国選弁護人と私選弁護人とは?それぞれの違いとメリットについて


国選弁護人や私選弁護人という言葉は聞いたことがあっても、どのような存在であるのかについては、詳しく知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そもそも国選弁護人や私選弁護人は、刑事事件の被疑者・被告人のために選任される弁護士であり、民事事件では登場しません。
また、通常は、国選弁護人と私選弁護人のどちらを選べば被疑者・被告人にとって有利なのか、そもそもどちらにするかを自由に選べるのかといったことを正確に理解するのは難しいかもしれません。
ここでは、国選弁護人と私選弁護人の違いや、それぞれの詳細等について解説します。
国選弁護人と私選弁護人の違い
私選弁護士 | 国選弁護士 | |
弁護士の選択 | 可 | 不可 |
選任時期 | 捜査段階 任意捜査中でも可能 |
勾留決定後 起訴後 |
料金 | 比較的高額 | 比較的低額 |
選任の要件 | 条件なし | 条件あり(資力要件) |
選任者 | 被疑者・被告人(本人) 配偶者 親族 |
裁判所 |
弁護内容の違い | 違いなし |
弁護人がつくタイミングについて
私選弁護人は、いつでも“選任”することが可能です。
逮捕された直後や任意で聴取を受けた直後でも可能であり、犯罪を行ってしまった直後、まだ発覚していない場合の自首に関する相談を行うことも可能です。
一方で、国選弁護人は、被疑者として勾留されたときや、起訴されたときに、一定の要件の下に“請求”できるようになります。
逮捕段階から勾留までの間には請求することができないので、身柄拘束を回避するための活動や、早期の示談交渉のための活動が遅れる等の支障が生じるおそれがあります。
早期の弁護活動の重要性
事件後、逮捕されずに在宅事件になった場合であっても、起訴されるおそれがあるため早期の弁護活動が必要です。
さらに、逮捕されてしまうと、起訴されるまでに最大で23日間も身柄を拘束されるおそれがあります。
そのような事態に陥る前に、身柄を拘束する必要がないことを説明したり、示談交渉に取り組んだりする必要があるため、早期に弁護士に依頼することが望ましいといえます。
逮捕の流れについての詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
弁護士を入れるタイミングが結果を大きく左右します
刑事事件の場合には、可能な限り早く弁護士を付けることによって、弁護活動の選択肢が拡がる可能性があります。
刑事事件における身柄の拘束は、防御活動をする被疑者・被告人にとって様々な面で負担が大きいですが、より早期に弁護士に依頼することによって、身柄拘束“回避”に向けた早期の活動ができる等、被疑者・被告人の負担に違いが生じる場合があります。
私選弁護人について
私選弁護人とは、刑事事件の際に自ら選任した弁護士をいいます。
本人だけではなく、本人の配偶者や親族等も選任することができます。
一定の資力がある場合には、国選弁護人を請求できない等、原則的に、私選弁護人を選任することになっています。
私選弁護人への依頼は、費用はかかるものの、刑事事件に強い弁護士や相性の合う弁護士等、自分に合う弁護士を“自ら選べる”というメリットがあります。
私選弁護人へ依頼する要件
私選弁護人へ依頼する際には、国選弁護人のように何らかの要件があるわけではありません。
逮捕されてから勾留されるまでは、たとえ家族であっても接見することができず、接見できるのは弁護士だけです。
逮捕された後、今後の手続きの流れや権利について説明を受けることのできる「当番弁護士」という制度がありますが、接見してもらえるのは1回だけです。
当番弁護士にその後の弁護を依頼するためには、私選弁護人として選任するしかありません。
また、起訴される前に在宅事件となっているときには国選弁護人を請求することはできないため、自ら弁護士を探して相談・依頼することで身を守ることが望ましいでしょう。
私選弁護人に依頼するメリット
私選弁護人を選ぶと、刑事事件を担当した経験が豊富な弁護士や、自身と同様の事例について経験のある弁護士に依頼することが可能である等のメリットがあります。
また、依頼をする前に相談を行って信頼できる弁護士なのかを確認できる点や、選任後に相性が合わない等の場合には、解任することが可能である点もメリットといえます。
誤解されることも多いのですが、国選弁護人は必ず手を抜くというわけではなく、熱心な弁護士も数多く存在します。
しかし、国選弁護人は誰が選任されるかわからないため、国選の際には手を抜く弁護士や、刑事事件を担当した経験の乏しい弁護士が選任されるおそれもあります。
刑事事件の被疑者・被告人となる経験は、多くの人にとって最初で最後のことだと思いますので、多くの実績がある弁護士を選ぶことをおすすめします。
私選弁護人に依頼するデメリット
私選弁護人を選ぶと、費用が高くなりやすいことがデメリットとして挙げられます。
国選弁護人が選任された場合であっても、必ず費用がかからないわけではありませんが、有料となるケースであっても、私選弁護人に依頼した場合よりは費用が安くなるのが一般的です。
また、自らの判断で慎重に弁護士を選ぶ必要がある点も、デメリットになるかもしれません。
とはいえ、せっかく費用をかけるのですから、経験豊富で親身になってくれる弁護士を探すようにしましょう。
国選弁護人について
国選弁護人とは、私選弁護人を選ぶことができない人に対して、国が選んだ弁護人をいいます。
かつては、起訴されるまで国選弁護人は選任されないことになっていましたが、その後、一定以上の重さの罪で勾留されると選任してもらえるようになりました。
そして、現在では、勾留された被疑者の全員に対して、国選弁護人を選任してもらえるようになりました。
本来ならば私選弁護人を選任するところ、近年では、国選弁護人が選任される割合が80%以上になっています。
(弁護士白書 (2020年版 2-2-2.pdf nichibenren.or.jp))
国選弁護人へ依頼する要件
国選弁護人を選任してもらうためには、「現金や預貯金等の合計額が50万円未満」という資力要件を満たす必要があります。
この要件を満たさない場合、自ら探すか弁護士会を通じるかして、私選弁護人の選任を申し出なければなりません。
なお、私選弁護人の選任の申出を受けて接見をした弁護士が、弁護人となることを拒絶した場合等には、国選弁護人を選任できるようになります。
全体として国選弁護人を選任する事件の割合は高く、被疑者・被告人の経済苦が影響していると考えられます。
国選弁護人に依頼するメリット
国選弁護人を選任した場合であっても、一定のケースを除き、費用はかかります。
しかし、私選弁護人に依頼するよりも低額であるのが一般的です。
また、被疑者・被告人が弁護士を選ぶ手間・負担がないことも、一応のメリットとして挙げられるかもしれません。
国選弁護人に依頼するデメリット
まず、国選弁護人は勾留または起訴されるまで選任されないことがデメリットとして挙げられます。
そのため、示談交渉が遅れたり、その後の手続きや権利について良くわからないまま時間が過ぎてしまったりするおそれがあります。
また、弁護人に不満があったとしても、私選弁護人を選任しないかぎり、他の弁護士に変えることが困難である点が挙げられます。
国選弁護人は国によって選任されているため、「自分との相性が悪い」「弁護方針に不満がある」といった理由では、変えてもらうことは不可能だと考えるべきです。
なお、判決によって訴訟費用を負担させられた場合には、国選弁護人の報酬も訴訟費用とされるため、私選弁護人を選任する費用よりは低額であったとしても、一定の場合を除いて費用が全くかからないというわけではありません。
当番弁護士との違い
当番弁護士とは、逮捕されてしまった際に、弁護士会から派遣される弁護士に1回だけ無料で面会してもらえる制度です。
逮捕されてから勾留されるまでは家族でも面会することができないため、弁護を依頼しようと思う弁護士が見つからない被疑者にとっては心強い存在です。
この際に、様々な法的アドバイスを受けることが可能であり、被疑者ノートを渡される場合もあります。
当番弁護士を呼ぶ際には、資力要件等の制限はありません。
ただし、任意の捜査を受けている段階では呼ぶことができないため、その場合に弁護士を付けるためには私選の弁護士を選任することになります。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
私選弁護人を選ぶポイント
近年では、インターネットで刑事事件に取り組んでいることをアピールする事務所も増えており、どの事務所を信頼できるのかについて、慎重に吟味する必要が生じています。
では、私選弁護人はどのように選んでいけば良いのでしょうか?気をつけておくべきポイントをご紹介します。
刑事事件を専門に取り扱う部署がある
刑事事件は、民事事件とは多くの点で異なります。
被疑者が身柄を拘束される場合があることや、万引きや薬物事件のような依存性のある犯罪への対応、性犯罪のケースにおける被害者との示談交渉等、刑事事件を担当した経験の少ない弁護士にとっては難しい事案があります。
刑事事件を専門に取り扱うことで、慎重な対応が求められる事案に対しても、的確な対応が可能となります。
なお、弊所の場合は以下のページにてご確認いただけます。
しっかりとしたキャリアがある
刑事事件の経験が多くあることで、過去の事例のノウハウが蓄積され、より良い対応が可能となります。
自白事件と否認事件とでは対応が異なりますし、被害者がいる犯罪であるか否か、現状において身柄を拘束されているか否か、事件がどの段階に進んでいるかといった事情を考慮して、現時点においてベストな解決を図ることが可能です。
弊所の強みについては、以下のページで紹介していますので、ぜひご一読ください。
素早い対応が行える
刑事事件への対応はスピードが重要です。
中でも逮捕されたケースでは、最長でも72時間以内に勾留決定が行われ、勾留されてしまうと引き続き10日間も身柄の拘束を継続されるおそれがあります。
勾留延長ともなれば、さらに10日間も拘束されてしまいます。
身柄の拘束は、長期間になればなるほど社会生活への影響が大きくなります。
会社や学校に逮捕・勾留された事実を知られれば、退職や退学に至るおそれも否定できないため、早期の身柄解放に向けて動くことは非常に重要です。
刑事事件で逮捕されてしまった場合について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
私選弁護人もきちんと選ばなければ満足のいく結果は得られません
「私選弁護人は報酬が高いため、国選弁護人よりもやる気がある」といった話がありますが、必ずそうであるとは断言できません。
刑事事件を担当した実績があり、なるべく期間を空けずに接見に来てくれる等、労を惜しまない弁護士に依頼する必要があります。
よくある質問
国選弁護人と私選弁護人に関してよくある質問について回答します。ぜひ、参考になさってください。
費用面で不安があるのですが、私選弁護人を雇うことはできますか?
弁護士を雇うお金のない被疑者のために、「刑事被疑者弁護援助制度」があります。
この制度は、逮捕された被疑者が勾留される前に私選弁護人を雇いたいときに、費用を支払うことができない場合には、弁護士費用を法テラスに立て替えてもらえる制度です。
立て替えてもらった弁護士費用は法テラスに返済するのが原則ですが、経済的に余裕のない場合には免除してもらえることもあります。
なお、逮捕されていない段階では、刑事被疑者弁護援助制度を利用して私選弁護人に依頼することはできません。
また、勾留された後は国選弁護人が選任されるため、この制度を利用することはできません。
国選から私選へ弁護士を変えることはできますか?
私選弁護人を選任することで、国選弁護人を解任してもらうことが可能です。
なぜなら、私選弁護人の選任は、国選弁護人の解任事由となるためです。
ただし、私選弁護人を選任すると、国選弁護人に変えることができなくなりますのでご注意ください。
国選弁護人が保釈手続きをしてくれません。どうすれば良いのでしょうか?
国選弁護人であるから保釈手続きを行わないということでは全くありません。
ただ、保釈請求できる場合にしていないというのであれば、国選弁護人は報酬が比較的低額であることから、保釈手続きを行う手間をかけたくないと考えているおそれはあります。
保釈請求は、弁護人でなくても被告人本人や配偶者、直系血族、兄弟姉妹等であれば可能ですが、慣れない手続きを行うのが不安であれば私選弁護人を選任して依頼することをおすすめします。
なお、保釈請求には様々な規定が設けられており、例えば起訴前は保釈を申請することができません。
他にも、保釈保証金を用意しなければならず、お金がないために国選弁護人が選任されているケースでは、日本保釈支援協会等で保釈保証金を借りることも視野に入れる必要があります。
弁護人が保釈請求をしない場合には、理由をきちんと確認するようにしましょう。
恋人が逮捕されてしまいました。私選弁護人に依頼することはできますか?
私選弁護人を選任する権利(弁護士選任権)が与えられているのは、被疑者・被告人である本人と、その法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族および兄弟姉妹です。
そのため、被疑者・被告人の恋人であったとしても、本人のために弁護士を選任することはできません。
しかし、直接弁護士を依頼できない方が被疑者・被告人に弁護士を付けたいと考える場合には、弁護士が本人のところに行って接見し、本人から選任を受けることは可能です。
なお、被疑者・被告人である本人は弁護士を解任する権利を有することから、弁護士選任権のある配偶者等から依頼を受けた場合であっても、本人に接見して了承してもらうのが通常の手続きです。
仮に、本人と接見した時点で、すでに本人や親族等から他の弁護士に依頼していた場合には、重ねて受任することはできません。
信頼できる弁護士かどうかが、事件の明暗を左右します
刑事事件の中には、弁護士の対応によって展開が大きく変わるものがあります。
拘束時間の長短や前科が付くか否か、執行猶予が付くか否か等、今後の人生にどれほどの影響が及ぶのかが弁護士の活動によって左右される事例は、決して少なくありません。
多くの経験があり積極的に活動してくれる弁護士が選任されるかは、国選弁護人の場合には運次第だといえます。
私選弁護人を選任できる資力を有している場合には、積極的に活動してくれ、信頼できる弁護士を自ら探して依頼することで、最も良い解決が図れる可能性があります。
後悔のない今後の人生を歩むためにも、弁護士選びは非常に重要です。
迷われている方やお困りの方は、ぜひ一度弁護士法人ALGにお問い合わせください。