不同意性交等罪とは|構成要件や強制性交との違いなどわかりやすく解説
「不同意性交等罪(ふどういせいこうとうざい)」は、従来の強制性交等罪や準強制性交等罪が統合され、新たに施行された犯罪です。
2023年に行われた法改正によって、性犯罪の処罰対象となる行為が明確化され、被害者保護を強化し、実態に即した処罰が可能となりました。
本記事では、不同意性交等罪に着目し、不同意性交等罪の構成要件や強制性交等罪などとの違い、逮捕時の対処法について、詳しく解説していきます。
目次
不同意性交等罪とは?
不同意性交等罪とは、相手の同意がない、または同意の意思を示すことができない状況で性交や性交に類する行為(肛門性交や口腔性交など)を行った場合に成立する犯罪です。
この罪が新しくできる前は、同意のない性交等は「強制性交等罪」や「準強制性交等罪」で処罰されていました。
しかし、どのような行為が処罰の対象になるかが曖昧だったため、見逃されるケースもあり、問題視されていました。
そこで、法改正によって処罰対象を明確にし、より幅広い性犯罪に対応できるように「不同意性交等罪」が新たに設けられました。
これにより、被害者の保護がより強化され、実態に即した対応が可能になっています。
不同意性交等罪と強制性交等罪・強姦罪の違い
不同意性交等罪と強制性交等罪・強姦罪の違いには、処罰対象や構成要件、被害者の性別、法定刑などが挙げられます。
強姦罪は、女性に対して暴行・脅迫を用いて性交する行為を処罰対象とし、法定刑は3年以上の有期懲役とされていました。
しかし、被害者が女性に限定され、かつ暴行や脅迫によって抵抗が著しく困難であったことを被害者側が証明しなければならず、被害者保護が不十分という問題がありました。
その後、強姦罪が廃止されて強制性交等罪となり、性別は問われなくなったものの、依然として構成要件には、暴力・脅迫を用いることが残り、見逃されるケースがありました。
そこで新設されたのが、不同意性交等罪です。この罪は、暴行・脅迫だけでなく、心理的支配、社会的関係、睡眠、泥酔、薬物、誤信利用なども処罰対象となり、被害者保護が強化されています。
性交同意年齢も13歳から16歳に引き上げられ、配偶者間でも不同意性交等罪が成立し得ることが条文に明記されました。
不同意性交等罪と準強制性交等罪の違い
不同意性交等罪は、相手の同意がない性交等すべてが処罰対象となる犯罪です。
一方、準強制性交等罪は、薬物やアルコールの影響などで相手が意識を失っていたり、抵抗できない状態になっていることを利用して性交等を行った場合に成立します。
つまり、準強制性交等罪は「抵抗できない状態を利用すること」がポイントですが、不同意性交等罪は「同意がないこと」そのものが処罰の対象となる点が大きな違いです。
不同意性交等罪と不同意わいせつ罪との違い
不同意性交等罪と不同意わいせつ罪の違いには、処罰対象や構成要件、法定刑などが挙げられます。
不同意性交等罪の処罰対象は、性交や性交類似行為全般ですが、不同意わいせつ罪は「性交等には至らないが、性的羞恥を引き起こす行為」が処罰対象となります。
つまり、性交や性交類似行為以外のわいせつ行為(キスや胸を触るなど)が不同意わいせつ罪で処罰されます。
なお、法定刑は不同意性交等罪が5年以上の有期拘禁刑であるのに対し、不同意わいせつ罪は6ヶ月以上10年以下の拘禁刑と規定されています。
不同意わいせつ罪について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
不同意わいせつ罪(強制わいせつ罪)とは不同意性交等罪の構成要件
不同意性交等罪の構成要件としてポイントとなるのは、主に以下の4つです。
- 性交等を行うこと
- 同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態であること
- 誤信または人違いをしている状況であること
- 被害者の年齢
不同意性交等罪の成立には、まず「性交や性交類似行為を行ったこと」が前提にありますが、その次に被害者の状態や年齢が判断要素として重視されます。
では、以下で各ポイントを詳しく解説していきます。
性交等を行うこと
不同意性交等罪の成立には、相手に行った行為が性交等でなければなりません。性交等には、以下のような行為が含まれます。
- 性交
- 肛門性交
- 口腔性交
- 膣または肛門に陰茎以外の身体の一部(指など)や物を挿入する行為
同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態
同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難にさせる8つの行為または原因が、下記のように条文上に例示されています。
- 暴行もしくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと
- 心身の障害を生じさせること又はそれがあること
- アルコールもしくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること
- 同意しない意思を形成し、表明し、又は全うするいとまがないこと
- 予期と異なる事態に直面させて恐怖させ、もしくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること
- 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること
誤信または人違いをしている状況
不同意性交等罪は、相手が同意の意思を示せない状況だけでなく、誤解や人違いによって性交等が行われた場合にも成立する可能性があります。
たとえば、健康診断や治療を装って性的な接触をした場合は、「誤信を利用した性交等」と判断されます。
また、暗い場所や目隠しなどで、相手に配偶者や恋人だと誤解させて性交等を行った場合は、「人違いを利用した性交等」として処罰の対象になることがあります。
被害者の年齢
不同意性交等罪は、基本的に「相手の同意がない性交等」が処罰の対象ですが、相手が16歳未満の場合は、同意の有無に関係なく処罰されます。
具体的な、被害者の年齢による処罰の違いは以下のとおりです。
16歳未満の相手に対する性交等は、同意があっても処罰対象
→ 判断力や自己決定力が未熟とされるため、自由な意思による同意とはみなされません。
13歳以上16歳未満の場合は、加害者との年齢差が5歳以上あると処罰対象
→ 例:被害者が13歳、加害者が18歳の場合は、同意の有無にかかわらず処罰されます。
13歳未満の相手に対する性交等は、年齢差や同意の有無に関係なく処罰対象
→ 絶対的に保護される年齢層とされており、例外はありません。
不同意性交等罪の罰則
不同意性交等罪の罰則は、5年以上の有期拘禁刑とされています。
有期拘禁刑とは、刑務所に収容して身体の自由を拘束する刑罰で、刑期が一定期間に限定されるものです。
不同意性交等罪の場合は、刑期が5年以上20年以下もしくは加重で30年以下となる可能性があります。
拘禁刑は、2025年6月1日から新たに施行された刑罰の一種で、従来の「禁錮刑」「懲役刑」が一本化されたものです。
拘禁刑について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
【2025年6月施行】拘禁刑とは?逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
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不同意性交等罪はいつから施行された?
不同意性交等罪が施行されたのは、性犯罪に関する法律が改正された2023年7月13日です。同じ日に「不同意わいせつ罪」も新たに施行されています。
この改正により、2023年7月13日以降に発生した性犯罪には、不同意性交等罪などの新しい法律が適用されます。
一方で、2023年7月12日以前に起きた事件については、改正前の強制性交等罪などが引き続き適用されるため、注意が必要です。
不同意性交等罪の時効
不同意性交等罪の公訴時効は、15年と規定されています。
性犯罪の重大性を踏まえ、被害者が告発しやすい環境を整えるために、従来は10年であった公訴時効が15年に延長されました。
なお、犯罪行為が終了した時点で被害者が18歳未満であった場合は、被害者が18歳になるまでの年数が時効期間に加算されます。
(例:被害者が15歳の場合 ➡ 3年+15年=18年が公訴時効となります)
不同意性交等罪で逮捕されたらどうなる?
不同意性交等罪で逮捕されると、主に以下のような流れで手続きが進みます。
- 1.逮捕
逮捕後は、警察からの取り調べを受けて、逮捕されてから48時間以内に事件の資料と身柄が検察に引き継がれます。引き継がれた後は、検察の取り調べを受け、引き継がれてから24時間以内に勾留請求を行うかどうかの判断が下されます。 - 2.勾留
検察官が裁判所に勾留請求を行い、それが認められると、まず10日間の勾留(身柄拘束)が行われます。勾留は、必要に応じてさらに10日間延長できるため、最大で20日間の勾留が可能です。 - 3.起訴・不起訴の決定
検察官は、勾留が終了するまでに起訴・不起訴の決定を下します。 - 4.刑事裁判
起訴されると、刑事裁判が開かれます。 - 5.判決
裁判官から、有罪・無罪の判決が言い渡されます。
不同意性交等罪は、非親告罪であるため、被害者の告訴がなくても起訴することができます。
逮捕された時の流れを図で詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
逮捕された時の流れ不同意性交等罪で逮捕されそう・された場合の対処法
刑事事件に強い弁護士へ依頼する
不同意性交等罪で逮捕されそう・された場合は、刑事事件に強い弁護士へ依頼することが大切です。
性犯罪は社会的影響が大きく、逮捕された事実を報道される可能性が高いです。そうなれば、学校や仕事に悪影響を及ぼすだけでなく、家族や親族にも影響が及ぶおそれがあります。
逮捕の回避や逮捕後に適切な対応をするには、専門的な知識が必要ですので、刑事事件に詳しい弁護士に依頼して、早急に弁護活動を行う ようにしましょう。
弁護士であれば、逮捕直後から行われる捜査機関の取り調べに対するの対応方法について、適切なアドバイスが可能です。また、早期釈放に向けて動いてもらえるため、安心して手続きを任せられます。
示談成立で逮捕回避・不起訴を目指す
不同意性交等罪で逮捕されないために、逮捕されても起訴されないためには、被害者との示談成立が重要です。
性犯罪は重大犯罪ですが、被害者と示談できれば、不起訴となる可能性が高まります。示談は、事件の当事者同士(被害者・加害者)の和解を示すものです。
示談内容に、被害者が処罰を求めない旨を記載できれば、処罰感情が緩和された証拠となり、検察官や裁判官の判断に大きな影響を与えます。
しかし、被害者への直接の接触は、証拠隠滅や脅迫と誤解される危険があります。被害者と示談交渉を行う場合は、弁護士を介して進めるようにしましょう。
専門家である弁護士が適切な条件で示談交渉を進めることで、法的リスクを回避できます。また、加害者側は、被害者の連絡先等を教えてもらえないのが基本ですので、弁護士を介して確認する必要もあります。
また、起訴と不起訴の違いや生活への影響などについては、以下のページをご覧ください。
起訴と不起訴起訴されても執行猶予付き判決を目指す
不同意性交等罪で不起訴を獲得できなかった場合は、起訴後に執行猶予付き判決を目指すことが大切です。
ただし、執行猶予が付く可能性があるのは、「3年以下の拘禁刑」あるいは「50万円以下の罰金刑」が言い渡されるケースに限られます。
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑であるため、執行猶予付き判決を目指すには、刑の減軽が必須です。
そのため、弁護士を通じて被害者との示談を進め、裁判で減軽事由を最大限主張するなどの行動を起こす必要があります。
なお、減軽のために重要な要素には、以下のようなものが挙げられます。
- 被害者との示談成立
- 反省の態度(真摯な謝罪、再犯防止策の提示 など)
- 社会的基盤の安定(家族や職場の協力、再犯防止の環境整備 など)
- 初犯であること など
これらの要素を適切かつ円滑に主張・立証するには、刑事事件に詳しい弁護士のサポートが必要です。
執行猶予について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
執行猶予とは?違いや注意点を解りやすく解説します。
冤罪の場合は同意の証明ができる証拠を探す
不同意性交等罪の疑いがかけられているが、それが冤罪である場合には、同意の証明ができる証拠を探す必要があります。
相手が性行為や性交類似行為に同意している旨の発言や様子がわかるデータ(録音やメッセージのやり取りなど)があれば、冤罪を証明する証拠となります。
また、知人の証言なども証拠として有効です。逮捕によって身柄を拘束されれば、身動きが取れなくなるため、証拠収集の対応は弁護士に任せ るようにしましょう。
弁護士に依頼し、名誉回復のための対応を行うことが冤罪を証明するうえで重要です。
改正後の不同意性交等罪の問題点
性交や性交類似行為が、相手の同意がない、または同意の意思を示すことが困難な状態で行われた場合、不同意性交等罪が成立する可能性があります。
同意しない意思を形成、表明、全うすることを困難にさせる8つの行為または原因が、条文上に例示されていますが、あくまでも例示にすぎません。
例示にすぎないということは、8つの行為または原因だけでなく、それらに類似する行為または原因があった場合も、不同意性交等罪で処罰されるおそれがあり、処罰範囲が不明確という問題があります。
後になって同意の有無が争われる可能性もあるため、ワンナイトの関係などリスクの高い性交等は、避けた方がいいでしょう。
不同意性交等罪で逮捕のおそれがある場合はできるだけ早く弁護士に相談を!
不同意性交等罪で逮捕のおそれがある場合は、一日でも早く示談に向けて活動を開始する必要があります。そのためには、刑事事件に詳しい弁護士にできるだけ早く相談し、弁護活動に着手することが大切です。
弁護士であれば、被害者の心情に配慮しながら、適切な示談内容を提示し、示談成立まで交渉を円滑に進められます。
弁護士法人ALGには、刑事事件に詳しい弁護士が複数名在籍しており、豊富な経験や知識を基に、充実した法的サポートの提供が可能です。
不同意性交等罪で逮捕のおそれがある・逮捕された方は、ぜひお気軽にご相談ください。
