子供が学校でいじめを受けたと知ったとき、加害者や学校に「責任を取ってほしい」と思うのは当然のお気持ちです。
子供のいじめ被害については、加害者やその保護者および学校側に対して、民事訴訟や刑事告訴などの法的責任を追及することができます。
この記事では、いじめの被害を訴える具体的な方法や費用、注意点などについて詳しく解説していきます。ぜひご参考ください。
目次
いじめの被害者が受けたこのような損害は、次のような人に責任を追及できる可能性があります。
では、どのように責任を問えるのか、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
学校でのいじめは、法律上不法行為に該当すると考えられています。
民法第709条により、いじめ加害者は被害者に対して、不法行為(いじめ)に基づく損害賠償責任を負うと定められているため、いじめ被害者は、加害者に対して損害の賠償を求めることができます。
具体的には、以下のような損害の賠償を請求できます。
さらに、いじめが悪質な場合は以下の犯罪行為に該当する可能性があり、刑事責任を問うこともできます。
傷害罪(刑法第204条) | 暴力などによって他人に怪我をさせる行為 | 15年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
---|---|---|
脅迫罪(刑法第222条) | 何らかの害悪を告知して他人を脅迫する行為 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
強要罪(刑法第223条) | 脅迫・暴行を用いて他人に義務のないことを負わせる行為 | 3年以下の懲役 |
名誉棄損罪(刑法第230条) | 公然と事実を提示して、他人の名誉を毀損する行為 | 3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金 |
侮辱罪(刑法第231条) | 事実を提示せず、公然と他人を侮辱する行為 | 1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 |
恐喝罪(刑法第249条) | 他人を脅して財物を交付させる行為 | 10年以下の懲役 |
器物損壊罪(刑法第261条) | 他人の物を壊す行為 | 3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料 |
いじめの被害を知ったとき、「加害者の親にも責任を取ってほしい」と思われるかもしれません。
基本的には、いじめの被害者に対する損害賠償責任は加害者本人が負います。
ただし、加害者本人に「責任能力」があるかどうかによって加害者の親に責任を問える場合があります。
以下、詳しく見ていきましょう。
いじめの加害者に責任能力が認められない場合は、被害者は加害者の親に対して監督義務者の責任に基づく損害賠償を請求できます(民法第714条1項)。
このとき、加害者の親が、子供への監督義務を怠らなかったこと等を証明できれば、監督義務者としての責任は問われません。
ただし、立証のハードルは高く難しいでしょう。
責任能力が備わる年齢について明確な基準はありませんが、おおむね10歳~12歳程度で備わるものと考えられています。
いじめの加害者が未成年であっても、加害者に責任能力が認められる場合には、加害者本人が損害賠償責任を負うのが基本です。
そのため、加害者の親に対する損害賠償請求は認められません。
ただし、実際には、未成年の加害者が自分でいじめの損害賠償金を支払うのは難しいことがほとんどです。
よって、加害者の親が損害賠償金を支払うことになるでしょう。
学校側に損害の賠償を求める場合、公立学校と私立学校で請求先が異なります。
学校側は、児童・生徒が安心かつ健全な学校生活を送れるよう、安全配慮義務を負っています。 安全配慮義務の有無については、以下の2つから判断されます。
例えば、学校側がいじめを把握しながらも対策を講じずそのままにしておいた場合には、安全配慮義務違反と判断され、いじめ被害者に対する損害賠償責任を負う可能性が高いでしょう。
いじめの被害者やその保護者が、加害者側や学校側を訴える方法には、民事訴訟と刑事告訴の2つの方法があります。
それぞれの方法や違いについて、以下で詳しく解説していきます。
民事訴訟とは、裁判官が法廷で双方の主張を聞き、証拠を調べて、判決で紛争解決を図る手続きのことで、大まかな流れは以下のとおりです。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
まずは、慰謝料など請求する損害賠償額をいくらにするか検討します。
いじめによって怪我をした際の治療費や、物を壊された場合にはその代金、精神的苦痛に対する慰謝料などを含めて計算しますが、どの程度請求すればいいのかの判断は難しいでしょう。
そのため、弁護士に依頼して法的観点から適正な損害賠償額を算出してもらうことをおすすめします。
請求する賠償金額が定まったら、加害者やその親、学校側に内容証明郵便を送付して賠償金を請求します。
このとき、いじめの証拠も併せて送付するとよいでしょう。
内容証明郵便は送った日時や相手、内容を証明してくれる特別な郵便で、「損害賠償金を請求したこと」を証明してくれる証拠となります。
加害者側が内容証明郵便に応じれば、示談交渉が開始されます。
損害賠償請求の可否や金額などの交渉のほかに、加害者側に謝罪を要求することもできます。
示談交渉により加害者側がいじめを認め、賠償金を支払うことを約束すれば示談が成立となり、賠償金を受け取る流れになります。
このとき、示談書や和解書、合意書など、示談交渉で取り決めた内容を記載した書面を作成することで、後から「言った・言わない」のトラブルを避けることができます。
示談交渉を行ったものの、折り合いがつかない場合、最終的には民事訴訟を提起することになります。
いじめの被害者は原告として裁判所に訴状を提出し、裁判を提起します。加害者側は被告として原告の請求に対して反論します。
裁判所は原告・被告双方の主張を聞き、証拠を踏まえて事実認定や法律の適用により判決を下します。
裁判所が損害賠償金の支払いを命じた場合、加害者側にはそれに従う義務を負います。
犯罪に該当するような悪質ないじめ被害に遭った場合は、検察官または警察官といった捜査機関に対して刑事告訴をすることができます(刑事訴訟法第230条、第241条1項)。
例えば、暴行によるいじめで怪我を負った場合には、傷害罪、脅されて金銭を要求された場合には、恐喝罪などの罪に該当する場合があります。
刑事告訴を捜査機関が受理すると、いじめに関する捜査が開始され、いじめ加害者が刑事責任を追及される可能性が生じます。
CONTACT
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います。
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。 ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
いじめの被害を訴えること自体は、いじめの被害者やその保護者だけでも可能です。
しかし、子供の心のケアをしながら、民事訴訟や刑事告訴の手続きをするのは、保護者の精神的負担が大きくなり難しいでしょう。
いじめは迅速な対応が求められます。子供が安心して学校生活を送れるようにするためにも、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
民事訴訟や刑事告訴を弁護士に依頼するメリットには、以下のようなものがあります。
法的に有効な証拠についてアドバイスできる
民事訴訟や刑事告訴では、いじめを裏付ける証拠が重要なカギとなります。
弁護士であれば有効な証拠や、証拠の集め方についてアドバイスが可能です。
加害者側や学校側とのやり取りや訴訟等の手続きを任せられる
弁護士に依頼することで、代理人として加害者側や学校側とのやり取りを任せることができます。
さらに、訴訟等の手続きだけでなく、実際に法廷での主張・立証も任せられるため、適切な損害賠償金を受け取れる可能性が高まります。
いじめ再発防止策を提案できる
子供が安心して学校生活を送れるようにするためにも、「いじめ再発防止策」が重要です。
弁護士は今後の再発防止に向けた協議においても、具体的な提案を行うことができます。
いじめの被害を受けて訴訟を提起する場合、訴訟費用や、弁護士に依頼する弁護士費用が必要になります。 具体的に相場を見ていきましょう。
訴訟費用
弁護士費用
弁護士費用には基準がないため、依頼する内容や弁護士事務所によって費用は異なりますが、概ね以下のような相場になるでしょう。
いじめの被害を民事訴訟や刑事告訴で訴える際には、以下の点について事前によく検討することが大切です。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
いじめ被害への対応は、子供の意見を尊重するようにしましょう。
例えば、いじめの被害が刑事罰に該当するような深刻なケースでない場合、子供は自分で解決したいと考えていることもあるでしょう。
この場合、親が訴えを起こすことは控え、子供の様子を見守るのも一つの選択肢です。
しかし、子供が「親にいじめられていることを知られたくない」と思い、助けを求めることができていないケースもあるため、注意が必要です。
特に子供の様子がいつもと違う場合や、いじめが悪質な場合は、親が主導して対応する必要があります。
いじめを訴えるには、被害を裏付ける証拠が重要です。
民事訴訟で加害者に損害賠償金の支払いを認定してもらう際や、警察に刑事告訴する際には、いじめを裏付ける証拠があるかどうかで結果が大きく変わります。
証拠を集めるにはいくつかポイントがあり、なかでも加害者に証拠を集めていることを悟られないようにすることが大切です。
証拠集めや証拠がない場合は、まずは一度弁護士にご相談ください。
いじめの証拠例
いじめに関する損害賠償請求権には、次のような時効があります。
損害賠償請求など法的措置をお考えの場合は、時効が完成する前に早めの行動が大切です。
状況によっては、子供とよく話し合ったうえで転校させることも検討すべきでしょう。
いじめの被害について、加害者側や学校側に訴える場合、子供が学校に居場所を見つけられなくなってしまうケースも考えられます。
子供の健やかな成長のためにも、転校を決めた場合は、訴えと並行して転校に必要な手続きや準備をおこなっておくと良いでしょう。
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子供が受けたいじめの被害は、加害者側が学校側へ訴えを起こすことができます。
しかし、子供のケアをしながら民事訴訟や刑事告訴の手続きを進めるのは容易ではありません。
保護者の方の負担を少なくするためにも、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
弁護士であれば、ご相談者様の代理人として、民事訴訟や刑事告訴について全面的にサポートすることが可能です。
法律の専門家である弁護士が法的観点から主張・立証をすることで、早期解決が期待できます。
いじめの被害について、加害者側や学校側への訴えをお考えの場合は、まずは一度私たちにお話をお聞かせください。
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監修 : 弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates執行役員
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:41560)
愛知県弁護士会所属。私たちは、弁護士82名、スタッフ171名(司法書士1名を含む)を擁し(※2021年6月末現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。
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