立てや救済命令が出された時は、専門家である弁護士への相談をご検討ください。

弁護士法人ALGには企業側の労働問題を得意とする弁護士が多く在籍しています。
救済申立てを受けた際の答弁書の作成や審問への代理人としての出席、救済命令に対する再審査請求や裁判所への行政訴訟の提起まで全面的にサポート可能ですので、ぜひご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

プロフィールを見る

企業の様々な労務問題 弁護士へお任せください

企業側労務に関するご相談 初回1時間 来所・ zoom相談無料

会社・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受付けておりません

※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。


受付時間平日 09:00~19:00 / 土日祝 09:00~18:00
  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
初回1時間 来所・zoom相談無料
TEL.0120-686-041

※会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません。
※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。