不倫の時効は3年?20年?時効を止める方法や慰謝料請求についても解説

不倫には時効があります。
といっても、不倫をなかったことにするわけではなく、「一定期間の経過によって相手へ不倫の慰謝料を請求できる権利が消滅すること」を意味します。
不倫の時効は3年と20年の2パターンがあって、いずれか先に到来する期間を過ぎてしまうと慰謝料が受け取れなくなる可能性があるため、期限内に慰謝料請求することが重要になります。
この記事では、不倫の慰謝料を請求するときに気を付けるべき時効について、時効を止める方法や注意点をわかりやすく解説していきます。
配偶者の不倫について慰謝料請求すべきか悩まれている方の参考になれば幸いです。
目次
不倫の時効とは?慰謝料請求は何年以内?
不倫の時効とは、端的に言えば相手に不倫の慰謝料を請求できる期限のことです。
何もしないまま時効を過ぎると慰謝料を請求できる権利が消滅してしまうことから消滅時効と呼ばれます。 不倫の時効は3年または20年の2パターンがあります。
<不倫の時効>
不倫の時効は、3年と20年のいずれか先に到来する期間が経過した時点で消滅時効が完成します。
3年 |
不法行為および加害者を知ったときから3年以内 ただし、配偶者に対しては離婚してから3年間は離婚慰謝料を請求することができます。 |
---|---|
20年 | 不法行為があったときから20年以内※1 |
※1・・2020年3月31日までに20年が経過している場合は改正前の民法が適用されるため、除斥期間の経過によって慰謝料は請求できません
例
5年前に終わった不倫を最近知った場合、20年の消滅時効が完成前なので慰謝料請求が可能です。
一方、25年前に終わった不倫を最近知った場合は、20年の消滅時効が完成しているため慰謝料請求はできません。
不倫相手へ慰謝料請求する場合は?
不倫相手へ慰謝料請求する場合の時効は、不倫の事実と不倫相手の名前や住所を知ったときから3年以内です。
不倫相手が誰なのかわからない場合は時効がカウントされません。
もっとも、不倫相手が誰なのか特定できない場合でも、最後に不倫が行われたときから何もしないまま20年が経過してしまうと消滅時効が完成して請求権が失われ、慰謝料が受け取れない可能性があります。
時効の起算日とは、時効のカウントが始まる日のことです。
時効の起算日は、慰謝料の種類や請求相手によって次のように異なります。
慰謝料の種類 | 請求相手 | 起算日と時効 |
---|---|---|
不倫慰謝料 (不倫に対する慰謝料) |
配偶者 | 不倫の事実を知った日から3年 |
不倫相手 | 不倫の事実と不倫相手を知った日から3年 | |
離婚慰謝料 (不倫が原因の離婚に対する慰謝料) |
配偶者 | 離婚が成立した日から3年 |
なお、不倫の事実や不倫相手を知らない場合でも、最後に不倫が行われた日から20年の時効のカウントが始まり、3年と20年の時効のうち、いずれか先に到来する期間が経過した時点で消滅時効が完成して、慰謝料の請求権が失われてしまうため注意が必要です。
離婚後に不倫を知った場合の時効の起算点
離婚後に元配偶者の不倫を知った場合でも、不倫を知った時、または不倫と不倫相手を知った時から3年以内であれば不倫慰謝料を請求することができます。
この場合の起算点は、次のとおりです。
請求相手 | 起算日と時効 |
---|---|
元配偶者 | 離婚後に元配偶者の不倫を知った日から3年 |
不倫相手 | 離婚後に元配偶者の不倫と不倫相手を知った日から3年 |
なお、最後に不倫が行われたときから20年以内であれば、元配偶者や不倫相手に対して不倫慰謝料を請求することができます。
離婚慰謝料については以下ページで詳しく解説していますので、ご参考ください。
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不倫の時効を中断する4つの方法
時効を過ぎると慰謝料の請求が難しくなりますが、時効は止めることができます。
時効を止めるにはいくつか方法があって、次項からは次に挙げる4つの方法について解説していきます。
- 裁判での請求
- 内容証明郵便を送付
- 債務承認
- 仮差押・仮処分・差押
裁判での請求
時効を止める一つ目の方法は、裁判を起こして慰謝料を請求する方法(裁判上の請求)です。
裁判を起こすと、その時点で時効の進行を一時的にストップさせることができます(時効の完成猶予)。
確定判決や裁判上の和解などにより慰謝料請求の権利が確定すると、進んでいた時効のカウントがリセットされて、その時点から新たに10年間の時効のカウントがスタートします(時効の更新)。
なお、裁判を取下げたり訴えが却下されたりした場合は、その時点から6ヶ月間は時効の進行をストップさせることができます(時効の完成猶予)。
不倫の慰謝料は、離婚することの是非やその他の離婚条件とあわせて「離婚裁判」で請求することができます。
詳しくは以下ページをご参考ください。
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内容証明郵便を送付
時効を止める二つ目の方法は、内容証明郵便を送付して慰謝料を請求する方法(裁判外の催告)です。
内容証明郵便で「不倫慰謝料を請求する」という意思を通知することで(催告)、そこから6ヶ月間は時効の進行をストップさせることができます(時効の完成猶予)。
内容証明郵便とは?
内容証明郵便とは、いつ・誰が・どのような内容の文章を・誰に差し出したのかを、郵便局が記録・証明してくれるサービスで、「催告した」という事実を証明するために用いられます。
内容証明郵便などの催告によって時効の完成を猶予できるのは一度きりです。
そのため、時効が迫っているけれど裁判の準備ができていない場合などの一時的な対処法に過ぎず、正式に時効を止める・更新するためには裁判を起こすなどの対応が必要です。
債務承認
時効を止める三つ目の方法は、配偶者や不倫相手に不倫による慰謝料の支払義務(債務)を認めてもらう方法(債務の承認)です。
相手が債務を承認した時点で進んでいた時効の進行がリセットされ、そこから新たに5年の時効のカウントがスタートします(時効の更新)。
<債務を承認したとみなされるケース>
- 不倫慰謝料を支払うと約束した場合
- 配偶者または不倫相手が不倫慰謝料の一部を支払った場合
- 配偶者または不倫相手が不倫慰謝料の支払期限の延長を求めてきた場合
- 配偶者または不倫相手が不倫慰謝料の減額を求めてきた場合
債務承認は口約束でも成立しますが、後々「言った・言わない」の争いにならないように、相手が債務承認したことを必ず書面に残しておきましょう。
もっとも、不倫の慰謝料について債務承認するよう個人で交渉するのは難しいことが多いので、弁護士に交渉を任せることをおすすめします。
仮差押・仮処分・差押
不倫の慰謝料請求において用いられることは少ないですが、仮差押・仮処分・差押によって時効を止める方法もあります。
仮差押 | 仮差押は、相手の財産を仮に差し押さえる手続きです。 財産を隠したり処分されたりすることを防ぐ目的で、判決が出る前に行われます。 仮差押の場合、手続きが終了したときから6ヶ月は時効の進行をストップさせることができます(時効の完成猶予)。 |
---|---|
仮処分 | 仮処分は、金銭債権以外の仮差押ができない物の現状を保全しておく手続きです。 仮処分の場合、手続きが完了したときから6ヶ月間は時効の進行をストップさせることができます(時効の完成猶予)。 |
差押 | 差押は、確定判決や取り交わした公正証書の内容どおりに慰謝料を支払わない場合に、相手の給与や預貯金などの財産を差し押えて強制的に支払わせる手続きです。 差押の場合、手続きが終了するまでの間は時効の進行がストップし(時効の完成猶予)、手続きが終了したときから新たに時効の進行がスタートします(時効の更新)。 |
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不倫の時効が過ぎても慰謝料や離婚の請求できる?
まず、離婚については時効の定めがないため、不倫の時効が過ぎていても離婚を請求することが可能です。
不倫が原因で離婚した場合は、不倫の時効が過ぎていても元配偶者に対して「離婚慰謝料」を請求することができます。
そして、不倫の慰謝料については、時効が過ぎていても請求すること自体はできますが、支払いを受けられるかどうかは配偶者や不倫相手次第になります。
不倫の慰謝料は、配偶者や不倫相手が「時効が過ぎているから慰謝料を支払わない」と時効の援用をしない限り、時効を過ぎていても慰謝料を請求したり支払いを受けたりすることができます。
慰謝料の支払いを認めたあとで時効の援用を主張された場合は?
相手が時効の完成に気付かずに慰謝料の支払いを認めたあとで「やっぱり時効だから支払わない」と援用を主張したとしても、慰謝料の支払いを拒否することはできません。
時効完成後であっても債務承認した以上は時効の援用権を喪失したと考えられるためです。
時効直前に不倫慰謝料を請求する際の注意点
何らかの事情で時効直前に不倫の慰謝料請求することになった場合は、速やかに不倫の証拠を確保して慰謝料請求しましょう。
時効が過ぎてしまわないよう、必要に応じて時効を止める手続きを行うことも重要です。
慰謝料請求する前に不倫の証拠を確保しておく
急いで慰謝料請求したばかりに不倫の証拠が不十分だと、相手は不倫の事実を否定して慰謝料の支払いに応じない可能性があります。
不倫の事実を裏付ける証拠や不倫相手の情報を事前に確保したうえで慰謝料請求することが大切です。
必要に応じて時効を止める手続きを行う
時効が過ぎてしまいそうな場合、まずは内容証明郵便で催告するなど、時効を止める手続きを行いましょう。
その後速やかに交渉や裁判の準備を進めます。
手続きに不安がある場合は、早めの段階で弁護士に相談してみましょう。
以下ページで、不倫の証拠になり得るものや集め方について詳しく解説していますので参考になさってください。
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不倫の時効に不安がある場合は弁護士に相談・依頼するのがおすすめ
不倫の時効は3年と20年、いずれか先に到来する期間が経過すると、相手が任意で慰謝料を支払わない限り受け取れなくなってしまいます。
時効が過ぎて慰謝料が受け取れなくならないためにも、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
<不倫の時効を弁護士に相談・依頼するメリット>
- 不倫の時効について法的なアドバイスが受けられる
- 時効を止める方法についてアドバイス・サポートが受けられる
- 不倫の証拠集めについてサポートが受けられる
- 不倫相手を特定する方法についてアドバイス・サポートが受けられる
- 配偶者や不倫相手とのやりとり、交渉、裁判の手続きを任せられる など
不倫の時効に関するよくある質問
10年前の浮気を最近知った場合、慰謝料請求の時効は成立しますか?
10年前の浮気を最近知った場合、慰謝料請求の時効は成立していないと考えられます。
ご質問いただいたケースで浮気の時効が成立するのは、次のとおりです。
- 慰謝料を配偶者に請求する場合
➡ 浮気の事実を知ったときから3年以内 - 慰謝料を浮気相手に請求する場合
➡ 浮気の事実と浮気相手を特定できたときから3年以内
ただし、10年前の浮気に対して慰謝料を請求するには、ご自身で「配偶者と浮気相手が肉体関係を伴う浮気をしていた」という事実を、客観的な証拠をもって証明する必要があります。
2年前に配偶者の不倫が原因で離婚した場合、今からでも慰謝料請求できますか?
2年前に配偶者の不倫が原因で離婚した場合、今からでも慰謝料請求できる可能性はあります。
慰謝料請求ができるかどうかは、慰謝料の請求相手が元配偶者か不倫相手かによって異なります。
<元配偶者に慰謝料請求する場合>
元配偶者には、離婚が成立したときから3年が経っていなければ「離婚慰謝料」を請求することができます。
<不倫相手に慰謝料請求する場合>
不倫相手には、不倫の事実と不倫相手を特定できたときから3年が経っていなければ「不倫慰謝料」を請求することができます。
離婚した後の慰謝料請求については以下ページで詳しく解説していますので、参考になさってください。
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浮気相手の名前しかわからない場合、不倫慰謝料の時効はどうなりますか?
浮気相手の名前しかわからない場合、浮気相手に対する不倫慰謝料の時効は進行しません。
時効の進行が開始されるのは、「浮気相手の住所や連絡先といった情報を特定できた段階から」です。
もっとも、浮気相手の名前以外を特定できていなくても、配偶者に対しては「浮気の事実を知ったときから3年」の消滅時効の進行が開始されます。
また、浮気相手と配偶者、どちらに対しても「最後の浮気行為があったときから20年」の消滅時効は進行が開始しているため、浮気相手の特定を含め、不倫慰謝料の請求について早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
不倫の時効や慰謝料請求に関するお悩みは弁護士法人ALGにご相談ください
不倫の時効には3年と20年の2パターンがあって、いずれも慰謝料の種類や請求相手によって起算点が異なります。
「いつの間にか不倫の時効が過ぎていて慰謝料を受け取れなかった・・・」ということのないよう、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士法人ALGでは、不倫や離婚問題に詳しい弁護士が多く在籍していて、不倫の証拠集めから不倫相手の特定、時効を止める方法、相手との交渉までトータルサポートすることができます。
不倫の時効に不安を感じていらっしゃる方、不倫の慰謝料を請求すべきか悩まれている方、まずはお気軽にお問い合わせください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)