業務妨害罪とは?構成要件・罰則・時効・対処法などを弁護士が解説
業務妨害罪とは、他人の仕事や活動を妨げる行為に対して適用される法律です。内容によっては、逮捕されることもあります。
また、業務妨害罪の被害を受けた側は相手に対して損害賠償請求が可能です。つまり、業務妨害罪は刑事上だけでなく、民事上の責任も負う罪となるため、迅速かつ適切な対応が必要です。
本記事は、業務妨害罪の構成要件をはじめ、罰則や時効、業務妨害をしてしまった場合の対処法などについて、詳しく解説していきます。
目次
業務妨害罪とは
業務妨害罪とは、「偽計」または「威力」を用いて他人の業務を妨害した場合に成立する罪です。
そのため、日本の刑法では、業務妨害罪を次の2種類に分類しています。
- 偽計業務妨害罪(ぎけいぎょうむぼうがいざい)
偽計を用いて他人の業務を妨害する行為 - 威力業務妨害罪(いりょくぎょうむぼうがいざい)
威力を用いて他人の業務を妨害する行為
また、コンピューターや情報システムを利用して他人の業務を妨害する行為では、電子計算機損壊等業務妨害罪が成立します。
このように、どのような手段で業務妨害を行ったのかによって、問われる罪が異なります。
なお、業務妨害罪における「業務」には、仕事だけでなく、以下のような業務や活動も含まれます。必ずしも仕事だけが対象となるわけではない点に注意が必要です。
- 組合や団体の活動
- 各種イベント
- サークル活動
- ボランティア活動 など
偽計業務妨害罪の構成要件
偽計業務妨害罪の構成要件は、刑法第233条で以下のように定められています。
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
簡単にいうと、①「虚偽の風説を流布」または「偽計を用いて」、②「業務を妨害した」場合に成立するということです。
「虚偽の風説を流布」とは、事実とは異なる情報を不特定多数に広める行為を指し、「偽計」は、人を騙すために使う計略や策略を指します。
虚偽の情報の流布や偽計によって、業務の中断や信用の失墜、経済的損失などが結果として発生した場合には、偽計業務妨害罪に問われる可能性が高いです。
また、業務妨害罪には、未遂の場合でも罪に問われる未遂罪の規定はありません。
しかし、結果に関係なく業務が妨害される危険が発生した時点で罪が成立する場合があります。そのため、未遂に終わったからといって罪に問われないと考えるのは危険です。
偽計業務妨害罪の具体例
偽計業務妨害罪の具体例には、以下のような行為が挙げられます。
具体例
- 実際に利用する意思がないのに飲食店の予約を入れた
- SNS上に「あの店で飲食したら虫が入っていた」などの虚偽の事実を書き込み、拡散した
- オンラインショップのレビューに「商品は不良品」などの嘘を書き込んだ
- インターネット上に「電車が故障して大規模な事故が起こる予定」などと嘘の情報を書き込んだ
- 店舗に無言電話を複数回かける など
上記のように、虚偽の情報を不特定多数に広めて営業を妨害する行為だけでなく、人を欺いたりする「偽計」の行為で業務を妨害した場合も偽計業務妨害罪が成立します。
実際に利用する意思がないにも関わらず飲食店の予約を入れて“故意”にその飲食店の営業を妨害する行為は、「偽計」に該当します。
威力業務妨害罪の構成要件
威力業務妨害罪は、刑法第234条で次のように定められています。
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
簡単にいうと、①「威力を使う」こと、②「他人の業務を妨害する」ことの2つがそろうと成立します。
ここでいう「威力」とは、相手の意思を押さえつけるほどの力や勢いのことです。たとえば、暴力や脅迫などが典型例です。
また、「前条」とは偽計業務妨害罪を指し、罰則は同じく3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
さらに、未遂罪の規定はありませんが、実際に業務が止まらなくても、妨害する危険が生じた時点で罪に問われる可能性があります。つまり、「やろうとしたけれど未遂だから大丈夫」というわけではない点に注意が必要です。
威力業務妨害罪の具体例
威力業務妨害罪の具体例には、以下のような行為が挙げられます。
具体例
- 株主総会において、複数名で次々と発言を続けて怒号し、悪口雑言を繰り返した
- 店舗や企業に爆破予告や脅迫電話をした
- SNS上で企業に対し、「迷惑電話をかけろ!」と煽るような書き込みをした
- 店舗や企業に大量のメールやFAXを流した
- 店舗で大声を出して暴れる、床に長時間座って動かない など
上記のような、圧力や力で他人の業務の遂行を困難にする行為は、威力業務妨害罪に問われる可能性が高いです。
店舗や企業に「爆弾を仕掛けた」などと虚偽の情報を流した場合であっても、実際には警察や施設が対応を強いられ業務が妨げられるため、威力業務妨害罪が成立します。
電子計算機損壊等業務妨害罪の構成要件
電子計算機損壊等業務妨害罪の構成要件は、刑法第234条の2で以下のように定められています。
第二百三十四条の二 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
簡単にいうと、①「電子計算機や電磁的記録を損壊し」、②「人の業務を妨害した」場合に成立するということです。
「電子計算機」とは、コンピューターやサーバーを指し、「電磁的記録」とは、コンピューターやサーバーに保存されたデータやファイルなどを指します。
電子計算機損壊等業務妨害罪は、コンピューターやサーバーを標的とした業務妨害罪です。
電子計算機損壊等業務妨害罪の具体例
電子計算機損壊等業務妨害罪の具体例には、以下のような行為が挙げられます。
具体例
- パソコンに不正アクセスし、データを改ざんした
- 病院の電子カルテのシステムにウイルスを仕掛ける
- 大学の成績入力システムに不正アクセスしてデータを書き換える
- 社用パソコンに保存されていたデータを無断で削除した など
上記のような、電子的手段で電子計算機(コンピューターやサーバー)を対象に業務妨害を行った場合には、電子計算機損壊等業務妨害罪に問われます。
なお、電子計算機損壊等業務妨害罪は、偽計業務妨害や威力業務妨害罪よりも、IT犯罪の重大性が反映されてより重い刑罰が定められています。
偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の違い
偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の大きな違いは、業務を妨害する手段です。
手段の違い
- 偽計業務妨害罪
人を欺いたり、誤信させるような狡猾な方法によって業務を妨害する→知的・間接的な方法で業務を妨害 - 威力業務妨害罪
人の意思を制圧するに足りる勢力や力によって業務を妨害する→暴力的・圧力的な方法で業務を妨害
どちらに当たるかは、主に使われた手段で判断されます。
なお、コンピューターやサーバーを狙って電子的な方法で業務を妨害した場合は、電子計算機損壊等業務妨害罪が適用されます。
業務妨害罪と同時に行われることが多い犯罪
業務妨害罪と同時に行われることが多いのは、主に下表の犯罪です。
| 罪名 | 要件 | 罰則 |
|---|---|---|
| 信用毀損罪 | 虚偽の風説を流布し、または、偽計を用いて、人の信用を毀損することで成立 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 名誉毀損罪 | 公然と事実を適示して、人の名誉を毀損することで成立 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 脅迫罪 | 相手の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加えることを告知して、相手を畏怖させた場合に成立 | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 不退去罪 | 退去要求に応じずにそのまま居座ることで成立 | 3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金 |
| 公務執行妨害罪 | 公務員が職務を執行する際に暴行や脅迫を加えて、その職務執行を妨害した場合に成立 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
たとえば、SNS上で芸能人相手に「この番組に出るなら殺す」「こういった仕事を引き受けるなら事務所に押し掛ける」などとコメントした場合には、威力業務妨害罪と脅迫罪の罪に問われます。
業務妨害罪の罰則
業務妨害罪は、主に「偽計業務妨害罪」と「威力業務妨害罪」に区別されていますが、どちらも刑法で定められている罰則は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
ところが、コンピューターやサーバーを対象に電子的手段でデータの改ざんや削除をして業務を妨害した場合(電子計算機損壊等業務妨害罪)は、より重い罰則が科せられます。
なぜなら、IT犯罪の場合は、被害が拡大する可能性が高いと判断されるからです。そのため、電子計算機損壊等業務妨害罪は、刑法で5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の罰則が定められています。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
業務妨害罪の時効
業務妨害罪(偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪)の公訴時効は、犯行を行った日から3年です。
公訴時効とは、よく耳にする民事上の「時効」とは異なる刑事上の時効で、犯罪が行われてから一定期間が経過すると起訴できなくなる制度のことをいいます。
たとえば、威力業務妨害罪の場合は、店舗に複数回のいたずら電話や大量のFAX、メールを流して業務を妨害した日から数えて3年で時効が成立します。
時効が成立すると、検察官は起訴できなくなるため、犯人は罪に問われません。なお、電子計算機損壊等業務妨害罪の場合は、公訴時効が5年となります。
業務妨害をしたらどうなる?逮捕されるのか?
業務妨害をした場合、逮捕される可能性は十分にあります。犯行態様に悪質性が認められず、被害範囲も小さいようなケースでは、逮捕されずに在宅事件として手続きが進む可能性があります。
しかし、犯行態様に悪質性が認められ、被害範囲が大きいようなケースでは、逮捕の回避が困難となるでしょう。場合によっては、ニュースや新聞で実名報道され、周囲に知られるなどのリスクも生じる可能性があります。
逮捕され、その後検察官によって起訴されれば、前科がつく可能性が高まります。もっとも、最終的な判断は刑事裁判にて裁判官によって下されますが、日本の有罪率は99.9%と非常に高いのが実情です。
起訴されれば100%に近い確率で有罪判決が下されるため、有利な刑事処分を獲得するためには、早期段階から弁護士による法的サポートを受ける必要があります。
特に刑事事件に詳しい弁護士なら、よりスムーズで的確な対応が期待できます。
業務妨害罪で逮捕された後の流れ
業務妨害罪で逮捕された後は、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
- 1.逮捕
警察からの取り調べを受け、逮捕から48時間以内に身柄と事件の資料が検察に引き継がれます。 - 2.送致
検察からの取り調べを受け、送致から24時間以内に検察官によって身柄の拘束を継続するかどうかの判断が下されます。 - 3.勾留
身柄の拘束を継続する場合は、検察官が裁判所に対して勾留請求を行い、裁判官から認められるとはじめに10日間の勾留が実施されます。
なお、勾留は、捜査状況に応じてさらに10日間の延長が可能なため、最大で20日間の勾留が実施される可能性があります。 - 4.起訴・不起訴の決定
検察官は、勾留満了日までに起訴・不起訴の判断を下します。 - 5.刑事裁判
起訴されると、刑事裁判が開かれて裁判官によって有罪・無罪の判断が下されます。
逮捕された時の流れについて、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
業務妨害をしてしまった場合の対処法
業務妨害をしてしまった場合の対処法には、主に次のような方法が挙げられます。
- 弁護士に相談する
- 被害者と示談交渉する
業務妨害罪は他人の業務を妨害する行為、つまり、被害者が存在する犯罪であるため、被害者との示談成立は刑事処分の判断に大きな影響を与えます。
以下で各対処法を詳しく解説していきますので、ぜひご参考になさってください。
弁護士に相談する
業務妨害罪に限らず、刑事事件において弁護士の存在は有利な結果を得るために必要不可欠といえます。
特に、刑事事件に精通した弁護士であれば、これまでの経験や豊富な知識を活かした法的サポートを受けられます。
弁護士は、主に以下のような活動が行えます。
業務妨害罪は、事件の内容次第で逮捕される可能性のある犯罪行為です。捜査機関から逮捕された場合、家族や友人と面会できるのは最短で逮捕されてから3日後となります。
この間は、誰とも面会できないため、今後どのように対応すれば良いのか分からず、不安が募るばかりでしょう。しかし、弁護士だけは逮捕直後から制限なく面会できます。
これにより、早期段階から弁護活動ができるため、不当な逮捕や長期間の勾留を回避できる可能性が高まるだけでなく、不安の軽減にも期待できます。
被害者と示談交渉する
被害者との示談成立は、被害者が存在する刑事事件にとってもっとも優先すべき弁護活動といえます。
事件の当事者間の和解である示談は、刑事処分の判断において有利な事情として考慮されます。そのため、示談が成立すれば、早期釈放や不起訴処分を獲得できる可能性が高いです。
示談交渉は、被害者の心情に配慮しながら行い、適切な示談金を提示する必要があります。しかし、実際の損害額を請求される場合もあれば、慰謝料の上乗せを要求される場合もあります。
たとえば、大型商業施設に対して業務妨害を行い、休業に至ったようなケースでは、示談金が高額になる可能性が高く、弁護士による交渉が不可欠となるでしょう。
刑事事件における示談について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
業務妨害罪で逮捕された・逮捕されそうな場合は、お早めに弁護士にご相談ください
人の業務を妨害する行為で成立する業務妨害罪は、逮捕される可能性のある犯罪です。事件の内容次第では、実名報道されて社会的信用を大きく失う可能性があります。
特に、「被害額や被害人数が大きい」「故意性・計画性が認められる」「逃亡または証拠隠滅のおそれがある」などの場合は、逮捕されやすくなります。
逮捕を回避し、不起訴処分を獲得するためには、早期段階から弁護活動を開始して、有利な事情を証明する証拠を収集し、適切に主張・立証する必要があります。
弁護士であれば、スピード感をもって弁護活動を進められるだけでなく、捜査機関からの取り調べに対するアドバイスなども提供可能です。
業務妨害罪で逮捕された・逮捕されそうな場合には、なるべく早めに弁護士にご相談ください。
