離婚不受理届とは?勝手に離婚届を出されないために!
夫婦で合意していないのに、勝手に離婚届を出されるトラブルを防ぐために、離婚届不受理申出という制度があります。
勝手に提出された離婚届であっても、書面に不備がなければ、受理されてしまうケースが多いです。
いったん受理されて成立した離婚や親権を無効とするには大変な手間がかかるため、一方的な離婚をさせないための制度が設けられています。
この記事では、離婚不受理届(離婚届不受理申出)のメリットやデメリット、提出方法、期限、取り下げ方法、先に離婚届が受理されてしまった場合の対処法等について解説していきます。
目次
離婚不受理届(不受理申出)とは?
離婚届不受理申出とは、配偶者が本人の知らないうちに離婚届を提出するのを防ぐための制度です。
もしも、夫婦の一方がもう一方の同意を得ずに、こっそりと離婚届を役所に出してしまった場合でも、書類に不備がなければ、窓口ではそのまま受理されてしまうことがあります。
役所では、離婚届に形式的に不備がなければ、通常、夫婦が本当に離婚に合意しているかどうかまでは確認しません。
そのため、知らない間に離婚が成立してしまうおそれがあるのです。
離婚届不受理申出をしておくことで、本人の意思に反して離婚届が受理されないようにすることができます。
これは、夫婦間でまだ離婚の話し合いがまとまっていない場合や、離婚に納得していない場合などに有効な手段です。
離婚届不受理申出をしておくべきケース
次のように、配偶者が勝手に離婚届を提出してしまうおそれがある場合は、早めに離婚届不受理申出をしておきましょう。
離婚届を勝手に提出することは犯罪
離婚届を勝手に提出したり、離婚届を偽造したりすることは犯罪です。
警察へ被害届を提出すると、次のような刑事罰が適用される可能性があります。
- 有印私文書偽造罪(3ヶ月以上5年以下の拘禁刑)
他人の署名や押印を使用して私文書を偽造する犯罪です。
離婚届の署名押印を偽造した場合、有印私文書偽造罪に問われる可能性があります。 - 偽造有印私文書行使罪(3ヶ月以上5年以下の拘禁刑)
偽造・変造された私文書を行使する犯罪です。
偽造した離婚届を役場へ提出した場合、偽造有印私文書行使罪に問われる可能性があります。 - 電磁的公正証書原本不実記載罪(5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑)
公務員に対して虚偽の申立てをして公正証書の原本またはその電磁的記録に不実の記載をさせる犯罪です。
勝手に離婚届を提出して戸籍に誤った離婚の情報を記載させた場合、電磁的公正証書原本不実記載罪に問われる可能性があります。
離婚届の不受理申出をする理由・メリット
離婚届不受理申出をする理由やメリットとして、主に以下のようなものが挙げられます。
- 離婚や離婚条件に関する話し合いを適切に行うため
- 親権を勝手に取られないようにするため
これらの理由やメリットについて、次項より解説します。
離婚や離婚条件に関する話し合いを適切に行うため
離婚届不受理申出をしておくことで、離婚やその条件がまだ決まっていない段階で、相手が勝手に離婚届を提出するのを防ぐことができます。
離婚前に話し合うべきこととして、離婚の慰謝料や子供の親権、財産分与などが挙げられますが、不受理申出をしておけば、こうした離婚条件についてしっかりと話し合い、夫婦がお互いに離婚条件に合意できたタイミングで離婚を成立させることができます。
親権を勝手に取られないようにするため
離婚することに合意していても、親権を争っている場合には、離婚届不受理申出を利用しましょう。
もしも、相手が一方的に親権者欄に自分の名前を記入した離婚届を提出してしまうと、形式的に不備がなければそのまま受理されてしまうおそれがあります。
離婚届不受理申出を利用すれば、申出をした本人が届け出ないと離婚届は受理されません。
そのため、親権や養育費といった大切な条件について、離婚する前にしっかりと話し合うことができます。
離婚届を勝手に出されてしまった場合の変更方法などについて知りたい方は、以下のリンク先で詳しく解説していますので、ぜひご参考になさってください。
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離婚不受理届のデメリットは?相手にバレる?
離婚届不受理申出には、デメリットはほとんどありません。
申出をしただけでは、役場から相手に通知されることはなく、相手にバレることはありません。
相手が離婚届不受理申出されていることを知るとすれば、役場で提出した離婚届が受理してもらえなかったときです。
申出にデメリットがあるとすれば、以下のようなものが考えられます。
- 申出する本人が役場に直接出向く必要がある
離婚届不受理申出は、基本的に本人が、市区町村役場の窓口に直接出向いて手続きを行わなければなりません。仕事や家事・育児などで忙しい方にとっては、時間を取られてしまうことがデメリットだといえます。 - 相手にバレたときに揉めるおそれがある
離婚届の不受理申出をしたことが相手にバレたときには、相手が怒って、離婚の話し合いが進まなくなるおそれがあります。
離婚不受理申出の方法
離婚届の不受理申出は、申出する本人が市区町村役場の窓口へ不受理申出書を提出する必要があります。
基本的な手続きの流れは次のとおりです。
- 離婚届不受理申出書を取得する
離婚届不受理申出書は、申出する市区町村役場の窓口やウェブサイトから取得できます。 - 申出書に必要事項を記入する
取得した申出書に必要事項(申出人と配偶者の氏名・生年月日・住所・本籍、申出人の連絡先)を記入します。
申出書の書き方や記入例をウェブサイトに記載している役場もあるため、参考になさってください。 - 申出書を市区町村役場の窓口へ提出する
必要事項を記入した申出書を、市区町村役場の窓口へ提出します。
提出時には、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類が必要になるため、忘れずに持参しましょう。
申出できる人
離婚届の不受理申出ができるのは、不受理を申出したい本人(夫または妻)です。
本人確認書類を持参して、市区町村役場の窓口で直接手続きを行う必要があるため、代理人による申出は基本的に認められていません。
申出したい本人が病気や怪我などのやむを得ない事情により役場の窓口に出向けない場合は、公証人による公正証書の作成をしたうえで、郵送などによる申出が例外的に認められるケースもありますので、まずは申出を予定している役場に問い合わせてみましょう。
申出をする場所
離婚届の不受理申出の申出先は、基本的に、申出する本人の本籍地の市区町村役場となります。
役場の窓口で直接手続きを行う必要があり、本人が役場まで出向かなければなりません。
やむを得ない事情がある場合には、最寄りの市区町村役場に申出することも可能ですが、事前に問い合わせをした方が良いでしょう。
また、受理されるまでに時間がかかるおそれもあり、急ぎの場合は本籍地の役場へ直接申出することをおすすめします。
離婚届の不受理申出に必要なもの
離婚届の不受理申出には、次のようなものが必要になります。
- 離婚届不受理申出書
(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど) - 申出人の本人確認書類
※ウェブサイトからダウンロードする際は必ずA3で印刷してください
離婚届の不受理申出に必要な費用
- 申出にかかる手数料や利用料金などの費用は発生しません
なお、郵送・代理人による申出や、本籍地以外の役場へ申出を行う場合には、公正証書や戸籍謄本などの添付書類が必要になることがあるため、事前に申出を予定している役場に確認しておきましょう。
離婚不受理届は休日でも提出できる?
離婚届不受理申出は、平日の日中だけでなく、戸籍課の窓口が閉まっている夜間や休日であっても提出することができます。
ただし、夜間や休日の窓口では、申出を預かってもらえるだけなので、その場で書類の内容を確認してもらうことはできません。
そのため、もしも書類に不備があった場合には、後日修正して再提出するように求められることがあります。
この修正の間に、相手が離婚届を提出してしまうリスクはゼロではありません。
このようなリスクを避けるために、できるだけ平日の日中に、戸籍の窓口で直接提出するのが安心です。
申出をするときには、本人確認書類を忘れずに持参して、書類の記載内容も事前にしっかりチェックしておきましょう。
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離婚不受理届の期限はいつまで?
離婚不受理届は、申出の日から申出を取下げるまでは無期限に有効です。
2008年(平成20年)5月1日の戸籍法改正前は申出後6ヶ月の有効期限がありましたが、現在は申出を取下げない限りは無期限に不受理申出が有効となるため、離婚を成立させたい場合は、申出した本人が取下げの手続きを行う必要があります。
なお、申出した本人が亡くなった場合や、家庭裁判所の手続きを経て離婚が成立した場合には、離婚不受理届の効力は自動的に失効するため、申出が取下げられていなくても離婚することができます。
離婚不受理届の取り下げ方法
夫婦の話し合いによって離婚に合意できた場合など、離婚届の不受理が必要なくなったときは、事前に離婚届不受理申出を取下げる必要があります。
取下げは、申出した本人が、本籍地の市区町村役場の窓口で直接手続きを行います。
不受理申出の取下げに必要なもの
- 離婚届不受理申出取下書
※取下書は役場で取得できます
- 申出人の本人確認書類
(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
なお、不受理申出した本人が離婚届を提出する場合は、本人確認が可能な状態であれば事前の取下げ手続きは必要ありません。
離婚不受理届より先に離婚届が受理された場合の対処法
離婚不受理届が間に合わず、離婚届が先に受理されてしまうと、離婚が成立したことになってしまいます。
このとき、未成年の子供がいる場合には、親権者も勝手に決められてしまいます。
離婚届が受理された事実は通知されますが、そのときに何もせずに放置してしまうと、意図しない離婚も親権も成立したままになります。
離婚を無効にして、戸籍を元に戻すためには、家庭裁判所に協議離婚無効確認調停を申し立てる必要があります。
調停での話し合いで離婚届の無効について合意できれば、審判が下されて、役場へ戸籍訂正の申請ができます。
なお、調停が不成立となった場合には、裁判所に訴訟を提起して争うことになります。
離婚届の不受理申出をお考えの場合はできるだけ早く弁護士にご相談ください
ご自身の意思とは関係なく成立してしまった離婚を無効とするためには裁判所の手続きを経なければならず、時間や労力のほか、専門知識も必要となるため、事前の対策が重要となります。
離婚不受理届は比較的簡易な方法ですが、手続きに不安がある方は弁護士に相談してみましょう。
弁護士であれば離婚不受理届はもちろん、申出後の手続きや申出が間に合わなかった場合もアドバイス・サポートが可能です。
「配偶者が離婚届を勝手に出してしまうかもしれない」
このようなお悩みを抱えていらっしゃるケースでは、離婚や離婚条件について夫婦の話し合いだけでは解決が難しいことも多いですので、早期解決のためにも、お早めに弁護士法人ALGまでご相談ください。
離婚のご相談受付
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)




















