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技能実習生をクビにすることはできる?解雇時の手続きや注意点など

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

発展途上国への国際貢献や人手不足のカバーを目的に、外国人技能実習生や特定技能外国人を受け入れる会社は増えています。

ただし、採用した技能実習生らが必ずしも優秀とは限りません。
素行不良や無断欠勤、仕事をさぼるなどの理由で、やむを得ず技能実習生らの解雇を検討する企業もあるかと思います。

技能実習生らにも日本の労働法が適用されるため、解雇する際は日本人同様の注意が求められます。

この記事では、外国人技能実習生や特定技能外国人を解雇する方法や注意点について解説していきます。

技能実習生をクビにすることはできる?

外国人技能実習生や特定技能外国人をクビにすることは可能です。

ただし、技能実習生らの解雇も基本的に日本人と同じ視点で判断しなければなりません。
外国人であることだけを理由に解雇することは、不当な差別として禁止されています(労基法3条)。

さらに、解雇の難易度は有期雇用か無期雇用かで変わってきます。

無期雇用の解雇は、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます(労契法16条)。

これに対し、有期雇用の解雇は、無期雇用の解雇よりも一般的に難しく、やむを得ない事情がなければ認められません(労契法17条)。
これは、法律が「契約した期間内は働ける」という労働者の雇用継続への期待を保護しているためです。

技能実習生や特定技能外国人は有期雇用が一般的

技能実習生や特定技能外国人は、在留期間に限りがあるため、有期雇用契約を結ぶケースが多いです。

労働基準法は、有期雇用の上限を原則3年と定めているため、技能実習生等の雇用期間についても、3年を上限に定めることが一般的です。

有期雇用の技能実習生等については、契約期間を待たずに解雇せざるを得ない特別な事情がない限り、期間途中に解雇できません。
例えば、横領など犯罪を行った場合や、病気やケガによる長期休業で就業できる見通しがないこと、重大な経歴詐称、服務規律に違反する行為等が挙げられます。
他方、能力不足や協調性の欠如といった理由は、やむを得ない事情と評価されない可能性が高いです。

妊娠や出産等を理由とする解雇はできない

妊娠や出産などを理由に解雇することは、日本人、外国人にかかわらず禁止されています(均等法9条3項)。そのため、妊娠や出産などにより、技能実習生らが業務に従事できなくなったとしても、解雇は認められません。

技能実習生らから妊娠を報告された場合は、実習は一時中断する必要があるものの、出産後に業務を再開できることや、妊娠出産の支援制度について説明しましょう。
日本で出産するか帰国して出産するかにかかわらず、産休や育休を取得でき、出産一時金を受け取ることができます。
本人の希望を踏まえて必要な対応をとることが必要です。

また、実習を一時的に中断した後、再開の見通しが立てば、実習の継続に向けてサポートすることも求められます。

技能実習生を解雇する際の手続き

解雇予告または解雇予告手当の支払い

日本人、外国人にかかわらず、解雇する場合は以下のように解雇予告や解雇予告手当の支払いが必要です。

  • 30日前までに解雇予告するか、予告なく解雇する場合は30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
  • 日数分の解雇予告手当を支払えば、その分だけ解雇予告期間を短縮できます。
    例えば、20日分の解雇予告手当を支払えば、解雇日の10日前の予告が認められます。
  • 職場内での犯罪や重大な経歴詐称など懲戒解雇にあたるような事由で解雇する場合に、労働基準監督署長の許可を受ければ、解雇予告、予告手当の支払いは不要となります。

地方入国管理局への報告

技能実習の継続が不可能となった場合は、速やかに技能実習の継続ができなくなった事実とその対応策を地方入国管理局に報告しなければなりません。
報告しないでいると、技能実習生の受け入れが一定期間認められなくなるため注意が必要です。

また、受け入れ先の倒産など技能実習生に非がない理由で解雇する場合に、本人が技能実習の継続を希望しているならば、その点も地方入国管理局に申し出なければなりません。
その上で、財団法人国際研修協力機構(JITCO)など関係機関にも連絡し、協力・指導を仰ぐなどして、新たな受け入れ先を探す必要があります。
技能実習生については、当初の技能実習計画を全うして帰国できるよう、会社側の最善の努力が求められます。

特定技能外国人の受け入れ困難届と終了届

特定技能とは、人材不足が深刻な産業分野において、一定の技能をもつ外国人が日本で労働することを認める制度です。
経営上の都合や本人の死亡・病気・ケガ、帰国、重責解雇等により、特定技能で働く外国人の受け入れが困難となった場合は、14日以内に「受け入れ困難に係る届出書」と「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」を地方出入国管理局に届け出ることが必要です。

実際に解雇した場合は、解雇日から14日以内に「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」を地方出入国管理局に届け出ます。
さらに、会社の経営破綻など本人に責任がない理由で解雇する場合に、本人が勤務の継続を希望するならば、ハローワークや職業紹介会社に案内するなど転職をサポートする必要があります。

ハローワークへの外国人雇用状況届の提出

技能実習生や特定技能外国人が退職した場合は、会社は翌月末までに「外国人雇用状況届」をハローワークに提出する必要があります。
届け書には、当該外国人の氏名や在留資格、在留期間などを記入します。

ハローワークでは、この届出を踏まえて、外国人の雇用環境の改善に向けて、会社側にアドバイスや指導、退職した外国人への再就職支援を行うことになっています。

その他解雇後の手続き

その他解雇後の手続として、以下が挙げられます。日本人と同じです。

  • 雇用保険
    解雇日から11日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークに提出し、離職票が発行されたら、解雇した社員に送付します。
  • 社会保険
    解雇日から6日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出し、資格喪失証明書を本人に送付します。
  • 源泉徴収票の発行
    解雇日から1ヶ月以内に本人と税務署に源泉徴収票を送付します。
  • 特別徴収を止める手続き
    住民税の特別徴収を行っている場合は、解雇月の翌月10日までに「給与所得者異動届出書」を本人の住所地の役所に提出します。
  • 解雇理由証明書の発行
    本人から請求されたら発行します。

技能実習生を不当解雇した場合のペナルティはある?

正しい方法で解雇すれば、会社がペナルティを受けることはありません。 ただし、不当な理由による解雇や、次の受け入れ先を探さずに行う解雇、解雇予告をしないなど労基法に違反する解雇については、不当解雇として次のペナルティを受ける可能性があります。

  • 労基法に違反する解雇は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となる
  • 復職やバックペイ、慰謝料などの支払いが命じられる
  • 技能実習生受け入れ先の認定が取り消され、5年間は技能実習生の受け入れができなくなる

受け入れ先の認定が取り消されると、本人だけでなく在籍している全ての技能実習生が働くことができなくなります。
行政指導が入ることで企業イメージの悪化も免れないため、不当解雇はできる限り回避すべきです。

不当解雇にあたるケースについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

さらに詳しく不当解雇と判断されたらどうなる?

技能実習生の解雇でトラブルになった判例

【平成24年(ワ)第6号 富山地方裁判所 平成25年7月17日判決 フルタフーズ・食品循環協同組合事件】

(事案の内容)

富山県の水産加工会社で、技能実習生として働いていた中国人女性が妊娠したところ、受け入れ団体から帰国を迫られ、安静が必要な時期にもかかわらず強制的に空港に連行され、この翌日に流産してしまいました。

この点について、女性が会社の実名を挙げて抗議の記者会見を開いたところ、会社の社会的信用が低下したとして、会社側は女性を普通解雇しました。
これを不服とした女性が、会社と受け入れ団体に解雇無効と損害賠償を求めた事案です。

(裁判所の判断)

裁判所は、以下を理由に本件解雇を無効と判断し、会社と受け入れ団体に対し、毎月約11万円のバックペイと、約363万円の賠償金の支払いを命じました。

  • 受け入れ団体が中国の送り出し機関と女性が交わした妊娠禁止規定をもとに、妊娠を理由に即時帰国を求めたことは、公序良俗や技能実習制度の趣旨、男女雇用機会均等法9条3項に違反し、強制帰国と流産との因果関係も認められる。
  • 実際に会社は帰国を求めていないが、会社は技能実習に関する対応を受け入れ団体に一任し、女性は受け入れ団体と交渉を進めていたため、受け入れ団体の対応を会社の対応と信じるのは無理もない。
  • 女性が記者会見を行った目的は、技能実習生への不適切な取扱いの実態を世間に広く知らしめて、強制帰国させられそうになっている自分の原状を打破することにあったと推認され、その主な動機は公益を図る目的にあったといえる。

(裁判例のポイント)

妊娠・出産を理由とする強制帰国や解雇は法律で禁止されているため、当然の判決結果といえます。

日本人と同じく、技能実習生も産休や育休の利用、出産育児一時金の受取りなどが可能であり、出産で一時帰国したとしても、日本に戻って技能実習を再開することもできます。

しかし、これらの制度の存在を知らない技能実習生が多いのが現状です。実際に強制帰国をおそれて、実習生が堕胎し遺棄したという痛ましい事件も発生しています。

受け入れ企業は、技能実習生の権利や適用制度を理解し、講習等で妊娠・出産を理由とする解雇がないことや、妊娠出産の支援制度について周知することが大切です。

トラブル防止のためには就業規則に記載しておくことが重要

これから外国人技能実習生を受け入れる企業は、就業規則に退職に関する規定を設けておく必要があります。

例えば、技能実習生が突然失踪し、連絡が一切とれなくなるケースも想定されます。
このような場合に、会社都合で解雇すると、技能実習計画の認定が取り消され、今在籍する他の実習生も働けなくなってしまいます。
あらかじめ就業規則に「行方不明となり就労の意思が確認できない状況が1ヶ月経過した場合は、当然退職とする」などと定めておけば、実習計画の認定が取り消されることなく退職の効果が発生します。
技能実習生向けの退職規定がない場合は、速やかに整備することをおすすめします。

技能実習生の解雇について不安なことがあれば企業労務に強い弁護士にご相談ください

技能実習生を解雇するには、日本人と同じ解雇手続きが求められるだけでなく、地方入国管理局への届出など外国人特有の手続きも必要となるため複雑です。

不当に解雇してしまうと、技能実習計画の認定取り消しや、バックペイの支払いなど会社が受ける損失は大きいため、解雇は慎重に検討する必要があります。

不当解雇のリスクを避けるためにも、技能実習生の解雇を検討している場合は弁護士にご相談ください。

弁護士法人ALGには会社側の労働問題に精通する弁護士が多く所属しており、技能実習生の解雇の進め方について、専門的な観点からアドバイス可能です。
技能実習生の解雇について不安なことがあれば、ぜひ私たちにご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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