悪意の遺棄には慰謝料を請求できる!相場や注意点など

配偶者から一方的に別居されている、生活費の分担を拒否されているといった行為は「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
このような悪意の遺棄を理由として離婚したい、離婚を考えているというような場合は、慰謝料請求をできる可能性があります。
この記事では、慰謝料の請求ができる悪意の遺棄の具体例や慰謝料の相場などについて解説していきます。
弁護士法人ALGによる解決事例もご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
悪意の遺棄をされた場合は慰謝料が請求できる
悪意の遺棄とは、夫婦双方の「同居・扶助・協力の義務」に正当な理由なく違反することです。
また、悪意の遺棄は裁判で離婚が認められる法定離婚事由の一つです。
そのため、悪意の遺棄をされた場合は、離婚請求だけでなく慰謝料を請求できる可能性もあります。
慰謝料が請求できる悪意の遺棄となる7つの具体例
慰謝料が請求できる悪意の遺棄となる7つの具体例には以下のようなものがあります。
- 生活費を負担しない
- 別居して同居に応じない
- 健康なのに働かない
- 配偶者に必要な看護をしない
- 家事・育児を放棄する
- モラハラ・DVにより自宅から追い出す
- 頻繁に家出を繰り返す
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
生活費を負担しない
配偶者が家族の生活を維持するための生活費を渡さないという行為は、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
近年では女性の社会進出も進み、男女の収入差が少なくなってきました。
しかし、家事・育児を主にしているのは女性であることが多く、生活費を入れてもらえなければ生活が困窮してしまいます。
特に、配偶者が生活費を入れないことによって以下のような状況になれば、悪意の遺棄と判断されやすくなるでしょう。
- 他方の配偶者や子供が困窮し、満足に食事ができない
- 適切な医療を受けることができない
- 子供が通常想定される教育を受けられない など
別居して同居に応じない
配偶者が一方的に別居し、「戻ってきてほしい」という訴えに応えない場合は、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
別居と聞くと、夫婦関係の悪化などから別居に至るイメージを持たれるかもしれません。
しかし、悪意に遺棄に該当する別居は、正当な理由なく、「ただ一緒に住みたくない」といって別居を開始した場合や、不倫相手と同棲するために一方的に別居された場合などを指します。
そのため、別居に合意している場合や単身赴任、里帰りによる別居などは悪意の遺棄には当てはまりません。
健康なのに働かない
足や腰の負傷、心の病気などといった正当な理由なく、健康なのに配偶者が働かないことで、生活が困窮している場合は悪意の遺棄に該当する可能性があります。
正当な理由もないのに働かないことは、離婚を考える十分な理由といえます。
なお、遺産相続などで得た収益から家族を養っており働かない場合は、悪意の遺棄には該当しないでしょう。
配偶者に必要な看護をしない
配偶者が病気や事故に遭い苦しんでいるのに、必要な看護をしない場合も悪意の遺棄に該当する可能性があります。
昭和60年の浦和地方裁判所の判決では、半身不随の身体障害がある妻を置いて家を出て行き、生活費を負担しなかった夫の行為が悪意の遺棄であると認められています。
(昭和60年11月29日 浦和地方裁判所 判決)
家事・育児を放棄する
配偶者が家事・育児を一切放棄するような場合は、悪意の遺棄に該当する可能性がありますが、単に家事・育児に協力しないというだけでは認めてもらえないでしょう。
以下のような状況であれば家事・育児をしないことが悪意の遺棄に該当する可能性があります。
- 家事・育児に協力しない理由が男尊女卑的な思想にある場合
- 文字通りまったくの協力をせずにその状況が解消される見込みがない場合
- 夫婦の一方が家計維持のための仕事も家事・育児も全面的に負担していた場合
モラハラ・DVにより自宅から追い出す
配偶者が一方的に別居する場合だけでなく、他方の配偶者を家から出て行かせる行為も悪意の遺棄に該当する可能性があります。
それだけでなく以下のような行為がある場合は、悪意の遺棄の程度がひどいとして、慰謝料増額の可能性があります。
- モラハラ・DV・脅迫的な言動を用いたりして、半ば無理やり配偶者を自宅から出て行かせた場合
- 配偶者が外出中に自宅の鍵や玄関のチェーンをかけて自宅に入れないようにし、そのまま自宅内の荷物も取らせず締め出した場合
- 自宅から追い出し、締め出し行為に及んだ理由が、追い出された側にない場合
頻繁に家出を繰り返す
頻繁に家出を繰り返す場合も、悪意の遺棄に該当する場合があります。
精神疾患などにより、すぐに家を出てしまう場合もあるため、すべての家出が悪意の遺棄に該当するとは限りませんが、特段の理由なく家を出る場合は悪意の遺棄となります。
慰謝料の請求が難しいケース
同居・協力・扶助義務ができていなくても、悪意の遺棄に当たらず、慰謝料請求が難しいケースがあります。
例えば、以下のようなケースは悪意の遺棄に該当しない可能性が高いでしょう。
- DVやモラハラが原因で別居した
- 実家の親を介護するため、やむを得ず別居した
- 病気で働けない場合
- 解雇によって失業し、就職活動中である場合
- 専業主婦が生活費を負担しない場合
- 仕事での単身赴任
- 破綻しかけた夫婦関係を回復するための別居 など
悪意の遺棄で慰謝料を請求する方法
配偶者からの悪意の遺棄により慰謝料を請求したいと思った場合は、以下のような手順で行いましょう。
- 夫婦での話し合い
まずは夫婦で悪意の遺棄があったこと、慰謝料を請求したいことは伝えましょう。その際、配偶者からそんな事実はないと言われないためにも、証拠を揃えておくことが大切です。 -
調停
配偶者が慰謝料請求に応じない、話し合いにならないといった場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てましょう。調停では、調停委員を介して悪意の遺棄の事実や慰謝料について話し合っていきます。 -
裁判
調停が不成立となった場合の最後の手段として裁判を提起します。悪意の遺棄の証拠をもとに主張・立証していき、裁判所から判決が下されます。
悪意の遺棄による慰謝料の相場はいくら?
悪意の遺棄での慰謝料相場は数十万~300万円です。しかし、この金額はあくまでも相場であり、悪意の遺棄の程度や期間、配偶者の状況などの個別事情により慰謝料の金額が決まります。
また、以下のような事情がある場合は慰謝料が増額する可能性があります。
- 悪意の遺棄が長期間または複数回におよぶ場合
- 悪意の遺棄に当たる行為の内容が著しく悪質な場合
- 夫婦に未成熟子がいる場合
- 婚姻関係が長い場合
- 悪意の遺棄をした配偶者に反省の態度が見られない場合
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悪意の遺棄で慰謝料請求する場合の注意点
悪意の遺棄で慰謝料を請求する場合には、以下の点に注意しましょう。
- 慰謝料請求には悪意の遺棄の証拠が必要
- 慰謝料の請求には時効がある
- すぐに離婚しない場合は婚姻費用を請求する
では、それぞれどんなところに注意すべきなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
慰謝料請求には悪意の遺棄の証拠が必要
悪意の遺棄を理由に慰謝料や離婚請求をする場合は、証拠がなにより大切です。
例えば、「一方的な別居」や「生活費を入れてくれない」といった悪意の遺棄の場合、メッセージのやり取りや預貯金の入金履歴を証拠としやすいため、証明は比較的簡単だと思われます。
しかし、「家出を繰り返す」などといった悪意の遺棄の場合、決定的な証拠が少なく、悪意の遺棄を証明することが難しいケースがあります。
悪意の遺棄の証拠について不安がある場合は、弁護士に一度相談してみると良いでしょう。
慰謝料の請求には時効がある
慰謝料の請求には、以下の時効があります。
- その損害及び加害者を知ってから3年
- 不法行為のときから20年
悪意の遺棄の場合、「いつから悪意の遺棄があったか」という点が重要になるでしょう。
また、時効が近くて不安に思う方もいるかもしれませんが、完成猶予や更新の手続きを取ることで時効の完成を防ぐことができます。
すぐに離婚しない場合は婚姻費用を請求する
基本的に、慰謝料の請求は離婚時となります。
離婚を前提とした夫婦のなかには、すでに別居されている方やこれから別居するという方もいるでしょう。別居をしたのであれば婚姻費用は忘れずに請求するようにしましょう。
婚姻費用は別居をする際に収入の少ない方が多い方に支払いを求めることができる生活費のことです。婚姻関係にあるうちは婚姻費用を受け取ることが可能ですので、請求を忘れないようにしましょう。
金額は裁判所が公表している婚姻費用算定表から簡単に算出することができます。
また、婚姻費用は過去分をさかのぼって請求できないため、なるべく早く請求するようにしましょう。
悪意の遺棄に対する慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
悪意の遺棄で配偶者に対し慰謝料や離婚請求をする場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士であれば、個別事情に応じた悪意の遺棄の慰謝料相場を算出でき、法的な観点から適切に慰謝料請求の検討や準備ができます。
また、弁護士はあなたの代理人として配偶者と交渉を行っていきますので、配偶者と顔を合わせる必要がないため、精神的負担も軽減されるでしょう。
有利な条件での離婚成立や、慰謝料を請求したいとお考えの方は、一度弁護士に相談してみましょう。
悪意の遺棄の慰謝料に関する弁護士法人ALGの解決事例
10年以上前に無断で自宅を出て行った配偶者に慰謝料を300万円支払わせて離婚を成立させた事例
【事案の概要】
依頼者は相手方と子供と暮らしていましたが、相手方が理由も告げずに10年以上前に自宅を出て、勝手に別居を開始しました。依頼者から何度も同居するよう求めましたが、相手方が応じなかったため、依頼者1人で子供を育てていました。
その後、相手方から離婚調停が申し立てられ、依頼者としては、これまでの経緯から慰謝料を受け取らずに離婚することはできないとして、当事務所にご依頼いただきました。
【弁護士活動】
依頼者のお話を丁寧にヒアリングしたところ、悪意の遺棄にも当たると思われたので、相手方が有責配偶者であることを主張して、慰謝料を請求し、慰謝料を支払うのであれば離婚に応じるというスタンスで調停に臨みました。
【結果】
最終的に、相手方がこちらの請求する300万円の慰謝料の支払いに応じるという条件で離婚が成立しました。
悪意の遺棄による慰謝料請求をお考えの方は弁護士法人ALGへご相談ください!
配偶者から悪意の遺棄を受けた被害者の精神的苦痛は大きく、適切な慰謝料を支払ってもらうべきでしょう。
悪意の遺棄での慰謝料請求については、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは、夫婦問題や離婚問題に詳しい弁護士が多数在籍しております。ご相談者様のお悩みを丁寧にヒアリングし、適切な慰謝料を請求できるよう尽力いたします。
また、弁護士は慰謝料請求だけでなく、離婚請求も代理人として行うため、スムーズに話し合いが進む可能性が高まります。
少しでも悪意の遺棄でお悩みの方は、私たちに一度お話をお聞かせください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)