子供の認知とは|認知すると養育費や戸籍はどうなる?

婚姻関係にない男女の間に生まれた子供は、父親が認知することではじめて、法律上の父子関係が成立します。
この「認知」の手続きは、子供の養育費を請求する際にも必要となる重要な手続きです。
この記事では認知の方法や、養育費・戸籍への影響などについて解説していきます。ぜひご参考ください。
目次
子供の認知とは
子供の認知とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子供を、父親が自分の子供であると認めることです。
法的に婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子供は非嫡出子(ひちゃくしゅつし)と呼ばれす。
非嫡出子は、出産の事実だけでは法律上の父子関係が生じません。
その場合、父親に対して養育費を請求する権利もなければ、父親が亡くなった場合の相続権もありません。
そこで、認知制度を利用し、非嫡出子と父親の間に法律上の父子関係を生じさせることが重要です。
認知が必要になるケース
- 不倫関係にある男女間に子供ができた
- 内縁関係にある男女間に子供ができた など
なお、婚姻していない男女の間に生まれた子供は、出産の事実によって母親が誰かは明確になるため、認知請求は基本的に父親に対して行われることがほとんどです。
不倫で妊娠した場合は以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
「嫡出推定制度」について
① 嫡出推定の意味
嫡出推定とは、妻が婚姻中に出産した子供は「嫡出子」として扱うということです。
生まれた子の父が誰であるかを法律上早期に確定して子の利益を図るため、民法で、嫡出推定という制度が設けられています。
② 嫡出推定の見直し
令和6年4月1日施行の改正民法により、民法の規定は次のように変更されました。
婚姻成立の日から200日以内に生まれた子供について
- 改正前⇒婚姻中に懐胎したことが推定されないため、嫡出推定もされない
- 改正後⇒婚姻成立後200日以内に生まれた子供は、婚姻前に懐胎したものと推定した上で(改正法722条2項)、婚姻後に生まれたことをもって、婚姻中の夫の子と推定される(改正法722条1項後段)
離婚成立後300日以内に生まれた子供について
- 改正前⇒前夫の子と推定される
- 改正後⇒①再婚していなければ前夫の子供と推定される②前夫と離婚後に後夫と再婚していれば後夫の子供と推定される、③再婚して離婚していれば、直近婚姻の夫の子と推定される(民法722条3項)
子供が認知されるとどうなる?
子供が認知されると、以下のような権利や義務が生じます。
- 戸籍に記載される
- 養育費を請求できる/支払い義務が生じる
- 子供に相続権が発生する
- 父親を親権者に定めることができる
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
戸籍に記載される
父親の戸籍
父親の戸籍に認知した事実が記載されます。
記載される内容は、認知日、認知した子の名前、認知した子の戸籍です。
父親が認知したからといって、子供が父親の戸籍に入るわけではありません。
母親・子供の戸籍
父親に認知されると、今まで「父親」の欄が空欄だったのが、父親の氏名が記載されるようになります。
また、身分事項欄には認知日、認知者氏名、認知者本籍地などが記載されます。
養育費を請求できる/支払い義務が生じる
父親が子供を認知することで、法律上の父子関係が成立し、父親は子供を扶養する義務を負います。
そのため、父親には養育費の支払い義務が発生し、母親は養育費を請求できるようになります。
養育費の金額や支払い期間は、父母の話し合いによって自由に取り決めることができます。
話し合いがまとまらない場合は、裁判所が公開している養育費算定表を用いて相場を求めると良いでしょう。
養育費の金額や支払い期間について、話し合いで合意できたら、取り決めた内容を公正証書に残しておくと安心です。
その際、「強制執行認諾文言付き公正証書」にすることで、養育費が未払いになった場合に、強制執行の申立てをすることで、相手の財産を差し押さえることが可能です。
また、養育費は、基本的に過去にさかのぼって請求できないとされています。
しかし、出生から間もなく認知された場合には、出生時までさかのぼって請求できる可能性があります。
養育費は子供の権利でもありますので、あきらめず請求するようにしましょう。
養育費の相場については、以下のリンクで詳しく解説しています。ぜひご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
子供に相続権が発生する
認知することで、父子の間に法律上の親子関係が発生するため、子供は父親の相続権を得ることになります。
父親が亡くなれば子供は父親の相続人になりますし、子供が先に亡くなれば父親は直系尊属として子供の相続人となる可能性もあります。
父親に実子がいた場合、認知された子供は実子と同じ割合で遺産を受け取ることができます。たとえ父親に一度も会ったことがなくても相続分は実子とまったく同じです。
ただし、相続はプラスの財産だけ受け継ぐわけではありません。借金などのマイナス財産も受け継ぐことになるので注意しましょう。
借金などマイナスの財産があった場合は「相続放棄」を検討する必要もあります。
父親を親権者に定めることができる
非嫡出子は母親が単独で親権を持ちます。父親が認知をしたからといって一般の夫婦のように共同親権を持てるわけではありません。
しかし、父親を親権者とすることで合意した場合には、単独親権者を父親に変更することができます。
父母間での協議が整わない場合は、家庭裁判所に親権者変更調停を申し立てます。しかし、裁判所はよほどの事情がない限り、父親への親権者変更を許可しません。
親権者を変更するということは子供の生活環境を変えるということであり、裁判所は子供の成長のため、可能な限り現在の生活環境を維持させる方が良いと考えるためです。
認知した父親が親権を獲得するためのポイント
- 子育てに積極的に関わっておく
監護実績を積んでおくということです。子育てに積極的に関与すれば子供との信頼関係が構築され、親権の獲得に有利に働きます。 - 相手が親権者として適任でない証拠を確保する
虐待や育児放棄など面会交流を通じて子供からのSOSのサインを受け取った場合は日記や音声、動画に残しておきましょう。
父親の親権獲得については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。
子供を認知する方法と種類
認知する方法には以下の種類があります。
- 任意認知
- 強制認知
- 遺言認知
次項ではそれぞれについて解説していきます。
任意認知
任意認知とは、父親が自らの意思で子供を認知することをいい、父親が市区町村役場に認知届を提出します。
任意認知には、以下の2つの方法があります。
- 出生前に認知する方法
出生前に認知する場合は、母親の許可が必要です。ただし、母親が他の男性と婚姻関係にある場合は、認知が認められないため注意が必要です。 - 子供が出生してから認知する方法
子供が出生してから認知する場合、母親の同意は不要です。しかし、子供が成人している場合は、子供の同意が必要です。
認知届の手続き
〈届出人〉
認知する父親
〈届出先〉
父親もしくは子の本籍地、または父の所在地の市区町村役場
〈必要書類〉
- 認知届
- 子が成人している場合には、子の承諾書
- 認知届をする者(父親)の印鑑
- 認知届をする者(父親)の身分証明書
強制認知
強制認知とは、父親から任意に認知してもらえない場合に、裁判所によって認知を認めてもらう方法です。
父親の住所地を管轄する家庭裁判所に、まずは認知調停を申し立てます。
認知調停が不成立に終わった場合は、主張を裏付ける証拠書類を添えて、認知の訴えを提起します。
裁判では、裁判官が双方の主張や証拠に基づいて、認知するかどうかを判断します。
遺言認知
父親が生存中に認知できない事情がある場合には、遺言によっても認知することができます。
遺言認知をするときは、遺言書で遺言執行者を定めておく必要があります。
そして、遺言執行者が次のいずれかの市区町村役場に認知届を提出してはじめて遺言認知の効力が生じます。
- 遺言者又は子供の本籍地
- 遺言執行者の住所地
なお、子供が成人している場合は子供の承諾が必要です。 遺言認知が行われると、認知された子供はその父親の相続権を取得することになります。
子供の認知はいつまでできるのか?
認知の請求には原則として期限はありません。ただし、子供が成人した後の認知に関しては子供本人の承諾がないと認知できないことになっています。
また、父親が死亡した場合には、死亡日から3年以内に認知請求する必要があります。
子供の認知を取り消すことは可能か?
子供の認知は基本的に取り消すことはできません。
一度生じた法律上の父子関係が、父親の意思のみで取り消すことができると、子供の身分関係は非常に不安定なものとなり、子供の福祉(しあわせ)の観点からも望ましくありません。
しかし、例外的に以下のような場合は認知を無効にできるケースもあります。
- 認知した子供が実の子供ではなかったケース
- 子供または母親の承諾なく認知がなされたケース
認知を取り消すには母親の居住地を管轄する家庭裁判所、あるいは父親・母親の合意によって定められる家庭裁判所に対して、申立てが必要です。
子供の認知に関する弁護士法人ALGの解決事例
弁護士法人ALGによる、子供の認知に関する解決事例をご紹介します。
なお、この事例は改正民法が施行される前の事案です。
【事案の概要】
A(依頼者母)は、外国人夫と婚姻関係にあるなか、B(相手方)と交際を開始し、妊娠が発覚しました。Aは外国人夫と協議離婚を成立させ、Bと婚姻した後に依頼者を出産しました。
しかし、改正前の民法によって依頼者は外国人前夫の嫡出子とされてしまうため、Bへの認知請求について、当事務所に依頼されました。
【担当弁護士の活動】
担当弁護士は、嫡出推定が及ばないとして認知をする場合は、裁判上で認知を認めてもらう必要があるため、認知調停を申し立てましたが、外国にいる前夫に確認を取ることに時間がかかってしまうため、調停を取り下げて認知訴訟を提起することにしました。
認知訴訟では、以下の点からBとの父子関係の証明を行いました。
- 血液型から親子関係に矛盾がないこと
- Aが妊娠した当時、前夫は外国にいたこと
- 依頼者の容姿(いわゆる日本人顔)の写真の提出
【結果】
出入国記録によって、Aと外国人前夫が別の国で生活していたことが立証でき、認知を認める判決を得ることができました。
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。
子供の認知に関するQ&A
不倫相手との子供を認知すると妻にバレるでしょうか?
認知をすると男性の戸籍にも認知をした事実が記載されます。何らかの機会に妻が戸籍を取得すれば、認知の事実が発覚してしまうでしょう。
認知した子供の母親である不倫相手の氏名や本籍地も記載されるため、妻から慰謝料を請求されてしまうおそれもあります。
相手に認知請求権を放棄してもらうことは可能ですか?
父親が認知しない場合に強制認知の方法で父親に認知させることができますが、このような請求ができるのは、母親や子供が認知請求権を有しているからです。
認知請求権は、子供の人生に大きく関わる大切な権利であるため、自分勝手に放棄したり、処分したりすることはできません。
例えば、合意書に「認知請求権を放棄する」とサインをして示談金を受け取るなど、当事者間で認知請求権の放棄を合意していても、法律上は無効であり、後から認知請求を求めることができます。
認知されない子供はどうなりますか?デメリットはありますか?
子供が認知されない場合のデメリットは以下のとおりです。
- 母親が父親に対して養育費を請求できない
- 子供が父親に対して扶養を請求できない
- 父親が亡くなっても遺産を相続できない
- 父親がいないという精神的負担を受ける
母親・子供ともに父親のサポートを受ける法律上の権利が一切認められないことになります。社会生活上も大きな精神的・経済的負担を抱えて生きていくことになりかねません。
強制認知から逃げることは可能でしょうか?
強制認知から逃げられるのかということですが、法律上、基本的に逃れることはできません。
父親が死亡してから3年後には認知請求はできなくなりますが、父親が生きている限りは、認知請求され、認知が成立する可能性があります。
そのため、強制認知からは逃れることはできないものと考えておくべきでしょう。
また、相手方と「認知請求はしない」と約束をしていたとしても、法律上、子供の認知請求を奪うことはできなくなっています。
どうしても認知請求を逃れたい場合は母親を説得するしかないでしょう。
強制認知が認められないのはどのようなケースですか?
以下のようなケースでは、強制認知が認められない可能性が高くなります。
- 父親が亡くなってから3年が経過している場合
強制認知は、子供の出生後であればいつでも訴えを起こすことができますが、父親の死亡から3年が経過すると、訴えの提起ができなくなります。 - 血縁関係のない子供の認知請求
父親と子供との間に血縁関係がないことが証明された場合には、強制認知が認められません。
子供の認知で不安なことがあればお気軽に弁護士にご相談下さい。
父親に認知してもらう事は、子供の健やかな成長に大事なことですが、父親が任意で認知してくれるとは限りません。
その場合に強制的に認知させるには裁判上の手続きが必要となります。
認知で揉めてしまうと精神的、経済的にも負担が大きくなってしまうため、子供の認知については弁護士にご相談ください。
弁護士であれば相手方とのやり取りや家庭裁判所の手続きについて代行できるため、負担が軽くなるでしょう。
また、相手が認知してくれない、自分の子ではないと無効を主張してきた際、ご自身で対処するのは難しいことだと思います。
弁護士に依頼することで、法的に主張・立証していくことが可能です。子供の認知にお困りの方は私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)