托卵が原因で離婚できる?子供との親子関係や養育費の支払いについて

「子供が自分に似ていない」、「妻と性交渉した日と出産予定日が合わない」などという方は知らないうちに托卵されている可能性があるかもしれません。
托卵が判明すれば、多くの男性は少なからず「離婚」という言葉が頭をよぎるのではないのでしょうか。
そして、離婚を決意したら「子供と血の繋がりがないのに養育費の支払いはしないといけないのか」、「慰謝料請求できるのか」など、様々な離婚に関する問題が出てくるかと思います。
そこで、本記事では、托卵妻と離婚する際に養育費の支払いを拒否する方法や慰謝料請求など托卵を理由に離婚を考えている男性の方に向けて、参考になるポイントを解説していきます。
目次
托卵とは
托卵とは、本来、動物の習性のひとつで鳥類がほかの鳥の巣に卵を産み付けて、その鳥に孵化したひな鳥を育てさせることをいいます。
それになぞらえて、妻が夫以外の男性との間に産まれた子供を夫の子と偽って夫に育てさせることをいいます。
妻が夫との子供ではないと知りながら、自分の子供であると信じ込ませて夫に育てさせる行為は、民法の「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した」として不法行為に該当します。
疑わしいときはDNA鑑定で確認
子供が自分の子なのか疑わしいときはDNA鑑定で、親子関係を確認できます。
DNAよる親子鑑定とは、自分と子供のDNA型を調べることにより、血縁的な父子関係が存在するかどうかを科学的根拠に基づいて分析する方法をいいます。
DNA型鑑定で用いられるサンプルとして次のようなものが挙げられます。
- 唾液
- 血液
- 体液
- 歯
- 爪
- 毛髪 など
一般的に専用のキットを使用して、DNA採取専用の綿棒を口の中で数回こすって、口の中の粘膜細胞を付着させ、それをもとに検査することが多いです。
そのほかにも子供が使用した歯ブラシ、ストロー、おしゃぶりなどを提出することで検査できる場合もあります。
費用は、主に個人的な目的で行う「私的鑑定」なら2~4万円程度になります。
偽装できないように専門スタッフが本人確認をしたうえで、直接サンプルを採取して行われる、裁判所などに提出可能な「法的鑑定」なら7~10万円程度となります。
依頼先によりますが、どちらも約1~2週間ほどで鑑定結果がでます。
托卵が原因で離婚はできる?
通常、夫を騙してほかの男性との間にできた子供を夫に育てさせるような妻と夫婦関係を継続させることは難しいと考えられますので、裁判上で離婚が認められる事由(法定離婚事由)である「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあてはまる可能性が高いです。
また、婚姻中に不倫をしてほかの男性との間にできた子供を出産した場合は、法定離婚事由のひとつである「配偶者に不貞な行為があったとき」にあてはまります。
法定離婚事由にあてはまれば、妻が離婚を拒否したとしても離婚裁判を起こせば強制的に離婚できます。
托卵と判明した場合親子関係はどうなる?
子供が実際に夫との血縁関係がないことが明らかになったとしても、婚姻期間中に生まれた子供は生物学上の親子関係があるかどうかにかかわらず、夫の子と推定され、法律上の親子関係が生じます。
そのため、法律上の親子関係を解消しない限り、夫は子供を扶養する義務があります。
扶養する義務があるということは、養育費の支払義務が発生するということです。
托卵妻と離婚する際、養育費の支払いを拒否する4つの方法
実際に血縁関係がなくても、法律上の親子であれば、養育費を負担しなければいけません。
よって、養育費の支払い義務を免れるには、法律上の親子関係を解消しなければせん。
次項では、養育費の支払いを拒否するために法律上の親子関係を解消する4つの方法を解説します。
①嫡出否認調停・訴訟
家庭裁判所に嫡出否認調停・訴訟(裁判)を起こす方法があります。
まずは、嫡出否認調停を申し立てて、夫が「自分の子供ではない」と主張し、話し合いを行います。
調停手続きの中で、当事者間で子が夫の子ではないと合意ができ、裁判所が、DNA鑑定の結果などによって、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされて、夫と子供は親子ではなくなります。
当事者間で合意できなかった場合は、嫡出否認訴訟(裁判)を提起することになります。
裁判所から、一切の事情を考慮して嫡出を否認する判決が下されると、夫と子供との親子関係は否認されます。
ただし、嫡出否認の訴えは、夫が子供の出生を知ったときから3年以内に行わなければいけませんので注意が必要です。
②親子関係不存在確認調停・訴訟
夫が子供の出生を知ったときから3年が経過してしまっても、家庭裁判所に親子関係不存在確認調停・訴訟(裁判)を起こせる場合があります。
親子関係不存在確認の訴えを起こせるのは、子の出生時期から夫の子と推定されるものの、妻の妊娠時に夫婦が別居していたり、すでに夫婦関係が破綻していたりして、夫婦が性的関係をもつ機会がない事実が明らかである場合に限られます。
手続きの流れとしては、まず、親子関係不存在確認調停を申し立て、当事者間での話し合いで夫と子供が親子関係にないことの合意を目指します。
合意でき、裁判所が必要な調査等を行った上で、その合意が正当であると認められれば、合意に従った審判がされます。
合意ができなければ、親子関係不存在確認訴訟(裁判)を提起します。裁判では、判決によって夫が勝訴した場合に夫と子供との親子関係が否定されます。
③子供の実の父親に認知してもらう
実際の父親が誰だかわかっている場合には、その実の父親に子供を認知してもらえれば、法律上の親子関係が生じるので、夫と子供との親子関係は否定することが可能です。
任意で認知してもらえない場合は、家庭裁判所へ認知調停・訴訟(裁判)を起こす方法があります。
手続きの流れとしては、まずは家庭裁判所に認知調停を申し立てて、実の父親との話し合いにより認知について合意を目指します。
合意でき、裁判所が必要な調査等を行った上で、その合意が正当であると認められれば、合意に従った審判がされます。
話し合いで合意できなければ、認知訴訟(裁判)を提起して、一切の事情を考慮して、裁判官が認知について判断を下します。審判または裁判での勝訴で認知の効力は生じますので、夫と子供との親子関係が否定されます。
認知の訴えを起こせるのは、子供またはその直系卑属、およびその法定代理人に限られており、誰でも起こせるわけではありません。
しかし、夫は、認知調停や裁判を起こす時点では、子供の法定代理人となるので、認知の訴えを起こすことが可能です。
④妻へ権利の濫用を主張する
例えば、夫が自分の子でないことを知ったのが、子の出生を知ってから5年後だった場合には、嫡出否認の訴えを起こすことができませんので、親子関係不存在の訴えを起こせる特別な事情がある場合を除き、法律上の親子と扱われることになります。
しかし、その場合でも、妻に対して権利の濫用を主張して、養育費の支払いを拒否できる可能性があります。
「権利の濫用」とは、権利の行使ではあるものの、社会常識や道徳に基づいて判断すると無効にするのが妥当な行為をいいます。
具体的には、妻に対する権利濫用の主張が認められる可能性がある事情には次のようなものが挙げられます。
- これまで子供の監護や養育にかかる費用を夫が十分に分担してきていること
- 妻は夫の子供でないことを認識していたにもかかわらず、夫に告げなかったために、夫が子供との親子関係を否定する法的手段を失ったこと
- 妻も就業していて収入があり、離婚後も子供の養育・監護にかかる費用を分担できないような特別な事情がないこと
- 離婚に伴い、妻は相当多額の財産分与を受けること
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托卵されたら慰謝料を請求できることもある
婚姻期間中に夫婦間にある貞操義務に反して不貞行為をしていた場合や、夫との間に産まれた子供ではないとわかっていながら、偽って夫に子供を育てさせていた場合などは、民法上の不法行為が成立して、夫は妻に対して慰謝料請求できます。
通常の離婚慰謝料の相場は、100~300万円程度となります。
その中でも不貞行為が離婚理由の場合の離婚慰謝料の相場は、200~300万円程度です。
さらに妻が意図的に夫をだまして托卵していた場合は、夫が被った精神的苦痛はより多大だと評価されて相場より高額な慰謝料を獲得できる可能性が高いです。
托卵に関するQA
元妻に托卵されていた可能性がありますがDNA鑑定を拒否されています。この場合の対処法はありますか?
家庭裁判所に「嫡出否認の訴え」や「親子関係不存在確認の訴え」もしくは「強制認知の訴え」を起こして、裁判所からDNA鑑定の実施を命じてもらう方法が考えられます。
しかし、裁判所がDNA鑑定を命じてもなお、当事者がDNA鑑定を拒否する場合があります。
DNA鑑定の結果は、生物学的な親子関係の有無を判断する上で最重要な証拠になりますが、それがなくても、婚姻期間中の夫婦の同居生活の実態、別居の経緯、性生活の有無、妻の妊娠や出産に至るまでの経緯などについて詳細に事実を積み上げて主張を行うことで、裁判所に、法律上の親子関係の不存在を認めてもらえる可能性があります。
また、裁判上では、DNA鑑定を合理的な理由もなく拒否したことが相手にとって不利な事情として斟酌される場合もあります。
離婚後に托卵されていたことが発覚した場合、慰謝料請求は可能ですか?
離婚後に托卵されていたことが発覚した場合、慰謝料請求は可能です。
妻が夫を騙して自分の子供であると信じ込ませて夫に育てさせていた行為や、夫婦間の貞操義務に反して妻が夫以外の者と肉体関係をもつ行為は、民法上の不法行為にあたるので、慰謝料請求できます。
ただし、離婚後いつでも請求できるわけでなく、慰謝料請求には時効がありますので注意が必要です。
時効は、「不法行為の事実及びその相手を知ってから3年」もしくは「不法行為が起こってから20年」のどちらか早く到来する方の経過によって完成します。
時効を過ぎていると、慰謝料請求はできません。
詳細な時効の起算点については、弁護士に相談することをお勧めします。
托卵の可能性がある場合は弁護士法人ALGにご相談ください!
妻が托卵している可能性がある方や、すでに托卵されている事実が判明して離婚を考えている方は、弁護士法人ALGにご相談ください。
まずは、ご自身と子供に血縁関係がないことを証明するためにDNA鑑定を行うことになります。
DNA鑑定の結果を踏まえて、子供との法律上の親子関係をどうするのか考えなければいけません。
もし、法律上の親子関係を否定して養育費の支払いを拒否したい場合は、高度な法律問題に直面するので、弁護士に相談・依頼したうえで、解決を図ることが望ましいです。
そのほかにも、離婚する際には、慰謝料、財産分与など様々な問題が生じますので、弁護士の力を借りて、ひとつずつ問題を解決していくことをお勧めします。
まずは、お気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)