私選弁護人と国選弁護人の違いは?メリット・デメリットや費用など
国選弁護人や私選弁護人という言葉は聞いたことがあっても、どのような存在であるのか詳しく知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
国選弁護人と私選弁護人は、簡単にいうと、自由に弁護士を選べるのが私選弁護人で、選べないのが国選弁護人です。自由に弁護士を選べるからこそ、私選弁護人の場合は弁護士費用を負担しなければなりません。
本記事では、私選弁護人と国選弁護人の違いに着目し、それぞれのメリットとデメリットについて、詳しく解説していきます。
目次
私選弁護人・国選弁護人とは
私選弁護人とは、「依頼者が個別に選任する弁護人」をいいます。
どの弁護士に依頼するのかを自由に決定できるため、本人だけでなく、配偶者や親族なども選任することが可能です。一定の資力がある場合には、自ら弁護士費用を負担して、私選弁護人を選任するのが原則とされています。
一方で国選弁護人は、「国が公費を負担して手配する弁護人」です。
資力がない被疑者・被告人の場合は、国が弁護士費用を負担して、国選弁護人が割り当てられます。ただし、国選弁護人は、逮捕直後にはつけられず、勾留が決まった後や起訴後に選任されます。早い段階での対応が難しくなる点に注意が必要です。
国選弁護人はどうやって選ばれる?
国選弁護人は、各弁護士会が管理する名簿(国選弁護人登録名簿)の中から法テラスや裁判所が機械的に選任するのが基本です。名簿に登録されている弁護士は様々で、ランダムに選任されるため、刑事事件に詳しい弁護士に当たる場合もあれば、そうでないこともあります。
なお、基本的には1人の国選弁護人が割り当てられますが、裁判員裁判の対象事件などでは、複数人の国選弁護人が選任されることがあります。
私選弁護人と国選弁護人の違い
| 私選弁護人 | 国選弁護人 | |
|---|---|---|
| 弁護士の選択 | 可 被疑者・被告人(本人)、配偶者、親族が選任 |
不可 裁判所や法テラスが選任 |
| 選任時期 | 逮捕前からいつでも可 | 勾留決定後 起訴後(在宅事件の場合) |
| 費用 | 必要 | 原則不要 |
| 選任の要件 | 条件なし | 条件あり(資力要件) |
| 弁護人の変更 切り替え |
可 | 原則不可(一部例外で可能な場合あり) |
私選弁護人と国選弁護人は、どちらも被疑者または被告人の弁護を行いますが、「弁護士を自由に選べるか否か」「弁護士がつくタイミング」「費用」などに違いがあります。
次項では、主に次の点について私選弁護人と国選弁護人の違いを詳しく解説していきます。
- 弁護士を選べるか
- 弁護人がつくタイミング
- 費用がかかるか
- 依頼の要件
- 弁護士の変更・切り替えができるか
弁護士を選べるか
私選弁護人と国選弁護人の違いは、自由に弁護士を選べるかどうかです。
刑事事件に強い弁護士を選べるかどうかはその後の弁護活動に大きく影響します。
私選弁護人の場合は、被疑者・被告人本人またはその家族、親族などが自由に、刑事事件に強い弁護士をさがして、選び依頼できますが、国選弁護人はできません。
弁護人がつくタイミング
私選弁護人は、いつでも“選任”することが可能です。
逮捕された直後や任意で聴取を受けた直後でも可能であり、犯罪を行ってしまった直後、まだ発覚していない場合の自首に関する相談もできます。
一方で国選弁護人が選任されるのは、身柄事件(身柄拘束が伴う事件)だと勾留後、在宅事件(身柄拘束が伴わない事件)だと起訴後です。国選弁護人の場合は、釈放に向けた弁護活動や被害者との示談交渉に遅れが生じるおそれがあります。
費用がかかるか
私選弁護人は自分で弁護士を選べる分、費用を負担しなければなりません。一方、国選弁護人は国が公費で費用を負担するため、原則としてお金はかかりません。後に資力があると判断された場合は、費用を請求される可能性もありますが、金額は比較的低く抑えられています。
依頼の要件
私選弁護人へ依頼する際には、国選弁護人のように何らかの要件があるわけではありません。
国選弁護人を選任してもらうためには、「現金や預貯金等の合計額が50万円未満」という資力要件を満たす必要があります。
要件を満たさない場合、自ら探すか弁護士会を通じるかして、私選弁護人の選任を申し出なければなりません。
私選弁護人選任の申出を受けて接見した弁護士が、弁護人となることを拒絶した場合等には、国選弁護人を選任できるようになります。
弁護士の変更・切り替えができるか
あ私選弁護人は自由に弁護士を選べ、いつでも解任・交代することができますが、国選弁護人は原則できません。
私選弁護人は契約形式の弁護士ですので、口頭または書面で弁護士に解任の意思を伝え、弁護士の案内に沿って解任手続きを行うだけです。一方で国選弁護人は、自由に解任できず、以下の場合に限られます。
<刑事訴訟法 第38条の3>
- 私選弁護人が選任された場合
- 被告人と弁護士の利益が対立する場合
- 弁護士が心身の故障等で職務不能な場合
- 弁護士がその任務に著しく違反した場合
- 被告人が暴行・脅迫などして職務継続が不相当な場合
なお、私選弁護人と契約すれば、国選弁護人は自動的に解任されます。
私選弁護人のメリット・デメリット
【メリット】刑事事件に強い弁護士を自由に選べる
私選弁護人を選ぶと、刑事事件を担当した経験豊富な弁護士や、自身と同様の事例について経験のある弁護士に依頼できる等のメリットがあります。
また、依頼する前に相談を行って信頼できる弁護士なのかを確認できる点や、選任後に相性が合わない等の場合には、解任できる点もメリットです。
国選弁護人は誰が選任されるのかわからないため、国選の際には手を抜く弁護士や、刑事事件を担当した経験の乏しい弁護士が選任されるおそれもあります。
刑事事件の被疑者・被告人となる経験は、多くの人にとって最初で最後だと思いますので、多くの実績がある弁護士を選ぶことをおすすめします。
【メリット】早期に弁護士に依頼できる
私選弁護人は逮捕前から依頼できるため、早期段階から弁護活動を開始できます。身柄拘束が伴う身柄事件では、最長で23日以内に検察官によって起訴・不起訴の判断が下されます。
そのため、できる限り早く弁護士に依頼し、弁護活動に着手することが重要です。時間を確保できれば、弁護活動の範囲が拡大し、充実した法的サポートを受けられます。
また、身柄拘束が伴わない在宅事件でも、逮捕されれば、起訴されるおそれがあります。在宅事件は、身柄事件とは異なり、起訴・不起訴の決定まで時間制限はありませんが、軽微な事件の場合は手続きが早く進む傾向にあります。いずれの場合も、早期に弁護士に依頼することによって、被疑者・被告人の負担を大きく軽減できます。
逮捕された時の流れについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
逮捕された時の流れ【メリット】逮捕回避や不起訴処分の可能性が高まる
私選弁護人への依頼はいつでも可能なため、逮捕回避や不起訴処分の可能性が高まります。
逮捕回避や不起訴処分獲得の実現は、決して容易ではありません。実現するには、被害者との示談交渉や意見書の提出などの対策を行い、被疑者・被告人にとって有利となる情状を主張し、立証する必要があります。主張・立証にあたっての準備には、相当の時間がかかるため、確保された時間が少なければ十分な準備が行えなくなります。
できる限り早く弁護士に依頼して、弁護士が活動できる時間を確保することが大切です。
国選弁護人の場合は、勾留決定後もしくは起訴後に選任されるため、弁護活動の時間は私選弁護人と比べて非常に少ないです。
【メリット】家族や会社への対応を任せられる
私選弁護人は、逮捕や勾留によって身柄を拘束された場合に、家族や会社とのやり取りを任せられます。
勾留が長期間に及べば、最長で23日間身動きが取れなくなります。被疑者との面会は基本的に勾留決定後となるため、逮捕直後は一切やり取りできません。逮捕直後から面会できるのは、被疑者の弁護人だけです。また、「証拠隠滅のおそれがある」と判断されると、接見禁止命令が下され、解除されるまで弁護人以外との面会を禁じられます。そうなれば、家族の不安が大きくなりますし、解雇や退学の可能性が高まります。
しかし、逮捕直後から私選弁護人に依頼すれば、家族や会社への対応をすべて任せられるため、不利益を受けずに済む可能性があります。
【デメリット】弁護士費用がかかる
私選弁護人を選ぶと、費用が高くなりやすい点がデメリットとして挙げられます。
私選弁護人は、被疑者・被告人が弁護士費用を負担し、依頼しなければなりません。
国が公費で負担し選任してもらえる国選弁護人とは異なり、弁護士費用がかかります。資力がないなどの問題で国選弁護人が選任された場合でも、後に資力があると判断されれば、弁護士費用を負担する必要がありますが、私選弁護人よりも低額です。
私選弁護人は費用面で負担がありますが、刑事事件に強い弁護士を選べるなど、得られるメリットの方が大きい場合が多いでしょう。
【デメリット】弁護士は自分で選ばなければならない
私選弁護人の場合は、弁護士を自分で探して選ばなければなりません。人によっては、弁護士を探して依頼の手続きを進めることが、面倒や難しく感じたりすることもあります。どのような弁護士に依頼するのが良いのか戸惑い、探し方がわからない方もいらっしゃるでしょう。
このような場合は、ホームページなどで刑事事件の取り扱いが豊富な弁護士を検索し、無料相談などを利用して相談してみると良いです。無料相談では、弁護士との相性や費用の確認が行えます。気になる弁護士がいれば、まずは相談や問い合わせをしてみましょう。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
国選弁護人のメリット・デメリット
【メリット】弁護士費用がかからない・少ない
国選弁護人を選任した場合であっても、一定のケースを除き、費用はかかります。
しかし、私選弁護人に依頼するよりも低額であるのが一般的です。
被疑者・被告人が弁護士を選ぶ手間・負担がないことも、一応のメリットとして挙げられるかもしれません
【デメリット】勾留または起訴されるまで選任されない
国選弁護人は勾留または起訴されるまで選任されない点がデメリットとして挙げられます。
不当な逮捕や勾留を回避し、不起訴処分を獲得するには、逮捕直後から弁護活動を行う必要があります。初期対応ができるのは、私選弁護人に限られるため、国選弁護人では対応に遅れが生じてしまいます。
特に逮捕直後に行われる捜査機関の取り調べで対応を誤ると、不利な供述調書が作成され、刑事処分の判断に悪影響を与える可能性があります。逮捕や拘留の回避、不起訴の獲得を目指すのであれば、できれば私選弁護人を選択すべきです。
【デメリット】どんな弁護士がつくかわからず変更もできない
国選弁護人は、基本的に裁判所によって選任されるため、どんな弁護士がつくのかわかりません。充実した法的サポートを受けるには、刑事事件に詳しい弁護士に弁護活動を行ってもらう必要があります。しかし、国選弁護人の場合は、必ずしも刑事事件に精通した弁護士が割り当てられるわけではない点に注意が必要です。
たとえ弁護士に不満があったとしても、私選弁護人を選任しない限り、弁護士の変更は難しいです。
私選弁護人の依頼にかかる費用相場
私選弁護人の依頼にかかる費用は、事件の大きさや複雑かどうかなどによって異なりますが、総額で60万~100万円程度が相場といわれています。
弁護士費用は、基本的に「相談料」「着手金」「報酬金」「実費」の4つが費用の主な内訳で、刑事事件になると「接見費用」などが加算されます。ただし、依頼する弁護士事務所や弁護士によって料金体系は異なるため、無料相談や問い合わせなどで確認することが大切です。
また、日本には、逮捕による身柄拘束を余儀なくされた場合に、逮捕から勾留までにかかる弁護士費用を日本弁護士連合会(日弁連)が立て替えてくれる制度があります。これを刑事被疑者弁護援助制度といい、逮捕時の資力が50万円未満の場合に利用が可能です。
私選弁護人を選ぶポイント
近年では、インターネットで刑事事件に取り組んでいることをアピールする事務所も増えており、どの事務所を信頼できるのかについて、慎重に吟味する必要が生じています。
では、私選弁護人はどのように選んでいけば良いのでしょうか?気をつけておくべきポイントをご紹介します。
刑事事件を専門に取り扱う部署がある
私選弁護人を選ぶ際は、刑事事件を専門に取り扱う部署がある事務所だとより安心です。
刑事事件の弁護活動は、民事事件とは少し異なります。刑事事件の経験や知識が豊富な弁護士であれば、被害者との示談交渉を円滑に進められます。被疑者・被告人にとって有利な情状となる事情の主張や立証も適切に行ってくれます。
しかし、刑事事件の経験や知識が乏しい弁護士だと、充実した法的サポートを受けられない可能性が高いでしょう。
刑事事件を専門とする部署があるかどうかは、事務所のホームページを確認するとわかります。
当法人で刑事事件を専門に扱う弁護士をお探しの方は、ぜひ以下のページをご覧ください。
しっかりとしたキャリアがある
刑事事件の経験が多いと、過去の事例のノウハウが蓄積され、より良い対応が可能となります。
自白事件と否認事件とでは対応が異なりますし、被害者がいる犯罪であるか否か、現状において身柄を拘束されているか否か、事件がどの段階に進んでいるかといった事情を考慮して、現時点においてベストな解決を図ることが可能です。
弁護士法人ALGの強みについては、以下のページで紹介していますので、ぜひご一読ください。
弁護士法人ALGの強み素早い対応が行える
刑事事件への対応はスピードが重要です。
逮捕されたケースでは、最長でも72時間以内に勾留決定が行われ、勾留されると引き続き10日間も身柄の拘束を継続されるおそれがあります。
勾留延長ともなれば、さらに10日間も拘束されてしまいます。
身柄の拘束は、長期間になればなるほど社会生活への影響が大きくなります。
会社や学校に逮捕・勾留された事実を知られれば、退職や退学に至るおそれも否定できないため、早期の身柄解放に向けて動くことは非常に重要です。
刑事事件で逮捕されてしまった場合について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
逮捕後、72時間以内が勝負刑事事件は迅速な対応が必要なため、できるだけ早く弁護士にご相談ください
刑事事件は、早期段階から弁護活動を行えるかどうかで、その後の状況が左右されます。
逮捕直後から適切かつ幅広く活動できれば、不当な逮捕や勾留を回避し、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。しかし、刑事処分が下されてからの弁護活動であれば、できることが限られてしまい、不起訴処分の獲得や減刑の実現が遠ざかります。
資力がある場合には、できる限り刑事事件に詳しい私選弁護人に依頼して、弁護活動を行ってもらうことが重要です。刑事事件の経験が豊富な弁護士による法的サポートを受けられれば、不当な逮捕や勾留を避け、不起訴処分の獲得に大きく近づけます。
刑事事件に詳しい弁護士をお探しの方は、ぜひ経験豊富な弁護士が在籍している弁護士法人ALGにお気軽にご相談ください。
