過失運転致死傷罪とは?刑罰や不起訴を獲得するポイントなど
過失運転致死傷罪は、自動車やバイクを運転していて、人身事故を起こしてしまった場合に成立する犯罪です。
過失運転致死傷罪の多くは、軽微な事故(負傷事故)であるため、不起訴処分となりやすい傾向にあります。しかし、被害程度や運転態様の悪質性などによっては、初犯であっても実刑を覚悟しなければなりません。
この記事では、過失運転致死傷罪に着目し、過失運転致死傷罪の刑罰や不起訴・無罪を獲得するためのポイントなどについて、詳しく解説していきます。
目次
過失運転致死傷罪とは
過失運転致死傷罪とは、「自動車運転中に必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に成立する犯罪」です。
注意を怠って交通事故を起こした結果、人に怪我を負わせると、過失運転致傷罪が成立しますが、怪我ではなく人を死亡させてしまうと、過失運転致死罪が成立します。
事故発生の結果、人がどうなったのかによって成立する罪が異なる点に注意が必要です。
なお、過失運転致死傷罪における構成要件や刑罰は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の第5条に規定されています。
次項では、過失運転致死傷罪における“過失行為”の具体例について、詳しく解説していきます。
過失に当たる行為の具体例
過失運転致死傷罪における過失とは、自動車運転者として求められる注意義務に違反することです。
注意義務違反には、以下のようなものが挙げられます。
前方注視義務違反
わき見、スマートフォン操作などにより前方の注視を怠る
速度制限遵守義務違反
制限速度の超過
信号指示遵守義務違反
赤信号無視
徐行義務違反
徐行義務を怠る
居眠りをしない義務違反
疲労による正常運転不能
スマートフォンを操作しない義務違反 など
ながらスマホ運転
過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪の違い
危険運転致死傷罪は、通常過失(わき見運転やながら運転など)を超える危険な運転方法で走行し、人を死傷させてしまった場合に成立する犯罪です。
危険な運転方法には、「アルコールや薬物影響下での運転」「制御困難な高速度での運転」などが挙げられます。これらの行為は、悪質・故意に近い重大な危険運転と評価されており、過失運転致死傷罪よりも重罰化されています。
過失運転致死傷罪は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金であるところ、危険運転致死傷罪は、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑、人を死亡させた場合は1年以上20年以下の拘禁刑となっており、過失運転致死傷罪より重い刑罰が定められています。
過失運転致死傷罪の刑罰【刑事処分】
過失運転致死傷罪の刑罰は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律にて、以下のように定められています。
第5条(過失運転致死傷)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
罰金の相場については、下表のとおりです。
| 事故の程度 | 罰金の相場 |
|---|---|
| 重傷事故(全治3ヶ月以上など) 後遺障害あり |
30万~50万円 |
| 重傷事故(全治30日~3ヶ月未満) | 20万~50万円 |
| 軽傷事故(全治15日~30日未満) | 15万~30万円 |
| 軽傷事故(全治15日未満) | 12万~20万円 |
無免許運転による加重
人身事故を起こした自動車運転者が無免許であった場合、無免許過失運転致死傷罪が成立します。
無免許過失運転致死傷の刑罰は、10年以下の拘禁刑です。
無免許過失運転致死傷罪は、罰金刑が定められていないため、起訴される場合は、公判請求されることになります。
飲酒運転との併合罪
飲酒運転の結果、事故により人を死傷させた場合、軽傷・軽微な過失なら飲酒運転+過失運転致傷罪が、重傷・悪質な過失なら飲酒運転+危険運転致死傷罪が成立します。
人身事故を起こした運転手が飲酒していた場合は、道路交通法だけでなく自動車運転死傷処罰法などの重大罪と併合される可能性があります。
飲酒運転との併合罪は、科される刑罰が大幅に重くなるため、軽微な事故であっても、拘禁刑が科せられることを覚悟しなければなりません。
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過失運転致死傷罪の違反点数【行政処分】
過失運転致死傷罪は、刑罰だけでなく行政処分(運転免許に関する処分)も受けます。
具体的には、違反点数が加算され、累積点数に応じて免許停止または取り消しが科せられます。
行政処分として加算される点数は下表のとおりです。
基礎点数から違反内容に応じて、下表の付加点数が加算されます。
| 事故の程度と治療期間 | 加害者のみ過失がある | 被害者にも過失がある | |
|---|---|---|---|
| 死亡事故 | 20点 | 13点 | |
| 重傷事故 | 3ヶ月以上、又は後遺障害がある | 13点 | 9点 |
| 30日以上 3ヶ月未満 |
9点 | 6点 | |
| 軽傷事故 | 15日以上 30日未満 |
6点 | 4点 |
| 15日未満 | 3点 | 2点 | |
たとえば、運転操作不適や前方不注意などの「安全運転義務違反」の場合は、基礎点数が2点+付加点数により4~15点以上になる可能性があります。
免許停止・取り消しの目安は、累積点数6点以上が免許停止、15点以上が免許取り消しです。
過失運転致死傷罪の初犯だとどうなる?執行猶予はつく?
過失運転致死傷罪が初犯の場合は、執行猶予付きの拘禁刑または罰金刑を科されることが多いです。
ただし、被害程度や過失の重さによっては、初犯であっても、実刑判決を下される可能性があります。
初犯の場合に執行猶予付き判決を獲得するには、弁護士による情状立証や被害者との示談成立などが重要です。また、反省や謝罪の態度が明確であることも重要となります。
過失運転致死傷罪で逮捕されたあとの流れ
過失運転致死傷罪で逮捕された後は、主に以下のような流れで手続きが進みます。
- 1.逮捕
警察からの取り調べを受け、逮捕後48時間以内に事件の資料と身柄が検察に引き継がれます。
引き継がれた後は、検察からの取り調べを受け、24時間以内に検察官によって勾留請求を行うかどうかの判断が下されます。 - 2.勾留
検察官が「身柄拘束を継続する必要がある」と判断した場合は、裁判官に対して勾留請求が行われます。裁判官が勾留請求を認めると、まず10日間の勾留が行われます。勾留は必要に応じて、さらに10日間の延長が可能です。 - 3.起訴・不起訴の決定
検察官は、勾留が終了するまでに起訴・不起訴の決定を下します。 - 4.刑事裁判
起訴されると、刑事裁判が開かれます。 - 5.判決
刑事裁判が進むと、裁判官から有罪・無罪の判決が下されます。
逮捕されたときの流れをさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
逮捕された時の流れ過失運転致死傷罪で不起訴や無罪を獲得するには?
過失運転致死傷罪で不起訴や無罪を獲得するには、初動の対応や被害者との示談交渉を弁護士に依頼することが重要となります。弁護士による情状の立証や示談交渉が、不起訴や無罪を獲得できる可能性を高めるからです。
逮捕による身柄拘束がある場合は、身動きを取るのが難しくなるため、代わりに活動してくれる人が必要です。弁護士は、適切かつ円滑に弁護活動を行えるため、早期段階から依頼するとよいでしょう。
不起訴を目指したい方・前科をつけたくない方は、以下のページも併せてご覧ください。
不起訴にしたい・前科つけたくない刑事事件に詳しい弁護士に依頼する
過失運転致死傷罪で不起訴や無罪を獲得するには、刑事事件に詳しい弁護士に弁護活動を依頼することが大切です。
刑事事件に詳しい弁護士であれば、以下のような弁護活動を行ってもらえます。
- 逮捕直後から接見(面会)できるため、早期段階から弁護方針を構築できる
- 捜査機関からの取り調べに対する適切な対応方法について、アドバイスをもらえる
- 不当な逮捕や不起訴処分の獲得に向けて、有利な情状の主張・立証を行ってもらえる
- 被害者との示談交渉を適切かつ円滑に進めてもらえる
- 起訴された場合は、保釈請求の手続きを進めてもらえる など
刑事事件では、初動の対応とスピード感をもった弁護活動が重要となるため、弁護士への依頼はなるべく早めに行うのが得策です。
被害者との示談成立を目指す
被害者との示談成立は、不起訴の可能性を高めるだけでなく、減軽も見込めます。過失運転致死傷罪では、示談自体が行政処分に影響するわけではないものの、情状酌量の証拠となります。
被害者と示談成立できれば、被疑者・被告人にとって有利な情状となるだけでなく、再犯防止の意思を示せるため、優先すべき弁護活動の一つです。
しかし、被害者との示談交渉は決して容易ではありません。
刑事事件に詳しい弁護士に依頼して進めてもらう必要があるでしょう。
無罪を主張する場合は証拠を集める
無罪を主張する場合は、有利な証拠を提出し、立証を補強しなければなりません。そのためには、関係者の証言や事故発生付近の監視カメラ、ドライブレコーダーの映像といった証拠の収集を行います。
専門家による鑑定結果も有利な証拠となり得ます。
弁護士に依頼すれば、事故状況の精査や有利な証拠の収集を適切かつ円滑に行ってもらえます。なるべく早めに弁護士に相談し、証拠の戦略的収集・整理が無罪獲得への大きな一歩となるでしょう。
無罪を主張したい方は、以下のページも併せてご覧ください。
無罪を証明してほしい交通事故で過失運転致死傷罪に問われている場合は、すぐに弁護士にご相談ください
交通事故を起こしてしまい、過失運転致死傷罪に問われた場合は、不起訴処分や執行猶予付き判決獲得に向けた弁護活動を早期段階から行う必要があります。
日本の有罪率は非常に高いため、起訴されれば、かなり高い確率で有罪判決が下される可能性があります。そうなれば、実刑判決も覚悟しなければなりません。
このような事態を回避するには、刑事事件に詳しい弁護士に弁護を依頼することが重要です。刑事事件の経験や知識が豊富な弁護士であれば、適切かつ円滑に弁護活動を進めてもらえます。
過失運転致死傷罪に問われてお困りの方は、お気軽にご相談ください。
