のぞき行為は迷惑防止条例違反になる?適用される刑罰や対処法など

のぞき行為は、各都道府県が定める迷惑防止条例に違反する可能性があります。
また、犯行態様によっては、軽犯罪法違反や住居侵入罪・建造物侵入罪などにも該当するおそれのある犯罪行為です。そのため、軽い気持ちで行うと、思わぬ処分を受けるおそれがあります。
そこで本記事では、
- のぞき行為で問われる可能性のある犯罪
- のぞき行為をしてしまった場合の対処法 など
について、のぞき行為で逮捕された場合の流れを交えながら、詳しく解説していきます。
目次
のぞきは迷惑防止条例違反となる可能性がある
各都道府県には、住民の生活が平穏であり続けるために、公衆に著しく迷惑をかける行為を取り締まる迷惑防止条例というものが定められています。
迷惑防止条例の内容は、各都道府県によって多少異なりますが、東京都から全国に拡大していった経緯があることから、どの都道府県も東京都の迷惑防止条例の内容に似たものとなっています。
東京都の迷惑防止条例では、のぞき行為について次のように定められています。
東京都迷惑防止条例 第5条
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であってあつて、次に掲げるものをしてはならない。
のぞき行為は、上記に該当する行為であると解されており、東京都の迷惑防止条例違反の場合は、法定刑を6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金としています。
迷惑防止条例違反となる具体例
迷惑防止条例違反は、主に公共の場所におけるのぞきが処罰対象となります。
また、のぞき行為は、見ることが許されないものをのぞき見るということで、窃視行為とも呼びます。
具体的には、次の対象となる場所で女性のスカートの中や女子トイレの中をのぞきこむ行為などが、迷惑防止条例違反として処罰される傾向にあります。
対象となる場所
- 公衆便所、公衆浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所
- 公共の場所、公共の乗り物、学校、事務所、タクシーその他不特定または多数の者が利用し、または出入りする場所または乗り物
盗撮した場合も迷惑防止条例に違反する?
盗撮行為も、各都道府県が定める迷惑防止条例に違反する可能性があります。
たとえば、電車や駅の階段・エスカレーターなどで盗撮する行為や、トイレにカメラを設置して盗撮する行為などは、迷惑防止条例違反となる盗撮行為です。
しかし、すべての盗撮行為が迷惑防止条例違反で処罰されるわけではありません。犯行態様によっては、迷惑防止条例違反よりも重い処罰を受ける撮影罪に該当する場合があります。
撮影罪の法定刑
3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
のぞき行為ではその他の刑罰を受ける場合もある
のぞき行為は、迷惑防止条例違反としてだけでなく、その他の犯罪も成立するおそれがあります。どのようなかたちで刑罰を受けるのかは、事件ごとに異なります。
具体的には、次のような罪に問われる可能性があります。
軽犯罪法違反
のぞき行為は、軽犯罪法違反に該当する可能性があります。
軽犯罪法とは?
比較的軽微な犯罪と刑罰を定めた法律です。刑法よりも軽い処罰内容となっており、軽微な犯罪を取り締まることで重大な犯罪に発展することを防ぐことも目的とされています。
のぞき行為が軽犯罪法違反として処罰されると、拘留(1日以上30日未満)または科料(1000円以上1万円未満の金銭納付)が科せられます。
住居侵入罪・建造物侵入罪
のぞき行為は、住居侵入罪・建造物侵入罪に該当する可能性があります。
住居侵入罪・建造物侵入罪とは?
正当な理由なしに、人の住居や人の看守する邸宅・建造物・艦船に侵入する犯罪のことをいいます。
住居侵入罪・建造物侵入罪として処罰されると、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
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のぞき行為で逮捕される可能性はある?
のぞき行為で逮捕される可能性は、十分にあります。
のぞき行為で逮捕される場合のほとんどは、現行犯逮捕によるものです。
現行犯逮捕は、警察や検察などの捜査機関ではなく一般人でも犯人を拘束することができる逮捕の方法であり、逮捕状なしで犯人を逮捕することができます。
そのため、のぞき行為を目撃した目撃者や被害に遭った被害者によって現行犯逮捕(私人逮捕)される場合や、通報を受けた捜査機関によって現行犯逮捕される場合が多いです。
しかしその一方で、防犯カメラ等の普及により、後日犯行が発覚して後日逮捕される場合も少なくありません。
のぞきで逮捕された場合の流れ
のぞきで逮捕された後は、主に次のような流れで手続きが進んでいきます。
- 逮捕
- 勾留
- 起訴・不起訴
- 正式起訴・略式起訴
- 裁判
逮捕の方法が現行犯逮捕であっても、後日逮捕であっても、基本的にはこのような流れで手続きが進みます。
では、それぞれの手続きについて、もう少し詳しく解説していきます。
逮捕
逮捕された後は、警察の留置施設などで身柄を拘束されながら、警察による取り調べを受けることになります。
警察は、証拠隠滅や逃亡を阻止するために身柄を拘束しているため、拘束されている間は当然施設から出ることも外部と連絡を取ることも許されていません。
携帯電話なども取り上げられるため、会社や学校に休むという連絡を入れることもできない状況となります。そして逮捕から48時間以内に、今度は検察に事件資料と身柄が引き継がれます。
勾留
警察から事件を引き継いだ検察は、引き継いでから24時間以内に勾留請求を行うかどうかの判断を下します。なお、検察が引き続き身柄を拘束する必要があると判断した場合には、裁判所に対して勾留請求がなされます。
そして、勾留請求が認められると、はじめに10日間の勾留が実施され、その後捜査状況に応じてさらに10日間の延長を行うことができます。そのため、最大20日間の勾留を実施することができます。
一方で、この段階で身柄の釈放が実施される場合もあります。
犯罪事実を認めており、犯行態様に悪質性・常習性もなく、前科前歴もないような場合には、早期に釈放される可能性があります。
起訴・不起訴
警察から事件を引き継いだ後、検察は取り調べを行いながら勾留請求を行うかどうか判断すると同時に、起訴するかどうかという判断も行います。
勾留は最大で20日間実施することができるため、警察による逮捕から検察が勾留請求の判断を行うまでの72時間を含めると、逮捕から最大23日間で起訴・不起訴の判断が下されることになります。
なお、犯行態様に悪質性・常習性がなく、前科前歴もなく、被害も小さく、被疑者が罪を認め深く反省しているような場合には、不起訴になりやすいです。
特に被害者が存在する犯罪の場合には、被害者との示談成立が不起訴に大きくつながります。不起訴と判断された場合は、早期に身柄の拘束が解かれ、日常に戻ることができます。
正式起訴・略式起訴
起訴には、正式起訴と略式起訴の2種類があり、正式起訴されると刑事裁判を受けることになります。
刑事裁判を受けることになれば、裁判が終わるまで勾留が継続する可能性があります。
しかし、起訴された後は保釈請求を行えるようになるため、保釈の申請が認められ、保釈保証金を支払うことができれば、身柄の拘束が解かれます。
保釈請求とは?
起訴後、保釈保証金を納付する(裁判所に預ける)ことで、身柄拘束が解かれる制度です。
保釈請求が認められるかどうかは、裁判所の判断に委ねられており、保釈保証金の額も裁判所が判断します。
一方で、略式起訴された場合は、書面だけの簡易な手続きで処理されることになります。具体的には、書面だけで審理し、罰金もしくは科料の刑罰を言い渡されます。
裁判
正式起訴された後は、刑事裁判が開かれ、犯した罪が有罪なのかどうか裁判官によって判断されます。
のぞき行為は、比較的軽微な犯罪に該当するとされているため、有罪判決が下された場合には、罰金刑が科せられるケースが多い傾向にあります。
罰金刑が科せられた場合は、検察が指定する方法で罰金を支払うことで身柄の拘束が解かれます。しかし、罰金を支払うことができない場合には、労役場に留置され、働いて罪を償うことになります。
のぞき行為をしてしまった場合の対処法
のぞき行為は、軽微な犯罪だから大丈夫だろうと安易に考えていると、取り返しのつかない結果になる可能性があり、きちんと対処することが大切です。
対処法としては、主に次のようなことが挙げられます。
- 弁護士に相談すること
- 被害者と示談交渉をすること
では、それぞれについて、詳しく解説していきます。
弁護士に相談する
弁護士に相談することは、のぞき行為で判断される刑事処分を有利な結果とするために非常に重要となります。
のぞき行為で逮捕されてしまうと、一定期間身柄を拘束されるため、拘束されている間は外部と連絡をとることができません。
そのため、会社や学校を欠勤することになり、解雇や退学などの処分を検討されてしまう可能性があります。しかし、弁護士に相談することで、会社や学校への連絡だけでなく、ご家族への連絡を代わりに行ってもらえます。
また、仕事や学業を継続できるように交渉してもらえるため、解雇や退学となる可能性を低くすることに期待できます。
また、逮捕後に行われる取り調べは、刑事処分の判断に大きく影響します。この点についても、弁護士に相談することで有益なアドバイスを受けられ、早期釈放の可能性を高めることができます。
被害者と示談交渉をする
のぞき行為は、被害者が存在する犯罪です。
そのため、被害者との示談成立が刑事処分の判断をする際に有利な事情として働きます。
しかし、被害者の大半は、加害者である被疑者・被告人に対して強い処罰を求める感情を抱いており、話し合いに応じてくれないことがほとんどです。
この点、弁護士であれば、話し合いに応じてくれる可能性を高めることができます。
そして、被害者との示談交渉を円滑に進めるためには、弁護士を通じてきちんと謝罪したうえで、示談金の話し合いなどを被害者の心情を踏まえながら丁寧に進めていく必要があります。
このような対応を行うためには、弁護士の力が必要不可欠といっても過言ではありません。
のぞきをしてしまったことで迷惑防止条例に違反した場合はすぐに弁護士にご相談ください
のぞき行為は、迷惑防止条例違反だけでなく、軽犯罪法違反などにも該当するおそれのある犯罪行為です。
また、のぞきをするために住居に侵入した場合は、住居侵入罪が同時に成立することになり、人が管理する建物に侵入した場合には、建造物侵入罪が成立します。
そして、「のぞきを繰り返し行っていた」「犯行に悪質性が認められる」と判断された場合には、より重い刑罰が科せられる可能性もあります。
のぞきは、法律上軽微な犯罪として扱われていますが、だからといって逮捕されない、被害者との示談交渉も容易に行える、というわけではありません。
大きな不利益を受けないためにも、のぞきをしてしまった場合には、なるべく早めに弁護士へご相談ください。