暴行を伴ういじめや、金品を強要されるいじめなど、いじめ行為の中には犯罪に該当するものもあります。学校で子供が悪質ないじめを受けた場合は、警察に相談・通報することも有効です。
ただし、すべてのいじめを警察が介入できるわけではありません。介入できるものとできないものがあることに注意しましょう。
この記事では、警察が介入できる重大ないじめの事例や、いじめを警察に相談するタイミングやポイントなどについて詳しく解説していきます。ぜひご参考ください。
目次
犯罪行為に該当するようないじめ被害を受けた場合は、速やかに警察に相談・通報しましょう。
文部科学省は、教育委員会や学校に対して以下の通知を行っています。
「重大ないじめ事案や犯罪行為として取り扱われるべきと認められる場合には学校はいじめが児童生徒の生命や心身に重大な危険を生じさせるおそれがあることを十分に認識し、いじめ防止対策推進法第23条第6項に基づき、直ちに警察に相談・通報を行い、適切に援助を求めなければならない(いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について)」
また、この通達は教育委員会や学校に対するものですが、警察への相談・通報は、いじめ被害に遭った子供の保護者からも行うことができます。大切な子供の命や身の安全を守るためにも、子供が犯罪行為に該当するいじめを受けている場合には、警察への相談・通報を検討しましょう。
警察は、犯罪行為の取り締まりを行う機関ですので、犯罪行為に該当するいじめは警察に相談すべきといえます。具体的には、次のようないじめ行為が、警察が介入できる重大ないじめに該当します。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
暴力行為を伴ういじめを受けた場合は、「暴行罪」や「傷害罪」が成立する可能性があります。
生命・身体・自由・名誉・財産に対し、害を加える旨を告知し、脅迫する行為は、脅迫罪に該当する可能性があります。
暴行または脅迫を用いて、他人に義務のないことを行わせると強要罪が成立する場合があります。
暴行または脅迫を用いて、他人に財産を交付させると恐喝罪が成立する場合があります。
他人の財物を摂取すると窃盗罪が成立する可能性があります。
不特定または多数の人が認識できる状況で、他人の名誉を毀損した場合は、名誉棄損罪や侮辱罪に該当する可能性があります。
これらの違いは、事実の適示があるかどうかという点で区別されます。
警察に相談・通報するべき重大ないじめが行われていた場合、いつ警察に相談したら良いのでしょうか。
ここからは、いじめを警察に相談するタイミングといじめを警察に相談する際のポイントについて解説していきます。
犯罪行為に該当するような重大ないじめを受けていることが発覚したら、早急に警察に相談・通報しましょう。
犯罪行為に該当するいじめは、子供の身体や命に危険が及ぶおそれがあります。そのため、大切な子供を護るためにも、一刻も早く対応することが重要です。警察への相談が遅れてしまえば、いじめがエスカレートする危険もあります。子供の身の安全や健全な学校生活を守るためにも、被害児童・生徒やその保護者だけで抱え込むのは避け、早めに警察に相談するようにしましょう。
いじめを警察に相談する際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
①いじめの証拠を集めておく
いじめの証拠がなければ警察が動いてくれない可能性もありますので、子供がいじめ被害を受けていることが分かったら、いじめの証拠になりそうなものを集めておきましょう。
いじめの証拠の具体例
②事件性が高いことを主張する
上記の証拠を提示しながら、事件性が高いことを強く主張することが大切です。例えば、「子供が同級生から暴行を受け、全治〇週間の怪我をしました。傷害罪で被害届を出します」というように、具体的に伝えるようにしましょう。
悪質ないじめが発生したとき、警察への相談は有効な手段ですが、警察がすぐに動いてくれるとは限りません。そのため、警察への相談以外にも、「学校や教育委員会」、「少年相談窓口」、「弁護士」などに相談することを検討しましょう。
いじめは学校内で発生した問題であることが多く、まずは学校に相談すべきでしょう。
いじめ防止対策推進法では、犯罪行為を伴うようないじめは「いじめ重大事態」と呼ばれ、いじめ重大事態の発生が疑われる場合、学校側は速やかに調査を開始することが義務付けられています。
そのため、まずはいじめの調査を実施してもらい、学校側にもいじめの有無や態様を把握してもらいましょう。
ただし、学校が調査に動かないことも少なくありません。学校側が誠実に向き合ってくれない場合は、都道府県の教育委員会に相談するのも有効な手段です。
なお、私立高校の場合は、都道府県に設置されている私立学校主管部課に相談しましょう。
警察内の機関のひとつである少年相談窓口に相談することも有効です。
少年相談窓口では、20歳未満の子供やその保護者が、いじめや犯罪被害などについて、公認心理士等の資格を持つ専門職員と心理面の相談ができます。
また、いじめへの対応に関する助言や、家庭裁判所などの関係機関への取り次ぎをしてもらうことが可能です。
いきなり警察への相談は気が引ける場合には、少年相談窓口を利用してみましょう。
いじめ問題について保護者だけで対応することに不安がある場合は、弁護士へ相談しましょう。
弁護士であれば、警察への届出、いじめの証拠集め、加害者側や学校側との交渉など、法的な観点から全面的にサポートが可能です。
警察への相談前にいじめ問題を弁護士に依頼するメリット】
いじめの被害について、誰に対して、どのような責任を追及できるかは具体的な状況によって異なります。弁護士に相談することで、状況に応じた最適な解決案を提示してもらえるでしょう。
保護者による働きかけでは学校側が真剣にいじめ問題に取り組んでくれない場合でも、弁護士が代理人となり調査の働きかけをすることで、学校側が調査に取り組んでくれる可能性が高まります。
弁護士は代理人として学校側や加害者側との交渉を任せられるため、保護者の負担を軽減しながら、適切に交渉を進めることができます。
弁護士に依頼すれば、被害届や告訴状などの書面作成を任せることができます。また、弁護士は証拠に基づいて事件性を主張できるため、安心して任せることができるでしょう。
いじめ問題を警察に相談・通報しても、状況によってはすぐに動いてくれないケースもあります。その主な理由として、以下の3つが考えられます。
警察にいじめの対応をしてもらいたい場合には、以下の対処法を検討しましょう。
まずは、客観的にいじめがあったことを証明できる証拠を揃えて、被害届や告訴状を作成・提出します。このとき、いじめ被害が明確な犯罪行為であると事件性を強く主張するようにしましょう。
いじめの被害によって被った精神的苦痛や治療費、転校・転居費用などは、加害者側や学校側に損害賠償として支払いを求めることが可能です。
ただし、民事訴訟を提起する際も、いじめの証拠が必要となります。
いじめの被害を警察に相談した後は、被害届または告訴状を作成・提出します。これらは、以下のような違いがあります。
被害届や告訴状の提出は、どちらも犯罪行為を伴ういじめ被害を受けた事実を記録に残し、警察に対応してもらう手続きとなります。以下、詳しく見ていきましょう。
犯罪行為を伴ういじめ被害に遭った場合は、被害を受けた場所を管轄する警察署に被害届を提出しましょう。被害届の書式は警察署にあり、実際には警察官が話を聞きながら記載することが多いため、被害届を自分で準備する必要はありません。
その後、警察が事件性ありと判断した場合は捜査が始まります。
捜査の内容は事件の態様によってさまざまですが、以下のような捜査が行われることが多いでしょう。
なお、被害者にも取り調べや証拠品の提出、実況見分などの協力を求められることもあります。
加害者等への処罰を強く求める場合には、告訴状を提出しましょう。
告訴状は検察官または司法警察員に提出することとされています(刑事訴訟法第241条1項)。ただし、検察が初期の段階から捜査することは稀であるため、警察に提出するのが一般的です。
告訴状を提出する警察署について特段の決まりはありませんが、捜査の進展のためにも、被害を受けた場所を管轄する警察署に提出しましょう。
告訴状が受理されると、警察による捜査が開始されます。警察は、告訴を受理すると、書類または証拠物を検察官に送付しなければならない義務が発生します(刑事訴訟法第242条)。
そのため、被害届とは異なり、積極的な捜査が行われることが期待できます。
いじめの中には、犯罪行為を伴う悪質ないじめもあります。そのようないじめ被害に遭われている場合は、警察に相談・通報するのも有効な手段です。
ただし、警察に被害届を提出したからといって、必ず捜査が行われるわけではありません。
「事件性が低い」と判断されれば、すぐに動いてくれない可能性もありますので、警察への相談・通報と合わせて弁護士への相談をおすすめします。
弁護士であれば、被害届や刑事告訴などの対応だけでなく、加害者側や学校側との交渉や民事訴訟などを任せることができ、いじめ問題解決のサポートが可能です。
私たち弁護士法人ALGは、学校問題に詳しい弁護士がご相談者様に寄り添って、解決まで尽力いたします。犯罪行為に該当するいじめについてお悩みの場合は、まずは一度お問い合わせください。
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監修 : 弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates執行役員
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