クレジットカードの不正利用は横領罪?詐欺罪?家族間でも違反行為となる可能性も

クレジットカードを所有していると支払いの際に便利ですが、注意をしなければ、無自覚のうちに不正利用をしてしまうかもしれません。そして、クレジットカードの不正利用は、犯罪に該当するおそれがあります。
この記事では、クレジットカードを不正利用すると、どのような犯罪が成立するか等について解説します。
目次
他人名義のクレジットカードを使用することは詐欺罪
他人名義のクレジットカードを使用した場合、どのような罪が成立するでしょうか。
「他人の物を持っていて、それを自分が使うのだから、横領罪が成立しそうだ」と思われる方が多いのですが、他人名義のクレジットカードを使用すると、横領罪ではなく詐欺罪が成立します。
なぜなら、カード加盟店にとっては、カードの使用者が名義人本人であることが重要であり、名義人でない者に対して商品を販売することはないと考えられるからです。
つまり、他人名義のカードを使用するということは、自分は名義人であると偽って、加盟店から商品を騙し取っている、ということを意味しているのです。
詐欺罪とは
詐欺罪は、刑法246条に定められており、人を欺いて財物を交付させた者に成立する罪です。
この罪を犯した者は、10年以下の懲役に処されます。
加えて、人を欺いて財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も同様に処罰すると規定されています。
詐欺罪の代表的な行為として挙げられるのが、振り込め詐欺(オレオレ詐欺、還付金詐欺)、結婚詐欺、取り込み詐欺、原野商法といったものがあります。
無銭飲食や霊感商法等も、詐欺罪に該当する場合があります。
他人からカードを盗んだ場合は窃盗罪
クレジットカードそのものは財物であるため、他人からクレジットカードを盗むことは、窃盗罪に該当する行為です。
そのため、盗んだカードを使用すると、窃盗罪と詐欺罪が成立することになり、単なるカードの不正使用よりも罪が重くなります。
ちなみに、誰かが落としたカードを拾って、それを警察等に届けることなく長期間保有していた場合には、遺失物横領罪が成立する場合があります。
窃盗罪とは
窃盗罪は、刑法235条に定められており、他人の財物を窃取した者に成立する罪です。
この罪を犯した者は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
窃盗罪に該当する代表的な行為として、万引きやスリ、空き巣、置き引き、車上荒らし等があります。
ひったくりも、窃盗罪や強盗罪に該当する行為です。
また、他人のキャッシュカードを使い、推測する等して判明した暗証番号を入力して、ATMから現金を引き出す行為も窃盗罪に該当します。
盗む際に暴行や脅迫を用いた場合は恐喝罪や強盗罪が成立する可能性
他人からカードを盗む際に暴行や脅迫を用いれば、恐喝罪や強盗罪が成立するおそれがあります。
恐喝罪と強盗罪の違いは、被害者の反抗を抑圧する程度、つまり抵抗が不可能なほどの暴行・脅迫が行われたか否かです。
被害者の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を行ってカードを奪った場合は強盗罪、被害者の反抗を抑圧するには至らない程度の暴行・脅迫を行って被害者にカードを出させた場合は恐喝罪となります。
ただし、この区別は加害者の人数や凶器の有無等、客観的な状況を根拠として判断されるため、被害者が実際に感じた恐怖の程度ではなく、一般的な人間ならばどう感じるかを基準として罪が成立するか判断されます。
恐喝罪とは
恐喝罪は、刑法249条に定められており、人を恐喝して財物を交付させた者に成立する罪です。この罪を犯した者は、10年以下の懲役に処されます。
加えて、人を恐喝して財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も同様に処罰されます。
被害者を大勢で取り囲んだり、暴力を振るうことを示唆したりする等の暴行・脅迫によって被害者を畏怖させ,不本意だが金品等の財物を渡すしかないと思わせて財物を交付させる、という経緯で脅し取る行為等が該当します。
たとえ借金の取り立て等の行為であったとしても、取り立てる方法が行き過ぎたものであった場合には、恐喝罪が成立することがあります。
強盗罪とは
強盗罪は、刑法236条に定められており、暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者に成立する罪です。
この罪を犯した者は、5年以上の有期懲役に処されます。
被害者の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を行うことで財物を奪うという行為により成立し、コンビニ強盗や銀行強盗としてイメージされるような、建物に押し入って刃物や銃を用いる行為だけでなく、おやじ狩りと呼ばれるような行為等も該当します。
ひったくりは窃盗罪になる場合もありますが、犯行の際に被害者に抵抗され、引きずったり突飛ばしたりするといった反抗を抑圧する程度の暴行を加えた場合には、強盗罪が成立することがあります。
名義人の許可を得ていても詐欺罪が成立する
クレジットカードを所有している方は、家族や親しい知人の間で、罪悪感なくカードの貸し借りを行っているかもしれません。
しかし、カードの会員規約上では、名義人でない者がカードを使用することを禁止している場合が多く、貸した相手がカードを使用すると、使用した者は詐欺罪に該当するおそれがあります。
判例においても、カードを不正に使用した者が、カード名義人から使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金が、会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたとしても、詐欺罪の成立は左右されないとしています(最高裁 平成16年2月9日第2小法廷判決)。
家族に不正利用された場合
クレジットカード名義人の家族が不正にカードを使用した場合、詐欺罪が成立するおそれがあります。
近年では、子供が親のカードを勝手に使い、オンラインゲームやネットショッピング等の支払いを行ってしまうトラブルが増えていると言われています。
また、浪費癖のある親が、子のカードを勝手に使ってしまうケースも発生しています。
どちらの場合でも、カード名義人以外の者がカードを使用していることに変わりはなく、詐欺罪の構成要件を満たすおそれがあります。
クレジットカードの現金化は犯罪?
「クレジットカード現金化」と呼ばれる行為があります。
これは、クレジットカードの所有者が、カードのキャッシング枠を使わずにお金を借りるためのもので、2つの手口があります。
1つは、カードの所有者に安価な商品を高額で購入させて、その商品を業者が買い取る際にお金を支払うというものです。
もう1つは、カードの所有者に高額で販売されている商品を購入させて、その商品を買い戻す際に、代金の一部をキャッシュバックするというものです。
どちらも、実質的には貸金業に該当する行為であると考えられ、業者が出資法違反で逮捕された事例があります。カード所有者も、横領罪や詐欺罪が成立するおそれがあります。
規約により禁止されていることがほとんど
「クレジットカード現金化」によって、カード所有者が処罰された判例は、まだ確認されておりません。
ですが、「クレジットカード現金化」は、カード会社の規約によって禁止されている場合がほとんどです。
たとえ逮捕されなくても、規約違反によってカードを使用する権利を剥奪され、使用した金額の一括返済を求められるおそれもあります。
「クレジットカード現金化」は、借金を膨らませるだけでなく、業者とのトラブルのリスクも生じさせる行為です。カードは規約に従って利用するべきですので、違反行為はやめましょう。
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会社から貸与されているカードを私的目的で利用した場合
会社から貸与されているクレジットカードを、私的な飲食や私物の購入等の目的で利用した場合には、業務上横領罪が成立します。
理論的には、背任罪が成立する可能性もありますが、実務上は業務上横領罪として取り扱われる場合が多いようです。
業務上横領罪とは
業務上横領罪は、刑法253条に定められており、業務上自己の占有する他人の物を横領した者に成立する罪です。この罪を犯した者は、10年以下の懲役に処されます。
背任罪とは
背任罪は、刑法247条に定められており、他人のためにその事務処理を行う者が、自己もしくは第三者の利益を図ることや本人に損害を加えることを目的としてその任務に背く行為をし、結果本人に財産上の損害を加えた場合に成立する罪です。
この罪を犯した者は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
背任罪を成立させるケースとして挙げられるのは、返済される見込みがほとんどない融資を実行するというもの等があります。
ETCカードやガソリンカードも同じ
ETCカードやガソリンカード等のカードが、会社から貸与される場合があります。
これらのカードも、クレジットカードと同様に、私的な利用は許されません。
社員が、自分の旅行のために会社のETCカードを使ったり、私用車のために会社のガソリンカードを使ってガソリンを入れたりした場合には、業務上横領罪等が成立するでしょう。
会社のカードを私的利用してしまった場合どうすればいい?
業務上横領が発覚しても、すぐに刑事事件化するとは限りません。
というのも、会社によっては、刑事事件化することよりも、 横領を行った者に損失を補填させることや、犯人に対して懲戒解雇等の処分をすることが重要だと考える場合もあるからです。
そして、業務上横領は、被害者である会社からの捜査機関に対する被害申告がないと、刑事事件化しないことが多いのです。
そこで、会社のカードを私的利用してしまった場合には、刑事事件化される前に会社と示談交渉を行い、警察に被害申告が行われることをなるべく防ぐことが重要となります。
刑事事件化させないためにも弁護士にご相談ください
業務上横領が刑事事件化してしまうと、逮捕されて身柄を拘束されてしまったり、インターネットに実名が掲載されてしまったり、有罪判決を受けて前科がついてしまったりする場合があります。
それだけでも、今後の人生に多大な影響を及ぼしかねませんが、もしも実刑判決を受けてしまうと、刑務所に収容されてしまい、社会復帰が困難になってしまうリスクがあります。
そのような事態を防ぐためには、刑事事件化する前に会社との示談を行うことが有効です。しかし、自ら交渉を行うと、感情的な対立等が原因でこじれてしまう場合があります。
示談交渉のプロである弁護士は、事件化を防ぐための交渉を着実に行い、必要であれば弁済を分割払いにしてもらう等の対応が可能になることもありますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
クレジットカードの不正利用に関するトラブルは弁護士にご相談ください
クレジットカードは便利なものですが、軽い気持ちで会社のカードを不正利用する等の行為をしてしまうと、業務上横領罪等が成立します。業務上横領罪は、法定刑が10年以下の懲役となっている重い罪であり、予想外の深刻な事態を招きかねません。
会社のカードを不正利用する等してしまい、刑事事件化しそうな場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士は、刑事事件化を防ぐために示談交渉を行います。刑事事件化してしまった場合でも、示談が成立していれば、逮捕されずに済んだり、実刑が避けられたりする場合もありますので、交渉は弁護士にお任せください。