いじめを許さない

いじめを理由に転校できる?学校や加害者への責任追及などを解説

いじめを理由に転校できる?学校や加害者への責任追及などを解説

監修
監修弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

子供が学校でいじめの被害を受けている場合、子供が望んでいるのなら転校することもひとつの選択です。

しかしながら、いじめの被害を受けた子供だけが転校を余儀なくされ、加害者は変わりなく学校に通う状況は、被害者やその保護者の怒りや苦しみは計り知れないものとなるでしょう。

こうした場合には、学校側や加害者側に損害賠償を請求し、責任を追及できる場合があります。

この記事では、いじめによる転校のメリットやデメリット、誰に責任を追及できるかなどについて詳しく解説していきます。ぜひご参考ください。

いじめを理由に転校することはできる?

いじめを理由とする転校は、学校や教育委員会に要請することで認められる可能性があります。

通常、公立の小学校や中学校など義務教育課程にある学校に通う場合は、住民票を置いている市区町村が指定する学校に通う必要があります(学校教育法施行令第5条第2項)。

しかし、市区町村の教育委員会が「転校することが相当」と認める場合は、保護者が申し立てることで、指定された学校以外の学校への転校が認められるケースがあります(同令第8条)。

市区町村によって転校許可の基準は違いますが、多くの市区町村では指定校以外の学校へ就学することによって、いじめやいじめによる不登校の問題解決が見込まれる場合には、転校を認めています。

いじめによる転校のメリット

いじめを理由に転校するメリットには、以下のようなものがあります。

新しい環境で学校生活を再スタートできる

転校する最大のメリットは、いじめられている状況や加害者等から逃れて、子供の精神的負担を軽減できることです。

いじめは被害者に深刻な心的外傷を与えることにもなるため、新しい環境で学校生活を再スタートできれば精神的な回復につながるでしょう。

新たな出会いや学びが生まれる

転校することで新たな出会いがあるため、自分と相性の良い新しい友人に出会える可能性が高くなります。

違う環境に飛び込むことで、新たな学びが得られるだけでなく、前向きな心を育むきっかけが生まれるでしょう。

ただし、転校をするかどうかは子供の意向を聞き、尊重することが大切です。

子供が転校を望んでいないのに、無理に進めてしまうと余計に精神的負担がかかってしまう場合もあります。

まずは子供の意見を聞き、寄り添いながら今後の対応を考えていくことが大切です。

いじめによる転校のデメリット

一方、転校には以下のようなデメリットもありますので、よく検討することが重要です。

適応に時間がかかる

転校して新しい学校生活に適応するには、どうしてもある程度の時間が必要です。

また、いじめが原因で転校するため、新たな環境で友人を作ることに不安を感じることも少なくありません。

学習の遅れ

新しい学校のカリキュラムや教育方針によって、転校先の学校で学習が遅れる可能性があります。

転校先の授業についていけないこともあるため、適切なサポートを受けながら学習に取り組む必要があります。

ストレスの増加

転校して新しい環境に慣れることが、かえってストレスになることもあるでしょう。
転校する過程で精神的な負担があることは理解しておく必要があります。

例えば、現在の学校に仲の良い友達がいたり、学校側がいじめ問題に対して適切に対応してくれている場合には、転校しないこともひとつの選択肢です。

いじめと向き合うことは、時間も労力もかかり精神的負担となりますが、いじめを解決したことが子供の自信つながることもあります。

あらゆる角度から最善の方法を考え、「転校するべきかどうか」を検討してみましょう。

学校のいじめによる転校手続き

いじめによる転校の方法には、主に以下の2つの方法があります。

学区外に引越しをして転校する

まずは引越しをして学区外の学校へ転校する方法です。
基本的に公立の学校では、子供の住民票の住所を基にして学区内の学校への入学を許可しています。

そのため、学区外に引越して子供の住民票を移すことで、学区外の学校へ転校できます。

学校と交渉して転校する

次に、引越しをせずに同じ学区内で転校する方法です。

  1. 学校長にいじめが原因で転校したい旨を伝える
  2. 学校長が教育委員会に連絡をする
  3. 教育委員会から学校長に連絡がいき、学校長が転校についての意見書を提出する
  4. 教育委員会が意見書を基に会議を行い、いじめによる転校を許可するか否かの決定をする

現在は文部科学省でもいじめを理由とする転校を認めているため、ほとんどの場合は上記の手順で転校ができるでしょう。

いじめによる転校は「いじめ重大事態」に当たる可能性がある

いじめによる転校があった場合、いじめ防止対策推進法に定義されるいじめ重大事態に該当する場合があります。

いじめ重大事態の発生が疑われる場合、学校側には以下の対応が義務付けられています(いじめ防止対策推進法第28条~32条)。

  • いじめ重大事態の調査の開始
  • 被害児童・生徒および保護者への報告
  • いじめへの対処
  • 再発防止措置
  • 文部科学省への報告

いじめ防止対策推進法については、以下のページで詳しく解説しています。ご参考ください。

さらに詳しくいじめ防止対策推進法とは?被害者を守る法律と弁護士ができること

いじめ重大事態の定義

いじめのうち深刻なものをいじめ重大事態といい、いじめ防止対策推進法第28条第1項では、次のように定義しています。

いじめ防止対策推進法第28条第1項

  1. いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めたとき。
  2. いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。

例えば、以下のようなケースがいじめ重大事態に該当します。

  • 児童等が自殺を図った場合(軽傷で済んだ場合も含む)
  • 児童等が心身に重大な被害を負った場合
  • 児童等の金品等に重大な被害が生じた場合
  • いじめによって転校を余儀なくされた場合

いじめ重大事態が問題となり転校を余儀なくされた事例

いじめ重大事態が問題となり、転校を余儀なくされた事例をご紹介します。

事案の概要

2018年から2020年にかけて、仙台市の私立学校に通う児童が複数の同級生からいじめを受け、転校を余儀なくされた事案です。

保護者の対応

保護者によると、児童は2年間継続的にいじめを受け、打撲したり視力に支障をきたすなどの被害があり、複数回の自傷行為も認められたため、「いじめ重大事態」として学校側に調査や報告を複数回求めていました。

学校の対応

学校は、保護者からいじめの報告・通報があったにも関わらず対応を怠っていました。

児童は転校を余儀なくされましたが、のちに学校側の不適切な対応が発覚したため、学校側がいじめ重大事態に当たることを認め、第三者委員会を設置して調査を開始しました。

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いじめの加害者を転校させることは可能?

現在の法律では、いじめの加害者等を強制的に転校させることはできません。

また、公立の小学校・中学校では、退学処分自体が認められていません。私立学校や高等学校であれば、退学処分が行われることもあります。

しかし、その判断は学校側に委ねられ、加害者等とのトラブルを危惧して、学校側が退学処分を控えるケースもあるでしょう。

いじめの被害を受けた被害者が「学校に行くのが怖い」と精神的ストレスを抱え、転校を余儀なくされる一方で、加害者等がこれまでどおりに学校生活を送る状況は、被害者にとって辛く、苦しいこととなるでしょう。

いじめについて、加害者側の責任を追及するためには、損害賠償請求刑事告訴を検討しましょう。

いじめで転校を余儀なくされた場合は誰に責任を追及できる?

いじめによって転校を余儀なくされた場合は、次のような相手に責任を追及できる可能性があります。

  • 学校側
  • 教職員
  • 加害者やその保護者

では、どのように責任を問えるのか、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

学校側の責任を追及する

学校側に責任の追及をする場合、国立学校・公立学校と私立学校で以下のように異なります。

国立学校・公立学校の場合

国立学校・公立学校で発生したいじめについて、学校としての安全配慮義務違反や教職員の監督義務違反などの過失が認められる場合には、学校の設置者は被害児童・生徒に対して、国家賠償責任に基づく損害賠償義務を負います(国家賠償法第1条第1項)。

私立学校の場合

私立学校で発生したいじめについては、学校としての安全配慮義務違反や教職員の監督義務違反などの過失が認められる場合には、学校の設置者は被害児童・生徒に対して、損害賠償義務を負います(民法第415条、民法715条第1項)。

教職員の責任を追及する

教職員の責任追及については、国立学校・公立学校と私立学校で以下のように異なります。

国立学校・公立学校の場合

国立学校・公立学校で発生したいじめについて、教職員は基本的に個人責任を負いません。

ただし、教職員に故意または重大な過失があった場合には、国または地方公共団体がその教職員に対して求償権を有します(国家賠償法第1条第2項)。

私立学校の場合

私立学校で発生したいじめについて、教職員の監督義務違反などの過失が認められる場合には、教職員は児童・生徒に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。

教師によるいじめについては、以下のページで詳しく解説しています。ご参考ください。

さらに詳しく教師によるいじめの対処法は?事例や5つの方法を弁護士が解説

加害者やその保護者の責任を追及する

いじめは、民法上の不法行為(民法第709条)に該当する可能性があるため、加害者側に損害賠償を請求できる場合があります。

ただし、加害者本人に責任能力があるかどうかによって請求相手が以下のように異なります。

  • 加害者に責任能力があると判断される場合 ➡加害者本人に請求します
  • 加害者に責任能力がないと判断される場合 ➡加害者の保護者に対して監督義務者の責任に基づく損害賠償を請求できます

また、悪質ないじめを受けている場合は犯罪行為に該当する可能性があり、刑事責任を問うこともできます。

犯罪行為に該当する可能性のあるいじめの具体例

  • 暴力(怪我を負わなかった場合も含む)➡暴行罪、傷害罪
  • 金品のカツアゲ➡恐喝罪、強盗罪
  • 万引きの強要➡強要罪
  • 持ち物を摂取する➡窃盗罪
  • 性的行為の強要➡強制わいせつ罪、強制性交等罪、不同意性交等罪
  • ネットでの誹謗中傷➡名誉棄損罪、侮辱罪

いじめで不登校となり転校した場合の費用は請求できる?

転居や転校にかかった費用は、学校側や加害者側に請求できる可能性があります。

学校側への請求

学校は生徒の安全を守るために、安全配慮義務を負っています。

学校でいじめに遭い、学校が適切な対応をしなかったため転校を余儀なくされた場合には、学校の設置者である自治体や学校法人に対し、転居や転校に要した費用の賠償を求めることが可能です。

加害者側への請求

加害者の保護者が適切な監督を怠ったという場合には、加害者の保護者に対しても、転居や転校に要した費用の賠償を求めることが可能です。

ただし、転居・転校費用が認められるには、いじめと転校との間に相当因果関係が必要です。

相手がいじめを認めず裁判などに発展した場合は、第三者から見ていじめがあったと分かる証拠が重要となるでしょう。

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いじめで転校を余儀なくされた場合に弁護士ができるサポート

いじめ問題に詳しい弁護士であれば、被害者の負担を軽減し、迅速かつ適切に対応することができるでしょう。

弁護士ができるサポートには、以下のようなものがあります。

  • 学校に対する適切な調査や報告書作成の働きかけができる
  • 加害者等にいじめの即刻中止の通告を行える
  • 加害者側や学校側への対応を任せられる
  • 損害賠償請求や刑事告訴に必要な証拠のアドバイスをもらえる
  • 損害賠償請求や刑事告訴などの対応を任せられる
  • いじめ再発防止策を提案できる

このほかにも、ご相談者様の個別事情に応じたサポートが可能です。

いじめ問題は、迅速な対応が求められますので、まずは弁護士にご相談ください。

いじめ問題を弁護士に相談・依頼するメリットについては、以下のページで詳しく解説しています。ご参考ください。

さらに詳しくいじめ被害は弁護士に相談すべき?メリットや費用などを解説

いじめが原因で転校を検討する際は弁護士法人ALGにご相談ください

いじめが原因で転校を余儀なくされた場合、被害を受けたお子様には保護者の方の精神的サポートやきめ細やかなケアが欠かせません。

しかし、お子様のケアをしながら転校先の情報収集や手続き、学校側や加害者側への対応などを行うのは、保護者の方の負担が大きくなってしまいます。

いじめによって転校を余儀なくされた場合は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。

弁護士を代理人とすることで、保護者の方の負担を軽減しながら、学校側や加害者側への交渉や法的措置を進めることが可能です。

私たちは、学校問題やいじめ問題に詳しい弁護士が多数在籍しております。

ご相談者様のお気持ちに寄り添って尽力いたしますので、まずは一度お問い合わせください。

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