不倫相手が同性だった…不貞行為に該当する?離婚や慰謝料はどうなる?

夫や妻が同性と不倫をしていた場合、異性間の不倫と同様に不貞行為に該当するのでしょうか。
離婚や慰謝料は請求できるのでしょうか。
これまで不貞行為は、異性間で性的関係をもつことを指すと考えられていて、同性同士の不倫は不貞行為と認められにくい傾向にありました。
ですが令和3年2月に、東京地裁において、「同性同士の不倫が不貞行為にあたる」として不倫相手に対する慰謝料請求を認める判決がだされました。
この結果を踏まえ、同性同士の不倫がどのような場合に不貞行為に該当するのか、離婚や慰謝料請求は認められるのかを、本記事で詳しく解説していきます。
目次
同性との不倫は「不貞行為」に該当するのか?
同性との不倫が不貞行為に該当するかは、法律上明確に規定されていません。
そもそも不貞行為とは、夫婦が負う貞操義務に違反して配偶者以外の者と性的関係をもつことを指します。
配偶者以外の者が異性か同性かについては曖昧ですが、これまでの裁判例では、「法定離婚事由の不貞行為は配偶者以外の異性との性的な行為に限定される」と考えられてきました。
そのため、同性との不倫は性的な行為があったとしても不貞行為にあたらないとされてきましたが、多様化する性的マイノリティへの理解が深まる昨今の状況下、令和3年2月に東京地裁において、同性間の性的関係を不貞行為と認める判決が下されました。
この結果を受け、不倫相手が同性の場合でも、不貞行為として離婚や慰謝料の請求が認められる可能性が高まりました。
同性との不倫を「不貞行為」と認めた裁判例
同性との不倫を不貞行為として、不倫相手に対する慰謝料請求を認めた裁判例をご紹介します。
【東京地方裁判所 令元(ワ)30097号 令和3年2月16日判決】
<事案の概要>
夫が、妻と性的関係にあった不倫相手の女性に対して、妻との不貞行為を理由に慰謝料を求めた事案です。
「異性間の性行為ではなくても、夫婦関係を破綻させるような同性間の性的類似行為は不貞行為にあたる」という夫の主張に対し、不倫相手の女性は「不貞行為は異性間の性行為に限定されるため慰謝料を支払う必要はない」と主張しました。
<裁判所の判断>
裁判所は、男女間の性行為に限らず、夫婦生活を破綻させるような性行為類似行為は不貞行為に該当すると判断しました。
そのうえで、妻と不倫相手の女性が行った同性間の行為も夫婦生活の平穏を害しかねない性行為類似行為であるといえ、不貞行為に該当するとして、不倫相手の女性に対して慰謝料を含めた11万円の損害賠償を命じる判決を下しました。
同性との不倫を理由に離婚できる?
配偶者の不倫相手が同性だった場合でも、離婚できる可能性があります。
夫婦で話し合って合意できれば、どのような理由であっても離婚することができます。
一方で相手が応じない場合には、調停離婚や離婚裁判といった裁判所の法的手続きを利用して離婚の成立を目指すことになります。
以下、詳しくみていきましょう。
話し合いで合意すれば離婚できる
配偶者の同性との不倫が理由でも、夫婦双方が合意できれば協議離婚や調停離婚が成立します。
【協議離婚】
協議離婚とは、裁判所の手続きを利用せず、夫婦間の話し合いのみによって離婚する方法です。
【調停離婚】
調停離婚とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、夫婦で話し合って離婚する方法です。
夫婦間で話し合いがまとまらなかったり、相手が話し合いに応じなかったりして協議離婚が成立しない場合には、離婚調停を申し立てて調停委員を介して離婚の合意に向けて話し合いをします。
いずれも話し合いの結果、夫婦が離婚に合意できればどのような理由であっても離婚が成立します。
裁判離婚の場合は法定離婚事由が必要
協議離婚や調停離婚が成立しない場合は、裁判離婚を目指すことになります。
【裁判離婚】
裁判離婚とは、離婚について合意できない場合に訴訟を提起し、裁判所の判決によって強制的に離婚を目指す方法です。
裁判で離婚を認めてもらうためには、法律で定められている5つの離婚理由=法定離婚事由のいずれかが存在しなければなりません。
【法定離婚事由】
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みがない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
配偶者の不倫相手が同性の場合、法定離婚事由のうち不貞行為に該当するかが主な争点になります。
もっとも、不貞行為と認められなかったとしても、同性同士の不倫がその他婚姻を継続し難い重大な事由に該当すると認められれば、裁判で離婚できる可能性は高いと考えられます。
不倫相手が同性だった場合に慰謝料は請求できる?
配偶者の不倫相手が同性だった場合でも、慰謝料請求が認められる可能性はあります。
令和3年2月に東京地裁が下した判決では、同性同士の不倫が不貞行為にあたるとして不倫相手に対する慰謝料請求を認めました。
また、不貞行為とは認められなくても、同性同士の不倫により夫婦生活の平穏が害されたとして不法行為に基づく慰謝料請求が認められた判例もあります。
不貞行為に該当するかどうかにかかわらず、婚姻を継続し難いほどの精神的苦痛が生じていれば、慰謝料請求が認められる可能性があるのです。
【不倫相手が同性だった場合の慰謝料の相場】
同性同士の不倫の場合の慰謝料相場は、一般的に異性間の不倫と同様に、50万~300万円程度に収まると考えられています。
不倫に対する慰謝料は
- 性的類似行為の有無、回数
- 不倫期間の長さ
- 婚姻期間の長さ
- 夫婦間の子供の有無
など、さまざまな事情や過去の裁判例を考慮して判断されますが、これは同性同士の不倫であっても変わりません。
不倫の慰謝料については以下のサイトで詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
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慰謝料請求の流れ
不倫の慰謝料を請求する流れは、不倫相手が配偶者と同性でも異性でも変わりはありません。
一般的には、【①証拠収集➡②話し合い➡③法的手段】という流れで進みます。
- 証拠収集
不倫を裏付ける証拠や、不倫相手の氏名・住所といった情報を集めます。 - 話し合い
配偶者と不倫相手のどちらか、あるいは両方に連絡して慰謝料請求を行います。
連絡手段は、内容証明郵便を利用する方法がおすすめです。
話し合いで合意できたら、示談書(合意書)を強制執行認諾文言付き公正証書として作成しておきましょう。 - 法的手段(調停・裁判)
当事者間の話し合いがまとまらない場合は、調停や裁判などの法的手段で慰謝料請求を行います。
配偶者と離婚について争っている場合は、離婚調停のなかで慰謝料についても話し合うことが可能です。
同性不倫で慰謝料を請求する際のポイント
同性同士の不倫で慰謝料を請求するにあたっては、
- 不倫の慰謝料請求には証拠収集が重要
- 不倫の慰謝料は二重取りできない
という、2つのポイントをおさえておきましょう。
それぞれのポイントについて、次項で詳しくみていきましょう。
不倫の慰謝料請求には証拠収集が重要
慰謝料を請求するにあたって不倫を裏付ける証拠が重要になるのですが、同性同士の不倫の場合、より具体的な証拠が必要になります。
不倫相手が異性であれば、2人きりでホテルに宿泊したり旅行に行ったりした証拠があれば、不倫を裏付ける有力な証拠となり得ますが、相手が同性だとこれだけでは性的関係を推認させるのは難しいと言わざるを得ません。
したがって、同性同士の不倫の場合は、友人関係を超えた親密な関係にあることや性的関係をもったことを、次のような証拠から証明していくことになります。
<同性同士の不倫の証拠>
- 裸で抱き合っている写真や動画
- 性的関係をもったことがわかるメールやLINEのやりとり など
不倫の証拠を集める方法や注意点について、以下ページで詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
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不倫の慰謝料は二重取りできない
不倫は共同不法行為であるため、配偶者と不倫相手の双方に慰謝料を請求することが可能ですが、二重取りできない点に注意が必要です。
<不倫の慰謝料200万円を請求する際の3つのパターン>
- 不倫をした配偶者のみに200万円を請求する
- 不倫相手にのみ200万円を請求する
- 不倫をした配偶者と不倫相手の双方にあわせて200万円を請求する
配偶者と不倫相手の双方に請求する場合、双方からトータルで200万円を超えて受け取ることはできないのです。
【不倫相手だけに慰謝料を請求する場合は求償権に注意】
共同不法行為である不倫では、不倫した配偶者と不倫相手が共同でその責任を負うため、不倫相手だけに慰謝料を請求し支払いを受けた場合、不倫相手は、不倫した配偶者に対して、自身が本来負担すべき分を超えて支払った分の返還請求ができ、求償権といいます。
不貞行為に対する慰謝料の二重取りについては、以下ページでも詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
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同性不倫による離婚で決めておくべき条件
配偶者が同性と不倫したことが原因で離婚する場合、慰謝料以外にも決めておくべき条件があります。
後に配偶者とトラブルが生じないように、次の離婚条件について漏れなく取り決めておきましょう。
<慰謝料以外に決めておくべき離婚条件>
- 財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻中に築き上げた財産(預貯金・不動産・自動車・負債など)を公平に分け合うことです。 - 年金分割
年金分割とは、夫婦が婚姻中に納めた厚生年金部分を分け合うことです。 - 親権
親権とは、未成年の子供の監護・教育・財産管理などを行う権利であり義務のことです。
現在の日本では離婚後は単独親権となるため、離婚時に未成年の子供がいる場合、どちらが親権者になるのかを決める必要があります。 - 養育費
養育費とは、未成熟子の監護や教育のために必要な費用のことです。
離婚後に子供と一緒に暮らして養育にあたる監護親から、子供と離れて暮らす非監護親に対して養育費を請求することができます。 - 面会交流
面会交流とは、離婚後に離れて暮らす親子が定期的に交流をはかることです。
子供が健全に成長するために面会交流は欠かせないものなので、交流の方法や頻度などについて決める必要があります。
離婚条件について取り決めた内容は離婚協議書にまとめておきましょう。
離婚協議書は、約束が守られなかった場合に備えて、強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくと安心です。
詳しくは、以下ページをご参考ください。
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同性不倫で離婚や慰謝料請求について悩んだら、離婚問題に詳しい弁護士にご相談ください。
配偶者が不倫をしていて、さらにその相手が同性だった場合、驚き、精神的なショックを受け、離婚や慰謝料を請求したいとお考えになるのも無理はありません。
性的マイノリティへの理解が深まる近年、同性同士の不倫も不貞行為と認められつつあります。
配偶者の不倫相手が同性だった場合に離婚や慰謝料請求をお考えの方は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士法人ALGには、夫婦や離婚の問題に詳しい弁護士が多数在籍しています。
これまでの経験や知識を活かし、証拠を集める方法や配偶者・不倫相手との交渉など、弁護士が味方となってサポートいたしますので、まずは不安や疑問に感じていることを私たちにお聞かせください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)