不貞行為による慰謝料の二重取りとは?例外的に可能なケースなど

配偶者の不貞行為が発覚したとき、配偶者と不貞相手を許せないという気持ちから、双方に慰謝料を請求したいとお考えになる方も多いかと思います。
不貞行為による慰謝料は、配偶者と不貞相手の双方に請求することが可能ですが、慰謝料の二重取りとなってしまわないよう注意が必要です。
この記事では、不貞行為による慰謝料の二重取りとはなにか、二重取りが可能となるケースはあるのかを解説していきます。
目次
不貞行為による慰謝料の二重取りとは?

不貞行為による慰謝料の二重取りとは、配偶者と不貞相手のどちらか一方から不貞慰謝料の全額をすでに受け取りながら、他方にも不貞慰謝料を請求して受け取ることをいいます。
不貞行為は相手がいて成立する共同不法行為なので、配偶者と不貞相手は連帯して不貞慰謝料を支払う責任を負っています。
ですが、「請求できる相手が2人いる=不貞慰謝料を2倍受け取れる」というわけではありません。
基本的に、不貞慰謝料の二重取りは認められていないため、配偶者と不貞相手が連帯して賠償責任を負う慰謝料額を超えて双方に請求してしまうと、不貞慰謝料の二重取りになるため注意が必要です。
不貞行為による慰謝料の二重取りと考えられるケース例
不貞行為による慰謝料が200万円だった場合に、配偶者からすでに200万円を受け取っているにもかかわらず、不貞相手にも慰謝料を請求して、合計200万円以上の慰謝料を受け取ると、二重取りになってしまいます。
二重取りにはならずに不貞慰謝料を受け取ることができるケース
不貞行為を行った配偶者と不貞相手の双方に請求しても、例外的に二重取りにはならずに不貞慰謝料を受け取ることができる4つのケースがあります。
- 当事者間の合意がある場合
- 不貞行為が原因で夫婦関係が破綻し夫婦が離婚する場合
- 不貞行為以外の離婚原因の慰謝料も含まれる場合
- 不貞行為の相手が複数いる場合
それぞれのケースについて次項で詳しくみていきましょう。
①当事者間の合意がある場合
裁判外で、配偶者と不貞相手の双方が慰謝料の支払いに応じた場合、事実上は慰謝料の二重取りが可能です。
配偶者と不貞相手の一方から十分な慰謝料を受け取った場合は、他方からさらに慰謝料を受け取ることはできないというのは裁判所の考え方です。
そのため、裁判外で当事者間の合意があれば、裁判において認められるであろう慰謝料の相場を超える金額を受け取ることができます。
たとえば、慰謝料の相場が200万円だった場合、裁判上は配偶者と不貞相手双方に200万円ずつ請求すると二重取りになるとして認められません。
一方、裁判外で当事者が話し合って合意すれば、双方に200万円ずつ請求して、合計400万円の慰謝料を受け取ることができます。
②不貞行為が原因で夫婦関係が破綻し夫婦が離婚する場合
不貞行為が原因で夫婦関係が破綻し夫婦が離婚する場合、配偶者からは離婚慰謝料を、不貞相手からは不貞慰謝料を受け取ることができるので、事実上は二重取りが可能になります。
配偶者から受け取れる離婚慰謝料のなかには不貞慰謝料も含まれていると考えられますが、そのうちいくらが不貞慰謝料であるのかを特定するのは困難だからです。
そのため、「配偶者から不貞慰謝料を全額支払われたとはいえない」と判断され、不貞相手への慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
③不貞行為以外の離婚原因の慰謝料も含まれる場合
配偶者から受け取った慰謝料に、不貞行為以外の離婚原因の慰謝料が含まれる場合も、配偶者からの離婚慰謝料とは別で不貞相手から不貞慰謝料を受け取れるため、事実上の二重取りが可能になります。
離婚理由が不貞行為だけではなく、相手のDVやモラハラにあった場合には、これらの事情を考慮し、それぞれの慰謝料を合わせて離婚慰謝料が支払われます。
とはいえ、離婚理由ごとに具体的な慰謝料の金額を区別することは困難です。
たとえば、客観的に妥当な不貞慰謝料が200万円だった場合に、配偶者から200万円の離婚慰謝料を受け取っていたとします。
この離婚慰謝料に不貞行為だけでなく、DVやモラハラの慰謝料も含まれている場合、配偶者から、妥当な不貞慰謝料200万円が全額支払われたわけではないため、不貞相手に対して不貞慰謝料を請求できると考えられます。
④不貞行為の相手が複数いる場合
配偶者に不貞行為の相手が複数いる場合、それぞれの不貞相手に対して不貞慰謝料を請求できます。これは基本的には二重取りにはあたりません。
不貞相手が複数いる場合、それぞれに不法行為が成立するためです。
◆慰謝料は慰謝料の人数分増えるわけではありません
不貞相手が複数いることは、配偶者に対する慰謝料の増額要素になりますが、不貞慰謝料の合計金額は不貞相手の人数によって単純に増えるわけではないので注意しましょう。
不貞慰謝料の二重取りが心配な場合は弁護士に相談を!
不貞慰謝料の二重取りをしてしまうと、不当利得として返還を求められるリスクもあります。
「配偶者と不貞相手の双方にしっかり償ってもらいたいけど不貞慰謝料の二重取りが心配・・・」という方は、弁護士に相談することで次のようなメリットがあります。
適切な慰謝料の相場がわかる
不貞慰謝料は婚姻期間の長さや子供の有無、不貞行為の回数や期間などの個別の事情によって具体的な金額が変わります。
二重取りを疑われないためには、弁護士に相談して適切な慰謝料の相場を知ることが大切です。
配偶者や不貞相手との交渉を任せられる
弁護士であれば、配偶者や不貞相手との交渉を任せることもできるので、精神的な負担の軽減だけでなく、円滑に適切な慰謝料を受け取れる可能性が高まります。
有利な条件による離婚もサポートしてもらえる
配偶者の不貞行為が原因で離婚を検討されている場合は、弁護士に相談することで不貞慰謝料だけでなく、財産分与や子供に関する養育費・面会交流などの離婚条件について、有利な条件で離婚できるようサポートしてもらえます。
弁護士に依頼するメリットや弁護士の探し方については、以下ページもご参考ください。
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配偶者と不貞相手のそれぞれから慰謝料100万円を獲得した事例
弁護士が粘り強く交渉した結果、配偶者と不貞相手のそれぞれから慰謝料100万円を獲得した当法人の解決事例をご紹介します。
事案の概要
配偶者の不貞行為を問い詰めたところ離婚を切り出されたご依頼者様は、配偶者に対してはもちろん、不貞相手にも慰謝料請求したいと考え、当法人に交渉をご依頼いただきました。
弁護士の活動および解決結果
配偶者の代理人からは慰謝料数十万円と提案されましたが、弁護士が解決金額の増額に向けて粘り強く交渉した結果、配偶者からは慰謝料100万円を獲得できました。
また、配偶者の話を前提に追及した結果、不貞相手からも100万円の慰謝料を獲得できました。
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不貞慰謝料の二重取りに関するよくある質問
配偶者に不貞慰謝料を500万円請求し、さらに不貞行為の相手にも慰謝料請求したら二重取りになりますか?
配偶者から500万円の不貞慰謝料を受け取っている場合、さらに不貞相手に慰謝料請求すると二重取りになる可能性があります。
なぜなら、不貞慰謝料の相場は50万~300万円程度になることが多く、不貞相手にも慰謝料請求すると500万円以上もの、相場から大きく離れた慰謝料を受け取ることになるためです。
もっとも、次のようなケースでは二重取りにはならずに不貞相手からも慰謝料が受け取れる可能性があります。
- 当事者間の合意があって、不貞相手が慰謝料の支払いに応じる場合
- 婚姻期間の長さや不貞行為の悪性によって妥当な慰謝料額が500万円以上の場合
まずは弁護士に相談して、ご自身のケースの慰謝料について適切な金額がどのくらいになるのかを確認してみるとよいでしょう。
浮気相手が複数人いる場合、不貞慰謝料を請求する場合は慰謝料の二重取りになりますか?
浮気相手が複数人いる場合、別々の不法行為が成立するので、それぞれの浮気相手に対して不貞慰謝料を請求しても二重取りにはなりません。
もっとも、浮気相手の人数に比例して慰謝料額が増えるわけではないので、客観的に妥当な慰謝料の金額を超えて請求してしまうと、二重取りになってしまう可能性があります。
妥当な慰謝料が300万円だった場合、浮気相手や配偶者から受け取れる慰謝料は合計で300万円なので、これを超えると二重取りになるので注意が必要です。
複数人いる浮気相手に対して、どのように不貞慰謝料を請求すればよいか迷ったら、慰謝料の適切な金額を含めて弁護士へ相談してみましょう。
不貞行為の慰謝料を浮気相手だけに請求する場合、注意すべきことはありますか?
不貞行為の慰謝料を浮気相手だけに請求する場合、求償権に注意しましょう。
求償権とは、連帯して支払う責任がある慰謝料を当事者の一方が多く支払った場合に、自分の負担割合を超える部分について他方の当事者へ返還を求めることをいいます。
たとえば、不貞慰謝料が200万円だった場合に、浮気相手が200万円全額を支払ったとします。
このとき、浮気相手から配偶者へ求償権を行使されると、配偶者は自身が負担すべき金額(浮気の責任が半分ずつだったら100万円)を、浮気相手へ支払わなければなりません。
配偶者と離婚しない場合は、受け取れる慰謝料が実質上は減ってしまうことになるので注意が必要です。
不貞慰謝料の請求を行う際は二重取りの可能性も含めて弁護士にご相談ください
配偶者の不貞行為が発覚し、慰謝料を請求することになった場合、請求の仕方や金額など、様々な面で不安に思う方もいらっしゃると思います。
原則として、不貞した配偶者と不貞相手から慰謝料を二重取りすることはできませんが、少しでも多く請求するためにも弁護士に相談することは有用です。
法律の専門家である弁護士に相談することで、適切な対応をアドバイスしてもらうことができ、解決に向けて一歩踏み出すことができます。
弁護士法人ALGは夫婦問題、離婚問題に詳しい弁護士が多数在籍しているため、あなたに合った、あなたの味方になる弁護士がきっと見つかるはずです。
慰謝料問題でお困りの方は是非一度私たちにご相談ください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)