痴漢で現行犯以外に捕まることはある?後日逮捕されるケースや対処法など


痴漢事件は、現行犯逮捕が多い犯罪であり、そのほとんどが私人逮捕によるものです。
これは、痴漢が電車や駅構内などの公共の場で行われやすいことが主な理由です。
しかし、すべての痴漢事件が現行犯逮捕されるわけではありません。場合によっては、現行犯以外、つまり、後日逮捕される可能性もあります。
そこで本記事では、痴漢で後日逮捕されるケースをはじめ、後日逮捕につながる痴漢の証拠や後日逮捕された場合の対処法などについて、詳しく解説していきます。
目次
痴漢で現行犯以外に捕まる可能性はある?
痴漢は、現行犯以外でも逮捕される可能性が十分にあります。
そもそも痴漢における逮捕の種類は、大きくわけて以下の2種類です。
現行犯逮捕 | 犯罪を行っている人や犯罪を終えた直後の人を逮捕すること。 裁判所が発布する逮捕状なしで誰でも(一般人でも)逮捕することができます。 |
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後日逮捕 | 犯行後、裁判所が発布する逮捕状を基に、警察などの捜査機関が被疑者の自宅等を訪れて逮捕することです。 |
ほとんどの痴漢事件が現行犯逮捕によるものである背景には、「痴漢行為が公共の場で行われやすいこと」「目撃者が多いこと」「私人逮捕が可能なこと」などの理由があります。
後日逮捕される可能性はゼロではありませんが、痴漢行為に常習性があったとしても、警察による張り込みなどで被疑者をマークし、犯行を確認でき次第、現行犯逮捕に至ることが多いのが実情です。
痴漢で逮捕されると何罪になる?
痴漢行為で問われる可能性のある罪は、次のとおりです。
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迷惑防止条例違反
各都道府県で定められている迷惑防止条例に違反したとみなされ、多くの自治体で6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑罰が定められています。 -
不同意わいせつ罪
相手の同意がない状態や相手が同意する意思を形成・表明・全うすることができない状態でわいせつ行為を行うことで成立します。6ヶ月以上10年以下の懲役という重い法定刑が定められています。 -
不同意性交等罪
相手の同意がない状態や相手が同意する意思を形成・表明・全うすることができない状態で性交等を行うことで成立します。5年以上の有期拘禁刑という不同意わいせつ罪よりもさらに重い法定刑が定められています。
逮捕されると日常生活にも影響する
痴漢の罪に問われ逮捕されると、捜査機関による身柄拘束を受けるため、当然日常生活にも大きく影響します。
逮捕された場合に生じるおそれのある主なデメリットは、次のとおりです。
- 逮捕後、長期にわたり身柄拘束を受ける
- 逮捕されたことが会社や学校に知られ、懲戒処分や退学処分等のリスクが生じる
- 痴漢事件がメディアに報道されれば、社会的信用を失うおそれがある など
このようなデメリットが生じないようにするためには、捜査機関が後日逮捕に踏み出す前に、今後の対応について弁護士に相談することが大切です。
なお、刑事事件は初動が命となりますので、なるべく早めに弁護士へ相談し、速やかに弁護活動を開始するようにしましょう。
痴漢で後日逮捕されるケースとは?
被疑者を後日逮捕するためには、次の要件を満たす必要があります。
後日逮捕の要件
- 被疑者が犯人であることを裏付ける相当な理由があること
- 被疑者に逃亡または証拠隠滅のおそれがあること
①と➁の要件を満たすと、警察は裁判所に対して逮捕状の請求を行うことが可能となります。その後、裁判官より逮捕状の発布がなされ、後日逮捕に至るというのが主な流れです。
しかし、痴漢は衝動的に行われることが多いため、犯行を目撃してその場で逮捕に至るという現行犯逮捕がほとんどです。
たとえば、現行犯逮捕には至らなかったものの、防犯カメラに犯人および犯行が映っており逃亡している場合などには、捜査のうえ後日逮捕される可能性が高いです。
後日逮捕されるタイミング
「この期間までに後日逮捕しなければいけない」というような定めはないため、後日逮捕されるタイミングは捜査の進行状況によって異なります。
捜査が順調に進み、犯人特定まで早くたどり着いた場合には、事件発生から約3ヶ月以内で後日逮捕に至るでしょう。
ただし、被害者が捜査に協力的な場合には、事件発生から約1ヶ月以内で後日逮捕に至ることもあります。
後日逮捕されるタイミングは捜査の状況次第で異なりますが、被疑者を逮捕するために警察が動くタイミングは被疑者が在宅している可能性が高い早朝に行われることが多いです。
任意同行を求められる場合もある
痴漢事件でも後日逮捕されることはありますが、そう多くはありません。
実務上では、被疑者の自宅を訪問してすぐに逮捕するのではなく、まずは任意同行を求めるケースの方が多くあります。
逮捕状があるにもかかわらず任意同行を求める理由としては、被疑者の名誉やプライバシーに配慮するためだといわれています。
なお、警察から任意同行を求められた場合は、文字通り、任意であることからこれを拒否することができますが、かえって怪しまれてしまい逮捕される可能性を高めてしまうため、素直に応じた方がよいでしょう。
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後日逮捕につながる痴漢の証拠とは?
後日逮捕の要件の一つは、被疑者が犯人であることを裏付ける相当な理由があることです。つまり、後日逮捕するためには有効な痴漢の証拠を押さえる必要があります。
では、どのようなことが痴漢の証拠となり得るのでしょうか。
痴漢事件では、次のようなことが痴漢の証拠となり、後日逮捕につながるとされています。
- 被害者の供述
- 目撃者の供述
- 防犯カメラの映像
- 改札の入出場記録
- 繊維鑑定
- DNA鑑定
- 加害者宅にある痴漢関係の動画など
それぞれの項目について、次項にて詳しく解説していきます。
①被害者の供述
被害者からの証言は、特に重要な証拠といえます。
痴漢などの性被害では、被害者の供述をもとに捜査が進められ、犯人特定へと急ぎます。
被害者の供述から尾行捜査が行われることもあり、その際に捜査報告書が作成され、痴漢の証拠として取り扱われることもあります。
ただし、被害者の供述に信憑性があるのかどうかを見極めることが重要です。被害者の供述だけに頼ってしまうと、冤罪を生み出すおそれがあるため、慎重に判断していかなければなりません。
②目撃者の供述
第三者である目撃者の証言もまた、被害者の証言と同様に重要な証拠となり得ます。
目撃者は、事件の当事者ではないため嘘をつく理由がないということから、証言に信憑性があると判断されやすいです。
こうした点から、目撃者の供述が被害者の供述を裏付けることになる場合もあります。
ただし、被害者の友人が目撃者である場合は、被害者の証言に引きずられやすく、満員電車の乗客が目撃者の場合は、犯人の顔や痴漢行為を目視することが難しいと考えられるため、証言の信憑性を慎重に判断する必要があります。
③防犯カメラの映像
痴漢事件の多くは、電車や駅構内で発生したものです。
そのため、設置されている防犯カメラの映像に痴漢行為の瞬間が映っていれば、それが痴漢したことを裏付ける証拠となります。
また、捜査機関は事件現場の防犯カメラから、被害者と目撃者の有無や被疑者と被害者との距離などの確認も行い、そこから被害者の供述などその他の証拠と照らし合わせて、事件の全貌を明らかにしていきます。
現在は、ほとんどの電車に複数の防犯カメラが車両ごとに設置されており、痴漢行為が映像として残りやすいです。
しかし、満員電車時などは死角や人の多さで映りにくくなるため、防犯カメラだけでは決定的な証拠といえないことも多くあります。
④改札の入出場記録
電車を利用する際に使用する交通系ICカードや定期券は、改札を通ると記録されます。
捜査機関である警察は、鉄道会社に対して捜査事項照会を行い、記録された改札の入出場記録を確認することができます。
そのため、痴漢を疑われて逃亡した際に電車を利用していた場合には、その記録を確認して足取りを追われることになります。
万が一冤罪をかけられた場合には、逃亡せずに捜査に協力することが大切です。
⑤繊維鑑定
繊維鑑定とは、被疑者の手や指に付着している繊維をテープで採取し、被害者の衣服と同じ繊維であるかどうか調べる方法です。
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被疑者から被害者の衣服と同じ繊維が確認された場合
被疑者が被害者の衣服に触れた=被害者の身体に触れたということを裏付ける証拠となります。 -
満員電車などの場合
電車の揺れなどによって不可抗力で付着していることもあるため、繊維鑑定だけでは痴漢を裏付ける決定的な証拠とはならないことが多いです。
⑥DNA鑑定
DNA鑑定は、身体に付着している自分以外の人のDNAを含む皮膚片からその個人を特定することができます。また、皮膚片だけでなく、髪の毛や体液などからもDNA鑑定で個人を特定することが可能です。
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痴漢を疑われている被疑者の身体に被害者のDNAが付着している場合
被疑者が被害者の身体に触れた=痴漢行為をしたという客観的な証拠となります。 -
被害者の下着に被疑者のDNAが付着している場合
被疑者が被害者の下着に触れた証拠となります。 -
被疑者が被害者の下着に手を入れて膣内に指を挿入した場合被害者のDNAを含む体液が被疑者の手や指に付着しているかどうかが重要となります。
⑦加害者宅にある痴漢関係の動画など
被疑者の自宅を捜索した際に、痴漢関係の動画や画像、雑誌などがある場合には、痴漢の証拠として差し押さえられることがあります。これは、被疑者に痴漢の性癖があるのかを確認し、それを立証するためです。
被疑者の性格や犯行動機につながる可能性も高いため、被疑者の自宅を捜索して痴漢関係の動画や雑誌などがないか、くまなく確認されます。
痴漢で後日逮捕された後の流れは?
痴漢で後日逮捕された場合は、主に次のような流れで手続きが進んでいきます。
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逮捕
逮捕されると警察官による取り調べを受けて、その後逮捕から48時間以内に事件が検察官へ送致されます。 -
検察官による取り調べ
警察官から送致を受けた検察官は、改めて取り調べを行い、送致を受けてから24時間以内に被疑者の身柄を引き続き拘束するかどうかの判断を行います。拘束する場合には、裁判官に対して拘留請求が行われます。 -
裁判官による勾留質問
勾留請求を受けた裁判官は、被疑者を裁判所に呼び出して勾留請求を認めるかどうかを判断するための質問を被疑者に対して行います。 -
原則10日間の勾留
裁判官から勾留請求が認められると、はじめに10日間留置場にて勾留されます。その間、捜査機関は捜査を続けており、捜査状況次第で勾留延長がなされます。 -
起訴・不起訴の判断
被疑者を勾留している間に、検察官は被疑者を刑事裁判にかけるかどうかを判断します。ここで、不起訴と判断されれば、身柄拘束が解かれ釈放されます。 -
判決
検察官が起訴と判断した場合は、刑事裁判にかけられ、痴漢の被疑事実は法廷で審理されることとなります。

痴漢で後日逮捕を回避する方法はある?
痴漢による後日逮捕を回避する方法には、次のようなことが挙げられます。
- 弁護士に相談する
- 警察に自首する
- 被害者との示談成立を目指す
これらを押さえることで、痴漢による後日逮捕を回避できる可能性を高めることができます。
では、それぞれの方法について、次項にて詳しく解説していきます。
弁護士に相談する
弁護士に相談することで、今後の対応について具体的なアドバイスを受けることができ、後日逮捕を回避できる可能性を高めることができます。
痴漢行為をしてしまい、現場から逃走してしまった場合でも、早期に弁護士へ相談することで今後どのように対応すればよいのかのアドバイスをもらえるだけでなく、弁護活動として今後をサポートしてもらえます。
事件後は、逮捕をおそれて冷静に判断できないことも多く、不安と恐怖でいっぱいの方もいるはずです。そのような場合には、なるべく早めに弁護士へ相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。
警察に自首する
痴漢事件では、警察に自首することで後日逮捕を回避できる可能性が高まります。
なお、後日逮捕されないということは、事件についての報道の回避も見込めますが、有名人の場合は後日逮捕されなくても週刊誌などに書かれてしまうおそれがあります。
とはいえ、後日逮捕されるのではないかと心配で自首するべきか悩んでいる場合には、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
弁護士を立てることにより、逮捕の要件の一つである証拠隠滅のおそれが低いと判断されやすくなるため、さらに逮捕される可能性を低くすることができます。
被害者との示談成立を目指す
被害者との示談成立を目指すことは、刑事事件においてもっとも重要となります。
被害者の存在する罪を犯してしまった場合に不起訴の獲得や早期釈放を目指すためには、被害者との示談成立が非常に大切です。
示談成立は、事件の当事者同士の和解を意味するため、刑事事件として起訴されない可能性も高めます。
被害者との示談交渉を円滑に進めるためには、刑事事件に強い弁護士にご相談されることをおすすめします。刑事事件に精通した弁護士であれば、適切なタイミングや金額で被害者と示談交渉を行うことができます。
また、被疑者が被害者に直接連絡することはトラブルを招くおそれが高いため、弁護士の介入は必要不可欠でしょう。
痴漢の現行犯以外で逮捕されるか不安なことがあればすぐに弁護士にご相談ください
痴漢事件は、現行犯逮捕だけでなく、後日逮捕される可能性も十分あり得ます。
痴漢行為をしてしまった方も、冤罪をかけられた方も、まずは捜査に協力的な姿勢を示すことが大切です。
そして、刑事事件を得意とする弁護士に相談し、今後の対応について具体的なアドバイスを得ましょう。
そうすることで、後日逮捕される可能性を低くすることができ、たとえ逮捕されたとしても、不起訴の獲得や早期釈放に期待することができます。
刑事事件は、スピードが命とよくネットやテレビで見かけるように、刑事事件の手続きは想像以上のペースで早く進んでいきます。そのため、どれほど早い段階から弁護活動を行えるかが重要であり、初動も肝心です。
痴漢行為をしてしまい、後日逮捕されるか不安な方は、弁護士法人ALGへご相談ください。