いじめを許さない

いじめの被害で刑事告訴できる?流れや加害者の処分・費用など

いじめの被害で刑事告訴できる?流れや加害者の処分・費用など

監修
監修弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

学校で児童・生徒がいじめの被害を受けた場合は、加害者側や学校側に責任を追及できる可能性があります。加害者側や学校側を訴える方法には、損害賠償請求をする民事訴訟と、犯罪行為について処罰を求める刑事告訴などがあります。

犯罪行為を伴う悪質ないじめを受けた場合には、刑事告訴をするケースも少なくありません。

この記事では、どのようないじめが刑事告訴できるのか、刑事告訴する流れ、刑事告訴によって加害者が受ける処分などについて解説していきます。ぜひご参考ください。

学校でのいじめを刑事告訴することはできる?

学校で受けたいじめのすべてを刑事告訴できるわけではありません。刑事告訴できるケースは、いじめが犯罪行為に該当する場合のみとなります。

犯罪行為に該当するいじめに遭い、刑事告訴したい場合は、検察官または司法警察員(警察官)に告訴状を提出します(刑事訴訟法第241条1項)。

告訴状が受理されると、警察は捜査を開始して、書類または証拠物を検察官に送付する義務が発生します(刑事訴訟法第242条)。そのため、積極的な捜査が期待できるでしょう。

刑事告訴できるいじめとできないいじめについて、以下で詳しく見ていきましょう。

いじめの慰謝料については、以下のページでも詳しく解説しています。ご参考ください。

さらに詳しくいじめを受けたら慰謝料を請求できる?相場や請求方法などを解説

刑事告訴できるいじめ

刑事告訴できるいじめ行為は、主に以下のようなものが該当します。

  • 暴力(怪我を負わなかった場合も含む)➡暴行罪、傷害罪
  • 金品のカツアゲ➡恐喝罪、強盗罪
  • 万引きの強要➡強要罪
  • 持ち物を摂取する➡窃盗罪
  • 性的行為の強要➡強制わいせつ罪、強制性交等罪、不同意性交等罪
  • ネットでの誹謗中傷➡名誉棄損罪、侮辱罪

とくに最近では、児童・生徒がスマートフォンを持っていることがほとんどであり、ネットでのいじめが問題になっています。SNS上の誹謗中傷は、暴力や金品を強要されるいじめに比べ、保護者の方が気付きにくいことも特徴です。子供の様子がいつもと違うと感じるときは、味方であることを伝えて話を聞いてみてください。

犯罪行為を伴ういじめや、暴力によるいじめについては、以下のページでも詳しく解説しています。ご参考ください。

さらに詳しくいじめは犯罪にならないの?法律で裁けない? 被害者がとれる対処法 さらに詳しく暴力を伴ういじめを解決するには?対処法や弁護士ができるサポートなど

刑事告訴できないいじめ

犯罪行為に該当しないいじめについては、刑事告訴が難しくなります。例えば、以下のようないじめです。

  • 仲間外れにされる
  • 無視をされる

ただし、いじめの被害を受けた児童・生徒が精神的苦痛を感じていたり、転居や転校を余儀なくされたりするケースでは、民事訴訟を提起して損害賠償を請求できる可能性があります。

いじめの損害賠償請求については、以下のページでも詳しく解説しています。ご参考ください。

さらに詳しくいじめで損害賠償請求できる?誰に何を請求できるのか・相場など

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いじめで学校を刑事告訴することはできる?

学校は組織として犯罪行為を行ったわけではないため、学校を直接刑事告訴することはできません。刑事告訴ができるのは、実際に犯罪行為を伴ういじめを行った加害者等やその保護者となります。

ただし、以下のようなケースでは、教師に対して刑事告訴できる可能性があります。

  • 教師が直接加害行為に関与していた場合

    例えば、教師が被害児童・生徒を殴る、蹴る、暴言を吐く、いじめを助長するなどの行為を行い、犯罪に該当する場合には、刑事告訴ができる可能性があります。

  • 教師がいじめを黙認、助長した場合

    学校としていじめに対する適切な対応を取らなかった場合や、いじめを助長するような発言・行動をした場合も、刑事責任を追及できる可能性があります。

いじめを刑事告訴する流れ

いじめを刑事告訴する主な流れは、以下のとおりです。

  • 告訴状の提出

    告訴状は加害者等を処罰するために警察に捜査してほしいとの意思を伝える届出です。捜査の進展のためにも、被害を受けた場所を管轄する警察署に提出しましょう。

  • 警察による捜査

    告訴が受理されると、警察は相談内容と証拠を基に、いじめの事実を調査します。被害者や加害者、目撃者等への聞き取り調査や証拠の分析などが行われます。

  • 検察への送致

    捜査の結果、加害者等のいじめ行為が犯罪に該当する場合、警察は検察庁へ事件を送致します。

  • 検察による起訴

    検察庁は、警察による捜査資料を精査し、証拠の十分さ、事件の悪質さ、被害の程度などに応じて、加害者等を起訴するかどうかを判断します。

  • 裁判

    検察が起訴した場合、裁判所において加害者等の罪を問う裁判が行われます。

  • 判決

    裁判所は、当事者双方の主張や証拠、証人の証言などをもとに、判決を下します。

なお、学校でのいじめでは、加害者等は基本的に未成年ですので、家庭裁判所での少年審判が行われます。

いじめの刑事告訴で加害者が受ける処分とは?

犯罪行為を伴ういじめ被害に遭った場合は、刑事告訴することで加害者等に刑事責任を追及できます。ただし、加害者等が具体的にどのような処分を受けるかは、加害者等の年齢によって異なります。

以下、年齢別に詳しく見ていきましょう。

加害者が14歳未満の場合

刑法第41条では、14歳に満たない者の行為は、罰しないと定められています。

そのため、加害者が14歳未満の場合に逮捕されることはありません。ただし、加害者の行為が一定の重大な罪にかかる刑罰法令に触れるものと判断される場合には、警察が児童相談所へ通告、送致する流れになります。そして、児童相談所が家庭裁判所の審判に付するのが相当と判断した場合には、加害者は家庭裁判所に送致され、少年審判を受けることになります。

なお、送致された後の手続きは14歳以上の少年と同様です。

少年審判による処分

  • 保護観察:保護監督官や保護司の監視下の元、自宅などで更正を目指す
  • 少年院送致:社会での更正が難しいと判断された場合に少年院に送致される
  • 児童自立支援施設等送致:比較的低年齢の少年に対して下される
  • 都道府県知事または児童相談所長措置:児童福祉機関で更正するのが適当と判断した場合の処分

など

加害者が14歳以上16歳未満の場合

加害者等が14歳以上の場合、「刑事責任能力があるもの」として扱われ、警察に逮捕される可能性があります。 通常は、事件が家庭裁判所に送られ、少年法に基づいて家庭裁判所が少年審判を行い、以下の中から処分を決定します。

保護処分の種類 保護処分の内容
保護観察 日常の社会生活の中で保護観察官や保護司の協力を得ながら更生を目指させる処分
少年院送致 一定期間少年院に入院させる処分
児童自立支援施設送致 福祉施設で更生を目指させる処分
知事又は児童相談所長送致決定 児童福祉機関の指導に委ねる決定
不処分・審判不開始決定 通常の刑事手続における「無罪」または「不起訴処分」と同様の処分

中学生のいじめについては、以下のページで詳しく解説しています。ご参考ください。

さらに詳しく中学生のいじめに対する対処法は?親として対応できることや注意点

加害者が16歳以上18歳未満の場合

加害者等が16歳以上18歳未満の場合は、基本的に加害者等が14歳以上16歳未満の場合と同様の処分が行われます。

ただし、家庭裁判所の少年審判により「刑事処分が相当」と判断された場合には、事件が検察庁に送致されることもあります。これを「逆送」といいます。

逆送が行われた場合、検察官が裁判所に対して起訴を行い、その結果有罪判決が下された場合には、懲役刑や拘禁系などの刑罰が科されます。

加害者が18歳以上の場合

加害者等が18歳以上の場合は、「18歳・19歳の場合」と「20歳以上の場合」で以下のように異なります。

  • 加害者等が18歳・19歳の場合

    犯罪行為をした18歳・19歳は「特定少年」という概念が導入されます。民法上は成人であるものの、刑事事件については引き続き少年法が適用され、基本的には家庭裁判所が処分決定をします。

  • 加害者等が20歳以上の場合

    20歳以上の者が犯罪行為を行った場合は、刑事罰の対象となります。
    つまり、家庭裁判所へ送致されることなく、逮捕されて拘留請求が行われ、刑事裁判にかけられて懲役刑等の罰を受けます。

いじめの刑事告訴にはいくら費用がかかる?

いじめを刑事告訴で訴える手続き自体に費用は掛かりませんが、弁護士に依頼する場合には、以下のような費用がかかります。

【弁護士費用】
弁護士費用には基準がないため、依頼する内容や弁護士事務所によって費用は異なりますが、概ね以下のような相場になるでしょう。

  • 相談料:30分5000円~1万円(※無料相談を行っている弁護士事務所もあります)
  • 着手金:10万~30万円程度
  • 成功報酬:経済的利益の10%~20%程度
  • 日当:半日3万~5万円程度/全日5万~10万円程度
  • 実費:交通費や通信費、宿泊費など弁護士が事件処理にあたって実際にかかった費用

いじめで刑事告訴をする際の注意点

いじめの証拠を確保する

いじめ加害者等を刑事告訴する際、証拠がなければ警察は動いてくれない可能性もあります。 そのため、刑事告訴をする前に以下のようないじめの証拠を集めておきましょう。

いじめの証拠例

  • いじめ現場を撮影した写真・動画
  • いじめ現場を録音した音声データ
  • いじめによって壊された物・汚された物
  • 医師の診断書(暴行を受けた場合など)
  • SNSに書き込まれた誹謗中傷のスクリーンショット
  • 被害者本人の日記
  • 第三者の証言 など

証拠がないからといって、事実無根の告訴やいじめの証拠をでっちあげることは絶対にやめましょう。嘘の告訴をした場合には虚偽告訴罪(刑法第172条)が成立し、3ヶ月以上10年以下の懲役に処されるおそれがあります。

いじめの証拠を集める際や、証拠がない場合には、弁護士に相談し、サポートを受けることをおすすめします。

いじめの証拠がない場合について、また、いじめを弁護士に相談するメリットについては、以下のページで詳しく解説しています。ご参考ください。

さらに詳しくいじめの解決は証拠がないと難しい?5つの対処法を解説 さらに詳しくいじめ被害は弁護士に相談すべき?メリットや費用などを解説

解決まで時間がかかる可能性がある

いじめ被害の刑事告訴は、証拠収集や捜査、起訴、裁判といったステップを踏むため、解決まで時間がかかるのが一般的です。

最悪のケースでは、解決(判決)するまでに数年を要する場合もあります。

そのため、状況によっては、転校・転居や、民事訴訟を提起することも検討しましょう。

いじめで刑事告訴をしたいとお考えの場合は、弁護士法人ALGに相談を

犯罪行為を伴ういじめ被害を受けた場合には、加害者等を刑事告訴することが可能です。
しかし、実際にどのような手続きをすればいいのかなど悩まれることも多くあると思います。

いじめ問題の刑事告訴については、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは、ご相談者様に寄り添い、刑事告訴のサポートだけでなく、証拠集めや加害者側・学校側との交渉など様々なサポートが可能です。

いじめの被害を受けたお子様には、保護者の方のサポートが必要不可欠です。しかし、保護者の方がお子様のサポートをしつつ、刑事告訴の手続きをするのは、あまりにも負担が大きくなってしまいます。

保護者の方の負担を軽減するためにも、まずは一度私たちにお話をお聞かせください。

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