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更新日: 2024年6月28日

タイの就業規則

監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長

就業規則(work regulation)とは、雇用主と従業員の間で取り決める規則のことです。

労働者保護法(Labour Protection Act)では、10人以上を雇用するタイ人及び外国人雇用主は、従業員の数が10名以上となった日から15日以内に、タイ語で作成した就業規則を作成し、事業所所在地を管轄する労働保護福祉局に7日以内に送付することが義務付けられています。

就業規則の作成、保管、周知義務を怠った雇用主には、最高2万バーツの罰金が科されます。

就業規則を改定した場合、雇用主は、改定後の就業規則を従業員に周知し、周知日から7日以内に改定前と改定後の就業規則の謄本を元の就業規則を提出した労働保護福祉局に提出しなければなりません。

就業規則の作成義務

労働者保護法では、タイ人及び外国人雇用主が10人以上の従業員を雇用する場合、従業員の数が10名以上となった日から15日以内にタイ語で就業規則を作成し、職場内で周知させなければなりません。

また、周知日から7日以内に事業場が所在する地域を管轄する労働保護福祉局にその謄本を送付しなければなりません。

雇用主は、就業規則を改定する場合、改定後の就業規則を従業員に周知しなければなりません。

改定により従業員の権利が制限される可能性のある内容が含まれる場合、雇用主はその内容について従業員の同意を得なければならず、同意が得られない場合、その改定内容は効力を生じず、改定後の就業規則が施行されることはありません。

就業規則の作成、保管、周知義務を怠った場合、最高2万バーツの罰金が科される可能性があります。

就業規則の必要記載事項

労働者保護法108条の規定により、就業規則には以下の項目が記載されていなければなりません。

  • 労働日、労働時間及び休憩時間
  • 休日及び休日取得に関する規則
  • 時間外労働及び休日労働に関する規則
  • 賃金、時間外労働手当、休日労働手当及び休日時間外労働手当の支給日及び支給場所
  • 休暇日及び休暇取得に関する規則
  • 規律及び懲戒処分
  • 苦情申し立て
  • 解雇、解雇補償金及び特別補償金

労働日、通常の勤務時間と休憩時間

始業時刻から終業時刻までの勤務時間は、1日8時間を超えてはなりません。

ある労働日の勤務時間が8時間を下回る場合、雇用者と従業員は、残りの勤務時間を別の通常の労働日に充てることに合意することができますが、その場合の勤務時間は1日9時間を超えてはなりません。また、1週間の合計勤務時間は48時間を超えてはなりません。

ただし、省令で定められた、従業員の健康及び安全に危険を及ぼす可能性のある業務については、1日の勤務時間は7時間以下、1週間の合計勤務時間は42時間以下でなければなりません。

雇用主は、従業員が連続5時間以上勤務する場合、1労働日につき1時間以上の休憩時間を従業員に与えなければなりません。

雇用主と従業員は、各休息時間を1時間未満とすることを事前に合意することができますが、その場合でも、1日の合計休憩時間は1時間を下回ることはできません。

休日及び休日取得

休日は週1日以上付与されなければなりません。従業員により休日が異なる場合は、事前に通知する旨を就業規則に記載することが望まれます。

時間外労働・休日労働

雇用主が従業員に時間外労働を行わせる場合、雇用主はその都度従業員の同意を得なければなりません。

ただし、業務の内容や性質上、継続的に作業する必要があり、作業を停止することで業務に支障をきたす恐れがある場合や、緊急の業務である場合、その他省令で定める業務である場合、雇用主は必要に応じて従業員に時間外労働をさせることができます。

なお、法律により、週36時間を超える時間外労働は禁止されています。

また、1年間継続して勤務した従業員は、1年間に6労働日以上の年次有給休暇を取得できます。年次有給休暇の取得日は、雇用主が指定するか、雇用主と労働者の合意に基づき設定されます。

基本給、超過勤務手当、休日手当、休日超過勤務手当の支払と支給場所

雇用主は、給与を少なくとも月1回支払わなければなりません。時間外労働には、基本給の1.5-3倍を支払わなければなりません。

休日労働の場合、雇用主は従業員の形態に応じて、少なくとも通常賃金の1倍から2倍の手当を支払う義務が生じます。休日超過勤務が発生した場合、雇用主は基本給の3倍の賃金を従業員に支払わなければなりません。

基本給の支払いは銀行で行われるか、雇用主の銀行口座から従業員の銀行口座への振り込み、あるいは雇用主と従業員が合意した方法に基づいて行われます。

休暇日及び休暇取得

1年間継続して就労した従業員は、1年間に6労働日を下回らない範囲で年次休暇を取得することができます。翌年、雇用主は従業員に対して6労働日を超える年次休暇を設定することができます。

従業員が病気になった場合、その従業員は病気休暇(sick leave)を取得できます。

この場合、雇用主は年間30労働日を超えない範囲で従業員に基本給を支払います。

ただし、従業員が3日以上連続して病気休暇を取得する場合、雇用主は従業員に対して、第一級医師免許を有する医師又は公立医療機関による診断書の提出を要求することができます。

男性の従業員は、兵役に関する法律に基づき、兵役検査、軍事訓練、兵役準備のための休暇(兵役休暇(leave for military service))を取得することができます。

休暇中、従業員には通常の労働日と同等の基本給が支給されますが、その日数は60日を超えることはできません。

出産休暇は(maternity leave)以前までは90日でしたが、現行の法律では98日までに延長されました。 妊娠中の女性従業員は、週休日や祝祭日、検診のための休暇を含め、1回の妊娠につき98日まで出産休暇を取得することができます。

妊娠期間中、従業員は雇用主から45日を超えない範囲分での基本給、社会福祉基金(Social Welfare Fund)から45日分の基本給を受ける権利があります。

不可避な用事の為の休暇(用事休暇、business leave)は、年次休暇とは異なるもので、就業規則で別途定める必要があります。

従業員は基本給を受け取りながら必要な用事休暇を取得することができますが、年間3労働日を超えてはなりません。

用事休暇を与えた場合、雇用主はその休暇日数を年次休暇から差し引くことはできません。

また、従業員は、省令で定める規則および手続に従い、研修または知識および技能の研鑽のための休暇(研修休暇(leave for training or skill development))を取得することができます。

従業員は、第一級医師免許を有する医師の診断書を添付することで、不妊手術のための休暇および不妊手術後の休暇(leave for sterilization)を定められた期間内で取得することができます。

雇用主は、避妊手術休暇の従業員に対し、休業期間中、労働日の賃金に相当する基本給を支払わなければなりません。

規律及び懲戒処分

規律違反は就業規則に規定しなければならず、規律に違反した従業員は懲戒処分の対象となります。

苦情申し立て

従業員による苦情申し立ての方法については、以下の項目とともに就労規則に明記する必要があります。

  • 苦情の範囲と意味
  • 苦情申し立ての手続き方法
  • 苦情の調査及び検討
  • 苦情解決手続
  • 苦情申し立て者及びその関係者の保護

普通解雇、解雇補償金及び特別補償金

労働者保護法では、120日以上継続して就業した従業員は、定年退職および普通解雇の場合、雇用主から法定の金額の退職金または解雇手当を受け取ることができます。

一方で、180日以下の試験採用期間内に、被採用者が自らの意思で退職した場合、あるいは就業規則または労働者保護法119条に違反した場合(本人の責めによる解雇)、雇用主は退職金または解雇手当を支払う義務を負いません。

就業規則の改定

職場の従業員が20人以上の場合、従業員と雇用主との間で就業規則とは別に、労働条件協約(working condition agreement)を締結し、タイ語で記載することが労働関係法(Labour Relations Act)で義務付けられています。

外資系企業の場合、外国人従業員も就業規則や労働条件協約を理解できるよう、雇用主は日本語または英語の翻訳文書を作成しなければなりません。

雇用主は、就業規則を従業員が見やすい場所や読みやすい形、あるいはその他方法で周知しなければなりません。

就業規則を変更することにより従業員に不利益が生じる場合、雇用主は従業員の同意を得なければなりません。なお、従業員が20人未満の場合、労働者保護法第13条の規定(雇用関係の承継)は適用されません。

タイでは、就業規則に最低基準効を明確に認める法令は存在しません。雇用者が遵守すべき規定を定めた労働保護法が存在するだけです。

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