無職でも自己破産できる?費用が払えない場合の対処法や注意点について


無職の方でも自己破産はできます。ただし、無職だったり無収入だと、自己破産の費用を用意することが難しいケースもあるでしょう。
すぐに自己破産費用を用意できなくても、法テラスを利用することで費用を立て替えてもらえる場合があります。
この記事では、無職の方が自己破産する場合の条件や注意点について解説していきます。
無職で自己破産を検討している方の多くが不安に感じているであろう費用面についても、払えない場合の対処法を紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
目次
無職でも自己破産できる?
無職の方でも自己破産を申し立てることが可能です。
自己破産が認められ、裁判所から免責を受けると、原則としてすべての借金※1の返済義務がなくなります。そのため、任意整理や個人再生とは異なり、就労や収入の有無は問われません。
※1:税金や社会保険料などの非免責債権は自己破産後も支払義務が残ります。
自己破産が認められる3つの条件自己破産は次の3つの条件を満たしていれば、無職や無収入であっても免責が認められます。
- 借金の支払いが不能状態であること
- 免責不許可事由に当てはまらないこと
- 借金が非免責債権だけではないこと
以下、自己破産が認められる3つの条件について詳しくみていきましょう。
借金の支払いが不能状態であること
自己破産をするためには、借金の支払いが不能状態であることが条件になります。
支払いが不能状態とは?
支払いが不能状態とは、債務者の収入や財産が不足し、返済能力がなく、借金の返済が今後も継続的に見込めない状態を指します。
支払いが不能状態にあるかどうかは、借金の状況や収入、所有財産、家族構成、生活状況などの観点から裁判所によって総合的に判断されます。
収入のない無職の方の場合、支払い不能状態にあると認められやすい傾向があります。
ただし、収入がなくても不動産や車などの価値ある財産を所有している場合は、支払い不能状態であると認めてもらえないこともあるので注意が必要です。
免責不許可事由に当てはまらないこと
自己破産で免責を受けるためには、免責不許可事由に当てはまらないことも重要です。
免責不許可事由とは?免責不許可事由とは、自己破産において裁判所が免責を認めない要件のことです。
無条件で免責を認めてしまうと、多くの債権者に不利益が生じるため、破産法で免責不許可事由が定められています。
免責不許可事由の例
- 財産を隠したり損壊したりして、不当に財産の価値を減少させた
- クレジットカードで購入した商品を売却して現金化した
- 債権者を平等に扱わず、特定の債権者を優先して返済した
- 収入に見合わないギャンブルや浪費、投資などが原因の借金
- 確実な返済のあてがないにもかかわらず、虚偽の申告をして借り入れをした
- 帳簿など、業務や財産に関する書類を隠滅・偽造・変造した
- 虚偽の債権者名簿を提出した
- 説明を拒否したり虚偽の報告をしたりして、裁判所の調査に非協力的な態度をとる
- 破産管財人の業務を妨害した
- 過去7年以内に免責を受けている
上記に挙げた免責不許可事由に当てはまると、無職で収入や財産がない場合でも免責が認可されず、自己破産が認められないことがあります。
ただし、免責不許可事由に当てはまる場合でも、借金の状況や破産に至った事情、債務者の反省の態度などを総合的に考慮して、裁判所の裁量で免責が認められるケースもあります。
これを裁量免責といいます。
借金が非免責債権だけではないこと
借金が非免責債権だけだと、免責が認められません。
非免責債権とは?非免責債権とは、自己破産で免責が認められても、支払義務が免除されない債務のことです。
非免責債権の例
- 税金(所得税、住民税、固定資産税など)
- 社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、国民年金保険料など)
- 養育費や婚姻費用
- 罰金
- 不法行為による損害賠償金
- 電気・ガス・上水道料金 など
非免責債権が借金の大部分を占めている場合、免責してもらえる債務が少なく、自己破産の効果が期待できないので、税務署や自治体などの関係機関に分割納付や減額について相談することをおすすめします。
無職で自己破産費用が払えない場合の対処法
無職の方が自己破産するとき、気がかりなのは自己破産費用でしょう。
自己破産の手続きに必要な費用は、50万~130万円程度といわれています。
この費用のなかには、裁判所費用や弁護士費用が含まれており、具体的な金額は自己破産の手続きの種類(同時廃止事件・管財事件・少額管財事件)によって異なります。
裁判所費用(申立手数料、予納金、予納郵券代など) | 弁護士費用(相談料、着手金、報酬金など) | |
---|---|---|
同時廃止 | 1~3万円程度 | 30万~50万円程度 |
管財事件 | 50万円程度 | 30万~80万円程度 |
少額管財 | 20万円程度 | 30万~60万円程度 |
収入や財産がほとんどない場合は同時廃止事件として処理され、比較的費用も少なく済むことがあります。
ただし、弁護士に依頼する場合は、一定の費用がかかります。
無職で自己破産費用を支払えないからといって、弁護士に依頼することや自己破産自体を諦める必要はありません。
自己破産費用を捻出できない場合は、法テラスの扶助制度を利用することで費用を立て替えてもらえる可能性があります。
法テラス扶助制度を利用する
「無職で自己破産費用が支払えない」という場合は、法テラスの民事法律扶助制度の利用を検討しましょう。
民事法律扶助制度とは?民事法律扶助制度とは、経済的に余裕のない方でも、法的トラブルに遭ったときに無料の法律相談や裁判費用・弁護士費用の立て替えが受けられる制度です。
一定の条件を満たしていれば自己破産費用を法テラスに立て替えてもらえるので、まとまった費用をすぐに用意できなくても弁護士に依頼することができます。
法テラスに立て替えてもらった費用は、毎月5000円~1万円程度で返済していくことになりますが、生活保護を受給している方は立替費用の返済が免除される可能性があります。
法テラスを利用して自己破産する流れ
- 最寄りの法テラスに連絡して、無料の法律相談を予約する
- 法テラスから紹介された弁護士に相談する
- 法テラスに必要書類を提出し、民事法律扶助の利用条件を満たしているか審査を受ける
- 審査が通り次第、三者間契約を締結する
- 法テラスによる費用立替と、弁護士による自己破産手続きが行われる
- 立て替えてもらった費用を分割返済する
生活保護受給者なら予納金が免除される
生活保護を受給している方の場合、弁護士費用だけでなく、裁判所に払う予納金も立て替え・免除の対象になります。
自己破産をしても生活保護の受給資格に影響はないため、安心して法テラスの制度を利用できます。
無職で費用が用意できないからといって、自己破産を諦める必要はありません。
無職の人が自己破産を申し立てる際に必要な書類
無職の方が自己破産を申し立てる際に必要な書類は、次のとおりです。
- 破産申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 滞納公租公課一覧表
- 財産目録
- 住民票、戸籍謄本
- 家計簿、家計収支表
- 預貯金通帳のコピー
- 所得課税証明書(非課税証明書)
- 生活保護受給証明書のコピー(生活保護受給者の場合)
- 年金、児童手当、失業保険などの公的給付の受給証明書のコピー(受給しているものがある場合)
- 離職票、退職金見込額証明書
- 財産に関する資料
- 債務に関する資料
- 同居家族の収入証明 など
無職の方で収入がない場合には、無収入の状況を証明する書類や、同居家族の収入証明が求められることがあります。
無職でも収入証明書の提出が必要
無職で収入がないことを証明するには、直近1年分の所得課税証明書(非課税証明書)の提出が必要です。
所得課税証明書は、お住まいの市区町村役場で発行してもらえます。
ほかにも、病気や怪我で働けない場合は医師の診断書や、生活保護や年金を受給している場合は受給証明書のコピーの提出が求められます。
また、同居家族がいる場合は、世帯全体の生活状況を把握するためにご家族の収入を証明する資料(給与明細書、源泉徴収票、公的給付の受給証明書など)や、ご家族の預貯金通帳の提出が必要になることがあります。
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無職で自己破産する場合の注意点
無職の方が借金の返済に行き詰ったとき、自己破産が最も有力な解決策のひとつです。
ですが、「無職だから」という理由で安易に自己破産すると後悔する可能性もあるので、自己破産する際には次のようなことを十分に注意したうえで、慎重に検討しましょう。
- 2度目の自己破産は難しくなる
- 職業や資格に制限がかかる
- 闇金業者から連絡が来る可能性がある
なお、自己破産のデメリットについて詳しくお知りになりたい方は、以下ページもご参考ください。
さらに詳しく自己破産の7つのデメリット|影響やよくある誤解を弁護士が解説2度目の自己破産は難しくなる
自己破産で裁判所により免責が認められると、2度目の自己破産は難しくなります。
自己破産の回数について制限する定めはないものの、自己破産の免責不許可事由のなかに過去7年以内に免責を受けているというものがあります。
1度免責を受けると、その後7年間は新たに免責を受けることができなくなるのです。
もっとも、前回の免責確定から7年以上経過していれば、再び自己破産することも可能です。
ただし、2度目の自己破産は、「真摯に反省していない」と疑われ、審査が厳しくなる傾向にあるので、免責を認めてもらうのが1度目よりもハードルが高くなる点に注意しましょう。
自己破産後は、再び借金問題を抱えないように生活状況を改善していくことが重要です。
職業や資格に制限がかかる
基本的に自己破産しても就職や転職に影響することはありませんが、手続き中は一定の職業や資格に制限がかかります。
職業や資格の制限は免責許可が確定すると解除されますが、自己破産の手続き中に就職や転職を検討している方は注意しましょう。
就けない職業
自己破産手続き中に制限される職業は以下のとおりです。
- 証券会社外務員
- 旅行会社
- 宅地建物取引業者
- 建設業者
- 生命保険募集人
- 商品取引所会員
- 有価証券投資顧問業者
- 警備員
- 風俗営業
- 質屋
- 廃棄物処理業者
- 競馬の調教師、騎手 など
自己破産によって制限されるのは、おもに金銭や資産を預かる職業が多いです。
これらの仕事に就きたい場合は、自己破産の手続きがすべて終わって、免責が認められた後にしましょう。
制限のかかる資格
自己破産の手続き中に制限される資格は、次のとおりです。
- 弁護士
- 司法書士
- 弁理士
- 公認会計士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 土地家屋調査士
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 中小企業診断士
- 公証人 など
弁護士などの士業に関しては、自己破産の手続き中は登録が削除されますが、免責が認められると再度登録できるようになります。
闇金業者から連絡が来る可能性がある
自己破産すると破産者の住所や氏名などの情報が官報に掲載されます。
一般の方が官報を日常的に確認していることは稀ですが、闇金業者が官報を見て「お金を貸します」などと連絡をして来ることがあります。
自己破産をするとブラックリストに載っている間は銀行や消費者金融からお金を借りたり、クレジットカードを使ったりすることができなくなります。
だからといって闇金業者からお金を借りてしまうとトラブルに発展するおそれがあるので、決して相手にしないようにしましょう。
もし闇金業者の被害に遭ってしまった場合は、ひとりで対応しようとせず、すぐに警察や専門機関に相談してください。
闇金業者に関する相談先
警察 | #9110(全国共通の警察相談ダイヤル) 悪質商法に困っている。|警視庁 ※最寄りの警察署の生活安全課に相談も可能です |
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法テラス | 0570-078374 法テラス ※電話やメール、チャットでの問い合わせが可能です ※利用条件を満たせば無料で法律相談ができます |
貸金業相談・紛争解決センター | 0570-051-051 貸金業相談・紛争解決センターの主なサービス ※電話やFAXでの問い合わせが可能です |
消費生活センター | 188(消費者ホットライン) 全国の消費生活センター等|国民生活センター ※最寄りの消費生活センターに相談も可能です |
無職でも自己破産以外の債務整理はできる?
無職の方でも、自己破産以外の債務整理ができる可能性はあります。
自己破産は借金が免除される反面、職業制限や財産の処分といったデメリットが大きいため、他の債務整理の方法を検討したいという方も多いでしょう。
返済できる見込みがあれば無職の方でも任意整理が利用できます。
一方、個人再生では安定した収入が見込めることが利用条件なので、無職で収入のない方は個人再生を利用できないことがほとんどです。
以下、個人再生と任意整理についてそれぞれ詳しく解説していきます。
無職だと個人再生は難しい
無職の方は、個人再生を利用できない可能性が高いです。
そもそも個人再生とは?個人再生とは、裁判所を介して借金を元金ごと1/5~1/10程度まで減額してもらい、残りを3年(最大5年)で分割返済する手続きです。
手続き後は再生計画に従って分割返済する必要があるため、個人再生には安定した継続的な収入を得る見込みがあることという利用条件があります。
そのため、無職で収入がない場合は、個人再生することを裁判所に認めてもらえないことがほとんどです。
ただし、就職・転職で収入が得られる見込みのある場合や、年金や不動産所得などの収入から返済できる見込みのある場合は、個人再生が認められる可能性もあります。
返済できる見込みがあれば任意整理が可能
無職の方でも、返済できる見込みがあれば任意整理が可能です。
そもそも任意整理とは?任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉して、利息をカットしてもらったり、返済期間を3~5年に延長してもらったりして、借金の返済負担の軽減を図る手続きです。
債務者本人が無職であっても、就職の予定があったり、年金や不動産所得などで収入が見込める場合のほか、ご家族から資金援助が見込める場合には、債権者との交渉で和解できる可能性があります。
無職の方で任意整理を検討している方は、以下ページもご参考ください。
さらに詳しく無職でも任意整理はできる?収入が無い方の対処法などを解説無職で自己破産をお考えの方は弁護士法人ALGにご相談ください
無職の方でも、条件さえ満たしていれば自己破産して生活を立て直せる可能性があります。
収入がない状態であれば、借金の支払いが不能状態であるという条件を満たしていると判断されやすく、自己破産できる可能性が高いです。
費用面や、自己破産後の影響が心配で一歩が踏み出せない方は、まずは弁護士法人ALGまでご相談ください。
自己破産するとどうなるのか、費用をどう工面すればよいのかを踏まえて、それぞれのご状況に最適な解決策を提案・アドバイスいたします。
「無職だから」という理由で自己破産を諦めてしまう前に、ぜひ私たちにご相談ください。
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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長

監修:弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
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