不貞行為なしで請求された慰謝料は認められる?具体例や対処法

“不貞行為はないのに慰謝料を請求された”
この記事にたどり着いた方は、なぜ慰謝料請求されたのか、支払わないといけないのか、疑問をお持ちだと思います。
しかし、肉体関係がなくても“LINEやメールで親密なやり取りをした”、“隠れてキスをした”というような場合に慰謝料を請求される可能性があります。
この記事では、不貞行為なしで慰謝料を請求されるリスクのある行動や、請求されたときの対処法、不貞行為なしでの慰謝料の相場などについて解説していきます。
目次
そもそも不貞行為とは?
不貞行為とは、配偶者(婚約者や事実婚などの内縁関係も含む)以外の者と自由意思に基づき肉体関係を持つことです。
法律上、不貞行為として認められるには肉体関係があったことが前提となります。
そのため、不貞慰謝料の請求を認めてもらうためには、配偶者と不貞相手の間に肉体関係があったことを証明しなければなりません。
しかし、これまでの判例の中には、肉体関係がなくても慰謝料の請求が認められた例外的なケースもあります。
不貞行為なしでも慰謝料請求が認められる可能性があるケース
肉体関係がなく、法律上の不貞行為がなくても、夫婦の平穏で円満な生活を侵害したと認められれば、「不法行為」として慰謝料の請求が可能なケースがあります。
具体的には、以下のようなケースです。
- LINE・メール・SNSで親密なやりとりがあった
- 高級なプレゼントを繰り返していた
- 頻繁に密会していた
- キスなどの身体的接触があった
- 肉体関係はないが2人でホテルに入った
1.LINE・メール・SNSでの親密なやりとりがあった
LINEやメール、SNSで親密なやりとりがあった場合は、不貞行為がなくても慰謝料を請求される可能性があります。
例えば、肉体関係があったことを想像させるようなやりとりや、「愛している・好き」などの愛情表現があり、このような内容の連絡を高い頻度で取り合っている場合には、一連の行為全体を総合的に判断して、不貞行為がなくても慰謝料の請求が認められる可能性があります。
2.高額なプレゼントを繰り返していた
会社の同僚や友人間では、誕生日や結婚祝い、お中元やお歳暮などを送り合うことも十分に考えられます。
しかし、何度も高額なプレゼントを贈り合っていれば、2人の間に何かしらの恋愛関係があるのではないかと推測されるのも当然でしょう。
そのため、複数回にわたり高級なプレゼントを贈り合っているという事実が発覚すれば、不貞行為はなくても精神的苦痛を理由とした慰謝料の請求が認められる可能性があります。
3.頻繁に密会していた
頻繁に密会していた場合に慰謝料請求が認められるケースがあります。
単なる密会では慰謝料請求が認められる可能性は低いですが、元恋人同士であることや、密会の時間帯・場所・頻度などから不貞関係が疑われる場合には、慰謝料請求が認められる可能性があります。
4.キスなどの身体的接触があった
不貞行為の基本的な判断基準は肉体関係を持ったか、ということですが、なかにはキスなどの身体的接触があったことで慰謝料が認められるケースもあります。
キスだけでなく、密会の回数や頻度が多ければ、精神的苦痛を理由とした慰謝料の請求が認められる可能性がでてくるでしょう。
5.肉体関係はないが2人でホテルに入った
2人でホテルに入り、ある程度の時間を過ごしていたとなれば、たとえ肉体関係がなかったとしても、「肉体関係はあったのではないか」と推測されるでしょう。
本当に肉体関係を持たなかったとしても、ホテルに出入りする写真や滞在時間などの証拠があれば、精神的苦痛を理由に慰謝料の請求が認められる場合があります。
不貞行為なしで慰謝料請求された場合の相場はいくら?
肉体関係がなく、不貞行為があったとは言えない場合でも、相手方が精神的苦痛を負った場合には慰謝料の請求が認められる可能性があります。
しかし、その場合の慰謝料は「不貞行為があった場合の慰謝料」よりも低額になるのが実情です。
不貞行為があった場合の慰謝料相場は50万~300万円程度とされていますが、不貞行為がない場合の慰謝料相場は数十万円程度となるでしょう。
もちろん、あくまでもこれは相場であり、長期間にわたる恋愛関係が推測されるような場合や個別事情に応じて慰謝料の相場は増減します。
詳しい慰謝料の相場を知りたい場合は、一度弁護士へご相談ください。
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不貞行為なしで慰謝料を請求された際の5つの対処法
肉体関係を持たなかったのに、不貞行為として慰謝料の請求をされた場合には、主に以下のような方法で対処します。
- 当事者同士で話し合う
- 不貞行為の証拠があるか確認する
- 不貞行為の時効を確認する
- 不貞行為なしの場合は示談書などにすぐにサインしない
- 不貞行為なしであることを弁護士に相談・依頼する
これらの対処法について、次項より解説します。
①当事者同士で話し合う
不貞行為がないからといって、慰謝料請求を無視すると相手への印象が悪くなり事態が悪化することも考えられます。
不貞行為があったと誤解されている場合は、疑念を持つような出来事について正直に話し合い不貞行為はなかったと納得してもらうことが大切です。
②不貞行為の証拠があるか確認する
そもそも、不貞行為の慰謝料が認められるには、それを裏付ける客観的な証拠が必要です。
そのため、本当に慰謝料の請求に必要な証拠がそろっているのか、請求側に確認することが重要となります。
請求側が掴んでいる証拠を見せてもらい、本当に慰謝料を支払う必要があるのか判断することが大切です。
慰謝料の請求側が証拠を見せない場合は、慰謝料を支払う必要がない場合もありますので、まずは一度弁護士に相談しましょう。
不貞行為が認められる証拠一覧
不貞行為で慰謝料請求をされた場合、実際には不貞行為がなく誤解だったとしても、客観的に見て不貞行為があったとわかる証拠があれば、慰謝料請求が認められやすくなります。
具体的に、不貞行為の証拠として有効なものには、以下の表のようなものがあります。
性交渉の写真や映像 | 不貞相手と性交渉をしている写真や動画は、不貞行為の動かぬ証拠となるでしょう。 |
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メールやSNS | 性行為の感想など、肉体関係をほのめかすようなメールやSNSがあれば、不貞行為の証拠として認められやすくなるでしょう。 |
ラブホテルや旅館の領収証 | ラブホテルは仕事で利用したとは言い逃れができませんし、旅館に2人で宿泊した領収証があれば旅館に出入りする写真などと合わせて不貞行為があったことを推測させる有力な証拠となります。 |
領収書やクレジットカード明細 | 旅行代やホテルの宿泊費などクレジットカードの利用明細があれば、不貞相手と親密な関係にあったことを示す間接的な証拠となるでしょう。 |
探偵事務所や興信所の調査報告書 | 調査会社や探偵は、探偵業法という法律に従って調査を行うため、探偵や調査会社からの報告書は裁判になっても信用性の高い証拠として扱われることが多くあります。 |
不貞行為を自白した念書や録音データ | 不貞行為を認める念書や録音データは不貞行為があったことを示す有効な証拠となります。 |
③不貞行為の時効を確認する
不貞行為の慰謝料請求権には時効があり、次の期間のいずれかが来れば時効によって慰謝料請求権が消滅します。
- 損害および加害者を知ったときから3年
- 不法行為のときから20年
これらの時効が成立してしまえば、慰謝料の請求は基本的に認められなくなってしまいます。
不倫の慰謝料請求の時効については、以下のリンクでも詳しく解説しています。ご参考ください。
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④示談書などにすぐにサインしない
不貞行為をしていないのに慰謝料を請求された場合は、相手方から示談書を提示されても、すぐにサインしないようにしましょう。
示談書にサインすると、示談が成立したとみなされ、原則として内容の変更や撤回はできなくなります。
そのため、まずは提示された示談書を持ち帰り、記載内容を確認するとともに弁護士に相談することをおすすめします。
また、相手方から示談書を作成すると言われた際は、不貞行為がなかったことをしっかりと相手方に伝え、迅速に弁護士に相談しましょう。
⑤弁護士に相談・依頼する
不貞行為をしていないのに慰謝料を請求された場合には、弁護士に相談・依頼することが有効です。
相手方が慰謝料を請求するということは、相手方が何らかの誤解をしているか、不貞行為があったと推測されるような証拠を持っている可能性が高いでしょう。
また、相手方はすでに不信感を抱いている段階ですから、誤解を解こうと思っても話を聞き入れてくれないことも考えられます。
弁護士に依頼することには、主に以下のようなメリットがあります。
-
相手方と交渉してもらえる
相手方は、誤解をしていたり、証拠らしきものを手に入れたりしている場合があり、主張を聞き入れてもらえないことも考えられます。
弁護士から説明をすることで、不貞行為がなかったことを納得してもらえる可能性が高まります。 -
適切な慰謝料の金額を算出してくれる
不貞行為がなかったとしても、いわゆる不倫によって、配偶者が精神的苦痛を負った場合には、慰謝料が発生するおそれがあります。
弁護士であれば、適切な慰謝料の金額を算出し、交渉していきます。
不貞行為なしでも慰謝料請求が認められた裁判例
【事件番号 平26(ワ)8743号、東京地方裁判所 平成27年5月27日判決】
原告とAは婚姻関係にある夫婦でしたが、性的関係を持つことはまれでした。
ケンカもしながら毎年のようにともに旅行に行くなどして生活してきました。
やがて、結婚から約13年後にAはインターネットを通じて被告と知り合い、交流を深めていきました。
その2年後、Aは原告と夫婦喧嘩の末、家を出て被告と同居するようになりました。
原告は「被告がAと交際し、同居するなど継続的な不貞関係にあり、原告の平穏な家庭生活を侵害している」と主張して慰謝料請求訴訟を提起しました。
これに対し、被告は「Aが性的不能であり、被告との間に不貞行為が成立する余地はない」と主張しました。
裁判所は、「仮に、被告とAの間に性的関係がなかったとしても、被告が、原告と婚姻関係にあるAと同居生活を続けている以上、不法行為が成立し得ることは、当然である」として被告に対し、慰謝料300万円の支払いを命じました。
不貞行為なしで慰謝料を請求された方は、弁護士法人ALGへご相談ください。
不貞行為なしで慰謝料を請求された場合、「なぜ慰謝料を請求されたのだろう」「払わないといけないのかな」と不安に思われることでしょう。
たとえ、肉体関係を持たなかったとしても、被害者は精神的苦痛を感じている場合もありますので、誠意を持って対応することが大切です。
慰謝料を請求され、少しでも不安に思われる方は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
弁護士であれば、相談者様のお話を丁寧にヒアリングし、最善な今後の対応をご提案いたします。
弁護士が相手方と話し合い、慰謝料の交渉をしていくことで話し合いがスムーズに進む可能性が高まるでしょう。
不貞行為がないのに慰謝料を請求され、ご不安な方は一度私たちにお話しをお聞かせください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)