微罪処分とは?処分獲得のための方法や注意点

微罪処分とは?処分獲得のための方法や注意点

監修
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

酔って他人を叩いてしまったような状況で、警察から厳重注意を受けて身元引受人が呼び出され、そのまま家に帰される事件があります。

他人を叩いた行為によって暴行罪等が成立し、検察官送致されてもおかしくないように思えますが、状況によっては警察によって処理され、検察官送致されないことがあります。

このような処分のことを「微罪処分」といいます。

ここでは、微罪処分とはなにか、微罪処分の手続き、微罪処分を受けるためにすべきこと等について解説します。

目次

微罪処分とは

微罪処分とは、検察官が定めた基準により微罪であると考えられる事件について、検察官送致せずに警察において処理を行う処分です。

警察が捜査を行った事件は、すべて検察官送致するのが原則です(全件送致主義)。

それなのに、このような処分が存在する理由は、主に検察や裁判所の人員と施設を、より重大な犯罪のために活用するためだと思われます。

また、殴り合いのケンカをした後、頭が冷えて互いを許した場合等、改めて刑事事件化するのが妥当でないケースが存在することも理由の一つだと考えられます。

なお、令和元年の犯罪白書によれば、平成30年に微罪処分により処理された刑法犯は、全検挙人員の30%近くとされています。

不起訴との違い

不起訴処分とは、検察官送致された事件について、裁判所に審理を求めないとする処分です。

この処分を受けた場合にも、微罪処分を受けた場合と同様に、被疑者が裁判にかけられることはありません。

しかし、不起訴処分を受ける場合には、その前に逮捕・勾留されて、最大で23日間、身柄を拘束されるおそれがあります。

また、身柄を拘束されずに在宅事件となるケースであっても、不起訴処分になるまでに数ヶ月を要するおそれがあります。

それらに比べて、微罪処分であれば拘束時間や所要時間が短く、被疑者の負担は軽くなります。

どんなケースが多いか

微罪処分が適用される罪名は、多くの場合、窃盗・横領・詐欺・盗品等譲受・暴行・賭博といったものに限定されます。

さらに、それらの罪名に該当する犯罪であっても、悪質でないことが必要です。

例えば、窃盗については、少額の万引きであれば微罪処分になる可能性があります。

しかし、万引きであっても、高価な宝石やブランド品を盗んだ場合には、微罪処分になる可能性はほとんどありません。

さらに、空き巣のような侵入盗には適用されないでしょう。

また、詐欺についても、食い逃げと呼ばれるような単純な犯行態様であれば微罪処分になる可能性がありますが、巧妙な手口であったり組織的な犯行であったりすると、微罪処分になる可能性はないと考えられます。

微罪処分の影響

微罪処分を受けると、拘束される期間が短く済むだけでなく、前科が付かない等のメリットがあります。

犯罪を行ったことは事実であり、その記録として前歴は残りますが、社会生活にほとんど影響がありません。

ただし、再度罪を犯してしまった際に、微罪処分を受けられる可能性がほとんどなくなるという影響は生じます。

そのため、再び罪を犯さないように、自ら取り組む必要があります。

その後の生活への影響

犯罪を行っても、微罪処分を受けることができれば、その後の生活への影響は最小限に抑えることができます。

なぜなら、身柄を拘束される期間が短く、前科も付かずに済むからです。

以下で、社会生活等への影響について解説します。

会社や学校への影響

会社や学校には、微罪処分を受けたことを知られずに済む可能性があり、ほとんど影響なく終わらせることが可能です。

というのも、微罪処分を受ける場合には身柄を拘束される期間が短くなるため、周囲に知られずに済む可能性が高いからです。

また、警察が会社や学校に対して犯罪の事実を連絡することは、通常であればほとんどありません。

ただし、身元引受人になるのが職場の人間である場合には、結果的に会社に知られることはあり得ます。

また、犯罪を行ったのが公務員である場合には、犯行の事実を報道されてしまうリスクが公務員でない者に比べて高いため、職場に知られてしまうリスクが相対的に高いと考えられます。

微罪処分を受けたことが知られたとしても、必ずクビになるわけではありませんが、周囲から白い目で見られるおそれがあります。

就職への影響

微罪処分を受けたとしても、原則的に就職に影響することはないと考えられます。

なぜなら、微罪処分を受けたことを、面接等の際に会社へ報告する義務はないからです。

それに比べて、検察官送致され、起訴されて有罪判決を受けると前科が付いてしまい、賞罰欄への記載義務等が発生するだけでなく、一定の職業への就職が制限される等の影響が生じます。

なお、何らかのきっかけで実名報道されてしまうと、その記録がインターネット上に残り続けるおそれは否定できません。

海外旅行への影響

微罪処分を受けたとき、指紋を採取されていると、海外旅行を行う際に若干の影響が生じるおそれがあります。

海外旅行を行う際に、前歴は基本的に問題とされません。

しかし、近年はアメリカ等の国において、入国しようとする者の指紋情報を照会するようになってきています。

そのため、指紋を採取されていると、些細な犯罪であっても入国を拒否されるおそれを完全に否定することはできません。

前科・前歴との関係

微罪処分が行われると、有罪判決を受けないので前科が付きません。

ただし、警察に検挙されたことに変わりはないため、前歴が付くことになります。

前歴が付くと捜査機関に記録が残り、一生消えることはありません。

とはいえ、この記録が公開されることはなく、前科とは異なり有罪が確定していないことから、再び罪を犯さなければ前歴の存在が悪影響を及ぼすリスクは低いと考えられます。

微罪処分は生活にほぼ影響ありません。だからこそ弁護士への依頼で確実に獲得しましょう

事件が微罪処分で終われば、被疑者にとって大きなメリットが生じます。

しかし、微罪処分になるはずだと自己判断していると、その予想に反して起訴されてしまうリスクがあります。

一般的に軽い罪だと考えられている犯罪であっても、被害者の処罰感情が強い等の事情があると、微罪処分を受けることができないからです。

微罪処分を受けられる可能性を高めるためにも、弁護士にご相談ください。

微罪処分の手続きの流れ

以下で、微罪処分の要件や手続き等について解説します。

微罪処分となる要件

微罪処分として処理される事件は、比較的軽微な事件であることが条件です。

軽微とは、被害額が少ないといったことを意味します。

また、動機が悪質でないこと、通常時の素行が良いこと、被害者の処罰感情が軽いこと、被害の回復が行われていること、今後の生活を監督する者がいること等が必要とされています。

ただし、これらの要件は確実なものではなく、明確な基準が公表されているわけではありません。

これは、どのような犯罪が微罪処分を受けられるのかを公表してしまうと、それを悪用しようとする者が現れるおそれがあるからだと考えられます。

そのため、できることはなんでもやるという姿勢で臨むべきでしょう。

手続きの流れ

事件発生後、まずは警察で事情聴取を受けます。

微罪処分を受けられる可能性があるのは、任意同行された場合や現行犯逮捕された場合であり、通常逮捕や緊急逮捕の場合には微罪処分を受けることはありません。

警察では「微罪処分手続書」と「被害者供述書」が作成されます。

「微罪処分手続書」には被疑者の身元について記載され、微罪処分を行っても良いかどうかを検討するためのチェック欄への記入が行われます。

また、「被害者供述書」には被害者の供述等が記載され、その内容が被疑者の処罰を望んでいないものであれば、微罪処分が適用される可能性があります。

なお、微罪処分の件数は、毎月「微罪処分事件報告書」にまとめられて、警察から検察へ報告されます。

微罪処分を受けたが余罪がある場合

常習性が高いとされる万引きなどは、検挙時点で複数回犯行を重ねているケースもあります。

そのため、検挙された時点で多数の余罪があることも考えられます。

微罪処分の要件について考えると、多数の余罪がある場合には、被害が軽微である等の要件に当てはまりにくくなると考えられます。

特に、同じ店舗で繰り返し万引きをしていた場合には、余罪についても被害者に把握されており、処罰感情が強まって微罪処分の獲得が難しくなるおそれがあります。

微罪処分を受けるためには

以下で、微罪処分を受けることができる可能性を高める方法をご紹介します。

反省の意を示すこと

少額の万引き等の犯罪は、被疑者に罪の意識がない場合があります。

そして、反省していない態度を示すと、被害者の処罰感情が高まることや、再犯のおそれがあると疑われてしまうことも考えられます。

深く反省して被害者に謝罪し、二度と罪を犯さないと誓うことが大切です。

少なくとも、微罪処分を受けられると期待して、事態を甘く見ることはやめた方が良いでしょう。

被害者がいる場合、示談をする

被害者の処罰感情が強い場合には、微罪処分を受けることが難しくなります。

特に、被害届が提出されている場合には、被害者の処罰感情が強いと考えられ、微罪処分を受けるのは困難です。

そこで、被害者との示談が有効です。

すでに被害届が提出されていても、それを取り下げることを示談の内容に盛り込んでおけば、微罪処分を受けられる可能性を高めることができます。

被害弁償をおこなう

万引きをしてしまった場合、盗んだ商品を買い取ることが望ましいです。

また、食い逃げをしてしまった場合にも、商品の代金を支払うべきでしょう。

勘違いしてはいけないのですが、お金を払っても犯罪がなくなるわけではありません。

くれぐれも、「金さえ払えば許されるはずだ」という態度で臨むことのないようにしてください。

とはいえ、金銭的な損害を賠償しておけば、微罪処分を受けられる可能性が高まります。

監督者がおり、素行にも問題がないことを主張する

微罪処分を受けるためには、身元引受人が必要となります。

これは、被疑者が再び犯罪を行うことのないように監督する者が必要だからであり、被疑者の家族が身元引受人となるケースが多いです。

また、初犯である等の事情があっても、被疑者が反社会的勢力に所属している等の場合、微罪処分を受けることはできません。

普段の素行に問題がないことは、真面目に勤めていることや、前科・前歴がないこと等を根拠として主張します。

弁護士が早期解決に向け、警察や被害者へ働きかけることが可能です

初犯で軽微な罪を犯してしまった場合であっても、必ず微罪処分を受けられるわけではありません。

ただ微罪処分の存在を知っているだけでは、適切な対応を妨げるおそれがあります。

弁護士は、微罪処分を受けられる状況であるかを予測して、必要な対応をとることが可能です。早期解決を目指すためにもぜひご相談ください。

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微罪処分の注意点

微罪処分について注意しておくべき点を、以下で解説します。

被害者がいる場合、きちんと誠意を見せる

微罪処分についての知識がある場合に、微罪処分を受けられると期待していると、被害者や警察官に「ふてぶてしい態度だ」と受け取られるおそれがあります。

酔っていたり、魔が差したりして犯行に及んでしまったのだとしても、心から反省してきちんと謝罪し、必要な賠償は行う等、被害者に誠意を感じ取ってもらえる対応をとってください。

警察からの呼び出しがある場合も

微罪処分を受けることができても、後になって警察から呼び出される場合があります。

例えば、暴行事件を起こして微罪処分を受けたケースでは、被害者の容態が急変するような事態も起こり得ます。

また、窃盗事件等についても、組織的な犯行であったことが後になって発覚してしまったケース等では、改めて取調べを受けたり逮捕されたりすることも考えられます。

示談でトラブルが起こるおそれがある

犯行の後で、損害賠償金に上乗せして迷惑料を支払う約束等をしたことにより、被害者が処罰を求めなかったケースでは、その後の交渉が決裂してしまうと、被害届や告訴状を提出されて微罪処分が受けられなくなってしまうおそれがあります。

当事者が交渉すると、お互いに感情的になりやすい点がリスクとなります。

また、被害者は、自身が犯罪の被害を受けたことから、法外と思えるような金銭の支払いを求めてくる事態も考えられるため、当事者による交渉は避けるべきです。

トラブルの再発を防ぐためにも、弁護士に任せるのが望ましいでしょう。

弁護士への依頼で回避できること

弁護士は、逮捕されることを防止し、現行犯逮捕されてしまった場合であっても、早期の釈放を求めて身柄の拘束期間を短くするように努めます。

捜査機関に対しては、再犯のおそれや、普段の素行に問題がないことを説明し、場合によっては弁護士が身元引受人になることも可能です。

また、被害者がいる犯罪では、【被害者との示談締結】が重要となります。

示談を締結していれば、被害者の処罰感情が和らいだと判断されるケースが多く、特に示談書に「加害者を許す」という言葉を入れることができれば効果が高くなります。

しかし、当事者が示談交渉を行うと、かえって被害者の処罰感情を蒸し返すおそれがあります。

また、事件によっては、被害者が加害者との接触を拒む事態も考えられます。

弁護士は冷静に交渉することが可能であり、適正な示談金を把握しています。

被害者に報復等を警戒されるおそれもないため、交渉は弁護士にお任せください。

微罪処分後の応対を誤り、起訴されてしまう場合もあります。個人で解決せず弁護士を頼りましょう

微罪処分を受けると、刑務所に行かなくて済むと安心して、被害者への被害弁償等を忘れてしまうかもしれません。

すると、不誠実だと感じた被害者が、被害届を提出する等して処罰を求めるおそれがあります。

微罪処分を受けることができた後の対応についても、一歩誤れば大変な事態となってしまいかねませんので、ぜひ一度ご相談ください。

微罪処分でよくある質問

微罪処分に関してよくある質問について、以下で解説します。

以前に一度微罪処分を受けています。2回目の微罪処分を受けることはできるのでしょうか?

すでに微罪処分を受けたことのある者が、再度微罪処分を受けられる可能性は、まったくないわけではありませんが、かなり低いといえます。

例えば、微罪処分を受けたのが何十年も前であった場合等では、まったく考慮されないわけではありません。

しかし、基本的には、微罪処分を受けられるのは1回だけであると考えるべきでしょう。

相手から被害届が出ている場合でも微罪処分となりますか?

被害届が出されているということは、被害者の処罰感情が強いことを意味しますので、微罪処分を受けられる可能性は低いといえます。

仮に、被害者と示談する等して被害届が取り下げられれば、処罰感情が和らいだと考慮され、微罪処分となる可能性が高まります。

示談書を書いてもらったのに被害届を取り下げてもらえないのですが…。

被害者が被害届を取り下げなかったとしても、被害届を取り下げる旨の示談が成立していれば、基本的に効果に違いは生じないと考えられます。

被害届とは、犯罪の被害者が被害を受けたことを捜査機関に申告するための書面であり、それによって捜査機関が捜査する義務が生じるわけではありません。

早い段階で示談を成立させることにより、被害者の処罰感情が緩和されたとして微罪処分となる可能性が高まります。

身元引受人となる人がいないのですが、微罪処分になりませんか?

微罪処分となる条件として、身元引受人がいる点が挙げられることがあります。

しかし、微罪処分の要件はほとんど公表されていないため、身元引受人が不可欠だとはいえません。

とはいえ、今後の生活を監督する身元引受人は、存在する方が望ましいと考えられます。

微罪処分を受けられない場合どうなるのでしょうか?

検挙されて微罪処分を受けられなかった場合、事件が検察官に送致されることになります。

その後、検察官が起訴するか否かを決定します。

不起訴処分となった場合には前科が付きませんが、起訴されてしまった場合には、極めて高い確率で有罪判決を受け、前科が付くことになります。

なお、罪が100万円以下の罰金または科料となる場合において、被疑者が同意すれば略式起訴されることがあります。

微罪処分にて収めたい場合、穏便に済ませるなら弁護士への依頼が一番です

突発的な事情により犯罪を行ってしまったとしても、将来を悲観して諦めてしまう必要はありません。

微罪処分の獲得ができれば、社会生活への悪影響を最低限に抑えることが可能です。

そのためにも、すぐに弁護士へご相談ください。

大きな要素となる示談交渉だけでなく、その前後の対応、そして処分後の生活の支援についても可能な限り対応しますので、迷わずお問い合わせいただくことをおすすめします。

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監修

監修 : 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

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