妻(夫)と離婚したいと思ったら何をするべき?手続きの流れなどを解説

しあわせな未来を誓って結婚したものの、さまざまな要因から離婚をお考えの方もいるでしょう。
しかし、「今すぐ離婚したい!」「とにかく別れたい!」と衝動的に離婚を進めてしまうと、揉めてしまったり、トラブルに発展したり、泥沼化してしまうおそれもあります。
離婚をスムーズに進めるためには、事前の準備が大切です。
本記事では、離婚したいと思ったときにするべきことや離婚したい場合の手続きの流れなどについて解説していきます。
目次
離婚したいと思ったら何をするべき?
離婚を考え始めたとき、相手に切り出す前に知っておくべきこと、離婚を決める前に考えなければならないことはたくさんあります。
離婚後の生活をより良くするためにも、まずは、離婚に向けて準備すべきことを見ていきましょう。
- 離婚の理由をまとめる
- 離婚後の生活を考える
- 請求できるお金や離婚条件をリストアップする
- 証拠を集める
①離婚の理由をまとめる
まずは、離婚したい理由を明確にしましょう。
「性格が合わない」「モラハラやDVをされる」「浮気をされた」「セックスレス」「他に好きな人ができた」など、夫婦の数だけ離婚を決意した理由があると思います。
相手に離婚したいことを伝える際にも、明確な離婚理由があれば伝えやすくなりますので、どのような経緯で離婚を考えるようになったのか、書き出してみるのも良いでしょう。
基本的に夫婦の話し合い(協議)で、双方が離婚や離婚条件に合意できればどのような理由であっても離婚が成立します。
しかし、離婚問題が泥沼化し裁判に発展してしまうと、離婚したい理由が「法定離婚事由(民法第770条)」に該当しなければ、基本的に離婚は認められません。
法定離婚事由は5つあり、それぞれについては下表をご覧ください。
不貞行為 | 配偶者以外の人と肉体関係を結ぶこと |
---|---|
悪意の遺棄 | 夫婦の同居・協力・扶助の義務を正当な理由なく果たさないこと |
3年以上の生死不明 | 配偶者が3年以上音信不通で生死がわからないこと |
強度の精神病 | 配偶者が日常生活に支障をきたすほどの精神病を患い、回復の見込みがないこと |
その他婚姻を継続し難い重大な事由 | DVやモラハラ、セックスレス、親族との不和、信仰上の対立等により、夫婦関係が破綻していること |
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②離婚後の生活を考える
離婚時は相手と取り決めなければならないことがたくさんありますが、離婚後の自分の生活についてもあらかじめ考えておきましょう。
現在夫婦で暮らしている家を出る場合は、新しい住まいを探す必要がありますし、専業主婦(主夫)の方は仕事を探す必要もあるでしょう。
離婚後は財産分与や養育費を受け取ることができますが、相手と揉めてしまうとすぐに入金されない可能性があるので、当面の生活費は確保しておくべきです。
また、子供の親権をとるつもりの方は、子供の学校等の変更手続きや、児童扶養手当等の申請手続きについても確認しておきましょう。
③請求できるお金や離婚条件をリストアップする
離婚の際には、婚姻費用や慰謝料、財産分与、年金分割など請求できるお金や取り決めるべき離婚条件があります。
また、夫婦の間に未成年の子供がいる場合には、親権と共に養育費や面会交流など子供に関する取り決めも忘れずに行いましょう。
以下で、取り決めるべき離婚条件について詳しく解説していきます。
婚姻費用
離婚する前に生活費を受け取っていない場合や、離婚を前提とした別居をする場合には、収入の低い方は収入の高い方に「婚姻費用」として生活費を請求することができます。
ただし、収入の高い方が子供と一緒に暮らし、監護・養育する場合には、収入の低い方が子供の生活費として婚姻費用を支払うケースもあります。
婚姻費用の相場は、裁判所のホームページに掲載されている「婚姻費用算定表」を用いることで簡単に算出できますので、ぜひご活用ください。
婚姻費用について、詳しくは以下のページをご覧ください。
財産分与
離婚時には、それまで夫婦で協力して築き上げた財産を分け合うことになります。
これを財産分与といい、稼いできた金額にかかわらず基本的には半分ずつに分けることになりますが、夫婦の合意があれば分配の割合を自由に取り決められます。
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が形成・維持した財産で、預貯金や不動産、有価証券、保険解約返戻金等が挙げられます。
財産分与について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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年金分割
年金分割とは、婚姻中に夫婦が納めた厚生年金の保険料納付額を分割する制度です。
特に婚姻期間中に配偶者の扶養に入っていたような場合では、将来受け取れる年金額が増える可能性があるため忘れずに行うようにしましょう。
ただし、年金分割は離婚時に受け取れる金銭ではない点に注意が必要です。
あくまでも「保険料の納付額」を分割して、将来の年金受給額に影響させる制度であり、受け取れるのはご自身が年金受給年齢に達してからになります。
年金分割について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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慰謝料
慰謝料は、配偶者が浮気や家庭を見捨てる行為、DV、モラハラ等を行って、もう一方の配偶者を精神的に苦しめた際に、慰謝する(なぐさめる)目的で支払うお金です。
たまに女性であれば必ず受け取れるものと認識されている方がいらっしゃいますが、それは間違いです。
慰謝料を請求する側は、相手の行為を証明できる客観的な証拠を準備する必要があります。
相手に離婚を切り出す前に、必ず証拠集めを行いましょう。
離婚慰謝料について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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親権
子供がいる場合は、親権者を決めなければ役所に離婚届を受け付けてもらえません。
親権とは、成年に至らない子供を養育し、必要な教育を与え、子供の財産を代わりに管理したりする権利・義務のことです。
この親権を行使する際には、“子供の利益(しあわせ)”を第一に考えなければなりません。
親権者を当事者間の協議で決めることができない場合、調停や審判、裁判で決めることになります。
裁判所は、それまで主に監護してきた親や、離婚後の監護環境が整っている方の親を親権者と定める傾向にあります。
子供が15歳以上であれば、本人の意思も尊重され傾向があります。
親権について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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養育費
養育費は、離婚後に子供を育てるにあたって必要となる生活費のことで、子供を監護していない方の親から監護している方の親へと支払われます。
子供の扶養義務は離婚後も継続するため、監護していない方の親は養育費を分担することで、その義務を果たさなければなりません。
養育費の月額は、裁判所のウェブサイトでも公開されている“養育費算定表”を用いて決めます。
算定表は子供の人数や年齢別に種類が分かれており、自分の家族構成に該当する表に夫婦の年収を当てはめることで、簡単に相場を算出することができます。
こうして定めた養育費は、「養育費を相手に請求したとき」から「子供が成人するとき」まで受け取れることになっています。
養育費について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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面会交流
面会交流とは、子供と離れて暮らす親が、定期的に、間接または直接的に子供と交流を持つことです。
子供が「両親のどちらからも愛されている」と実感できる重要な機会であり、子供の健やかな成長にもつながります。
充実した面会交流の実施のためにも、離婚前に次のような取り決めをしておきましょう。
- 面会交流の頻度や時間
- 面会交流の場所
- 子供の受け渡し方
- プレゼントやお小遣いなどの取り決め
- 学校行事への参加について
- 連絡手段
- 祖父母との面会 など
④証拠を集める
「離婚したい」と相手に伝えても、応じてくれなかったり、条件でもめてしまうケースも多くあります。
少しでも有利に話し合いを進めるためには、浮気やDV・モラハラなど離婚したい理由を証明する証拠や、養育費・財産分与などを請求するための資料を集めておきましょう。
【集めておくべき証拠・資料】
- 浮気やDVなどがあればその証拠
例:ラブホテルに出入りする写真や動画、怪我の写真、医師の診断書 など - 預貯金通帳(通帳のコピー)
- 所得を証明する書類(給与明細、確定申告書類など)
- 不動産登記簿
- 生命保険に関する資料
- 証券口座の明細
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離婚を相手に切り出す適切なタイミングは?
相手に離婚を切り出すのは、自分の中で離婚する意志が固まって、離婚に向けた準備がすべて整ったタイミングがベストです。
切り出す方法は対面が一番ですが、対面ではうまく伝えられる自信がない方は、手紙やメール等で伝えてもかまいません。
なお、相手からDV被害を受けている方は、別居をして身の安全を確保したうえで、対面以外の方法で離婚を切り出しましょう。
直接話し合うことを控え、調停を申し立てるようにしてください。
また、DVを受けている場合には、協議や調停をご自身で進めることはお勧めしません。
できる限り、弁護士にご相談ください。
DVがある場合の離婚について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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離婚したい場合の手続きの流れ

離婚をするには、どのような手続きを踏む必要があるのでしょうか。
基本的には、まず協議(話し合い)を行い、合意できなければ調停へ進みます。
そして、調停が不成立となったら、裁判へと進むことになります。
各手続きの段階で成立した離婚は、それぞれ「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」と呼ばれます。
また、以下のページも参考になりますので、併せてご覧ください。
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協議離婚
夫婦が話し合って成立させる離婚方法のことです。
日本における離婚の約90%は、協議離婚によるものです。
協議離婚では、当事者である夫婦が合意できれば、養育費や財産分与といった離婚の条件を好きなように設定することができます。
最も手続きが簡単で費用もかかりませんが、話し合った内容を“離婚協議書”にしっかりと記しておかないと、後になってトラブルが発生するおそれがあります。
協議離婚について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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調停離婚
「話し合いがまとまらない」「相手が話し合いを拒否する」といった理由で、協議離婚を成立させることができない場合、離婚調停を申し立てることができます。
調停では、調停委員に対して当事者が交互に自分の意見を主張し、適宜調停委員よりアドバイスを受けながら、自主的な解決を目指していきます。
調停によって成立した離婚を調停離婚といい、成立時には取り決めた内容が調停調書に記されます。
離婚調停について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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裁判離婚
調停が不成立となった場合や、審判に異議申立てをした場合、離婚裁判を申し立てることができます。
裁判では、裁判官が提出された資料や夫婦から聴き取りをした内容をもとに、あらゆる事情を考慮して判決を下します。
なお、裁判の途中であっても、当事者が話し合いなどによって解決に至った場合は、和解成立として裁判が終了します。
裁判離婚について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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離婚前に別居しておいた方がいい?
法定離婚事由に当てはまるような離婚理由が特にないけれど、離婚を希望している場合、離婚前に別居をするのもひとつの手です。
というのも、別居期間が相当な長期に及ぶと、すでに婚姻関係が破綻しているとして、裁判所に離婚を認めてもらえる可能性が出てくるからです。
別居をする場合には、DVやモラハラ等の被害に遭っているわけではない限り、できる限り別居に関し話し合いをしたうえで開始した方がよいでしょう。
合理的な理由なく、さらに話し合いすらも拒絶した状況で別居をすると、婚姻関係を破綻させた原因とみなされるおそれがあります。
別居や婚姻費用について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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離婚したいけどできない・相手が応じてくれない場合の対処法
離婚をしたいけれど、様々な事情でためらっている方もいらっしゃるでしょう。
以下で、離婚に踏み切れない理由として考えられる主なケースとその対処法について説明します。
離婚したいが、経済的な理由で踏み切れない場合
「お金がないから離婚できない」と悩まれる方は少なくありません。
しかし、経済的な問題であっても、適切な方法を検討することで離婚を進めることが可能です。
【離婚したいが、経済的な理由で踏み切れない場合の対応策】
- 別居している場合は、婚姻費用を請求する
- 離婚時に受け取れるお金を活用する
- 子供がいる場合は自治体の公的支援を活用する
すでに離婚に向けて別居している場合や、これから別居する場合は、相手に婚姻費用を請求することで最低限の生活は守れます。婚姻費用を得ながら仕事を探しましょう。
離婚時には財産分与や慰謝料、養育費などの取り決めをします。これらのお金は離婚後の生活にとても重要なため、不利な条件にならないよう弁護士に相談しましょう。
児童扶養手当や医療費助成制度といった公的支援の利用も検討しましょう。どのような公的支援があるかはお住まいの自治体によって異なりますので、事前に調べておきましょう。
自分が不倫をしていた場合
夫婦のうち不倫のような夫婦関係を壊す行為をした方を、“有責配偶者”といいます。
基本的には、有責配偶者からの離婚請求は裁判では認められにくいとされています。
そのため、離婚をするには協議や調停の段階で、相手を説得するしかありません。
ただし、不倫をした有責配偶者という立場ですので、慰謝料や財産分与といった離婚条件を決める際に、相手の言い分を受け入れる覚悟はした方がよいでしょう。
なお、有責配偶者からの離婚請求であっても、不倫時にはすでに夫婦関係が破綻していたと判断されれば、離婚が認められる可能性はありますので、あきらめないでください。
詳しくは以下のページをご覧ください。
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相手が離婚に応じてくれない場合
離婚を切り出しても、相手がまったく応じてくれないケースも少なくありません。
しかし、相手に対して離婚を急かすことはあまり良い方法ではありません。
まずは、相手がなぜ離婚に応じないのかを知ることが大切です。
例えば、相手が金銭的な問題で離婚に応じない場合には、金銭面で相手に譲歩し、相手にとって良い条件を提示すると、相手が離婚に応じる可能性が高くなります。
ただし、早期の離婚だけに焦点を当てて離婚条件を譲ってしまうと、ご自身に不利な条件になってしまう可能性もあります。
相手が離婚に応じてくれない場合は、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
離婚に相手が応じない場合について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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離婚したいときによくあるQ&A
相手に非がない場合でも離婚できますか?
相手に特別な落ち度がなくても、夫婦が話し合って合意すれば離婚は可能です。
ただし、話し合いがまとまらず裁判に進んだ場合、相手に明確な非がないと、裁判所が離婚を認めないこともあります。
そのため、協議や調停の段階で、相手をどれだけ納得させられるかが重要なポイントになります。
【長期間の別居が離婚成立のカギになることも】
どちらにも非がない場合でも、3〜5年ほど別居が続いていれば、「夫婦関係がすでに破綻している」と判断され、裁判で離婚が認められる可能性があります。ただし、一方的に別居を始めるのではなく、できるだけ相手の同意を得てから別居するのが望ましいです。
妊娠中に離婚したいのですが注意点はありますか?
妊娠中に離婚することも可能です。
子供の戸籍については、母親が離婚後に再婚するかどうかによって以下のように異なります。
- 離婚後母親が再婚した場合
- 離婚後母親が再婚しなかった場合
前夫との離婚後に子供を産んだ母親が現夫と再婚した場合、その子供は現夫と母親の子供として現夫の戸籍に入ります。
前夫との離婚後に妻(母親)が再婚せず、離婚後300日以内に子供を産んだ場合、その子供は前夫の子供と推定され、前夫の戸籍に入ることになります。前夫の戸籍から母親の戸籍に移すには、別途手続きが必要です。
妊娠中の離婚について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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離婚したいとお考えなら、離婚問題に強い弁護士にご相談ください。
離婚は人生における大きな決断ですので、感情的になって決めてしまう前に、離婚に関する知識をつけてじっくりと考えることが重要です。
離婚の決意が固まったら、相手と様々な離婚条件を取り決めていくことになりますが、もし揉めてしまって思うように事が進まなくなってしまった場合は、弁護士に相談してみてください。
離婚問題に詳しい弁護士は、法律や過去の事例を踏まえて、どうすればあなたが理想とする形で離婚できるかを一緒に考えていきます。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)