いじめ問題の解決には、内容証明郵便を送付することもひとつの手です。
内容証明郵便を送ることで、相手に、「いじめをやめてほしい」「損害賠償を請求する」という明確な意思表示をすることができ、早期解決につながる可能性があります。
この記事では、いじめ問題で内容証明郵便を送付する効果や、内容証明郵便の書き方、注意点などについて解説していきます。ぜひご参考ください。
目次
内容証明郵便とは、郵便局のサービスのひとつで、「いつ・誰が・誰に・どのような内容の郵便を送ったか」を証明してくれる特別な郵便です。
内容証明郵便自体に法的効力はありませんが、いじめの被害者が加害者側へいじめの被害や損害賠償請求の意思表示をする手段として有効です。
一般の方が、日常生活の中で内容証明郵便を送ったり、受け取ったりすることは頻繁にあるものではありません。
こうした背景からも、内容証明郵便を送ることには、相手に対して心理的なプレッシャーを与えることが期待できます。
いじめ問題で内容証明郵便を送付することには、以下のような効果があります。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
内容証明郵便を送ることで、加害者や学校に警告・心理的なプレッシャーを与えることが期待できます。
相手は「裁判を起こされるのではないか」と心配になり、内容証明郵便を無視しにくくなるでしょう。さらに、弁護士名で送付することで、与えるプレッシャーはより一層大きくなります。
また、学校へいじめの相談をしても、なかなか対応をしてくれないケースでも、内容証明郵便の送付は効果的です。
内容証明郵便を送付することで、「いじめ問題を早期に対応してほしい」と意思表示できるだけでなく、学校全体にいじめ問題があることを知ってもらうことができ、早期対応が期待できます。
内容証明郵便によって、求めていることが「いじめを止めること」なのか「賠償や処分を求めること」なのか、目的を明確に示すことができます。
いじめを止めることが目的の内容証明
いじめを止めるために内容証明郵便を送付することで、いじめの被害者がつらい思いをしていること、子供同士では解決できない緊急性のあるものという意思表示ができます。
賠償や処分を求めることを目的とした内容証明
いじめによる精神的苦痛に対する慰謝料や、怪我をした場合の治療費、壊された物の弁償など、金銭的な請求をするために内容証明郵便を送付することもあります。
また、内容証明郵便では、いじめの事実を周知してほしいのか、内密にしてほしいのかなどの意思も明確に示せます。
内容証明郵便は、文書の内容や相手の受取日などを証明できるため、裁判になった場合の証拠としても有効です。
実際に裁判となった場合に、内容証明郵便のような証拠となる書面がないと、「言った・言わない」の争いになることが多くあります。
また、書面でも普通郵便であれば「出した・出さない」「受け取った・受け取っていない」と水掛け論になってしまいますが、内容証明郵便であれば、「いつ送ったか」「どんな内容か」だけでなく、「相手がいつ受け取ったか」を証明できるため、有力な証拠となります。
内容証明郵便は、「相手に届くもの」「郵便局が保管するもの」「自分が控えとして保管しておくもの」の3部を用意する必要があります。
手書きでもパソコン入力でも構いませんが、3部用意する必要があるため、パソコン入力で印刷する方法が最も便利でしょう。
内容証明郵便を作成する際は、憶測で書かないように注意しましょう。
「いつ・誰に・どこで・どのようなことをされたのか」と、いじめの具体的事実を明確にすることが大切です。
また、いじめ問題の悪化を避けるためにも、脅すような内容は書かないようにしましょう。
内容証明郵便に記載すべき内容
内容証明郵便の詳しい書き方については、日本郵便のホームページに記載してありますのでご参考ください。
内容証明 ご利用の条件等(日本郵便)いじめ加害者の親に向けた内容証明の文例をご紹介します。
令和〇年〇月〇日
通知書
(相手方住所)
(相手方の氏名)法定代理人殿
私は、〇〇小学校〇年〇組の●●の父親です。
このたびは、息子に対するいじめの件でご通知させていただきます。
息子は、令和〇年〇月〇日、●●君から金品の要求や暴行を加えられ、精神的苦痛を受けています。
このような行為は民事上の不法行為だけでなく、刑事責任となり得ます。
つきましては、貴殿におかれましてはご子息に厳重なるご指導をしていただきますよう、ここに強く要求いたします。
なお、今後もいじめが継続する場合、学校・教育委員会・警察などの第三者機関への相談、および民事訴訟や刑事告訴などの法的措置を講じさせていただきますのであらかじめご了承ください。
(自分の住所)
(自分の名前)
ここからは、いじめ加害者に内容証明郵便を送付する手順を3つのステップに分けて解説していきます。
内容証明郵便を送付する手順
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
加害者やその保護者宛てに内容証明郵便を送る場合、加害者の住所を知る必要があります。
しかし、個人情報保護法の観点からも、学校が加害者の住所を教えないというケースも多くあります。
加害者の住所が分からない場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は弁護士会照会という制度を使って、加害者の住所を特定できる可能性があります。
加害者の住所が特定できたら、加害者や学校宛てに内容証明郵便を作成します。
このとき、以下の点に注意して作成するようにしましょう。
書き方
内容証明郵便に関しては「手書き」「パソコン印刷」のどちらでも問題ありません。
手書きの場合は、鉛筆や消せるボールペンは避けましょう。
用紙
原本1通を受取人、原本の複製2通のうち1通を差出人、もう1通を郵便局が保管します。
内容証明郵便の用紙は、基本的に決まりはなく原稿用紙や便箋でも構いませんが、5年間は郵便局に保管されるので感熱紙は避けましょう。
文字
文字数には、下表のとおり制限があります。
そのため、マス目のある用紙や、内容証明郵便専用の用紙を使うと書きやすいでしょう。
文字数が2枚以上になる場合は、のりやホッチキスで綴じて、つなぎ目に割印が必要です。
郵便局 | 電子内容証明サービス | |
---|---|---|
縦書きの場合 |
|
1枚あたり1584文字程度 |
横書きの場合 |
|
内容証明郵便は文字数の制限もあるため、簡潔に、曖昧な表現をしないように注意しましょう。
内容証明郵便を作成したら、郵便局に持ち込んで手続きをします。どの郵便局でも内容証明郵便を取り扱っているわけではないので、事前に調べておくようにしましょう。
また、インターネットを通じて内容証明郵便を発送できるサービスもあります(e内容証明)。郵便局へ行く時間がない場合や、すぐにでも内容証明郵便を送付したい場合は利用を検討してみてください。
郵便局で手続きする際に持参する物
いじめで内容証明郵便を作成・送付する際は、以下の点に注意しましょう。
では、上記2点について詳しく解説していきます。
いじめの被害について内容証明郵便を送れば、加害者側や学校側に心理的プレッシャーを与えることができますが、単なるクレームだと捉えられてしまう可能性もあります。
こうした事態を避けるためにも、「いつ・どこで・どのようないじめを受けた」といういじめの具体的事実や、不法行為に該当すること、法的責任の追及を考えていることなどをしっかりと記載しましょう。
内容証明を送付する際は、配達証明を忘れずに付けるようにしましょう。
郵便局の窓口にて配達証明を利用する旨を伝えれば追加料金を支払って利用することができます。
配達証明とは、送付した内容証明がいつ受取人に配達されたのかが分かるサービスです。
これを利用すると、通常1週間程度で差出人のもとに「〇月〇日に配達したことを証明します」などと記載されたハガキが郵便局から届きます。
そのため、相手が内容証明を受け取ったのか、受け取りを拒否したのかが明確となり、重要な証拠となります。
もし、相手が受け取りを拒否した場合は、弁護士名で新しい内容証明を送付したり、訴訟を提起する方法があります。
いじめの内容証明郵便は、被害者やその保護者自身で作成して送ることができます。
ただし、内容証明郵便は、専門知識がないと後からトラブルに発展することもあるため、弁護士へ相談することをおすすめします。
例えば、内容証明の書き方には細かなルールがあります。
自分で作成する場合に書き方が分からなかったり、不備があったりすると内容証明が無効になる可能性もあります。
内容証明郵便の書き方には細かなルールがあり、慣れていない人が作成するのは手間がかかります。
弁護士に相談・依頼することで、ご自身の負担を軽減して適切な内容証明郵便を作成できます。
ここでは、内容証明郵便を弁護士に依頼するメリットを紹介します。
適切な内容証明郵便を作成できる
弁護士は内容証明郵便の作成に慣れており、最適な文言や表現を把握しています。
そのため、法的観点から必要な内容が盛り込まれた内容証明郵便を作成できます。
法的根拠に基づいて損害賠償の請求や刑事告訴ができる
いじめの損害賠償について、「どのように」「いくら」請求すればいいのか迷われるでしょう。
弁護士であれば法律の知識に基づいて適切な損害賠償を請求することが可能です。
また、いじめの内容によって刑事告訴もサポートしていきます。
加害者側や学校側との示談交渉を任せられる
弁護士に依頼することで、加害者側や学校側との交渉を任せることができます。
弁護士は交渉にも慣れているため、法的観点に沿って冷静に話し合いを進めることが可能です。
内容証明郵便の作成にかかる費用は、大きく分けて内容証明郵便送付の費用と弁護士費用の2種類があります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
内容証明郵便は、窓口で手続きする場合とインターネットで手続きする場合で費用が異なります。
窓口で手続きする場合:1420円~
1枚当たりの文字数については、窓口の場合520文字まで、e内容証明の場合で1584文字と違いがあり、文字数や通数が多い場合はe内容証明の方が安価となります。
弁護士費用は、依頼する内容や弁護士事務所によって費用が異なりますが、一般的な相場は以下のようになります。
また、弁護士に加害者側や学校側との交渉を依頼した場合は、別途以下のような費用がかかります。
内容証明郵便を送っても、相手から反応があるとは限りません。 ここでは、反応があるケースとないケースの対応を見ていきましょう。
何らかの反応があるケース
反応があるケースでは、その後のいじめが止まる場合が大半でしょう。
また、損害賠償請求について反論や示談条件などの回答があった場合には、被害者側としてのスタンスを検討し、さらに通知や回答を送るなどの対処を決めることになります。
何も反応がないケース
相手から何の反応もない場合は、再度内容証明郵便の送付や訴訟の提起なども検討し、これらに踏み切るかどうかの判断をする必要があります。
いじめの被害を受けた場合、加害者側や学校側へ内容証明郵便を送付することで、いじめが止んだり、適切な対応をしてもらえたり、早期解決につながる可能性があります。
そこで、内容証明郵便の作成は弁護士への相談をおすすめします。
弁護士であれば、法的観点に沿って適切な内容証明郵便を作成するだけでなく、弁護士名で送付することで早期解決につながる可能性が高まります。
私たち弁護士法人ALGは、学校問題やいじめ問題などに詳しい弁護士が、ご相談者様に寄り沿って解決まで尽力いたします。
いじめ問題は、おひとりで悩まず、まずは一度私たちにお話をお聞かせください。
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監修 : 弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates執行役員
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:41560)
愛知県弁護士会所属。私たちは、弁護士82名、スタッフ171名(司法書士1名を含む)を擁し(※2021年6月末現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。
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