養育費の未払いは回収できる!請求方法や時効について解説
離婚する際にきちんと養育費について取り決めたにも関わらず、約束どおり支払われずに困っている方が多いです。
離婚をしても、親には子供に親と同程度の生活をさせなければならないという生活保持義務があります。
生活保持義務は、親の生活に余裕があったら養育費を支払うというものではなく、自分の生活水準を下げてでも養育費を支払わなければならないとする強い義務になります。
すなわち、子供と離れて暮らす親には、養育費をきちんと支払ってもらい、しっかりと親として責任を果たしてもらう必要があります。
2019年の民事執行法改正により、相手の財産を調査できる手続きが新設されて、以前よりもはるかに養育費を回収しやすくなりました。
そこで本記事では、未払い養育費を請求する方法や養育費の未払いが起こらないよう再発を防ぐ方法など「養育費の未払い」が生じたときに役に立つ知識や情報をわかりやすく解説します。
目次
養育費の未払いは請求できる!
離婚をしても、子供と離れて暮らす親の養育費の支払いは法律上の義務ですので、子供と同居している親は、離れて暮らす親に対して養育費を請求することができます。
父母の間で養育費について具体的に取り決めたにも関わらず、約束どおり支払われない場合は義務違反となるため、強制執行によって養育費を支払わない相手の財産を差し押さえることもできます。
ただし、養育費の支払い義務が具体的に生じるのは、養育費をもらう側が養育費を支払う側に請求したときからです。
よって、養育費を請求されていない段階で養育費を支払わなくても違法にはなりません。
未払い養育費を請求する方法
未払い養育費を請求する方法やそれぞれのメリット・デメリットは主に次表のとおりです。
| 対処法 | 内容 | メリット | デメリット | |
|---|---|---|---|---|
| ① 相手に直接連絡して請求する | 相手に電話やメール、LINE、内容証明郵便などで直接催促する方法 | ・手間や労力をかけなくて済む ・内容証明郵便を送付した場合は、心理的プレッシャーを与えられ、有効な証拠になり得る |
・相手に無視されたり、支払いに応じてもらえなかったりする可能性が高い | |
| ② 家庭裁判所の手続きを利用して請求する | 養育費請求調停 | 家庭裁判所の調停委員を介して、養育費の金額や支払方法などについて話し合う手続き | 当事者双方が合意して調停が成立すれば調停調書が作成されるので、今後また未払いが生じても強制執行や履行勧告などの手続きが行えて円滑に請求できる | あくまでも話し合いの手続きなので、合意できず調停不成立になる可能性がある |
| 履行勧告 | 相手の未払い状況を調べたうえで家庭裁判所から相手に対して養育費の支払いを勧告してもらえる制度 | 裁判所から連絡がくるので心理的プレッシャーを与えられる | 法的強制力がない | |
| 履行命令 | 一定期間に未払い養育費を支払うように家庭裁判所から命じてもらう制度 | 応じない場合は10万円以下の過料に処せられる可能性があるので、心理的プレッシャーが与えられる | 法的強制力がない | |
| 強制執行 | 相手の財産を差し押さえて未払い養育費分を強制的に回収する手続き | ・強制的に未払い養育費を回収できる ・給与を差し押さえれば、一度の手続きで未払い分だけでなく将来分の養育費も継続的に差し押さえられる |
・手続きが複雑 ・相手の住所や差し押さえたい財産の詳細を把握しなければ強制執行できない ・強制執行しても回収できない場合もある |
|
①相手に直接連絡して請求する
養育費の未払いが生じたら、まずは相手に直接連絡して請求しましょう。
連絡方法は電話やメール、LINEなどが挙げられ、最も手間や労力がかからない方法です。
単に支払いを忘れていただけであれば、すぐに支払ってもらえる可能性があります。
相手に連絡しても無視される場合は、内容証明郵便を利用するのが有用です。
内容証明郵便は、いつ誰が誰宛てにどのような内容の書面を差し出したか日本郵便が証明してくれますので、相手からの「未払い養育費を催促された覚えはない」といった言い逃れを防げます。
また内容証明郵便が送られてくることで、相手に心理的プレッシャーを与えられます。
今後、裁判所の手続きを利用して未払い養育費を請求する際に有効な証拠にもなります。
②家庭裁判所の手続きを利用して請求する
養育費を支払わない相手に直接連絡をしても、支払われない場合は、家庭裁判所の手続きを利用する方法があります。
ただし、養育費の取り決め方によって手続きが異なります。
次項でそれぞれ詳しく解説していきます。
養育費請求調停
離婚する際、養育費について、強制執行認諾文言付公正証書を作成しなかった場合や、調停や審判など裁判所の手続きで取り決めていなかった場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。
調停委員を交えて話し合った結果、双方の合意が得られれば養育費の未払い分を回収することが望めます。
また、今後養育費の未払いが生じても、調停調書が作成されているので、強制執行や履行勧告、履行命令を行ってスムーズに回収できる可能性が高まります。
しかし、合意できずに調停不成立となれば、自動的に審判へ移行します。
審判では、双方の一切の事情を考慮して、裁判官が判断を下します。
履行勧告・履行命令
調停や審判など裁判所の手続きで養育費を取り決めたにも関わらず、養育費の未払いが生じている場合は、家庭裁判所へ履行勧告や履行命令を申し立てることができます。
裁判所から、養育費を支払わない相手に取り決めたとおり養育費を支払うように勧告や命令を出してもらえます。
基本的に支払いを促す制度なので、どちらにも法的強制力はありませんが、裁判所からの連絡がくるので、心理的プレッシャーを与えられ、一定の効果が期待できると考えられます。
特に履行命令では、応じなければ10万円以下の過料に処せられる可能性があるので、強い心理的プレッシャーを与えられます。
強制執行
養育費の支払いについて強制執行認諾文言付公正証書を作成している場合や、調停や審判などの裁判所の手続きで取り決めている場合、未払い養育費が支払われないときは、地方裁判所に強制執行を申し立てることができます。
強制執行では、相手の預貯金や生命保険、不動産、給与などの財産を強制的に差し押さえて、未払い養育費分を回収します。
特に給与は手取り金額の2分の1まで差し押さえることができます。また、未払い分だけでなく将来支払ってもらう分についても差し押さえることができるため、継続的に回収することができます。
ただし、強制執行の申立ては複雑であり、相手の住所や財産の詳細を把握しておかなければ、強制執行できません。
さらに、預金口座の残高がなかったり、会社を退職していれば、強制執行をしても回収できない可能性があります。
強制執行の詳細については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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未払いの養育費を元配偶者の親に請求することはできるのか?
元配偶者の親には、養育費を支払わなければならない法的な義務はありません。
あくまでも扶養義務があるのは子供の親だけだからです。
ただし、元配偶者の親が養育費について連帯保証人となっている場合や経済的に余裕がある場合などは例外的に請求できるケースがあります。
また、元配偶者の親に「未払い養育費を支払ってほしい」とお願いして、任意に応じてもらえるのであれば、養育費を支払ってもらうことができます。
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未払い養育費を請求する場合は時効に注意!
未払い養育費の請求には時効が設けられているため、請求時に時効が過ぎていないか確認する必要があります。
時効期間は養育費の取り決め方法によって異なります。
養育費について話し合いで取り決めた場合は、「支払予定日から5年」になります。
調停や審判など裁判所の手続きで取り決めた場合は、「支払予定日から10年」になります。
もし、未払い養育費の時効が迫っている場合は、相手に養育費の支払義務があることを承認してもらったり、裁判上の請求をしたり、差し押さえしたりすることにより、時効を一時的にストップできます。
養育費の未払いが起こらないよう再発を防ぐ方法
養育費の未払いは、一度だけでなく何度も起こり得るので、養育費の未払いの再発を防ぐために次の方法によって備えておくべきです。
- 強制執行認諾文言付公正証書や調停調書、審判書といった強制執行を行うために必要な文書である債務名義を取得しておく
- 強制執行を行った場合は、給与を差し押さえて将来支払ってもらう分の養育費も差し押さえておく
ただし、状況によって取るべき対応は異なるため、個別の事情に沿って弁護士に適切なアドバイスをしてもらうといいでしょう。
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養育費の未払いについて弁護士に相談・依頼するメリット
養育費の未払いが生じた場合は弁護士に相談・依頼して対応することをお勧めします。
弁護士に依頼すれば、次のようなメリットがあります。
-
相手に心理的プレッシャーを与えられる
養育費を払わない相手は、「払わなくても大した問題ではないだろう」と安易に考えている人もいます。
弁護士から連絡がいけば、事の重大さに気付き、スムーズに話し合いができ、支払いに応じる可能性が高まります。 -
適切な回収方法をアドバイスしてもらえる
未払い養育費の回収方法には様々な手段があり、事情によって適切な方法が異なります。
弁護士であれば、個別の事情にあった適切な回収方法を提案します。 -
代わりに裁判所の手続きをしてもらえる
調停や強制執行などの裁判所の手続きは複雑ですので、自力でするとなると大変時間や手間がかかります。
弁護士に依頼すれば、煩雑で専門的な手続きを一任でき、円滑に未払い養育費を回収できます。 -
代わりに相手と交渉してもらえる
相手と直接やり取りしたくない、顔も見たくないという方もいるかと思います。
弁護士であれば、代わりに相手と未払い養育費について話し合いをするので、精神的負担が軽減できますし、相手をきちんと説得できる可能性が高いです。
相談・依頼するタイミング
養育費の未払いが生じたら、できるだけ早期に弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
相手の所在がわからなかったり、財産を把握していない場合は、調査するのに時間がかかるケースもあります。
また未払い養育費の請求には時効がありますので、時効によって請求権が消滅してしまうリスクがあります。
時効は、ある程度の期間を設けられていますが、時間の経過とともに、未払い額も蓄積して高額になるので、相手が経済的に支払えない状況になり兼ねません。
よって、早めに弁護士に相談・依頼して対処するのが得策です。
養育費の未払いに関する弁護士法人ALGの解決事例
養育費の未払いに対する調停に欠席し続けた相手方に審判を申し立て、支払いが命じられた事例
【事案概要】
結婚当初から相手方のモラハラに悩まされていた依頼者様は出産を機に相手方と離婚しました。
しかし、相手方は養育費を支払おうとせず、当事者間での話し合いでの解決が困難であるとして、弁護士法人ALGにご相談いただきました。
【弁護士方針・弁護士対応】
担当弁護士は、養育費請求調停を申し立てました。
しかし、相手方は調停への出席を拒否しました。
そこで、審判手続きに移行することも視野に入れて、相手方の収入資料を収集して適正な養育費額を計算し裁判所に提出しました。
【結果】
調停期日を3回実施しても相手方は調停を欠席し続けたため、担当弁護士の想定どおり審判手続きに移行しました。
そして、担当弁護士が主張したとおりの養育費額を支払うべきとする裁判所からの審判が下されました。
未払い養育費の回収と今後の養育費が滞らないよう給与の差し押さえができた事例
【事案概要】
依頼者様と相手方はすでに調停で離婚したものの、数年前から養育費が未払いになっている状態でした。
依頼者様は、未払い養育費の回収と今後の養育費が滞りなく支払われるように、相手方の給与の差し押さえを希望されて、ご相談・ご依頼されました。
【弁護士方針・弁護士対応】
養育費は子供の生活費で、日々の生活に直結する問題のため、早急に支払いがされるように動く必要がありました。弁護士は具体的に次の点を迅速に進めました。
- 相手方の勤務先情報の取得
- 強制執行に必要な書類(戸籍謄本など)の取得
- 強制執行の申立ての準備
【結果】
初回相談から2ヶ月後には、相手方の給与を差し押さえることができ、無事に未払い養育費分と将来受け取る養育費分の支払いを受けることができました。
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養育費の未払いに関するよくある質問
養育費の未払いを成人後に請求することはできますか?
具体的に養育費の取り決めをしていた場合に、未払いになっている養育費は成人後でも請求できます。
ただし、養育費の支払いには時効があります。
話し合いで取り決めていた場合は支払日から5年、調停や審判などの裁判所の手続きで取り決めた場合には支払日から10年になります。
以前取り決めていた支払予定日から5年もしくは10年を過ぎていると、未払い養育費は請求できないので注意が必要です。
父子家庭への養育費が未払いの場合でも養育費を回収することはできますか?
父子家庭でも未払い養育費を回収できます。
未払い養育費の回収には、性別は関係がないからです。
よって、通常の回収方法と同じように、まずは相手に直接連絡して督促してみましょう。
直接督促しても支払ってもらえない場合は、養育費請求調停や履行勧告、履行命令、強制執行といった裁判所の手続きを利用して、未払い養育費を請求することになります。
養育費の未払いを子供自身が請求することはできますか?
子供が親に請求できる生活費は「扶養料」といい、内容は全く同じですが親が親に請求する「養育費」とは区別されています。
子供は親に対して「扶養料」を請求することはできます。
ただし、別居親(義務者)が子供の監護・養育をする同居親(権利者)に支払う「養育費」と「扶養料」はいずれも子供の生活に要する費用ですから実質的に同じであるため、二重に請求することはできません。
子供が未払い養育費の代わりに扶養料を請求する場合は、同居親は別居親に対し、未払い養育費を請求することはできません。
また、子供が未成年者である間は、親権者が法定代理人として、扶養料を請求することになります。
養育費の未払いについてお悩みの方は弁護士法人ALGへご相談ください!
養育費は、子供が健やかに成長するためになくてはならないお金です。
「相手と関わりたくない」、「未払い養育費を請求する手続きがよくわからない」など様々な理由があると思いますが、放っておくのはいけません。
まずは、養育費の未払いが発生したら、早期に弁護士へご相談ください。
弁護士ではあれば、あなたに代わって相手へ督促できます。相手も弁護士から督促されることによって心理的プレッシャーを与えられて、未払い養育費を支払う可能性が高まります。
また、代わりに調停や強制執行などの裁判所の手続きも行えますので、ご自身の負担を軽減できますし、自力で請求するより早期解決が期待できます。
一日も早く未払い養育費を回収するためにも、弁護士法人ALGへお気軽にお問合せください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)




















