いじめの認知件数はここ数年で急増しており、文部科学省の資料によれば、令和5年度の小・中・高および特別支援学校におけるいじめの認知件数は73万2568件となり、過去最多を記録しました。
学校で不快なことをされたとしても、それが「いじめ」に該当するのかの判断は難しく、どう対処すればいいのかお困りの方も多くいらっしゃるでしょう。 この記事では、
いじめの定義について解説していきます。ぜひご参考ください。
目次
いじめとは、学校などの集団内で特定の個人を肉体的・精神的に苦しめる行為のことです。
こうしたいじめ被害への対策として、いじめ防止対策推進法が制定・施行されています。
いじめ防止対策推進法第2条第1項では、いじめを次のように定義しています。
いじめ防止対策推進法
第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
※児童等:学校に在籍する児童または生徒(同条第3項)
上記の定義によれば、周囲の人や加害児童・生徒が「遊びのつもりだった」「いじめているつもりはなかった」と思っていても、受けた本人が心身の苦痛を感じるものは、幅広くいじめに該当するとされています。
いじめのうち深刻なものを、いじめ重大事態といい、いじめ防止対策推進法第28条第1項では、次のように定義しています。
たとえば、以下のようなケースがいじめの重大事態に該当します。
いじめの重大事態の発生が疑われる場合、学校側は重大事態について以下の対応が求められています。
学校で行われることの多いいじめとして、次のような例が挙げられます。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
なお、上記のようなものに限らず、受けた人が身体的・精神的に苦痛を感じるものは、すべていじめに該当します。
言葉によるいじめとは、本人の体形や見た目に関する冷やかしやからかい、悪口、脅し文句など、嫌なことを言われるいじめのことです。
始めは冗談のつもりが徐々にエスカレートし、いじめに発展する場合もあります。
言葉によるいじめは、直接本人に伝えるだけでなく、周りにわざと聞こえるように言われることもあります。
こうしたいじめは、精神的に深く傷つくだけでなく、「やめてほしい」「傷つくことを言わないでほしい」と本人が訴えにくく、事態が深刻化するまで周りの人が気付けないこともあります。
集団が特定の人物に対し、無視や仲間はずれなどの態度をとることです。
いじめられている児童・生徒がそこにいないように振る舞うもので、無視や仲間はずれにされた児童・生徒はクラスの人やグループから疎外、孤立していると感じて悩んでしまうことも多くあります。
また、無視や仲間はずれにされた児童・生徒は直接危害を加えられていないことから、周囲にいじめられていると気付かれにくいという特徴があります。
暴力によるいじめとは、叩く、蹴る、ぶつかる、突き飛ばすなど直接危害を加える行為です。
遊びのふりをして行われる場合もあれば、ものを使って行うなど、強い痛みや怪我を負わせる場合もあります。
いじめが加速すると、力の加減をして周りに気付かれない程度に危害を加えるケースもあります。周りの人は「遊びの延長」と思い、いじめに気付けなかったという事態も少なくありません。
暴力によるいじめを受けた児童・生徒は、大人になってもトラウマに悩まされるケースも多く、非常に悪質性が高いといえます。
精神的ないじめとは、嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことを要求する行為です。
例えば、「掃除や片付けを押し付けられる」といういじめもあれば、「人が見ている前で服を脱がされたり、脱ぐことを要求されたりする」といった深刻なものも該当します。
精神的ないじめは、肉体的に直接危害を加えていじめるのではなく、精神的に危害を加える行為であるため、周りの人が気付きにくく、事態が深刻化するケースも多くあります。
また、精神的ないじめを受けた児童・生徒は、強い不安やうつなど、さまざまな症状に悩まされる場合もあり、到底見過ごすことはできません。
金品や物に関するいじめとは、金品をたかられる、金品や物を隠される・盗まれる・壊される・捨てられるなどの行為のことです。
こうした金品や物に関するいじめは、受けた児童・生徒が経済的に追い詰められてしまう可能性があります。
例えば、持ち物を隠されたり、壊された場合、買い直さなければならず経済的ないじめへとつながっていくことが考えられます。
また、金品を要求された場合では、児童・生徒は親のお金を盗んで用意することが多いでしょう。
さらに、いじめが発展して万引きを強要されることもあり、実際に物を盗めば罪の責任を負うことになります。
SNSやネットでのいじめとは、SNSやウェブサイトで悪口を書かれたり、インターネット上で個人情報を拡散される行為のことです。
SNSやネットでのいじめの問題点は、顔や名前が分からない相手からいじめを受けることです。
相手が誰だかわからない状態で誹謗中傷をされたり、不快な画像を送られたりするため、受けた児童・生徒は非常に強い精神的苦痛を感じるでしょう。
また、このような行為だけでなく、SNS上で特定の個人を仲間外れにするようないじめもあります。
ネット上の交流やコミュニケーションが欠かせない現代において、SNSやネットでのいじめは特に問題視されています。
児童・生徒が受けている行為が、「いじめ」に該当するかどうかの判断は、非常にシンプルです。
平成25年に施行されたいじめ防止対策推進法では、以下の判断基準を設けています。
「身体的・精神的にかかわらず、いじめを受けた児童・生徒が苦痛を感じるかどうか」
つまり、周囲の児童・生徒が「ふざけていた」「遊びのつもりだった」と思って行った行為も、被害を受けた本人が「つらい」と精神的苦痛を感じていたらいじめと判断される点がポイントです。
いじめと似た言葉に「いじり」がありますが、これらは別物です。
「いじり」は、いじる側・受ける側が対等な関係にあり、お互いの信頼関係を前提としたものであれば、友好的なコミュニケーションの1つともいえるでしょう。
しかし、「いじり」でも、受ける側が「いやだな」「つらいな」と精神的苦痛を感じている場合には、それはいじめに該当します。
いじりのつもりでも繰り返されることで、いじられる側を傷つけ、いじめに発展してしまうケースも少なくありません。
「いじりだから」と軽視せず、受け手の気持ちに寄り添うことが大切です。
いじめ問題の解決に向けては、具体的に次のような対応を検討しましょう。
いじめ問題の相談は、学校だけでなく弁護士も有効な相談先です。
弁護士へ相談・依頼することで、次のようなメリットを受けられます。
いじめを受けた児童・生徒やその保護者は、加害児童・生徒またはその保護者・学校側に対して法的措置を検討することができます。
ここからは、加害者やその保護者に対する損害賠償請求と学校側に対する損害賠償請求について詳しく見ていきましょう。
いじめは不法行為に当たるため、いじめを受けた児童・生徒は、加害児童・生徒に対して、自らが被った損害の賠償を求めることができます。
損害賠償の対象となるのは、以下のようなものがあります。
ただし、加害児童・生徒がおおむね10~12歳以下の低年齢の場合は、責任能力が認められず、損害賠償責任を負わないと判断されることがあります。
こうした場合は、加害児童・生徒の保護者に対して監督義務者としての責任を追及することになります。
学校側に対しても損害賠償請求をすることができるケースもあります。
学校側は、児童・生徒が安全に過ごせるよう必要な配慮を行う安全配慮義務を負っています。
そのため、学校側は当然に、いじめを予防することや、いじめに対処する義務を負っていると考えられます。
学校側の不適切な対応によって、いじめが発生・継続したと認められる場合には、被害児童・生徒またはその保護者は学校側に対して損害賠償請求が可能です。
いじめの定義は、時代と共に被害児童・生徒に寄り添ったものに変遷しています。
しかし、被害を受けた児童や生徒が「つらい思いをしている」「いじめられている」と声を上げることはとても勇気のいることであり、ひとりで悩んでしまうケースが多くあります。
お子様からいじめの被害について相談を受けられたら、早期解決のためにもまずは弁護士へご相談ください。
弁護士は学校側との協議を代理し、お子様が健全な学校生活を送れるようサポートいたします。
弁護士法人ALGは、いじめ問題や学校問題に関するご相談を受け付けております。
経験豊富な弁護士がお子様や保護者の方のお気持ちに寄り添い、早期解決に向けて尽力いたします。
いじめ問題でお悩みの場合は、まずは一度私たちにお話をお聞かせください。
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監修 : 弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates執行役員
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