生活保護受給中でも自己破産できる?デメリット・費用・流れなどを解説

生活保護受給中でも自己破産できる?デメリット・費用・流れなどを解説

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監修
監修弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長 弁護士

生活保護を受けていても、借金に悩んでいるのであれば自己破産という選択肢があります
とはいえ、費用面や生活保護への影響が心配で自己破産すべきか悩まれている方も多いでしょう。

生活保護受給中でも、国が認めた救済制度の自己破産と組み合わせることで借金の問題を根本から解決して、精神的にも経済的にも再出発が可能になります。

この記事では、費用や生活保護への影響も含めて、安心して自己破産ができるようにポイントをおさえながら、生活保護受給中に自己破産する流れや注意点を解説していきます。

生活保護と自己破産の両方を検討している場合に役立つ情報も紹介していきますので、ぜひ参考になさってください。

生活保護を受給中でも自己破産はできる?

生活保護を受給中でも自己破産は可能です
生活保護を受給していると自己破産できないという制限はなく、免責が認められない要因(=免責不許可事由)にも該当しません。

むしろ、収入や資産が少ない生活保護受給者は、支払不能な状態にあると判断されやすく、自己破産できる条件を満たしていると認められる傾向があります

また、生活保護の受給条件においても自己破産すると生活保護が受給できなくなるといった制限はないので、自己破産しても生活保護が受給できますし、減額されることもありません

自己破産ができる条件 生活保護が受給できる条件
  • 支払不能である
  • 免責不許可事由に該当しない
  • 借金が非免責債権だけではない
  • 収入が最低生活費を下回っている
  • 怪我・病気・障がいなどで働けない
  • 親族などからの支援を受けられない
  • 公的融資制度や公的扶助を利用できない
  • 住宅や車などの資産を持っていない

自己破産以外の債務整理はできない

生活保護を受給している場合、自己破産以外の債務整理は利用できません

債務整理の方法には、自己破産以外にも任意整理個人再生といった方法があります。
任意整理や個人再生は、借金が免除される自己破産とは異なって手続き後も借金の返済が続きます

しかし、生活保護費を借金の返済に充てることは認められていないため、生活保護受給者が任意整理や個人再生を利用することは現実的に難しいです。

仮に生活保護費を借金の返済に充ててしまった場合、不正受給とみなされて支給を打ち切られたり、返還を求められたりするおそれがあるので注意しましょう。

自己破産すると生活保護への影響やデメリットはある?

自己破産しても、生活保護に特別な影響やデメリットが生じることは基本的にありません

自己破産した後に生活保護費が減額されることも、支給が打ち切られることもありません

過去に自己破産した経験があるという理由で、生活保護が申請できなかったり、受給できなくなったりすることもないのでご安心ください。

ただし、生活保護受給中に限らず、自己破産にはさまざまなデメリットがあります
知らずに後悔することのないよう、自己破産のデメリットについても事前にしっかり確認しておきましょう。

自己破産しても生活保護費が減額されることはない

生活保護受給中に自己破産しても、生活保護費が減額されることはありません。
また、過去に自己破産している場合も、生活保護の認定や支給額に影響が出る心配もありません。

むしろ、生活保護費を借金の返済に充てたり、生活保護受給中に借金を返済するために新たな借り入れをしたりすると、不正受給とみなされて生活保護費が減額されるおそれがあります。

生活保護を受給するにあたって借金がある場合は、早めに自己破産を検討しましょう。

自己破産後も生活保護の受給はできる

自己破産をしたからといって、生活保護の受給資格が自動的に失われることはありません。そのため、自己破産後でも生活保護の申請や受給は可能です。

これは、自己破産と生活保護がそれぞれ異なる目的を持つ、別々の制度であるためです。

自己破産は、借金の返済義務を免除して経済的な再建を図る制度であり、生活保護は最低限度の生活を保障し、自立を支援するための制度です。

どちらも経済的に困っている方を支援する制度ですが、目的や仕組みが異なるため、併用することも認められています。したがって、自己破産を理由に生活保護の申請が拒否されることは基本的にありません

また、生活保護を受給している状態で自己破産をしても、受給要件を満たしていれば、引き続き生活保護を受けることができます。

生活保護受給中に限らず自己破産にはデメリットがある

生活保護を受給していることが、自己破産に不利に働くことはありません。
ですが、生活保護受給中に限らず、自己破産すること自体に、次に挙げるようにさまざまなデメリットが伴います。

  • ブラックリストに載る
    ブラックリストに載っている間はクレジットカードの利用や新たな借り入れが難しくなります
  • 官報に住所や氏名が掲載される
    官報から自己破産したことがバレる可能性があります
  • 職業や資格が制限される
    士業や警備員などの一部職業には一定期間就けなくなります
  • 一定額以上の財産が処分される
    持ち家や車などの高額な財産は手放すことになります
  • 保証人が一括請求を受ける
    残りの借金は保証人が肩代わりすることになります

自己破産のデメリットについて詳しくお知りになりたい方は、以下ページをご参考ください。

さらに詳しく自己破産の7つのデメリット|影響やよくある誤解を弁護士が解説

生活保護受給者は自己破産費用が免除される可能性がある

自己破産の手続きには、生活保護を受給しているかどうかを問わず、最低でも50万程度の自己破産費用が必要になります。
生活保護を受給していると、この自己破産費用が免除される場合があります

自己破産費用の内訳

裁判所費用 弁護士費用
同時廃止 1~3万円程度 30万~50万円程度
通常管財 50万円程度 30万~80万円程度
少額管財 20万円程度 30万~60万円程度

自己破産費用は生活保護費から支払うことができないので、収入や資産が少なくて高額な費用を用意することが難しいという方もいらっしゃるでしょう。

生活保護受給者は、法テラスの民事法律扶助制度を利用することで自己破産費用を立て替えてもらうことができます

それだけでなく、自己破産後も生活保護の受給を継続する場合には、立替費用の返済が免除されて、実質的に自己負担なく自己破産ができる場合があります。

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生活保護受給中の自己破産手続きの流れ

生活保護受給中に法テラスを利用して自己破産する場合、次のような流れで手続きが進みます。

  • 最寄りの法テラスに連絡して、無料の法律相談を予約する
  • 法テラスが選んだ弁護士に相談する
  • 法テラスに必要書類を提出し、民事法律扶助の利用条件を満たしているか審査を受ける
  • 審査が通り次第、三者間契約の締結
  • 法テラスによる費用立替と、弁護士による自己破産手続きが行われる
  • 自己破産の手続き終了後、法テラスに対して費用の償還免除を申請する

ご自身で予約して法テラスを利用する場合、法テラスが選んだ弁護士に相談・依頼することになります。
民事法律扶助の利用審査が通ると、法テラスが自己破産費用を立て替えます。

自己破産の手続きが終了した後も生活保護を受給する場合は、法テラスに対して費用の償還免除を申請し、認められれば立替費用の返済が免除されます

自分で弁護士を選んで法テラスを利用する方法

法テラスが選んだ弁護士に相談・依頼する以外に、ご自身で弁護士を選んで法テラスを利用する方法もあります
これを持ち込み式といって、次のような流れで手続きが進みます。

  • 法テラスと連携している弁護士を探す
  • 自分が選んだ弁護士に相談・依頼する
  • 弁護士から法テラスへ利用申請する
  • 審査が通り次第、三者間契約の締結
  • 法テラスによる費用立替と、弁護士による自己破産手続きが行われる
  • 自己破産の手続き終了後、法テラスに対して費用の償還免除を申請する

法テラスと連携している弁護士でなければ持ち込み式が利用できないので、まずは、インターネットや電話などで、法テラスと契約している弁護士を探しましょう。

依頼する弁護士が決まると、その弁護士が本人に代わって法テラスに利用申請を行います。

生活保護受給中に自己破産をする際の必要書類

生活保護受給中に法テラスを利用して自己破産する場合、主に次のような書類が必要になります。

  • 生活保護受給証明書
  • 世帯全体の住民票の写し
  • 債権者一覧表
  • 銀行口座に関する書類(通帳の写しなど)
  • 家計収支表 など

ほかにも、状況に応じて追加で書類の提出を求められることがあります。
審査のための資料や、収入を示す資料など、法テラスの利用には多くの書類が必要です

自己破産と生活保護はどっちを先に申請すべき?

自己破産と生活保護は、どちらを先に申請しても問題ありません
自己破産を先に申請する場合と、生活保護を先に申請する場合のそれぞれのメリット・デメリットは次のとおりです。

自己破産を先に申請した場合

メリット
  • 借金問題が解決した状態で生活保護を申請できるので、受給要件を満たしやすい
  • 生活保護費から借金を返済していると疑われる心配がない
デメリット
  • 自己破産費用の工面が必要になる
  • 手続きに半年~1年程度かかる

生活保護を先に申請した場合

メリット
  • 最短14日で生活保護が受給できるので、生活費を早急に確保できる
  • 法テラスの利用で、自己破産費用が免除になる
デメリット
  • ケースワーカーに「自己破産してから生活保護を請求するように」と指導を受けることがある
  • 債権者からの督促が止まらず、返済に追われる

これらを踏まえると、まずは弁護士に相談・依頼して、自己破産と生活保護を並行して進めることが得策といえます。

生活保護受給中に自己破産をする際の注意点

自己破産することをケースワーカーに伝える

生活保護を受給されている場合、自己破産することを事前にケースワーカーに伝えましょう。

ケースワーカーに借金の話をすると生活保護が取り消されるのではないかと不安に思われる方もいらっしゃいますが、自己破産することで生活保護が打ち切られることも、減額されることもありません

むしろ、ケースワーカーに内緒で自己破産することのほうが、信頼関係が損なわれたり、不正受給や報告義務違反とみなされたりして、生活保護が打ち切られてしまうおそれがあります。

ケースワーカーは、生活に困窮している方の相談にのり、自立に向けて適切な支援をするのが役割です。

事前に自己破産についてケースワーカーに相談することで、適切なアドバイスやサポートを受けながら安心して自己破産できるようになります

生活保護費で借金の返済はできないため早めに決断する

生活保護費で借金の返済をすることはできないので、早期に自己破産を検討・決断しましょう。

そもそも生活保護費は、受給者が最低限の生活をが送ることができるように支給される費用で、個人の借金の返済に充てることは認められていません

生活保護費から借金の返済をしてしまうと、不正受給と判断されて支給が打ち切られてしまうばかりか、給付金の返還や徴収金の支払いを求められる可能性もあります。

生活保護を受給していても、債権者は借金の回収を続けます。

弁護士に自己破産を依頼すると債権者からの督促が止まるので、借金の返済が滞って取り立てが激しくなる前に、なるべく早く自己破産することをおすすめします。

生活保護受給中に新たな借り入れはできない

生活保護を受給している間に新たな借り入れをすることは、基本的に避けるべきです。

新たな借り入れをすると、その金額が「収入」とみなされ、生活保護費が減額される可能性があります

減額を恐れて借り入れを隠しても、福祉事務所は金融機関の口座を調査できるため、隠し通すのは困難です。

もし申告せずに借り入れをしていることが発覚すると、不正受給と判断され、生活保護の打ち切りや給付金の返還、さらには徴収金の支払いを求められるリスクがあります。

さらに、借り入れによって生活がより困窮する可能性もあるため、生活保護受給中の新たな借金は控えるようにしましょう。

法テラスの利用にはデメリットもある

生活保護を受給中に法テラスを利用して自己破産すると、費用面でメリットがある一方で、いくつかデメリットや注意点もあります。

  • 利用審査に時間がかかる
    法テラスの利用には審査が必要で、審査期間(通常2週間~1ヶ月程度)は弁護士の正式な支援が受けられない場合があります。
    審査が終了しないと受任通知が発送されないので、債権者からの取り立て・督促が止まるまでに時間がかかります。
  • 自己破産に詳しい弁護士が担当になるとは限らない
    法テラスを利用する場合、ご自身で弁護士を選べません。紹介された弁護士が必ずしも自己破産に詳しい弁護士とは限りませんし、相性が合わない弁護士が担当になるおそれもあります。

もっとも、持ち込み型を利用すれば、こうしたデメリットを軽減できる可能性があります

生活保護受給中で自己破産をお考えの方は弁護士にご相談ください

生活保護を受給中でも、自己破産することができます。
借金の悩みは人に打ち明けにくいものですが、放置すると精神的にも生活的にも状況は悪化するばかりです。

弁護士法人ALGでは、それぞれの状況に応じた最適な解決策について、費用面や生活保護への影響を含めて丁寧にご説明いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

法的観点から、生活を立て直して前向きな再スタートが切れるように全力でサポートいたします。

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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長

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