ギャンブル依存症の夫(妻)と離婚したい!借金の返済義務や慰謝料について

夫や妻がギャンブル依存症だと、将来や子供への影響が不安になって「離婚したい」と考えるのも無理はありません。
裁判所が公開している令和5年度の司法統計によると、浪費するの離婚原因ランキングは男性が第6位(1748件)、女性が第9位(3550件)という結果になりました。
この「浪費する」には、ギャンブル依存症の配偶者による貯金や生活費の使い込みも含まれていて、ギャンブル依存症が原因で離婚する夫婦は少なくないことがわかります。
とはいえ、ギャンブル依存症の配偶者と離婚するのは容易なことではありません。
そこで、ギャンブル依存症の夫(妻)と離婚したいとお悩みの方に向けて、ギャンブル依存症を理由に離婚できるかどうかや、借金があった場合の返済義務、慰謝料・養育費の請求について解説していきます。
目次
ギャンブル依存症の夫(妻)と離婚できる?
夫や妻のギャンブル依存症が理由で離婚できる可能性はありますが、容易なことではありません。
◆ギャンブル依存症とは?
ギャンブル依存症とは、「パチンコ・スロット・競馬・競輪・競艇などのギャンブルにのめり込んで、やめたいと思っても自らコントロールできなくなる」という精神疾患の一種です。
病気の配偶者を見捨てて一方的に離婚するのは、民法で定められた夫婦の協力義務・扶助義務に反するため、軽度のギャンブル依存症であれば離婚が認められない可能性が高く、注意が必要です。
離婚を迷っている場合は、専門の医療機関の受診やカウンセリングをすすめるなどして、ギャンブル依存症の克服を助け、克服できなかったら離婚を検討するのもひとつの選択肢です。
夫婦の合意があれば、どのような理由であっても離婚することができますし、法定離婚事由に該当すれば裁判でも離婚が認められます。
夫婦の合意があれば離婚することができる
夫婦が話し合って離婚する方法=協議離婚では、夫婦の合意があればどのような理由であっても離婚できます。
夫(妻)のギャンブル依存症が理由で離婚したいと伝え、相手が離婚を承諾すれば、離婚届を提出することで離婚が成立します。
なお、協議離婚で合意できない場合には、家庭裁判所の調停手続きを利用して、調停離婚を目指すことになります。
調停では、調停委員を介した話し合いが行われ、ギャンブル依存症を理由に離婚することに夫婦双方が合意できれば調停が成立し、離婚することができます。
法定離婚事由に該当すると離婚が認められる
協議離婚や調停離婚で合意できなくても、法定離婚事由に該当すれば裁判で離婚が認められます。
◆法定離婚事由とは?
法定離婚事由とは、法律で認められている離婚できる理由のことです。
次の5つのいずれかに該当すれば離婚が認められやすくなります。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者による悪意の遺棄があったとき
- 配偶者の生死が3年以上不明なとき
- 配偶者が強度の精神病で回復の見込みがないとき
- そのほか、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
5つの法定離婚事由のうち、ギャンブル依存症が該当する可能性があるのは②悪意の遺棄または⑤婚姻が継続しがたい重大な事由です。
悪意の遺棄 | 悪意の遺棄とは、夫婦が負う同居・協力・扶助義務を正当な理由なく放棄することです。 具体的には、次のようなケースが該当します。
|
---|---|
婚姻が継続しがたい重大な事由 | 婚姻が継続しがたい重大な事由とは、夫婦関係が破綻して修復の見込みがないことです。 代表的なものに性格の不一致や、DV・モラハラ、セックスレスなどがあり、ギャンブル依存症の場合は、次のようなケースが該当します。
|
法定離婚事由については以下ページで詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
配偶者がギャンブルで作った借金の返済義務は自分にもある?
ギャンブルに依存すると、借金を抱えてしまうことも珍しくありません。
借金のあるギャンブル依存症の配偶者と離婚するとき、自分にも借金の返済義務があるのか不安に感じる方も多いと思います。
基本的に、ギャンブルなどの自己都合の借金に返済義務はありません。
ただし、生活のための借金がある場合や、連帯保証人になっている場合は、離婚後に相手の借金の返済義務を負うことがあります。
以下、詳しくみていきましょう。
なお、ギャンブルに限らず借金のある配偶者と離婚する場合の返済義務について以下サイトで詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
ギャンブルなど自己都合の借金の返済義務はない
ギャンブルによる借金など、配偶者の自己都合の借金であれば返済義務はありません。
- ギャンブルでつくった借金
- 趣味への浪費でつくった借金
- 生活に必要のない高額な買い物でつくった借金
- 配偶者が結婚前につくった借金
- 配偶者が相続した借金
これらは夫婦が日常生活を送るために必要な金銭には含まれず、夫婦で返済する義務がありません。
したがって、離婚後に相手の借金を返済する義務がないことになります。
生活のための借金は配偶者にも返済義務がある
夫婦や家族が日常生活を送るための借金(日常家事債務)は、配偶者にも返済義務があります。
夫婦は法律上、互いに同居して協力・扶助する義務を負っていて、婚姻生活を継続するために必要な費用は分担しなければならないためです。
- 水道光熱費、食費、被服費、医療費、家賃を工面するためにつくった借金
- 家財道具などの生活必需品を購入するためにつくった借金
- 子供の養育費、学費を工面するためにつくった借金
- 教育ローン
- 住宅ローン
- 車のローン
など、生活のための借金は、個人名義であっても夫婦が連帯して責任を負う必要があることから、離婚後に相手の借金の返済義務を負う可能性があります。
連帯保証人になっていると離婚後も返済義務がある
夫や妻の借金やローンの連帯保証人になっている場合、基本的に離婚したからといって返済義務を免れることはできません。
離婚による契約解除はできないので、配偶者が返済を怠ると連帯保証人であるご自身に返済を求められる可能性があります。 そのため、配偶者だからと安易に連帯保証人になることは避けましょう。
すでに配偶者の連帯保証人となっている場合には、状況次第で返済義務から逃れられる可能性もあるので、ギャンブル依存症の配偶者と離婚したいとお考えの方は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
ギャンブル依存症による離婚で慰謝料と養育費はもらえる?
夫や妻のギャンブル依存症が原因で離婚する場合、気がかりなのが慰謝料や養育費を支払ってもらえるかだと思います。
以下、ギャンブル依存症の配偶者と離婚する場合の慰謝料と養育費について詳しく解説していきます。
慰謝料
夫(妻)のギャンブル依存症を理由に離婚する場合、配偶者の行為が“不法行為”と判断されれば慰謝料を支払ってもらえます。
そのためには、配偶者に次のような不法行為があることを客観的に裏付ける証拠を集めて立証する必要があります。
- ギャンブル依存症の配偶者が収入を使い込んで生活費を渡さないなど、悪意の遺棄に当たる行為
- 配偶者がギャンブルに依存して多額の借金をつくったなど、婚姻を継続しがたい重大な事由に当たる行為
◆不法行為を裏付ける証拠とは?
具体例として、預貯金通帳の写し、配偶者の給与明細、クレジットカードの利用明細書、家計簿などが挙げられます。
こうした家庭の収支がわかるものを複数用意して、悪意の遺棄や婚姻を継続しがたい重大な事由があることを立証していきます。
◆慰謝料の相場は?
ギャンブル依存症による離婚の慰謝料の相場は、約0万~300万円程度です。
悪意の遺棄に該当する場合の慰謝料相場 | 数十万~300万円程度 |
---|---|
婚姻を継続しがたい重大な事由に該当する場合の慰謝料相場 | 0万~100万円程度 |
ただし、配偶者に慰謝料を支払う能力がないと、受け取れる金額が少なくなる可能性があります
財産分与を多めにもらったり、分割払いを提案したりして、少しでも多く金銭を受け取れる方法を検討しましょう。
離婚の慰謝料については以下ページで詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
養育費
ギャンブル依存症を理由に離婚する場合でも、夫婦の間に社会的・経済的に未成熟な子供がいる場合は養育費の支払い義務が生じます。
養育費とは子供の監護・養育のために必要な費用で、離婚しても扶養義務が続く限り養育費を支払わなければならないためです。
したがって、ギャンブル依存症で借金を抱えている場合や、自己破産している場合でも、養育費を請求することが可能です。
◆養育費の相場は?
養育費の相場は、裁判所が公表している“養育費算定表”から、子供の年齢や人数、夫婦の年収によって調べることができます。
これをもとに夫婦で話し合って合意できない場合は、裁判所の調停手続きを利用することができます。
養育費の相場や決め方については以下ページで詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。
ギャンブル依存症が原因で離婚する際の注意点
慰謝料や養育費の不払いに備えた準備をしておく
ギャンブル依存症の配偶者と離婚するときに注意すべきことに、慰謝料や養育費の不払いの可能性が挙げられます。
ギャンブル依存症だと、慰謝料や養育費をギャンブルにつぎ込んでしまったり、借金が原因で支払ってもらえなくなるなど、取り決めた慰謝料や養育費の支払いが滞ってしまう可能性があります。
慰謝料や養育費について夫婦で話し合って取り決めた内容は公正証書に残すなどして、あらかじめ不払いに備えた対策を講じておきましょう。
◆公正証書に記載する内容は?
公正証書には、夫婦で合意した内容を具体的に記載します。
慰謝料や養育費の場合、金額・支払方法・支払期限といった内容を記載しておけば、不払いとなったときに裁判を経ずに強制執行の手続きによって、相手の給与や財産を差し押さえることができます。
離婚の公正証書について以下ページで詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
離婚しても親の借金が子供に相続される可能性がある
ギャンブル依存症の配偶者と離婚した後に注意すべきことに、親の借金が子供に相続される可能性が挙げられます。
離婚すると元配偶者は相続人になることができませんが、子供は親が離婚した後も相続人として財産を受け継ぐことができます。
この財産には借金も含まれるため、離婚後にギャンブル依存症の元配偶者が借金を残したまま亡くなった場合、子供が借金を受け継ぐことになります。
預貯金や不動産などの経済的な価値がある資産よりも借金の方が多いと、相続した子供が返済に苦労することになるため、相続で親の借金を肩代わりしないための手続きが必要になります。
◆親の借金を肩代わりしないための手続きとは?
相続で親の借金を肩代わりしたくないときは相続放棄や 限定承認といった手続きが必要です。
これらの手続きには期限があるため、子供が相続人になることを知ったら速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
ギャンブル依存症の配偶者との離婚をお考えなら弁護士にご相談ください
ギャンブル依存症は病的賭博という病気で、自らやめたくてもやめられず、自然治癒が難しいといわれています。
症状が軽ければ離婚せずに配偶者のギャンブル依存症の克服を助けるという選択肢もありますが、心身にストレスが生じている場合や子供にも被害が及ぶ場合には離婚を検討すべきです。
離婚すべきか悩まれている方は、一度弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人ALGでは、これまで数多くの夫婦問題・離婚問題に取り組んだ実績があります。
その経験や知識を活かして、ご相談者様のお悩みを丁寧にヒアリングしたうえで、ギャンブル依存症の夫(妻)と離婚すべきかどうか、離婚するとして慰謝料や養育費は支払ってもらえるか、離婚後に返済義務が残る可能性などをアドバイスできます。
夫(妻)との交渉を任せることもできるので、まずはお気軽にご相談ください。
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)