不起訴処分とは?無罪との違いや理由一覧・不起訴獲得のポイント
不起訴(ふきそ)とは、検察官が「被疑者を起訴しない」と判断する処分のことをいいます。
刑事事件の被疑者となっても、検察官から不起訴処分が下されれば、釈放され刑罰を受けずに済みます。刑事事件で前科を回避するには、無罪よりもまず不起訴の獲得を目指すことが重要です。
目次
不起訴(不起訴処分)とは
不起訴とは、簡単にいうと、被疑者を処罰しないということです。
刑事事件で処罰されるのは、検察官から起訴された場合のみです。通常、検察官から起訴されると、刑事裁判が開かれ、被告人として有罪・無罪の判決を受けます。
しかし、不起訴処分となれば、刑事裁判は開かれないため、処分されることはありません。
このように、起訴と不起訴の違いは、処罰されるか否かという点にあります。
不起訴処分を獲得できれば、前歴はつきますが前科はつけずに済むため、解雇や退学処分などの不利益を回避できるのが大きなメリットです。
前科がつかない
検察官から不起訴処分が下されれば、前科がつくのを回避できます。
前科は、過去に有罪判決を受けた経歴ですので、資格の取得や就職が制限されるなどの不利益を受けます。
前科者が一生職に就けないわけではありませんが、影響を受ける可能性は少なからずあります。
前科によって受ける不利益を回避するには、不起訴処分を獲得しなければなりません。
無罪の獲得も前科を回避するために重要となりますが、日本の有罪率は99.9%と高く、起訴されると高確率で有罪判決が下される傾向にあります。
そのため、まずは不起訴処分の獲得に向けた防御活動を行うことが重要です。
前科が及ぼす影響について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
解雇や退学処分などの不利益を回避できる
不起訴処分の獲得は、解雇や退学処分などの不利益を回避できる可能性を高めます。
身柄の拘束が伴う身柄事件の場合は、起訴されると刑事裁判が終わるまでの間身柄を拘束されるため、仕事や学業に大きな悪影響が及びます。
そのまま有罪判決が下されれば、たとえ執行猶予がついたとしても、解雇や退学処分となる可能性が高いでしょう。
しかし、不起訴処分となれば、短期間の身柄拘束で済むため、仕事や学業に悪影響が及ばずに済みます。
不起訴処分と無罪の違い
不起訴処分と無罪は、どちらも処罰を受けない処分ですが、意味合いは大きく異なります。不起訴処分と無罪の違いは、主に以下のとおりです。
- 不起訴になると裁判が行われない
- 不起訴処分は罪を犯している可能性もある
上記の違いがどういうことなのか、以下で解説していきます。
不起訴になると裁判が行われない
不起訴処分と無罪の違いは、刑事裁判が開かれるかどうかという点です。
不起訴処分は、検察官が何らかの理由で「刑事裁判を開く必要がない(開けない)」と判断する処分であり、刑事裁判は開かれません。
そのため、逮捕によって身柄を拘束されている状態であっても、不起訴処分となれば直ちに釈放され、その後はこれまで通りの生活を送れます。
これに対し無罪は、刑事裁判を経て裁判官が「被告人は罪を犯していない」と判断する処分を指すため、必ず刑事裁判が開かれます。
不起訴処分とならない限り、刑事裁判を回避することはできません。
不起訴処分は罪を犯している可能性もある
不起訴処分になるケースの中には、犯罪があったと認められていても、検察官が「裁判にする必要はない」と判断する場合があります。そのため、罪を犯していたとしても、裁判が行われないことがあります。
これに対し、無罪は起訴の必要性があると判断されたうえで、刑事裁判を経て犯罪事実が認められなかったものです。
そして、無罪判決が確定した場合は、同一の刑事事件で再度手続きが行われることはありません。
新たな証拠が見つかり再度手続きが行われる可能性のある不起訴処分とでは、この点に大きな違いがあります。
不起訴になったことはいつわかる?
不起訴になったことがわかるタイミングは、「身柄事件(逮捕・勾留あり)」と「在宅事件(逮捕・勾留なし)」で異なります。
身柄の拘束が伴う身柄事件では、逮捕から最長23日以内に不起訴かどうかがわかるのが一般的です。
人権侵害と冤罪を防ぐため、被疑者が罪を犯したことが明らかであっても、有罪判決が下るまでは罪を犯していない者として扱わなければなりません。
そのため、身柄事件の場合は、各手続きに厳格な時間制限が定められています。
一方、身柄の拘束が伴わない在宅事件は、時間制限がないため、不起訴かどうかがわかるまで数ヶ月~1年以上かかることもあります。
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不起訴処分の種類(理由一覧)
不起訴処分には、検察官が「刑事裁判を開かない」と判断する理由にいくつか種類があります。
具体的な理由は、法務省訓令の事件事務規定第3節第75条2項にて、1から20まで定められていますが、特に多いとされる理由は、下表のとおりです。
| 嫌疑なし | 被疑者が犯人でないことが明らかな場合または犯罪を証明する証拠がない場合 |
|---|---|
| 嫌疑不十分 | 被疑者が犯人であり、罪を犯したと証明する証拠が不十分な場合 |
| 起訴猶予 | 被疑者が犯人であり、罪を犯したと証明する証拠はあるが、示談成立などの事情を考慮して起訴しないと判断した場合 |
| 訴訟条件を欠く場合 | 起訴するために必要な法律上の条件が満たされていない場合 |
| 罪とならず | そもそも違法性や犯罪の構成要件に該当しない場合または正当防衛や緊急避難などの違法性を否定する事情が証拠上明らかである場合 |
嫌疑なし
「嫌疑なし」とは、被疑事実につき、被疑者がその行為者でないことが明白なとき、又は犯罪の成否を認定すべき証拠のないことが明白なときにする処分のことをいいます。
警察に逮捕されたが、誤認逮捕であることが発覚したケースなどは、「嫌疑なし」を理由として不起訴処分となると考えられます。
嫌疑不十分
「嫌疑不十分」とは、被疑事実について、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なときにされる処分のことをいいます。
被疑者が、被疑事実を否認している事件で、被疑者を有罪とするに十分な証拠が収集できなかった場合などに「嫌疑不十分」を理由として不起訴処分となると考えられます。
起訴猶予
「起訴猶予」とは、被疑事実が明白な場合において、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときにされる処分のことをいいます。
不起訴処分の約9割は起訴猶予です。被害者と示談が成立した場合等に、「起訴猶予」を理由として不起訴処分になると考えられます。
起訴猶予は、起訴を見送られただけであり、後日起訴されることもありえますが、起訴猶予になって、後日起訴されるということを心配する必要は通常は無いでしょう。
訴訟条件を欠く場合
訴訟条件を欠く場合とは、「親告罪なのに告訴がない」「被疑者が死亡した」など、訴訟を進めるために必要な条件が満たされていない状態を指します。
この状態は、犯罪が成立するかどうかとは全く別問題で、法律上手続きに必要な条件が満たされていないために起訴できないという問題です。
たとえば、親告罪は、名誉毀損罪や器物損壊罪などが該当します。
親告罪は、被害者からの告訴(被疑者の処罰を求める訴え)がなければ、検察官は起訴できないため、裁判を起こせません。
罪とならず
罪とならずとは、被疑者の行為自体が犯罪の構成要件に該当しない場合や違法性がないと判断された場合に下される処分です。
つまり、行為はあったが、その行為が刑法上の犯罪として成立しないケースが該当します。
たとえば、「心神喪失」「14歳未満の少年」などの事情が認められると、責任能力がなかったと判断され、罪とならず、不起訴処分が下されます。
その他にも、正当防衛や緊急避難などにより、行為に違法性はないと判断されると、罪とならず、不起訴処分が下されます。
不起訴処分を獲得するためのポイント
不起訴処分を獲得するためには、次のポイントを意識しましょう。
- 否認する場合は不利な供述調書を作らせない
- 被害者がいる場合は示談交渉を行う
- 被害者がいない場合は反省の態度を示す
特に身柄の拘束が伴う身柄事件では、刑事事件の手続きが想像以上に早く進んでいくため、なるべく早い段階から対処しなければなりません。
では、以下で各ポイントについて、詳しく解説していきます。
否認する場合は不利な供述調書を作らせない
容疑を否認する場合(無実の場合)は、捜査機関に不利な供述調書を作らせないことが大切です。
刑事事件では、必ず捜査機関による取り調べが行われます。取り調べでは、事件に関することだけでなく、生い立ちや家族構成といった事件とは関係のない質問もされます。
取り調べでやり取りした内容は、すべて供述調書として記録され、刑事裁判で証拠として採用される場合があります。
取り調べの対応方法を間違えると、不利な供述調書が作成され、不利益を受ける可能性が高まるでしょう。捜査機関の取り調べを適切に対応するには、刑事事件に詳しい弁護士に相談し、アドバイスを受けることが重要です。
被害者がいる場合は示談交渉を行う
傷害事件や窃盗事件など、被害者が存在する刑事事件の場合は、被害者との示談成立が不起訴処分を獲得できる可能性を高めます。
示談成立は、事件の当事者同士の和解だけでなく、被害者の処罰感情が消滅したことも示す事情です。この事情は、刑事処分の判断で被疑者・被告人にとって有利な事情として考慮されます。
しかし、被害者との示談成立は決して容易ではないため、示談交渉の場を設けられないケースも多くあります。
示談成立を目指すには、刑事事件に詳しい弁護士に交渉してもらう方法が有効です。
被害者がいない場合は反省の態度を示す
薬物犯罪や公然わいせつ罪など、被害者が存在しない刑事事件の場合は、反省の態度を示すことが不起訴処分獲得のために重要です。
検察官が起訴・不起訴の判断を下す際には、犯罪後の情況が判断要素の一つとされています。その中には、被疑者の反省の有無も含まれているため、贖罪寄付や反省文の提出などを行い、反省の態度を示すことが求められます。
不起訴処分を目指すためにも刑事事件に詳しい弁護士にご相談ください
刑事事件の多くは、被害者が存在します。被害者に対して、被害弁償や示談をすることは不起訴処分獲得に重要です。
ただし、示談したいと思っても、被疑者が被害者の連絡先を知ることは、事実上困難です。
適切な示談の条件を定めるにも、専門家である弁護士の助力が必要不可欠でしょう。
被害者が存在しない犯罪でも、弁護士は取調べの際に注意すべき点をアドバイスしたり、被疑者に有利な証拠を検察官に提出したり、不起訴処分となるように検察官と交渉したりします。
早期に弁護士へ依頼することで、より適切な対応が可能です。
刑事事件の当事者になった場合、弁護士への早期相談をおすすめします。
