ニューズレター


2025.Jul vol.128

水道代の消滅時効の考え方


不動産業界:2025.7.vol.128掲載

私は、賃貸物件をいくつか所有するオーナーです。どうしてかわかりませんが、水道利用の申請に手違いがあり、水道代の支払いが滞っている物件がありました。そこで、水道局に問い合わせたところ、遡って、水道代の支払いをするよう求められました。令和2年に民法の改正があり、それにより、水道代の消滅時効が長くなり、遡って支払う水道代の範囲が大きくなったと聞いたのですが、今回の件についても関係があるのでしょうか。水道代の支払いが漏れていたのは、令和2年より前のことなので、民法改正の影響を受けないのではないかと考えているのですが、この考え方は正しいのでしょうか?


水道代の消滅時効については、以前は2年とされていましたが、令和2年の民法改正により、時効期間が5年に変更されました。そのため、改正前に利用申請がされた水道契約については2年の消滅時効が、改正後に利用申請がされた水道契約については5年の消滅時効が適用されるのが基本的な考え方となります。

このような考え方からすると、水道利用の支払い漏れが、令和2年の民法改正より前から続いている場合、2年の消滅時効が適用されるという考え方もあり得そうですが、水道局の実際の運用としては、2年ではなく、5年の消滅時効が適用されるものと考え、遡って5年間分の水道代を請求するということが多いように見受けられます。

したがって、令和2年より前からの支払い漏れだとしても、5年の消滅時効が適用される可能性がある点には留意が必要となります。

さらに詳しく

改正前の民法においては、水道代の消滅時効は2年とされていましたが、令和2年に民法が改正されたことにより、他の債権と同様に、時効期間が5年に変更されました。そのため、改正前に利用申請がされた水道契約については2年の消滅時効が適用され、改正後に利用申請がされた水道契約については5年の消滅時効が適用されるのが基本的な考え方となります。

賃貸物件において、入居者が、水道局に対して水道の使用申請を行い、水道代を支払うことが通常であるところ、何らかの理由により、入居者が水道の使用申請を怠ったため、水道局が、入居者の代わりに、賃貸物件のオーナーに対して水道代の支払いを求めるといったケースにおいて、水道代の消滅時効が問題となることがあります。

この場合、水道局から過去の水道代を請求されることになりますが、民法改正により、水道代の消滅時効の考え方が変わった関係で、令和2年の民法改正前から水道を利用しており、民法改正後に水道局への申請漏れが発覚したようなケースで、民法改正前の2年の消滅時効が適用されるのか、民法改正後の5年の消滅時効が適用されるのか、この点についての考え方が、はっきりとは定まっていないように思われます。

2年の消滅時効と、5年の消滅時効とでは、時効により消滅する水道代の範囲が大きく異なり、民法改正をまたいで申請漏れが発覚した場合に、どちらの消滅時効が適用されるかによって、水道代の支払義務の範囲が大きく変わると考えられます。

この点、水道局に問い合わせたところ、改正前から使用している場合であっても、申請漏れが発覚したのが民法改正後のことである点を重視して、民法改正後に使用申請が行われ、水道契約が成立したものと捉え、水道を使用していた期間すべてについて、改正後の5年の消滅時効を適用する考え方に立っているとのことでした(あくまで、問合せ時の回答であるため、水道局の公式な見解ではありません)。

しかし、このように考えると、水道契約が成立する前の水道使用についてまで、なぜ遡って5年の消滅時効が適用されるのかがうまく説明できていないように思われます(契約する以前の水道使用について、過去に遡って契約に基づくものとして捉えることに少し無理があると考えられます。むしろ、後述のように、水道を使用した当初から水道契約が成立していたと考えるのが自然なようにも思われます)。

これと異なる考え方として、改正前から水道を使用している点を重視し、水道の使用を開始した時点で、黙示に水道契約が締結されていると解釈し、改正前の2年の消滅時効が適用されると考える余地もあるように思われます。

この点について判断した裁判例はまだ存在しないように思われるため、今後の展開を見守る必要がありますが、実務上は、民法改正をまたいで水道代の支払い漏れが発覚した場合、5年の消滅時効に従って水道代の請求がされることがあるため、留意が必要と考えられます。

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