危険ドラッグの所持や使用は犯罪?罰則や逮捕の流れ、対処法など
危険ドラッグは、「合法」を謳い文句にさまざまな種類が販売されています。
その形態は、食品や電子タバコなど幅広く、ネット上で購入できるため、“薬物乱用への入り口”と表現されています。
危険ドラッグは、麻薬や覚醒剤に指定はされていないものの、同様の有害性が疑われる薬物です。場合によっては、規制されている薬物よりも毒性が高い可能性があります。
本記事では、危険ドラッグの所持や使用で科せられる罰則や逮捕の流れなどについて、詳しく解説していきます。
目次
危険ドラッグとは
危険ドラッグとは、覚醒剤や麻薬などの規制薬物に似せて作られた成分を含む物品です。
規制薬物を使用しているわけではないため、「合法ハーブ」「合法アロマ」などと称して、あたかも健康上安全であるかのように販売されています。
しかし、その多くは規制薬物と同様に幻覚や興奮作用を促す大変危険な薬物です。危険ドラッグの使用により幻覚を引き起こし、重大な交通事故を発生させたケースも数多くあります。
危険ドラッグは、規制薬物に似ている薬物の構造を少し変化させた化学物質が主に使用されています。
規制薬物は使用されていないものの、むしろ構造を変化させた化学物質の方が規制薬物よりも危険な物質である場合があります。
そのため、危険ドラッグは、その名の通り、大変危険な薬物です。
危険ドラッグの所持や使用は犯罪?罰則は?
「指定薬物」が含まれる危険ドラッグは、所持・使用・輸出入・製造・販売・譲渡・譲受などの行為すべてが犯罪です。
指定薬物が含まれていなければ合法なのでは?と思うかもしれませんが、指定薬物に指定されている物質は年々増えており、約3000化合物を上回っています。
そのため、指定薬物を含まない危険ドラッグは、ないに等しいと言っても過言ではないでしょう。
危険ドラッグに関する犯罪行為は、以下の法律や条例で厳しく取り締まられています。
- 医薬品医療機器等法違反
- 都道府県の条例違反
- 関税法違反
どのような行為をしたのかによって、適用される法律や条例が異なります。また、科せられる罰則についても内容が異なるため、注意しなければなりません。
医薬品医療機器等法違反
医薬品医療機器等法(薬機法)とは、医薬品や医療機器等の有効性や安全性を確保するために、これらに関する規制を定めた法律です。
医薬品医療機器等法の規制対象は、主に以下のものです。
- 医薬品
- 医療部外品
- 化粧品
- 医療機器
- 再生医療機器 など
また、医薬品医療機器等法で規制されている「指定薬物」は厚生労働大臣が薬事審議会の意見を踏まえたうえで指定します。
罰則については、以下のように規定されています。
罰則
- 非営利目的の場合
医療等の用途以外での製造、輸入、販売、譲渡、譲受、所持、購入
→「3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金又はこれを併科」 - 営利目的の場合
医療等の用途以外での製造、輸入、販売、譲渡、所持(所持は、譲渡目的で貯蔵し、陳列した場合)
→「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金又はこれを併科」
都道府県の条例違反
都道府県の条例違反とは、各都道府県が独自で定める条例に違反する行為を指します。
条例の内容や罰則については、各都道府県によって異なるため、ここでは東京都を例に解説していきます。
【例】東京都の場合
東京都では、「東京都薬物の濫用防止に関する条例」があり、覚醒剤や麻薬などの薬物全般の濫用が禁止されています。
条例には、危険ドラッグの文字はなく、以下の内容で記されています。
五 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第十五項に規定する厚生労働大臣の指定薬物
<罰則>
知事指定薬物を所持、購入、譲受、使用、販売または譲渡の目的での広告
→「6ヶ月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」 など
関税法違反
関税法とは、関税の負担や徴収、貨物の輸出入などの税関手続きを適正に処理するために定められた法律です。
関税法では、主に危険ドラッグの輸入・密輸が規制されており、もしもこれらの行為が認められた場合には、関税法違反とみなされます。
医薬品医療機器等法(薬機法)で定められている指定薬物を輸入・密輸した場合は、関税法第109条1項に基づき、以下のような罰則が科せられます。
<罰則>
輸入してはならない貨物の輸入
→「10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金又はこれを併科」
2025年3月に発生した液体状の危険ドラッグを国際郵便によって密輸しようとした事件では、被疑者が医薬品医療機器等法違反と関税法違反の罪に問われています。
危険ドラッグなど薬物犯罪で逮捕された場合の流れ
危険ドラッグなどの薬物犯罪で逮捕された場合は、主に図のような流れで手続きが進んでいきます。
薬物犯罪は、証拠となる薬物の破棄が容易であるため、捜査機関から「証拠隠滅のおそれがある」と疑われやすく、逮捕される可能性が高い犯罪類型です。
また、現行犯逮捕もしくは後日逮捕によって身柄を拘束されるケースがほとんどで、逮捕された後は次のように手続きが進みます。
- 警察の取り調べを受け、48時間以内に検察へ送致される
↓ - 検察の取り調べを受け、24時間以内に勾留請求を行うかどうかが判断される
↓ - 勾留請求が認められると、まず10日間の勾留が実施される(最大20日の勾留が可能)
↓ - 勾留満了日までに起訴か不起訴かが判断される
↓ - 起訴されると、刑事裁判が開かれる
捜査状況や事件の内容次第では、逮捕されてから最大23日間身柄を拘束される可能性があります。長期間の勾留は、仕事や家庭などのさまざまな面に大きな影響を与えます。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
危険ドラッグなど薬物犯罪を起こしてしまった場合の対処法
危険ドラッグなどの薬物犯罪を起こしてしまった場合の対処法は、主に以下のとおりです。
- 早急に弁護士に依頼する
- 再犯防止活動に取り組む
これらの対処法は、危険ドラッグで逮捕された被疑者・被告人が不利な状況となるのを未然に防げます。少しでも有利な刑事処分が下されるように、2つの対処法はきちんと押さえておきましょう。
早急に弁護士に依頼する
薬物犯罪の弁護活動は、起訴されるまで時間がないことから初動とスピードが重視されるため、早急に弁護士に依頼する必要があります。
逮捕されてから検察官が勾留請求を行うかを判断するまでの72時間(3日間)は、弁護人のみが被疑者と接見できます。
そのため、捜査機関からの取り調べに対する適切な対応の仕方や今後の弁護方針の構築が可能です。弁護士への依頼が早いほど、着手できる弁護活動の幅が広がるため、より多くの時間をつかって対策を講じられます。
なお、被疑者や被告人に関わる弁護士は、誰が選択し、誰が費用を負担するのかで呼び名が異なります。
- 私選弁護人
被疑者や被告人、その家族が費用を負担して自ら選任した弁護士。どのタイミングからでも弁護士に介入してもらえます。 - 国選弁護人
経済的な理由で弁護士に依頼ができない場合に、国が費用を負担して選任してくれた弁護士。勾留後もしくは起訴後に介入してもらえますが、選任してもらうには一定の条件を満たす必要があります。 - 当番弁護士
逮捕された場合に限り初回だけ無料で呼べる弁護士。日本弁護士連合会から派遣されます。
再犯防止活動に取り組む
依存性の強い薬物犯罪は、「更生はできるのか」「再犯のおそれはないのか」が刑事処分の判断において重要視されます。
そのため、危険ドラッグなどの薬物犯罪を起こしてしまった場合には、再犯防止活動への取り組みが大切です。
たとえば、危険ドラッグの入手ルートをきちんと供述し、更生施設への入所や反省文の提出などを行うと、刑事処分で有利な事情として考慮される可能性があります。
危険ドラッグの使用が少量で初犯の場合には、早期釈放や減刑の可能性が高まるでしょう。
また、家族がいる場合には、その家族が被疑者・被告人の再犯防止活動にどれくらい協力できるのかも重要視されます。
家族の協力体制が整っている場合は、そうでない場合と比べて有利な事情として考慮されやすいです。
危険ドラッグ事件など薬物犯罪の事例
ここで、危険ドラッグの所持で医薬品医療機器等法違反が成立した事例を1つご紹介します。
【事件番号 平成28年(う)1227号 東京高等裁判所 平成28年11月9日判決】
<事案の概要>
危険ドラッグの販売業者は、指定薬物の規制が強化されたことを受け、販売を取りやめて摘発を免れるために在庫の処分を検討しました。
しかし、処分しきれずに危険ドラッグを所持し続けていたため、医薬品医療機器等法違反の罪に問われました。
<裁判所の判断>
裁判所は、被告人が指定薬物の規制強化を受けて危険ドラッグを捨てるつもりで所持していたとしても、処分せずに所持し続けた行為は禁止行為であると判断しました。
また、危険ドラッグの破棄を念頭に置いていれば、所持していたとしても何ら罪に問われないのは、医薬品医療機器等法の施行目的に適わないと判断しました。
危険ドラッグなど薬物犯罪で逮捕された・逮捕されそうな場合は、早急に弁護士法人ALGにご相談ください
危険ドラッグなどの薬物犯罪で逮捕されると、証拠隠滅を防ぐために長期間の身柄拘束を受ける可能性が高いです。
逮捕や勾留による身柄拘束は、仕事や家族関係に悪い影響を及ぼしかねません。早期釈放や不起訴処分の獲得を目指すには、早急に弁護士に相談し、再犯防止活動の取り組みに必要な準備を進める必要があります。
また、被疑者や被告人にとって有利となる事情の訴えを適切に行うのも重要です。
弁護士であれば、円滑かつ適切な弁護活動を行えるため、早期釈放や不起訴処分となる可能性を高められます。
ただし、逮捕から検察官が起訴するかどうかを決めるまでの時間は短く、弁護士への依頼が遅ければ遅いほど、弁護活動の幅が狭くなります。
危険ドラッグなどの薬物犯罪で逮捕された・逮捕されそうな場合には、なるべく早めに弁護士にご相談ください。
