自己破産の手続きは2種類ある!違いや振り分け方、流れなどを解説
自己破産は、借金や所有する財産の状況によって同時廃止と管財事件の手続きに分かれます。
この2種類の手続きは、費用や期間のほか手続きの進め方にも違いがあるため、ご自身がどちらの手続きで処理されるのか気になる方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、自己破産の2種類の手続きに焦点を当てて、それぞれの違いや、どのような基準で振り分けられるのかを解説していきます。
目次
自己破産の手続きは2種類ある
自己破産とは、裁判所を介して借金の支払義務を免除してもらう手続きのことです。
裁判所に破産を申し立てて、財産を処分・換価して債権者へ配当した後(破産手続)、残った借金について免責の許可が得られると、非免責債権を除いたすべての借金がゼロになります(免責手続)。
自己破産には大きく分けて、同時廃止と管財事件の2種類の手続きがあり、借金や所有する財産の状況などから、どちらの手続きで処理されるのかが裁判所によって決定されます。
振り分けの基準は裁判所によって異なりますが、一般的に免責不許可事由がなく、処分すべき財産もない場合には同時廃止となって、管財事件よりも費用や時間を抑えられる可能性があります。
以下のページでは、自己破産の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説しています。
あわせてご参考ください。
同時廃止
同時廃止とは、破産手続の開始決定と廃止決定が同時に行われて、直ちに免責手続へと進む手続きのことです。
処分・換価して債権者に配当できるほどの財産や、免責不許可事由がないことが明らかな場合は、同時廃止となります。
同時廃止の特徴
- 財産を手放す必要がない
- 財産の調査・管理が必要ないので、破産管財人が選任されない
- 破産管財人が選任されない分、費用も少なく済む
- 破産の申立てから免責許可の決定までの期間が短く済む
以下のページでは、自己破産の同時廃止手続きについて詳しく解説しています。
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管財事件
管財事件とは、裁判所が選任した破産管財人が、財産を処分・換価して債権者へ配当した後で免責手続へと進む手続きのことです。
債権者へ配当が可能な一定額以上の財産がある場合や、免責不許可事由に関する調査が必要な場合は、管財事件となります。
管財事件の特徴
- 一定額以上の財産は手放すことになる
- 財産を調査・管理・処分するために、破産管財人が選任される
- 破産管財人への報酬が必要になるので、裁判所費用が高額になる
- 手続きが複雑で、免責許可の決定までに長い期間がかかる
- 個人事業主や法人の代表も利用できる
以下のページでは、自己破産の管財事件手続きについて詳しく解説しています。
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少額管財事件
管財事件となった場合、裁判所によっては少額管財事件が適用されることがあります。
少額管財事件とは、管財事件の一種で、通常の管財事件よりも手続きの負担や費用が軽減されたものです。
少額管財を取り扱う裁判所に対して、弁護士が代理人となって破産申立てを行った場合に、資産総額が少額かつ免責不許可事由がないなどの一定の基準を満たしていれば、少額管財事件として扱われます。
少額管財事件の特徴
- 予納金が20万円程度に抑えられる
- 通常の管財事件よりも手続きが簡易で、期間も短く済む
- 個人事業主や法人の代表にも適用される可能性がある
同時廃止と管財事件の違い
同時廃止と管財事件では、期間・費用、破産管財人の選任の有無など、次のような違いがあります。
| 同時廃止 | 管財事件 | |
|---|---|---|
| 期間 | 3~6ヶ月程度 | 6ヶ月~1年程度 |
| 費用 |
|
|
| 破産管財人 | 選任されない | 選任される |
| 財産 | 処分されない | 処分・換価されて債権者へ配当される |
| 条件 | 次の要件に当てはまるもの
|
次のいずれかに当てはまるもの
|
| 郵便物 | 制限なし | 手続き中は破産管財人へ転送される |
| 引っ越し・旅行 | 制限なし | 手続き中は事前に裁判所の許可が必要 |
財産を換価して債権者へ配当するために破産管財人が選任される管財事件の方が、同時廃止よりも手続きにかかる期間や費用の負担が大きいことが分かります。
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自分はどっち?同時廃止と管財事件の振り分け方
自己破産を申し立てた場合に、同時廃止と管財事件のどちらになるのかは、裁判所によって基準が異なります。
以下、東京地方裁判所で「管財事件」に振り分けられる3つの基準を紹介していきます。
東京地方裁判所で管財事件に振り分けられる3つの基準
- 33万円以上の現金や20万円以上の財産がある場合
- 法人・個人事業主の場合
- 免責不許可事由がある場合
33万円以上の現金や20万円以上の財産がある場合
33万円以上の現金や、20万円以上の財産を所有している場合は、管財事件に振り分けられます。
現金以外の財産については、次に挙げる財産の項目ごとの評価額のいずれかが20万円以上あるかどうかで判断されることが多いです。
- 預貯金
- 車やバイクなどの動産
- 家や土地などの不動産
- 退職金
- 保険の解約返戻金
- 株式や小切手などの有価証券
- 相続財産
- 貸付金や売掛金
- 事業設備 など
法人・個人事業主の場合
法人の代表や個人事業主が自己破産をする場合、基本的には管財事件に振り分けられます。
事業を営んでいる場合、お金や財産の流れが複雑だったり、売掛金や買掛金が処分の対象となったりするので、詳しく調査をして財産や契約を整理したうえで財産を換価・配当する必要があります。
そのため、管財事件に振り分けて破産管財人が選任されるのが一般的です。
このとき、少額管財事件を扱う裁判所に対して弁護士が代理人となって破産を申し立てると、法人・個人事業主であっても少額管財事件として扱われることもあります。
免責不許可事由がある場合
免責不許可事由がある場合、もしくは免責不許可事由に該当する可能性がある場合は、管財事件に振り分けられます。
自己破産では、無条件で借金の支払義務を免除してしまうと多くの債権者に不利益が生じることから、破産法によって裁判所が免責を認めない要件=免責不許可事由が設けられています。
免責不許可事由がある場合や、その疑いがある場合には、裁判所が免責を認めるべきかどうかを判断するために、破産管財人による調査が必要になるため、管財事件として扱われます。
免責不許可事由の一例
- 収入に見合わない浪費やギャンブルによって借金をした
- 財産隠しや、不当に財産の価値を減少させた
- 自己破産することを前提に借入れをした
- 特定の債権者を優先して返済した
- 虚偽の債権者名簿を提出した
- 裁判所や破産管財人の業務を妨害した
- 過去7年以内に免責を受けている など
2つの自己破産手続きの流れ
自己破産を申し立てた後、裁判所によって破産手続の開始決定がなされる際に、同時廃止と管財事件のどちらの手続きになるかが決定されます。
以降の手続きは、同時廃止と管財事件とで次のように流れが異なります。
同時廃止の場合
- 破産手続の開始決定と同時に廃止決定がなされる
- 意見申述期間を経た後、免責審尋が行われる
- 免責許可、もしくは不許可の決定がなされる
管財事件の場合
- 破産手続の開始決定と同時に破産管財人が選出される
- 破産管財人との面談が行われる
- 破産管財人によって財産が換価処分されて債権者へ配当される
- 債権者集会が開催された後、免責審尋が行われる
- 免責許可、もしくは不許可の決定がなされる
以下ページでは、自己破産の手続きの流れについて詳しく解説しています。
あわせてご参考ください。
自己破産の手続きでわからないことがあれば弁護士にご相談ください
自己破産を申し立てた場合に、同時廃止となるか管財事件となるかはご自身で選ぶことができません。
振り分けの基準は裁判所によって異なるため、自己破産を検討されている方は、ご自身が同時廃止と管財事件のどちらで処理される可能性があるのかを、事前に弁護士に確認しておくとよいでしょう。
弁護士に自己破産を依頼すると、手続きの準備から免責決定までトータルでサポートが受けられるほか、弁護士に依頼した時点で債権者からの督促・取り立てがストップするというメリットもあります。
管財事件となった場合にも、少額管財事件として予納金が少なく済む可能性もあるので、自己破産の手続きで不安なことや疑問に感じていることがある方は、まずは弁護士法人ALGまでお気軽にご相談ください。
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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長
監修:弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ 名を擁し()、東京、を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。